金彩に薫る

作者:崎田航輝

 深い暗色の夜に、淡い月光だけが差している。
 静謐の中に漂う空気は冷たい肌触りで、何処か不可思議な感覚を与えた。
 何かが普通とは違うような。
 そんな心地を緩い風に感じて、セレスティン・ウィンディア(墓場のヘカテ・e00184)は宵の道で立ち止まっていた。
「ああ──」
 と、蒼の瞳を閉じる。
 それは予感だ、と思った。逢えないはずのものに出逢うという、直感にも似た感覚。
 セレスティンはゆっくりと視線を巡らせて、その確信を得る。
 風に交じって、仄かなロータスの香りがしていた。
 この芳香を自分は知っている。
 そう思って間もなく、夜の中に美しい影が舞い降りてきた。
 ふわりとセレスティンの前に現れたそれは、純白の翼を持ち、黄金の髪を揺蕩わせ。鮮やかな花を薫らせて、可憐なまでの印象を抱かせるひと──否、決してひとではなく。
 向日葵のように無邪気な微笑みで近づく、死神。
 じっと見つめるセレスティンに、爛漫な声音で言った。
「貴女に死んでほしいの」
 まるでそうなることが決まっているというかのような、濁りのない殺意。
 セレスティンの答えを聞く必要もないとばかりに。彼女は花を揺らめかせ、その鋭い矛先を向けてきた。

「セレスティン・ウィンディアさんがデウスエクスに襲撃されることが判りました」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロスへ説明を始めていた。
 予知された未来はまだ起こっていない、けれど一刻の猶予もないのが事実だという。
 セレスティンはすでに現場の道にいる状態。
 こちらからの連絡は繋がらず、敵出現を防ぐ事もできないため、一対一で戦闘が始まるところまでは覆しようがないだろう。
「それでも、今からセレスティンさんの元へ向かい加勢することは可能です」
 時間の遅れは多少出てしまうけれど、充分にその命を救うことはできる。だから皆さんの力を貸してください、と言った。
 現場は墓地にほど近い道。
 辺りは無人状態で、一般人の流入に関しては心配する必要はないだろう。
「皆さんはヘリオンで現場に到着後、戦闘に入ることに注力して下さい」
 周辺は静寂。セレスティンを発見することは難しくないはずだ。
「敵は死神のようです」
 如何なる狙いを持って襲ってきたかなど、詳細は不明な点が多い。ただ放置しておけばセレスティンの命が危険であることだけは確かだ。
 それでもセレスティンを無事に救い出し、この敵を撃破することも不可能ではない。
「ですから──さあ、急ぎましょう」


参加者
セレスティン・ウィンディア(墓場のヘカテ・e00184)
エニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)
シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)
清水・湖満(氷雨・e25983)
如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)

■リプレイ

●彩
 月夜でも眩く映える金色。そして可憐な睡蓮の花。
 セレスティン・ウィンディア(墓場のヘカテ・e00184)は始め、その変わらない姿を目にして立ちすくんでいた──けれど。
 それは悲嘆ではない。
 憐れみではない。増してや恐怖でもない。
 心にあるのは懐かしさと愛おしさと、ぞくぞくするほどの──驚きとあふれる喜び。
「やっと逢えたのね、フリージア」
 死神の無邪気な笑みに、セレスティンが返すのもまた少女の笑みだった。
「こういう形なら私達は両想いになれるわ。だって、私も……貴女に死んでほしいの」
 凄絶な色香を声に帯びると、自身もまた研がれた殺意を顕す。
 彼女は花咲く表情のまま試すように聞いた。
「私を殺すの?」
「ええ、だって、貴女が死んでから私は自分の気持に気づけたの。妹たちの誕生を喜べた、生きることに執着できた、すべてすべて、貴女が死んでくれたおかげなの」
 ふふ、と微笑んで。
 大好きよフリージア、と心から言って。
「だから愛おしい貴女、この手で殺してあげる」
 輝石で光る白鍵を握り、月色宿す水晶焔を揺蕩わす。
「ううん、貴女を殺すのは、私」
 すると死神もまた勝ち気に言って、花の刃を舞わせた。
 セレスティンは纏う月光で傷を塞ぐも、二撃、三撃。フリージアは激しく攻撃を重ね、セレスティンの命を奪い去ろうとした。
 が、次にフリージアが距離を詰めてこようとする、その直前。
 空に蒼き燐光が瞬き、爽風と共に光が駆け抜ける。
「セレスおねーちゃん、助けにきたよっ!」
 蒼翼装で煌きの軌跡を描く、シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)。宙を翔けるようにふわりと降り立ち、敵と姉の間に割って入っていた。
「シル……来てくれたのね」
「──私も、皆も。駆けつける友がいる」
 だからセレスティンは死なないさ、と。
 敵にも言ってもせながら、天光の瞳で見下ろすのはアンゼリカ・アーベントロート(黄金騎使・e09974)。
 空から光を注がすよう、金の光を纏って。死神が一瞬、シルとの間で視線を彷徨わせた隙に勇烈な蹴り下ろし。眩い衝撃で弾くよう後退させる。
 言葉に違わず、仲間達が彼方より駆けつけてきていた。
 フリージアはまあ、と驚きながら、それでも攻撃を止めようとはしない──が。
 そこに背筋を凍らす冷気が薫る。
 死神が見たのは、さらりと流れる艷やかなる漆黒。夜闇に紗の髪を靡かせて、風雅なすり足で踏み寄る清水・湖満(氷雨・e25983)。
 柔らかな仕草は然し、弱々しさを意味しない。鞘から滑らす刃に燦めく氷を着せて、『諸刃の譜』。冴え冴えとした斬閃で相手を押し留めた。
「貫くならこっちから。それとも、私には勝てない?」
 嫋やかな瞳に、いざなう色を見せて。その言葉にまさかと笑う死神は、湖満の挑発に乗り始める。
 この隙に、エニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)はセレスティンの元へと駆け寄っていた。
「助けに参りましたわよ! ご無事かしら!?」
「ええ。ありがとうね」
 応えるセレスティンはそれでも負傷が深い。故にエニーケは天より鮮やかな光を降ろし、そこへ慈愛の力を籠めて痛みを取り除いていく。
「これで少しは、楽になったはずですわ」
「じゃ、俺も手伝うぜ」
 にかりと笑んで、蒼空色の御業を生み出すのは日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)。招来した清廉な風を与えることで、癒やしながら破魔の力をも与えゆく。
 そこへひらりと翼で降り立った如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)は──隣り立つ源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)と視線を合わせていた。
「私達はしっかりと護りを固めましょう」
「了解だよ、沙耶さん」
 ──月の光の守護を。
 頷く瑠璃は、霊杖を握ると『太古の月・新月』の力を顕現。銀の光を降ろすことで淡い煌きを纏わせ皆への加護と成す。
 沙耶も月光を仄かに燦めく壁としてその場に留め、防護。セレスティンの傷も同時に癒やしきった。
 戦線が万全と見ると、さて、と瑠璃は死神へ向き直る。
「それで──セレスティンさんに何か御用かな?」
「殺すっていう、それだけのことよ」
 応える彼女の視線に、蒼眞は少し胡乱げだった。
「何だか凄い目で睨まれている気が……。逢瀬の邪魔でもしている気分だな……」
「逢瀬、ええ。その通り。貴方達は邪魔者ね」
 愉しげに、純粋に。フリージアは言って花を揺らめかせる。
 けれど、シルは首を降った。
「お話の邪魔するつもりはないよ。でもね」
 と、携えるのは竜の鱗の戦槌。握るには大きい程だが、シル用にカスタマイズされたそれは決して重くはない。
 むしろその力を発揮できることを喜んでいるように。星のように眩く輝いていた。
 シルは声音は真っ直ぐ、戦意は濁らずに。
「わたし、おねーちゃんが襲われてて──黙ってみていられるほど大人しくないからっ!」
 槌を正面に向けて、砲撃。
 流星の一撃で光の爆炎を上げさせ、敵を姉に近づけさせない。

●花
「そんなことで、私は退かないわ」
 返る声音は相も変わらず爛漫で、奔放な殺意に満ちる。
 光の晴れた中で、フリージアは未だセレスティンに底無き執着を見せていた。
「何か、事情有り気な様子ですね」
 その澄み切った戦意に、沙耶は思わないではいられない。
 ただ、エニーケは前髪に隠れた目元に飽き飽きした色を浮かべていた。
「少なくとも、傍から見る人にとってはストーカー案件に近いですわよね……」
 過去に経験した似た戦いも想起すれば、態度に表れるのは呆れでもある。
「この手のはいい加減撲滅してくれないかしら……」
「何にせよ、襲ってくるっていうのなら──守るだけだよ」
 セレスティンの妹達にとって姉の存在は必要で大事なものなのだと、瑠璃には判る気がするから。
 フリージアはただ、邪魔は排除するというように爛々と攻め込む、が。
「そちらがその気なら……こちらも殺す気満々でいきますから。頑張って勝ってくださいませね♪ クソストーカー」
 マスケットから弾丸を浴びせながら、エニーケが悠々ばら撒くのは毒舌の言葉。『ポイゾナスタング』──軽やかながら刺々しい罵りは、毛羽立たせるように心を抉る。
 それでも尚フリージアの戦意は健在。だが、セレスティンもそれを見て悦ばしげでもあった。
「あくまで、諦めない。私と同じね」
 幸せそうに笑んで。
「大好き、だから死んでほしい。フリージア、貴女もそうでしょう? 私を奪いたいのよね」
 ──あぁ、想われているってなんて幸せなの。
 だから存分に、死愛ましょう、と。
 次には幽き焔を以て死神と撃ち合いを始める。
 蒼眞は壮絶な余波に一歩たじろいだ。
「……狙われてるんだからさっさと下がって欲しいが……随分とまあ二人共愉しそうに戦っているし、聞こえなさそうだな」
 愛の形は人それぞれ、とは言うけど。
「流石によく分からないぞ……」
 セレスティンはふふ、と笑む。
 それでいいのよ、と。
「だって、これが私の、私達の愛の形ね」
 溺愛よりも狂愛。恍惚にさえなりながら、もっとその声を聞いていたいと思うから。
 焔に押された死神は、一度下がって間合いを取ろうとする。
 けれどそこへ吹く一陣の冷風があった。
 逃さぬように、横合いから跫音を聞かせて──靭やかに腕を振り上げる湖満だ。
「セレスティン。その死愛、助太刀するよ」
 寄り添うように、同時にそっと見守るように。穏やかな声を送りながら、敵へ向けるのは幾重にも凍気を抱いた氷雪の槌。
 麗しい仕草でも、繰り出すのは的確な痛打。氷晶を弾けさせながら、死神の全身を寒風に蝕んで鈍らせた。
 この力を貸すからと、言ってみせるように。
「ありがとう、ね」
 瞳細めるセレスティンが、戦いを続ければ──アンゼリカも加勢する。
 愛を込めて戦い抜くというのなら、自分も全力で支えてみせると。
「さあ、黄金騎使がお相手しよう」
 逃げず、退かず、惑わずに。
 月光を闇に差し込ませるよう、銃口から美しき煌きの線を描くと。それを真っ直ぐに飛ばして死神の翼を穿った。
 そこへ真紅のバンダナを揺らせて降下してくるのが蒼眞。
 太陽機蹴落顕現──ヘリオンから蹴り落とされた過日の思い出を再現することで、自身の体を使った垂直の衝撃を喰らわせている。
「……っ」
 フリージアはふらつきながらも、反撃の花風を吹かせた。
 それは全てに向く殺意の刃の嵐。
 だが沙耶は決して、仲間を貫かせないと。翼から光のヴェールを生みながら、瑠璃と見合っている。
 沙耶は故郷の壊滅で婚約者の瑠璃と離れ離れになり、解放されるまで、図らずも他人を死地に送り込む役目を背負わされていた。
 姉同然の存在だった瑠衣を弔った事は今もずっと心に刻まれている。
 瑠璃もまた、実姉たる瑠衣のことを忘れたことはない。
 同時に、母代わりとも言える義姉に強い敬慕を抱くからこそ──そしてその思いを沙耶も理解しているからこそ。二人は姉という存在のかけがえのなさを知っている。
 だからセレスティンのことを、必ず守ると誓っていた。
「命は奪わせません。そして、無事に妹さん達の所へお帰り頂きませんと」
 輝きが皆を癒やすと、それに頷く瑠璃も反撃。氷の渦巻く魔弾を放ち死神を吹き飛ばす。
 フリージアはすぐに羽ばたいて取って返そうとする、が。
「させないんだからっ!」
 そこへ舞い降りる蒼風の妖精。
 シルが翼意匠の白銀靴で空を滑り、流麗な蹴撃を叩き込んでいた。
 ふわっと緩く宙返りしながら、シルはまだまだ止まらず。六彩燦めく指輪から耀の剣を顕現させて、掬い上げるように弧の斬撃を見舞っていく。
 翼の一端を断ち切られながら、それでもフリージアはセレスティンを見ていた。
「強いわ。でも、私は殺さなければならないから」
「そう思ってくれるのは嬉しいけれど」
 と、言いつつもセレスティンも白炎を止めない。
 ──ねぇ気づいて、と。
「私が死んでいい理由なんてこれっぽっちもないのよ。そして、フリージアが死んでくれるとものすごく都合がいいの」
 貴女のことが好きだったと後悔したけれど。
 今はそう思える。
 だから幸せなの、と。
「大丈夫、貴女のその身すべて、私が奪ってあげるから……」
 あくまで愛を込めて、死神を突き崩していく。

●愛
 夜が少し深まって、翳る空は尚昏い。
 けれど褪せぬ金色を風に揺らして、死神は最期まで一途だった。
「殺し合えて嬉しいの。だから、貴女を殺すのは私じゃなければだめなのよ」
「……誰かを思えるというのは、それは幸せなこと」
 アンゼリカはふと呟く。
「それが命の奪い合いでも、間に愛があるなら尊重することだろうな」
 ──けれど。
「セレスティンには友が、家族がいる。生きていてくれないと、というやつだよ!」
 瞬間、前進すると黄金の装飾の施された鞘を握った。
「お見せしようか、月の振るう日輪の剣を」
 抜いた刃はシーザの形見たる美しき日光剣。大きく振り抜くと、鮮烈なる煌きを生んで。畏怖を覚えさせるその『凍れる光』で敵の心をも圧倒してしまう。
 フリージアは抗うように声を零す。
「彼女を、殺すの、私は……」
「ううん、死神さん、死ぬのはあなたの方」
 湖満は仄かに首を振りながら、厳寒の空気を手元に纏い。歩み寄っての居合から、刀の一閃を加えて死神を断っていく。
 花は散る時こそ美しいもの。
「──あなたはどんな風に散るのかな」
「……っ」
 見送る言葉にも、死神は苦悶しか返せない。
 その隙を逃さずに瑠璃は疾駆。正面から立ち向かい、煌びやかな武術棍で一撃。苛烈なる刺突を繰り出し体を貫く。
「さあ、今のうちに」
「ええ」
 エニーケも躊躇も容赦もなく、地裂竜鱗砲槌の先端部の爪を開放。強烈な反動で砲弾を撃ち出し爆裂する衝撃で死神を包んだ。
 噴煙の中でもフリージアはセレスティンに打突を喰らわす、けれど直後には沙耶が静謐の月光を与えてその傷を癒やしていた。
「引き続き治療は私が。皆さんは、最後まで攻撃を」
「ああ、任せろ!」
 蒼眞は斬霊刀を抜き、刃を風で覆って連撃。斬線を踊らせながら、それでも女性だからと顔だけは傷つけずに命を削っていく。
 花の残滓のような、不思議な色の血煙を散らせながら、フリージアは前進を止めない。ただセレスティンを求めるように。
「私は、貴女を……」
「おねーちゃんを、連れて行かせるなんてゆるさない。これ以上傷つけることなんて、させないからっ」
 故にシルは立ちはだかって、背中に守る。
「おねーちゃんは、わたし達と幸せに暮らしてるんだから……だから、止めさせてもらうっ!!」
 一度、左手薬指のプロミスリングにそっと触れて。
(「……大切なあの子との大切な約束。だから、こんなところで止まってられないっ!」)
 ──闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ。
 ──母なる大地よ、暁と宵を告げる光と闇よ。
 ──六芒に集いて、全てを撃ち抜きし力となれっ!
 背に魔力翼を光らせながら、閃かすのは『六芒精霊収束砲』。プリズムの煌きを伴う光線を浴びて身を裂かれかけた死神は、堪らず横へ逸れるが──。
「おねーちゃん、任せたよっ! 思い、しっかり伝えてねっ!」
「……ええ」
 セレスティンがそっと応えている。
 湖満も細腕を伸ばし、その肩を押して前へ送り出していた。
「決着をつけておいで」
 ありがとう、と笑んだセレスティンは、祈りと共に自身の存在を闇に溶かして。
 人の姿さえ失う力を以て、白く鋭い骨をありったけ彼女めがけて打ち込んだ。
 砕かれ、朽ちていく死神の体。
 最後は自身の姿になって、セレスティンは消えゆく彼女を優しく抱きしめた。
「さようなら」
 ──死してなお、永遠にあなただけをアイシテル。
 そっと口吻て。
 いつまでも変わらぬ愛を伝えて。彼女の笑顔を見ながら、セレスティンは最後の骨でその命を打ち砕いた。

 いつしか月の光が明るくなって、眩しい程になっていた。
 セレスティンは仰ぎながら、表情を穏やかにして。そして視線を戻して振り返っていた。
 シルはそんな姉を笑顔で迎える。
「お帰り」
「──ただいま。ありがとうね」
 瞳を細めてセレスティンは返す。それから皆も、と礼を言った。
 納刀して息を一つついたアンゼリカは、安堵を覚えたように頷く。
「大丈夫そうでよかった」
「そうですわね。皆さんもお怪我はございませんわね?」
 エニーケの声に皆が肯定を返すと、蒼眞は景観を見回して言った。
「それじゃ、帰ろうか」
「うん。行こうか、沙耶さん」
「ええ」
 瑠璃も沙耶と共に歩み出す。
 静寂の中、湖満は墓地の前で足を止めて──そこに眠るいのちに、祈りを捧げた。
「うるさくしてしまってごめんなさい」
 もう大丈夫、と。
 そっと唇に囁かせて。あとはゆっくりと夜に帰っていく。
 セレスティンも歩みながら……一度だけ、花の残り香を感じるように立ち止まって。それからまた自分を呼ぶシルと共に、歩を再開した。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年7月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 0
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