自称天才竜軍師の襲撃作戦

作者:なちゅい


 頻発するデウスエクスの襲来。
 とりわけ、最近は宿敵なる存在が現れる頻度が高まっている。
 白いマフラーを弾ませて歩く中性的な外見の兎のウェアライダー、因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)。少年少女のような見た目だが、これでも成人済みである。
 遊び惚けていたのか、彼なりにデウスエクスの動きを調べていたのか。
 その辺りは当人でないと分からないが、白兎はやや楽しげに街をふらふらと歩いていたようである。

 そんな中、白兎は気づくと、いつの間にか路地を歩いていた。
「これは……」
 以前にも似た状況の経験があった彼は、すぐに周囲へと視線を向ける。
 殺気を感じた白兎が飛び退くと、鞭のようになった九尾扇が叩きつけられてきて。
「外しましたか。まあ、いいでしょう」
 襲撃してきたのは、薄紫色の長い髪をポニーテールにし、一際大きな胸が目を引く女性。
 竜の角と翼を持つ彼女は、どうやらドラグナーのようである。
「ようやく、騙し討の天才たる私の本領が発揮できそうですね」
 彼女は、天才竜軍師シェラスカと名乗る。どうやら、その二つ名は自称らしいが、今は白兎1人でデウスエクスと対している状況に変わりはない。
「残念だけど、きっと仲間が来てくれるよ」
 白兎は仲間が駆け付けてくるまでの間、なんとか凌ぐ方法をあれこれと考えるのだった。


 デウスエクスの襲撃に遭うケルベロスがまた1人、予見された。
「今回の被害者は、因幡・白兎だね」
 ヘリポートでは、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が事件についての説明を集まったケルベロス達へと行っている。
 なお、その当事者である白兎の姿はこの場にない。
 連絡も取れない状況となっていることから、すでにデウスエクスから襲撃を受けている可能性もある。
「現場に急いで向かって、彼の救援に当たってほしいんだ」

 夜、街の裏路地で白兎を襲撃してくるのはドラグナー、自称天才竜軍師・シェラスカだ。
 ドラゴンのゲートが無くなった今、地球に残された残存勢力と思われる。
「それだけに、成果を上げようと焦っているのは間違いないようだね」
 なぜ、白兎に狙いをつけたかまでは不明だが、夜更けに街をうろついていた彼を路地裏へと誘い込み、襲撃してくるのは間違いない。
 すでに、シェラスカは路地裏の人払いを行うなど、万全の準備をして襲ってくるようだ。
「ただ、ケルベロスとしても一般人を考慮しないで済む分、スムーズに敵の対応に当たることができるはずだよ」
 現場到着時には、白兎はシェラスカと交戦している状況だ。
 すぐ彼を支援して、このドラグナーを討伐したい。

 一通り説明したリーゼリットが手早くヘリオンの離陸準備を進める間、救援に向かうケルベロス達が顔を合わせる。
「ドラグナーか。後々を考えれば叩いておきたい相手ではあるな」
 雛形・リュエン(流しのオラトリオ・en0041)のそんな意見に対し、参加を決めたメンバー達があれこれと意見を口にしている間にヘリオンの離陸準備も整って。
「お待たせ。それじゃ行こうか」
 リーゼリットはケルベロス達の状態を確認し、準備の整った物からヘリオン内へと案内していくのだった。


参加者
六連星・こすも(ころす系お嬢さん・e02758)
因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)
エール・インハーバー(レボリューションオイルキング・e11860)
神宮・翼(聖翼光震・e15906)
雑賀・真也(英雄を演じる無銘の偽者・e36613)
 

■リプレイ


 夜の街を行くケルベロス達。
 現場へと急ぐ一行に、合流してくる赤茶色の髪のドワーフの青年が1人。
「ジビエがとうとう検挙されたと聞いて!」
 石油王になりたいと常日頃から語るエール・インハーバー(レボリューションオイルキング・e11860)が叫ぶ。
「おっぱいダイブ罪で裁かれて辱めを受けるぐらいなら、いっそ仲間の俺が捌いて調理してやったほうが……違うの?」
 真顔でこの場の仲間達へと問いかけていたエール。
 よくよく話を聞いてみると……。
「なんだ、ただのジビエの宿敵(=セクハラの被害者)か」
 緊張感の欠片もなく、エールは嘆息する。
「ジビエのことだから、『巨乳の宿敵出現=ゲスいセクハラチャンス!』……って、思ってるんだろーなー」
 見た目競泳水着な装騎兵のスーツを着用したスレンダー少女、六連星・こすも(ころす系お嬢さん・e02758)もまた宿敵主のことをあまり心配した素振りもなく語る。
 なお、ジビエというのはフランス語で食肉のことであり、とある旅団における宿敵主の愛称である。
「ジビエには、あたしが宿敵の襲われたとき助けて…………あれ? なんでだろう? いい思い出として蘇ってこない……」
 一体、こすもに何かあったのか。気になる人は彼女の報告書を読めばきっと胸がすっきりするかもしれないし、そうならないかもしれない。
 この場にいないはずの宿敵主から、「ジビエじゃないよ!」という叫びが発せられてはいるが、きっと彼らには届いていない。
「……てゆーか、すでに絵ができてるのがゲスいと思いますッ!」
 今回の宿敵がクローズアップされているイラストができているとかなんとか。きっと、宿敵主のマイページで確認できることだろう。
「ツッコミが追いつかねええええええ!!」
 ちょいちょいメタなことを吹き込んでくれているのは、赤髪の少年、ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)だが、きっと彼が来なければ、皆ボケ倒しで全く先に進まなかったので、非常に助かる存在である。
「……初対面がこんなんで、ひたすらごめん」
「いや、まあ、こういう関係もあるのだろう」
 エールの謝罪を受けた雛形・リュエン(流しのオラトリオ・en0041)は思わず苦笑してしまう。
 彼もこのノリについていくことができずにいたのだろう。
「白兎さんを護りませんと」
 彼は遊び心あり、愉快で時に痛烈な少年……いや、20歳になったらしいので、青年というべきか。
 口回りに短く揃えたつけ髭を付けた、イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)が宿敵邂逅らしいまともな一言を発してくれる。
 全く話が先に進まなかったので、イッパイアッテナには感謝の意を評したい。
「敵は最早、倒すのが救いだろうか」
「自分で軍師を名乗る人ほど、不測の事態に弱いのよねー」
 イッパイアッテナの一言に、スタイルの良い体を弾ませる神宮・翼(聖翼光震・e15906)が今回の宿敵の攻略法について推測する。
 理詰めの相手であれば、カオスなノリでひっかき回してペースを乱してパワーダウンできるとではというのが翼の狙いだ。
 救出に向かうメンバーがこんな状況だが、果たしてどんな救出劇となるのだろうか。


 現場となる路地裏。
 鞭のようになった九尾扇を叩きつけてきたのはドラグナーの女性、自称天才竜軍師シェラスカだ。
「外しましたか。まあ、いいでしょう」
 はち切れそうなほど、大きな胸が目を引く女性である。
「チョット待ってよ! その胸、今まで見覚えがないんだけど、僕がキミに何かしたっけ!」
 さすがに襲われれば、忘れない容姿だと因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)も考えている。
 面識も何もないのは、間違いないだろう。それは、シェラスカとて認めるところ。
「悪名高いケルベロスをただ、仕留めに来ただけのことです」
 敵にとっても、これまで多数の竜牙兵やオークの襲撃を防いでいたケルベロスの1人という認識だ。
 もっとも、それはすぐに白兎の行為によって塗り替えられることとなるのだが……。
 白兎は1人で狙われているこの状況は始めてではなく、きっと仲間達が駆け付けてくれると信じて時間を稼がねばと考える。
 その間にも、体は勝手に敵の方へと飛び込んでいて。おっぱいが大きい相手だからね、仕方ないね。
 そのたわわな胸へと飛び込んだ白兎は、これでもかとその胸に顔を埋めようとする。
「ハッ、いつの間に!」
 これぞ、ゲス兎の本能。頭の片隅でおっぱいダイブしたいと考えた時にはすでに行動は終わっているのである。
「うん、やっぱり、この胸は初めて会う胸だ」
「不埒な……!」
 シェラスカは動きを拘束されることとなるが、竜の幻影を発して白兎を引き剥がそうとする。
 しかし、彼がそう簡単におっぱいから顔を離すはずもなく、しつこく食らいついていく。
 そこへ駆けつけてきたケルベロス達は、その光景に唖然としてしまって。
「――おっぱいダイブ!? なんて大胆な!?」
 夜目を利かせて駆け付けたイッパイアッテナが叫ぶ。
 続いて現れた翼は、ミニスカ婦人警官姿のコスプレで颯爽と参上して。
「はーい、うさ耳ショタが巨乳お姉さんに路地裏に連れ込まれたと聞いてやってきました♪」
 見た目はまだ少年にしか見えない白兎が成人済みなのは、先ほども説明した通り。
 ケルベロスの登場に、シェラスカの表情が曇る中、翼は手にするデジカメを回し続ける。
「さあ、続けてどうぞ……あれ?」
 その場は、大きなお胸のお姉さんに、少年が顔を埋めているようにしか見えない。
 不穏な空気を感じ、首を捻った翼はまぁと手を口元に当てて。
「もしかして、白兎くんってそういうプレイが好みなの?」
「うちの白兎がまた何か迷惑かけたのか?」
 ロディは半ば呆れながらも、開口一番シェラスカに向かってこう言い放つ。
「セクハラとか、勝手にあんたの薄い本出されたとか。だとしたらオレの方からもきつく注意しとくから」
 今なお大きな胸にしがみつこうとする彼を引き剥がそうとしつつ、ロディはシェラスカへと頭を下げる。
「なんで、薄い本のことを知っているのですか……!」
 それはきっと、先にイラストが完成したからだと思われるが、それはそれ。
「しかし、でっかい……」
 相手の爆乳を目にしたこすもは、自らの胸元へと目を落とす。
 アクセサリーとしても所持する『ふんわり衝撃吸収パッド』を装備してなお、敵にかなう気が全くしない彼女。
「いえ、これは衝撃を吸収するためのものですから! あくまで!」
 こすもの目から光る何かが見えたのは、きっと気のせいではないだろう。
「そこの今にも石油の零れそうな、豊かな鉱山の持ち主のお嬢さん」
 エールの視点ではそう見えるらしいが、決してあの山は硬いどころか物凄く柔らかいのは間違いない。
「うちの大事な非常食を返してもらおうか」
 さらに告げるエール。目の前の光景はどう見ても、シェラスカの胸から白兎が離れようとしない状況である。
「確かに味見したい気持ちは分かるけど、炭火で焼いて塩胡椒でいただきたいけど、俺だって我慢してんだからな!」
「ジビエじゃないってば!」
 本人は否定するが、残念ながら、エールにとっての白兎の認識はまさしくジビエであり、食材である。
「いいから早く、この不埒者を離しなさい!」
「あー、その。なんつーか……ごめんな」
 そこで、ロディもさすがに仲間達の好き放題ぶりが目に余ったのか、白兎を引き剥がして謝る。
 そこに駆け付けてきた偽者を自称する青髪の青年、雑賀・真也(英雄を演じる無銘の偽者・e36613)が敵を見て。
「おや? 軍師タイプのドラグナーか。これは珍しい」
 敵として出会わなければ、是非とも軍略を1回ご教授してもらいたかったと真也は本音を語るが、敵である以上はと武器を召喚して構えを見せた。
 ようやく、戦闘らしい雰囲気になったところで。
「リュエンさん、守りを固めましょう」
「了解した。支援に回ろう」
 イッパイアッテナが前に出て身構えると、リュエンは頷いてギターを構えていた。
「可愛そうだけど、それでもデウスエクスを見逃す訳にはいかない」
「憐れみの視線を向けないで貰いましょうか……!」
 怒りを向けてくるシェラスカの様子に、さすがにロディも仲間達の振る舞いが気になったようで。
「つか、自重しろお前ら!? ……さておき」
 ようやく、戦う空気になった両者。
「敵として会ってしまったのが運の尽き。悪いが、倒させてもらうぞ」
「させませんよ。騙し討の天才たる私の本領、見せてあげましょう」
 九尾扇を煽ぐシェラスカは気を取り直し、ケルベロスへと襲い掛かってきたのである。


 この場の空気に調子を狂わされっぱなしだった軍師、シェラスカ。
 自らに幻影を纏わせた敵は不敵に微笑む。
「さあ、今度こそ覚悟してもらいましょう」
 シェラスカが本格的な行動へと移る前に、イッパイアッテナは『相箱のザラキ』をかぶりつかせて動きを抑えようとし、イッパイアッテナ本人は白兎が受けた傷の回復へと当たる。
 状況的に、白兎が襲われていた状況は変わらない。
 それもあって、イッパイアッテナは全力で彼を護ろうと救護への意気込みを漲らせる。
 ロディも路地裏の壁を蹴りつつ高く跳び上がり、流星の蹴りをシェラスカへと叩きこんでいく。
 先ほどまでボケ倒していた翼も戦闘は真面目に立ち回るが、いつもいっしょのロディに笑いかけつつもファミリアーを飛ばし、シェラスカを牽制する。
 なんだかんだで、ロディと翼が息の合った掛け合いを行うところはさすがと言うべきだろう。
 リュエンも呆れてはいたが、しっかりと戦闘は真面目に立ち回る彼らに感心し、ギターの音色を響かせる。
「走れ! 振り返らずに 脇目も振らず逃げ続けろ」
 その歌は、この場のメンバー達を奮起させ、前線メンバーを賦活していく。
 白兎も一歩後退し、カマキリブレイドを振るって仲間のつけた傷を抉っていたようだ。
「しかし、自称とはいえ、軍師がここで打って出るとはらしくないな」
 仲間の支援を受け、仕掛ける真也がそこで、シェラスカへと尋ねる。
「大人しく時を待って、力を蓄えた方が賢明だったのではないのかね?」
「生憎、ゲートがなくなった現状では、そうも言っていられないのですよ」
 移動すらも満足にままならぬドラゴン勢力。彼女達も静観していられるほど余裕がある状況にはないらしい。
「ま、どちらにしても、出てきたのなら叩くまでだ」
 精々、悔いなく策を出し尽くすといいと、真也はやや相手を煽りながらも、夫婦双剣で深く傷口を広げていく。
 同じく、前線で戦うこすも。
 彼女が気になるのは、敵は動く度に弾むお胸である。
「どうしたら、そんなに大きく育つんですか?」
 やっぱり、身体を鍛え、ビタミンをとり、神に祈っているのかと、ものすごく真剣に問いただす。
 そんな態度の彼女にシェラスカは嘲笑してみせて。
「さあ、気にしたこともないですね」
 すると、こすもは無表情のまま、アームドフォートの主砲を一斉発射させていく。
 背後からは自由なるもののオーラを纏ったエールが仕掛けて、短期間で倒そうと高速で回転しながら体当たりを浴びせかけていく。
「俺ってば石油王(予定)だから、ちょっと発掘に挑戦してるだけです」
 自信満々なエールがシェラスカへと告げる。
 一方の天才竜軍師はここまで大きな動きを見せないが、敵は何かを考えて口元を吊り上げていたのだった。


 襲撃してきたデウスエクス、自称天才竜軍師シェラスカ。
 単身で襲ってきた為か、その軍師たる手腕を発揮するのは難しいと、ケルベロス達は攻勢を強める。
 確かに、襲撃した相手は白兎だ。
 しかしながら、シェラスカにとってはケルベロスを倒して戦功が挙げられるならば、誰でもよいという考えがある。
 だからこそ、こすもは気づくことなく、やや踏み入りすぎてしまったのだろう。
「恨みはないんです。そこのゲス兎を襲撃とかも。でも……」
 ガラス玉のような目で仕掛けるこすもは、光の粒子を花のような形に展開させて。
「巨乳死すべし」
 無数の光弾として、敵に降り注がせる。
 だが、それに耐えきったシェラスカは竜の幻影を発し、こすもへと浴びせかける。
 自らの胸をダシに引きつけられていたことを、こすもが気づいた時にはもう遅い。
「げぇっ! これも天才軍師の策略!?」
 これ見よがしに揺れる胸に注意を引きつけられつつも、こすもはその身を炎で焦がして崩れ落ちてしまう。
 回復が間に合わず、歯痒い思いをするイッパイアッテナ。
 これ以上仲間が倒れぬようにと、彼は黄金の果実を煌めかせ、仲間達を光で包み込んでいく。
「もし願うのなら 願うのなら 引き金を引いてみせてよ……♪」
 リュエンも必死に弾き語りし、仲間達を援護する。
 軍師として策略はあまりみせないシェラスカだったが、それ以上に力量の高さを見せつけていたようだ。
 敵が纏う幻影はロディが自らのグラビティ・チェインを破壊力に変え、リボルバー銃『ファイヤーボルト』から銃弾を浴びせかけていく。
「もうボケはいらないぞ!」
 ロディは攻撃しながら、仲間達へと告げる。
 というか、7人にリュエンという編成の依頼にも拘わらず、文字数足らなくなるので、本当勘弁してくださいという声が何処からか聞こえてきそうだ。
「……まずいですね」
 いくら軍師とはいえ、自身だけでできる作戦など限界がある。
 相手はうまく路地裏を立ち回り、ケルベロスを攻め立てていたが、その後は積極的に庇いに当たるミミック、ザラキを鞭で叩きつけて霧散させたのが精いっぱい。
 シェラスカはケルベロス達に取り囲まれ、一気に攻め立てられることとなる。
 再度、エールが回転しながら攻め立てると、シェラスカの服が破けていく。
「おおっ!」
 それに反応する白兎を間違えてシュートしそうになった翼をロディが抑えると、翼は舌を出しつつトラウマボールを放っていく。
「さてと、軍師さん。命乞いの準備は出来たか?」
 弱ってきていたシェラスカへと真也が近づき、殺気を当ててその背後へと回る。
 貫手を放つ真也は敵の体内の動脈1本を掴み、握り潰す。
「きゃああっ!!」
「悪いな。元少年兵の俺は、あいつらほど……甘くはない」
 真也はそのまま身を引くと、彼の視線を受けた白兎が飛び込む。
「……私が悪かったです」
 見るからに打算たっぷりな態度で、シェラスカが命乞いをしてくると、白兎はうんと頷いて。
「お姉さんナイスバディだし、殺すのはもったいないと思うんだよなあ」
 相手の油断を誘ったところで、彼はシェラスカが小さく笑ったのを見逃さない。
「でもね、やりたくないことをやらなくちゃいけないのが大人だし」
 20歳になって程ない白兎。
 その責任を認識する彼は、チェーンソー剣を唸らせて。
「だから、理解してくれると嬉しいな」
 躊躇なく、その身を切り裂いてしまう。
「あ、あぁ……」
 目から光を失って倒れるシェラスカへ、エールが告げる。
「来世はセクハラのない世界に生まれて、タピオカチャレンジしろよ」
 そんで、うちの痴なんたらに、バストをわけてくれとエールが訴えると、傷を負ったこすもが身を起こしながらも、「くっ」と顔を背けていたのだった。


 なんとか、ケルベロス達は襲撃してきたドラグナー、シェラスカを撃破して。
「やれやれ……味方だったら、その軍師としての才を大いに役に立てられただろうに。残念だよ」
 色々と恵まれない環境にあった敵に、真也は憐れみすら見せる。
 一方で、仲間達は白兎へと冷めた視線を向けていて。
「ジビエ、今度は通報されないように上手くやれよ」
 エールはそう言うが、襲われていたのは白兎である。念の為。
「……で、何やったら、お前そんなに恨み買うんだ?」
 ロディが尋ねるが、単にドラゴン勢力の依頼に出ていただけと白兎は説明しても納得してもらえなかったようである。
 それはそれとして、白兎も助けてもらったこともあり、この場のメンバー達に一応感謝の意を示して。
「助けてもらったお礼に、何か奢ろうとは思うけど」
「いいのか? お前の財布が危なくなるかもしれんぞ」
 真也がそこで、真顔で白兎へと問いかける。
 路地裏や、大怪我を負って倒れていたこすものヒールに当たっていたイッパイアッテナやリュエンは、何をご馳走してくれるとかと楽しみにしていた様子。
「そんなことしなくても、食材的な意味で自腹を切ってくれれば……」
「兎鍋とかはダメだからね」
 エールの提案を、普段から食材呼ばわりされている白兎は即座に却下した。
 翼がそんな仲間達を微笑ましげに見つめて。
「お腹空いちゃったし、みんなで深夜営業のファミレス行かない?」
 無難な落としどころということで、メンバー達は翼に同意し、近場で開いている店へと向かっていったのだった。

作者:なちゅい 重傷:六連星・こすも(ころす系お嬢さん・e02758) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年6月30日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
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