フルメタル死亡遊戯!

作者:雷紋寺音弥

●死亡のビルで待つ者は
 郊外にある廃ビルの中、階段を上る足音がする。深夜であるため、ただでさえ人気のない廃ビルに響く足音は、余計に鋭さを増している。
「おっかしいなー。やっぱり、単なる噂だったのか~?」
 割れた窓ガラスから差し込む月明かりに照らされながら、四葉・リーフ(天真爛漫・e22439)は思わず首を傾げた。彼女の調査によれば、このビルは別名、死亡の廃ビル。昼間は普通の廃墟だが、深夜になると現代における『闇の闘技場』と化し、その最上階では究極の格闘家が挑戦を待っているという話だったのだが。
「ここが一番上の階だけど、誰もいないな?」
 辺りを見回してみるが、やはり人の気配すらない。所詮は下らない都市伝説だったのかと、溜息交じりに帰ろうとした時だった。
「……チェェェェェィッ!!」
「うわっ! な、なんだ!?」
 突然、奇声と共に強烈な蹴りが飛んで来たことで、リーフは思わず頭を抱えて身を屈めた。
「チッ、外したアル。完璧に死角を突いたつもりアルのに、アナタ、もしかしなくても腕が立つアルネ?」
 蹴り砕いた壁から脚を引っこ抜きながら、中華服を着た女が拳を構えていた。もしや、こいつが噂の格闘家なのだろうか。しかし、それにしてもいきなり殺しに掛かって来るとは、穏やかではない。
「お前が噂の格闘家か?」
「ふっふっふ……その通りアル! ウチの目的は、あらゆる格闘家と戦って殲滅し、そのデータを集めること。……アナタ、運がなかったアルネ!」
 女の拳から迸る電撃。関節を動かす度に微かなモーター音を響かせながら、謎の女格闘家は、問答無用でリーフへと襲い掛かって来た。

●金属中華娘、現る!
「招集に応じてくれ、感謝する。四葉・リーフが、『死亡の廃ビル』と噂される廃墟で宿敵のデウスエクスに襲われることが予知された。生憎と、うまく連絡がつかない状態だ。大至急、救援に向かって欲しい」
 敵の技量は高く、リーフだけで敵う相手ではない。おまけに、相手は最初から本気でリーフを殺そうとしている危険な存在だと、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に告げた。
「廃ビルに出現するのは、中華服を身に纏った拳法家と思しき女だな。名前はフェイチャイ。こんな見た目だが、種族はダモクレスだ。中国拳法の使い手のデータを元に作成された、近接戦闘用の個体といったところか?」
 幾分、誤解や偏見の入り混じった姿をしているようだが、それでも実力は折り紙付き。単純な打撃でも一般人なら一撃で殺せるだけのパワーを持ち、それらをグラビティに乗せて放って来るというのだから、直撃すれば洒落にならない。
 正確無比な連続蹴りは相手に反撃する余地を許さず、左手に装着した金色のナックルからは、強力な電撃を放つことができる。また、脚を広げて身体を高速回転させることで、ヘリコプターの原理で空を飛ぶことさえも可能で、その鋭い爪先を武器に複数の相手をまとめて防具諸共に切り裂いて来る。
「高い攻撃力と俊敏な動きを誇る、なかなか厄介な相手だぞ。数ではこちらが有利でも、油断はしない方がいい。敵の使用する技の性質を、よく見極めて作戦を立てることが重要だな」
 一見して脳筋の格闘バカに見えるフェイチャイだが、今までに彼女が殺し、グラビティ・チェインを奪って来た格闘家達のデータを得ているため、戦闘に関しては達人級だ。
 くれぐれも、油断して彼女にKOされることのないように。そう言って、クロートはケルベロス達に、改めてリーフの救出を依頼した。


参加者
幸・鳳琴(黄龍拳・e00039)
稲垣・晴香(伝説の後継者・e00734)
四葉・リーフ(天真爛漫・e22439)
ジェニファー・キッド(銃撃の聖乙女・e24304)
草薙・ひかり(往年の絶対女帝は輝きを失わず・e34295)
 

■リプレイ

●百の脚を持つ娘!?
 深夜の廃ビルに響き渡る轟音。謎の噂を聞きつけた四葉・リーフ(天真爛漫・e22439)の前に、突如として現れたのは、中華服を着たカンフー使いのダモクレス。
「今度はエセ中国人だとー!? 何にしても格闘家にはもう手は出させないぞー!」
 今まで犠牲になった格闘家達の無念を晴らすべく、リーフは果敢にチャイナ風のダモクレス、フェイチャイへと仕掛けて行く。
「行っくぞー! 落下して、蹴ーる!!」
 最初から出し惜しみせず、全力で挑む。天井を突き破る勢いで跳躍し、自慢の踵をフェイチャイの脳天目掛けて叩き込むが……しかし、確実に決まると思った瞬間、フェイチャイは滑るような動きで後ろに下がり、リーフの脚を両腕を交差させて受け止めた。
「な、なんだとー!?」
 必殺技が防がれた。それでも、並の相手なら間違いなく腕が折れているはずの一撃だったが、しかしフェイチャイは微動だにせず、下からリーフを睨み付け。
「……いつまでも、臭い足を腕に乗せてるんじゃないアルヨ」
「く、臭い足だとー! 失礼なやつ……うわぁっ!?」
 そのまま両腕を大きく振るうことで、リーフの身体を壁際まで吹き飛ばした。
「うぅ……こいつ、細身なのに凄い馬鹿力だぞ……」
 衝突の衝撃で崩れた壁の残骸を払いつつ、リーフは痛みを堪えて立ち上がる。グラビティでなければ、直接的なダメージを受けないのはデウスエクスだけでなくケルベロスも同じ。しかし、怪我はなくとも痛覚だけはしっかり残っているというのが、なんというかやるせない。
「遅いアル! ウチの足捌きの前に、平伏すがいいアルヨ!」
 リーフが起き上がるよりも速く、フェイチャイが凄まじいスピードで間合いを詰めて来た。それだけでなく、流れるような動きから高速で何発も蹴りを繰り出して来た。
「ホァタァァァッ!! 奥義、百烈重段影脚!!」
「うぐぐぐ……こ、これはキツイぞー!」
 咄嗟に防御の構えを取って急所への直撃を避けるリーフだが、敵の蹴りは手数が半端ではない。それこそ、至近距離でガトリングガンの銃弾を浴びせられているかの如く、全身を滅多打ちにされてしまった。
「はぁ……はぁ……。な、なんとか、耐えたんだぞ……」
 やがて、敵の猛攻が終わったところで、リーフは辛うじて膝を突き、そのまま倒れることだけは堪えてみせた。が、それでも消耗はかなり激しく、このまま戦えば敗北は必至だった。
(「チビにフォローさせて、一気に攻めるか? ……いや、そんなことしても、パワーとスピードの差は埋まらないんだぞ……」)
 相棒のウイングキャットに目配せするも、リーフの表情は重い。こうしている間にも、再び敵は自分との距離を詰めつつある。
 次に、あの蹴りを食らったら、そこで終わりだ。思わず目を瞑り覚悟を決めるリーフだったが、しかしそうはならなかった。
「……そこまでです!」
 フェイチャイの前に、突如として現れた拳法家の少女。幸・鳳琴(黄龍拳・e00039)が、肘を突き出すような構えで割って入り。
「大丈夫ですか、リーフさん! 助けに来ましたよ!」
 敵の足下に銃弾を撃ち込みつつ、ジェニファー・キッド(銃撃の聖乙女・e24304)も姿を現した。
「味方の増援アルか!? フッ……これは、面白くなってきたアルヨ」
 しかし、鳳琴とジェニファーが加わり、3人と1匹になったケルベロス達を見ても、フェイチャイは余裕の態度を崩さない。ともすれば、纏めて倒した方が手間が省けると言わんばかりの口調だったが、そんな彼女を称賛するかの如く、部屋の一角から小さな拍手が。
「いいねぇ、格闘型のダモクレスらしいよ。戦った相手のデータを蓄積するなんて」
「強い格闘家と闘って、より強い自分になる……。デウスエクスでさえなければ、ちょっと共感しちゃいそうになりますね」
 いつの間にか、廃ビルの壁に寄り掛かる形で、草薙・ひかり(往年の絶対女帝は輝きを失わず・e34295)と稲垣・晴香(伝説の後継者・e00734)が立っていた。
「でも、貴女は一つ、そして致命的な間違いを犯してます。それは、この私……『稲垣・晴香』という存在と対峙してこなかったことです!」
 そう、春香が叫ぶや否や、フェイチャイの瞳が大きく見開かれる。瞳孔の奥に備え付けられた、高性能メモリー。そこにインプットされたデータと晴香の顔を照合し、合点がいったように笑みを浮かべた。
「データ称号完了。異種族混合プロレスM.P.W.C所属、稲垣・晴香。格闘技界期待の、若手トップレスラー。これは、もしかしなくても、素晴らしい獲物が飛び込んで来たアルネ!」
 ケルベロスでもあるレスラーのデータが取得できるなど、こんな機会は滅多にない。全員纏めて、自分の肥やしにしてやると意気込むフェイチャイだったが、そこまで言われては黙っていられない。
「それじゃせっかくだから、この私、『絶対女王』ひかり様のデータも採ってみる? まぁ、貴女程度のキャパじゃ取り込み切れないと思うけどね!」
「……メモリ内に、該当データ有り。同じく、異種族混合プロレスM.P.W.C創設者にして最強の女王、草薙・ひかり。相手としては、申し分ないアル」
 互いに火花を散らす、ひかりとフェイチャイ。深夜の廃ビルを舞台に、ケルベロス達と謎の格闘家ダモクレスとの、人知れず行われる死闘の幕が開いた。

●恐怖! メタルレスラー量産計画!?
 死亡の廃ビルの最上階。そこで待ち構えていた拳法娘のダモクレスは、しかし同時に重度の拳法マニアでもあった。
 まあ、格闘家を殺してデータを収集している以上、それも無理のない話だろう。そして、そのデータの蓄積こそが、フェイチャイの武器でもあり、強さでもある。
「これ以上、好きにはさせません! 鳳琴、参ります!」
 大きく円を描くような動作で構える鳳琴だったが、それを見た瞬間、フェイチャイが距離を取った。鳳琴の使う拳法の種類、それを見切ってのことだった。
「アナタ、八極拳使うアルか? 確かに、接近戦では最強の格闘技アルネ。けど、その攻撃が届くのは、せいぜい腕の描く円の範囲ダケネ。遠距離からの攻撃には滅法弱いアルヨ」
「くっ……!」
 本格的に戦う前から、自分の弱点を見切られている。それでも、鳳琴は自分の使う拳法の型を崩すことなく、しかし体内に練った気を用いることで、それを拳の一突きと共に繰り出した。
「遠く離れていても、私の拳は届くんです!」
 変幻自在の、追跡する気弾。高速で動き回るフェイチャイに対しては有効な技だ。が、そこはフェイチャイとて格闘技を極めたダモクレス。気弾の一つや二つで、そう簡単に驚くはずもなく。
「甘いアル! 遠距離攻撃なら、ウチもできるアルネ!」
 左手に装着したナックルから電撃を放ち、鳳琴の気弾を相殺した。二つのエネルギーは空中で激突して周囲に飛び散り、真夜中のビルを煌々と照らす。
「……あれ? 敵がいないぞー!?」
 やがて、光が落ち着いたところで、周囲を見回してリーフが叫んだ。次の瞬間、何やら情報に嫌な気配を感じて視線を向けると、そこには高々と跳び上がったフェイチャイの姿があった。
「もらった! 奥義、大車輪旋風脚!!」
 片足を上げ、独楽のように回転したフェイチャイが、凄まじい風を纏いながら連続回し蹴りを繰り出して来た。否、これはもう、回し蹴りというレベルの代物ではない。超高速の回転は強烈なカマイタチを発生させ、フェイチャイの鋭い爪先と相俟って、回転鋸さながらの鋭さを誇る鋭利な凶器と化している。
「いかに強烈な攻撃でも、拳士とレスラーの壁だったら……」
 晴香やひかりと共に、敵の攻撃からリーフを守らんと前に出る鳳琴。防御を固めた彼女達であれば、確かにフェイチャイの蹴りにも耐えられたが。
「くぁっ!? この……くらいっ!」
 フェイチャイの蹴りは想像以上に鋭く、鳳琴の脇腹に突き刺さって血が滲んだ。それだけでなく、晴香やひかりのリングコスチュームさえも引き裂いて、彼女達の白い肌が鮮血に染まる形で露わになった。
「やってくれるじゃない。でも、この程度、ちょっとしたヒールレスラーなら嗜み程度よ!」
 胸元を押さえながら、晴香が立ち上がった。同じく、ひかりも肩口を庇いつつも、しかし脚はしっかりと床を踏み締めて。
「確かに凄いスピードだけど、その分、軽いね。そんなんじゃ、このアタシからダウンは取れないよ!」
 力強く仁王立ちすれば、その衝撃に合わせて彼女の胸も揺れる。もっとも、速さと攻撃力に特化したフェイチャイからすれば、ひかりや晴香の体型は、随分とナンセンスなものに映っていたようだ。
「フッ……強がり言ってられるのも、今の内だけアルヨ! アナタ達を倒してデータを奪った後は、それを使ってメタル晴香やロボひかりを、いくらでも量産できるアルネ!」
 自分が取得したデータは、やがてはダモクレス全体を強化するための糧となる。ドヤ顔で語るフェイチャイだったが、そのあまりに斜め上かつブッ飛んだ発想に、ケルベロス達は開いた口が塞がらなかった。
 というか、そもそもメタル晴香とかロボひかりってなんだよ。名前からして、どう考えてもパチ物だ。おまけに、どうやらメタルボディ全開な仕様らしく、本人に擬態させるつもりさえないようだ。
「ふざけないでください! ロボで格闘したいなら、電撃パンチとか稲妻蹴りとか、光る掌底で戦うロボを作ればいいんです!」
 あまりに酷過ぎる発想に、ジェニファーが怒りに任せて銃を連射する。どうも、代案として挙げたロボの必殺技が、どこかで聞いたことのあるような代物な気がするが、それはそれ。ジェニファーのロボに対する知識の大半は、ロボットアニメ由来なのだから仕方がない。
「甘いアル! ウチに飛び道具なんて、無粋アルヨ!!」
 迫り来る無数の銃弾を、フェイチャイが凄まじいスピードで腕を動かして受け止めつつ叫んだ。実際、彼女の言う通り、ジェニファーの放った弾丸は、悉くフェイチャイに受け止められてしまったが。
「「「隙あり! テェェェェェイ!!」」」
 晴香が、ひかりが、そしてリーフが、同時に床を蹴って飛び上がった。それに気付いたフェイチャイが迎撃せんと身構えるが、彼女が構え直すよりも先に、チビの投げたリングがフェイチャイの後頭部を直撃した。
「……んごっ!? なにするアルか、このクソ猫! 邪魔するなら、まずはオマエから……って、ぎゃぁぁぁぁっ!!」
 炸裂する、トリプルドロップキック。そりゃ、戦闘中に余所見をしていれば、そうなるだろう。
 コンクリートの壁をブチ抜いて、フェイチャイの身体は壁を隔てた反対側の部屋まで吹っ飛んで行った。並のデウスエクスなら、これだけで消滅していてもおかしくはなかったが。
「……やってくれたアルネ。もう、容赦はしないアル」
 瓦礫の中から立ち上がるフェイチャイ。機械の身体でありながら、その全身から放たれる凄まじい電撃は、まるで極限まで鍛え上げた格闘家の放つ、闘気そのものと言っても過言ではなかった。

●八極の奥義、四葉の意地!
 廃ビルでの激闘は続く。多対一の利点を生かして攻めるケルベロス達だったが、しかしフェイチャイは傷を負いながらも、今だに単発の技の威力ではケルベロス達を凌駕する。
「まったく、無駄にしぶとい連中アルネ……」
 防御を重視したケルベロス達の布陣には、フェイチャイも辟易しているようだった。が、俊敏に動く彼女を、護りに特化した戦い方で倒すのは難しい。仮に、一発当てたところで、火力が足りないのでは意味がない。
「これ以上は、長引くとこちらも危険ですね。……一気に攻めます!」
 もはや、耐えるだけでは勝機がないと察し、鳳琴が一気に距離を詰めた。だが、彼女の腕のリーチを計算済みのフェイチャイにとっては、攻撃を紙一重で避けることなど造作もなかった。
「このっ! このっ!!」
「無駄アルヨ。アナタの腕のリーチは計算済み。八極拳は、腕の届く範囲でしか攻撃を当てられないアル」
 立て続けに繰り出される肘と拳。その一発、一発が、全て強烈な威力を秘めているにも関わらず、しかしフェイチャイには当たらない。流れるような動きで鳳琴の攻撃を避け続け、フェイチャイはお返しとばかりに、至近距離から電撃を鳳琴の脇腹目掛けて叩き込んだ。
「あぁぁぁっ!!」
 絶縁体でさえ無効化する程の凄まじい電流が、鳳琴の身体を駆け廻る。おまけに、フェイチャイは間合いをしっかりと把握しており、反撃しようにも鳳琴の拳は届かない。
「チビ、鳳琴を助けるんだぞ! 早く!」
 見兼ねたリーフがチビに命じ、清浄なる風を送らせた。その効果により、微かに意識が戻った瞬間を、鳳琴は決して無駄にしなかった。
「見切りました……! ここ、だぁっ!」
 それは、本来の八極拳では決して用いられない脚の攻撃。遠距離での戦いに対して切り札として用いられる、鳳琴にとっての隠し玉。
「ぐっ……! ぬ、ぬかったアル! まさか、既に『長拳』を習得していたとは……」
 横薙ぎに払われた回し蹴りに吹き飛ばされ、フェイチャイの脚の関節が折れる音がした。その隙を、敵の機動力が落ちたところを逃さず、今度はひかりが一気に距離を詰めた。
「天から降りた女神の“断罪の斧”に、断ち切れないもの、打ち砕けないものなんて、存在しないよっ!!」
 炸裂する強烈なラリアット。胸の装甲が弾け飛んで火花を散らしたところで、今度は後ろから晴香が掴みかかり。
「プロレスの、プロレスラーの奥の深さ、最期に思い知らせてあげるわ!」
 そのまま、豪快にバックドロップで固い床へ叩きつける。その上で、ジェニファーが御業から炎を放ち、完膚なきまで焼き尽くした。
「最後は、お願いします! リーフさん!!」
「ぶっこわれろー! このエセチャイナーー!! ほあちゃー! ……あ、うつっちゃったぞー」
 丸焦げになったフェイチャイの頭目掛け、振り下ろされるリーフの脚。今度は、さすがに避けられない。
 岩をも砕く一撃はフェイチャイの頭部を正確に捕らえ、原形を留めない程に激しく破壊する。中枢である頭部を破壊されてしまっては、いかにダモクレスといえど、活動を続けることは不可能だった。
「なんとか、片付きましたね」
「ええ、無事で良かったです……」
 安堵の溜息を吐く鳳琴とジェニファー。その言葉に、額の汗を拭きつつリーフも笑顔で返した。
「本当にありがとー! 来てくれて助かったぞー!」
 これでもう、死亡の廃ビルなどという物騒な噂が立つこともなく、格闘家達が命を奪われることもないだろう。
「来世があるなら、もっとちゃんと格闘技を極めてほしいな」
「そうね。メタルなのは、ケルベロスカードだけで十分だわ」
 冥福を祈る、ひかりと晴香。彼女達の鳴らしたゴングの音が、夜の廃ビルに物悲しく響き渡った。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年8月3日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
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