大阪市街戦~異種族の女の屈服を

作者:なちゅい


 大阪府大阪市。
 大阪城が攻性植物に侵略されて久しいが、やがてエインヘリアルが現れるようになり、さらに様々な勢力が姿を現し始めていたのは、大阪城に多種族の勢力が集まってきていることに起因している。
 エインヘリアル配下、妖精8種族の1つシャイターンもそうだ。
「ぐわーっはっはっはっはあ!」
 そいつは、炎が燻る肌を呪符の様なもので顔から上半身を覆う。
 彼の名は、『獄熱のウコバク』。
 炎と略奪を司ると言われるシャイターンだが、そいつもやはり炎を操ることは得意らしく、己の体から噴き出す炎で、大阪の街を燃やしていく。
「燃えろ燃えろ、燃えてしまえ!!」
 一通り視界の全てに火をつけたウコバクは大きく頷き、タールの翼で羽ばたいていく。
 その最中、そいつは逃げ出す女性の姿を見つけて。
「ほう、これはいい獲物を見つけたな」
 降り立った先には、逃げ遅れた女子高生の姿。
 ウコバクは有無を言わさず、彼女へと殴り掛かっていく。
「おい、俺に跪け」
「ひいっ……」
 女子高生は逃げようとするが、ウコバクが追う。
「跪けっつってんだろ!」
「い、嫌や……!」
 抵抗する女子高生。しかし、ウコバクは強引にその頭を下げさせてしまう。
「嫌、いやああっ……!」
「ったく、始めっからそうしてりゃいいんだよ……!」
 強引に女子高生を地面に這いつくばらせ、そいつは満足げに頷くのだった。


 ヘリポートにて。
 現状、大阪市近辺では、ケルベロス達が有志で調査を行っている。
「今、大阪城は多数の種族のるつぼとなっているよ」
 リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)は、そう語り出す。
 攻性植物のゲートがある大阪城には、エインヘリアル、ダモクレス、螺旋忍軍、ドリームイーター、ドラゴンら、様々なデウスエクス達が集結している。
 彼らはその多彩な戦力を背景とし、大阪城周辺地域の制圧を行うべく、大阪市街地への襲撃を行おうとしているようだ。
 今回は、エクレール・トーテンタンツ(煌剣の雷電皇帝アステリオス・e24538)の調査もあり、それが判明した。
 軍勢では無く、単体のデウスエクスによる襲撃事件ではある。
「それでも、大阪市街の住民達に不安が広がってしまうのは避けられないよ」
 そうなれば、大阪城周辺地域の住民の多くが避難し、無人となった地域がデウスエクスに制圧されていく事になってしまう。
 それを阻止する為には、この襲撃を被害を出さずに防ぎきる必要がある。

「現れるのはシャイターン、獄熱のウコバクだね」
 炎を燻らせた身体を呪符の様なもので覆う男で、グラビティも炎をメインとして使用してくる。戦闘はジャマーとして行動するようだ。
 また、女性を……とりわけ異種族の女性を力で屈服させることに至上の喜びを見出す外道だ。
 今回も地球人の女性を優先的に狙っているものと思われるので、出来る限り大阪市民を守りたいところ。
「とはいえ、大阪市内の街中に出てくる相手だからね。『市民の被害を完全に抑える事は難しい』よ」
 それでも、大阪市民もケルベロスの助けが来るだけでも希望を持ってくれる。
 作戦次第ではあるが、よほど大きい被害が起きない状況であれば、多少は割り切ってこのシャイターンの撃破に当たっていいかもしれない。

 一通り説明を終えたリーゼリットはさらに続けて。
「いずれは、攻性植物との決戦も避けられないだろうけれど、今は防衛に徹して、これ以上敵の勢力が拡大するのを防ぐことが重要だね」
 大阪市民を護り、敵の野望を打ち砕いてほしいと、リーゼリットは説明を締めたのだった。


参加者
青葉・幽(ロットアウト・e00321)
キルシュトルテ・クランベリー(雷光の比翼・e23543)
ファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)
アビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467)
アンナ・トーデストリープ(煌剣の門・e24510)
エクレール・トーテンタンツ(煌剣の雷電皇帝アステリオス・e24538)
ランサー・ファルケン(正義を重んじる騎士・e36647)
星乃宮・紫(スターパープル・e42472)

■リプレイ


 大阪府大阪市。
 敵の襲撃もあり、市街地にケルベロス達の声が響く。
「ケルベロスよ。早く避難を」
 青葉・幽(ロットアウト・e00321)は名乗りを上げ、隣人力を働かせつつ避難を呼びかける。
 傍では、アビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467)が警察と連絡をとり、避難を要請していた。
 大阪の街はデウスエクスの襲撃を受け続けて久しい。警察隊もすぐ出動できる態勢を整えているのだろう。
「そこの街行く可愛い子羊さん?」
 予知で見たと思われる女子高生に、アンナ・トーデストリープ(煌剣の門・e24510)が呼びかける。
「運命の相手はきっと紫のシスター。うふふ、一緒に路地裏で……」
「いや、危ないで、はよ逃げな」
 思った以上に冷静な女子高生の言葉に、アンナは少し残念そうな仕草で応えて。
「あ、はい、敵ですか。ほら、早くお逃げなさい」
 自称、敬虔で貞淑なシスターな彼女は自らの怯えを抑えつつ、悪鬼から女性を救うべく避難を呼びかける。
 キルシュトルテ・クランベリー(雷光の比翼・e23543)も時にラブフェロモンも使い、市民の避難に当たっていたが……。
「……来たわね」
 避難を進めながらも、キルシュトルテも敵の元へと急ぐことにしていた。

「ぐわーっはっはっはっはあ!」
 汚らしい笑い声を上げ、大阪の街に降り立ってきたのは、燃える体を呪符で覆うシャイターン、『獄熱のウコバク』だ。
 一般人が悲鳴を上げて逃げる街中で、そいつは紫色の服を纏うシスターを発見する。
「ほう」
 降り立ってくるシャイターンから逃げようとして、捕えられる一般人と思しきシスター。
「おい、俺に跪け」
「よよよ」
 シスターは涙しながらもか弱いアピールし、シャイターンには逆らえぬといった反応を見せるが……。
「……お前、普通の地球人じゃないな?」
 ケルベロスと同様、デウスエクスもグラビティを介して命中率など能力的なものは確認できてしまう。
「まあ、跪いてもらうのは変わらんがな!」
 ウコバクは強引にシスター……アンナを蹴りつけ、その頭を下げさせようとするウコバク。
 彼女も人質となるべく、やむを得ずなすがまま頭を下げてしまう。
「ぐわっはっはっ、我が物になれ!」
 握りしめる拳を振り下ろそうとするウコバク。
 そこへ、一斉にケルベロス達が周囲から姿を現す。
「見つけたぞ、外道!」
 大声を上げ、敵を牽制するのはランサー・ファルケン(正義を重んじる騎士・e36647)だ。
「我が名はランサー・ファルケン。覚悟してもらおう!」
 そこで、ウコバクへと声をかけたランサーが自らの槍を構える。
 もう1人、名乗りを上げる少女が。
「危機ある所に輝く美しき紫の星! スターパープル見参!」
 ヒーロースーツを纏い、決めポーズをとる星乃宮・紫(スターパープル・e42472)が相手に向かって叫びかける。
「どこ向いてるの!? 私たちを恐れてるのかしら」
 挑発する紫だが、ウコバクは鼻で笑うだけだ。
「アンナ……!」
 その手前、ファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)がいち早く駆け付け、囮となったアンナを気遣う。
 そもそも、被害を減らすべく仲間が囮になるこの作戦に、ファルゼンは反対だった。
 意見対立によって仲間と不和になることを懸念して主張しなかったが、ファルゼンは一般人を囮にした方が手っ取り早かったのではとすら考えていた程だ。
 多少不満こそあるが、自らは守るのみ。
 ファルゼンはいち早く、アンナの守りに飛び出していく。
「くっ……、人質をとるとは……! これでは迂闊に手を出せぬか……!」
 ランサーは悔しそうな素振りをして槍の切っ先を下げ、紫も一旦大人しくして状況の好転を待つ素振りを見せた。
 その時、アビスが相手の隙を突いて飛び込んだつもりだったが、敵は荒れ狂う劫火を発してケルベロスを牽制してくる。
「茶番は終わりだ、ケルベロス……!」
 結果的には、敵へと奇襲をかけることはかなわなかった。
 それだけに、幽も攻撃は慎重にならざるを得ない。
 ただ、その分一般人が避難する時間は稼げている。
 キルシュトルテはキープアウトテープを周囲へと張り巡らせつつ、目の前のシャイターンへと憤りを見せる。
 それは、恋人であるエクレール・トーテンタンツ(煌剣の雷電皇帝アステリオス・e24538)にとって、因縁のある相手であるところが大きい。
「相も変わらず弱い者イジメに精を出す、下種な本性は変わらずか」
 ヴァルキュリアであるエクレールは仲間と共に、ウコバクを包囲していく。
「思う存分、貴様を屈服させてやるぞ……エクレール」
 ぐふふと含み笑いする敵に、エクレールは眉を顰める。
 同じく、幽もまた明らかに嫌悪感を示して。
「何なのコイツ。何でこんなのがレリと同じ大阪城に居るのよ」
 エインヘリアル第四王女レリとは、幽は刃と刃で語り合って来た因縁がある。
 レリが望んだ弱者の救済、そして、虐げられている女の子を救出したいという想いは本物だった。
 それだけに、幽は目の前のシャイターンの存在を許すことができない。
 敵の注意が仲間に向いている隙を突き、踏んづけてくるウコバクの足元からケイオスランサーで奇襲しようとするが、敵はそれを避けてみせた。
「やっぱり、企んでやがったか」
 アンナは奇襲に失敗したことを察し、ブラックスライムから溢れて中から立ち上がる死出の鎧を纏っていく。
 ウコバクがそのまま蹴り飛ばそうとしたのを、アンナは『尸剣ムリエル』で防ぐ。
「殺す」
 女の子が好きな彼女は、この女性の敵を確実に滅殺せねばならないと殺気を放つ。
「この外道! 私達はあなたに屈服なんてしないわ! 逆にこっちが屈服させてあげる! かかってきなさい!」
 挑発して、こちらに敵意を向けようとする紫。
 だが、敵はこの場の女性達ですら、屈服させる対象としか考えていない。
「うるさい連中だ。すぐに地面を這いつくばらせてやる」
 その力は本物だ。敵が燃え上がらせる炎に、ランサーは突撃するタイミングをはかれずにいる。
「これだから、シャイターンは嫌いなんだよね」
 やや冷めた態度で仲間と対するアビスだが、彼女は誰よりも前に出ようとして、そんな仲間達を護ろうと身構えて。
「……さっさと片付けるよ」
 目の前の下衆なシャイターンを倒すべく、仲間と共に立ち向かうのである。


 自らを取り囲むケルベロス達に、シャイターン、ウコバクは高笑いして。
「この俺を、片づける? 片腹痛いわ!」
 周囲へと劫火を飛ばすウコバク。
 すでに近場に一般人の姿はないが、ファルゼンは箱竜フレイヤと共にその炎が広がるのを食い止める。
 フレイヤに属性注入による癒しと耐性付与を任せつつ、ファルゼンは拳の上からオウガメタルと地獄の炎を纏い、力の限りウコバクを殴りつけていく。
「その程度? まあ、女相手にしか強気になれないお前の攻撃なんか大したことないと思ってたけどね」
 アビスは敵に辛辣な態度をとりつつも、箱竜コキュートスの属性注入と合わせ、仲間達の回復と護りの為に紙兵を撒いていく。
 これでしばらくは前線の仲間達を護ることができると、アビスは頷く。
 駆け巡る炎を堪えたアンナは『尸剣ムリエル』に降魔の力を籠め、ウコバクへと切りかかる。
 だが、敵も強靭な肉体を所持し、多少の傷では意に介する素振りすら見せない。
「そっくりそのまま、言葉を返してやるぞ!」
 常に上から目線のシャイターンに、幽は憤りを隠さない。
「こんなやつ、レリの望むアスガルドの姿には相応しくない」
 自らが認める好敵手、レリ王女の名誉の為に。
 敵ではあるが、その信ずる正義と信念は理解も共感もできる。
 だからこそ、コイツだけは許さないと敵意を燃やす。
 避難を完全に完了させるまではと、幽は怒りに任せて鉄塊剣で重い一撃を叩きつけていく。
 さらに、戦場を駆け巡る稲妻。
 それはランサーが繰り出した槍での一閃だ。
「どうだ、外道。我が槍の一撃は。騎士の誇りと正義の名の下に、お前を討たせてもらうぞ!」
 彼は長槍と短槍を起用に振り回し、改めて構えてみせた。
「女性を屈服させることに喜びを覚えるなんて、ろくでもない奴ね……」
 紫は力を高め、敵へと飛び込んでいく。
「このスターパープルが倒してあげるわ……!」
 彼女は悠然と構えるウコバクへと殴り掛かり、勢いのままにエルボー、ヒップアタックを繰り出す。
 その全てにパープルを冠した技名をつけ、紫は叫びかけていく。
「紫の連撃、味わいなさい!」
 一度着地した彼女は地面を蹴りつけて跳躍し、相手の顎を殴りつけて。
「パープルキィィィック!」
 続けざまに、紫は敵の首筋を蹴りつけていく。
 ダメージは与えているはずだが、タフなウコバクはまるで堪えているようには見えない。
「脆弱だな、大人しく従えばいいものを」
「…………」
 キルシュトルテは目の前の相手を睨みながら、ライトニングロッドを振るって雷の壁を構築していく。
 そのキルシュトルテのそばにいたエクレールがウコバクへと叫ぶ。
「獄熱などという大層な銘は捨て、ライターかマッチの火でも冠した方が似合いだぞ!」
「エクレール……大人しく俺に屈服しろ!」
 両手を組み、頭上から剛腕を叩きつけようとしてくるウコバク。
 その目の前に、エクレールのテレビウム、従者が立ちはだかり、ウコバクの一撃を受け止めて。
「今の余は! 雷電皇帝アステリオス!」
 名乗りを上げた彼女に、ウコバクが僅かに眉を顰める。
 従者が凶器を手に殴り掛かっていった直後、エクレールは高く飛び上がり、ウコバクの体を蹴りつけた。
「ぐおおっ……!」
 その一撃に体を煽られた敵へとエクレールがさらに告げる。
「貴様如き外道に屈することなど、百万光年経ってもあり得ぬわ!」
 それに、ウコバクは澱んだ瞳で、睨みつけるのだった。


 シャイターン、ウコバクは力任せに力を振るい、炎を放つ。
「平伏せ、俺に屈服しろ!」
 己の力を全力で放ち、そいつはこの場のケルベロス達を攻め立てる。
 ファルゼンは箱竜フレイヤの回復支援を受けながら繰り出される拳や蹴りを受け止める。
 そのまま、オウガメタルを纏ったファルゼンはウコバクの強靭な筋肉に傷をつけていく。
 着実に傷を増やしてはいると実感した幽は、高機動型装備に換装して。
「エンジン全開! アフターバーナー点火!」
 相手の速さには限界があると察し、幽はイニシアティブをとるべく、高速で突撃する。
「……最大戦速で突っ込むわよ!」
 砲塔を突き出した幽は敵目掛けて砲弾を叩き込み、すぐに離脱する。
 ヒットアンドアウェイを繰り返すことで、彼女は相手を翻弄していく。
「ぐああっ、おあああああっ!」
 戦場に放たれ続ける炎は街やケルベロスの体に燃え移り、焦がしていく。
 回復役となるキルシュトルテは、雷の壁を構築していたが、その最中でエクレールへと賦活の為に電気ショックを飛ばす。
「因縁の相手でしょう? 決めてらっしゃい」
「……行ってくるよ、トルテ」
 恋人キルシュトルテにエクレールは本音で一言残し、さらに敵に轟竜砲を放っていく。

 相手を屈服させると主張するウコバクその殴打は、致命傷になりかねない威力がある。
「いい加減、くたばりなよ……!」
 箱竜コキュートスから癒しを受けつつ、アビスもまた仲間達を癒やし続ける。
「……まだ倒れてもらっちゃ困るんだよね」
 仲間の体を燃やす炎の鎮火も兼ね、アビスは自身を含む前衛メンバーの為に六角形の氷の盾を広範囲に展開していく。
 護りの為を固めるアビスへと飛びかかってくるウコバクが拳を振り下ろそうとするが、その隣からアンナがカバーに当たる。
 重い一撃を受け止めたアンナは、真下から敵の首を刃で貫き、その巨体を宙釣りにする。
「見下すのがお好きなんでしょう? ご感想は?」
「ぐはっ、き、貴様……!」
 彼女が刃を捻ろうとする前に、ウコバクはその刃を引き抜き、後方へと飛ぶ。
 それを追いかけようとするエクレール。
 その前に、ウコバクの両サイドからランサー、紫が仕掛ける。
「エクレール殿、援護するぞ!」
 銀色の刃の両手剣を召喚したランサーは、その刀身に黄昏色の魔力を纏わせる。
 紫は距離があると感じ、古代語を唱え始めていた。
「悪しき者を斬り裂け、伝説の竜殺しの魔剣(バルムンク)!!」
「パープルビーム!」
 飛び交う光の斬撃と魔法の光線。
 それらを同時に浴びたウコバクの体から血が迸り、その足が石のように固まっていく。
「あの子を認めることはできなくても……!」
 正面から飛び込むエクレールを直視し、ウコバクの表情が歪む。
「必ず、俺の力でお前をねじ伏せ、屈服を……!」
 テレビウム従者へと炎を発するウコバクに対し、エクレールは手にする槍へとエクレールは魔力を込めていく。
 かつて、戦乙女であった己の証たる剣技に全ての想いを込めて。
 あの時、出会った1人のシャイターンの姿を思い浮かべながら。
「せめて、冥府の海に沈んで……あの子に詫び続けなさい、獄熱!!」
 傷口へと注ぎ込まれた魔力は雷と化し、切断面から稲妻を撒き散らして爆発を巻き起こす。
「お前はこの俺が、俺があああっ!!」
 体を切り裂かれたウコバクは血を撒き散らし、その場で果てていく。
「ウコバクよ、地獄の果てで罪を償うといい」
 崩れ落ちる獄熱のシャイターンへ、ランサーがそう言い捨てたのだった。


 ランサーはホッと一息つき、街を見回す。
「とりあえず、ここでの災害を回避できたのは幸いだな」
 彼は敵を倒したエクレールを振り返って褒め称える。
「一撃、見事だった。流石は雷電皇帝アステリオス様だ」
 首肯して応えたエクレールへ、キルシュトルテが近づく。
「大丈夫か、エクレール」
「ええ、大丈夫よ」
 怪我や体調を気遣うキルシュトルテに、エクレールは女性らしい言葉遣いで応える。
 丁度、そこで戻ってきた地元民が熱々のたこ焼きを2人は受け取り、早速いただいていた。
 同時に、戦闘の後始末を行うケルベロス達。
「ふー……、倒せてよかったです……」
 おどおどした普段の態度に戻った紫は作業に当たりつつ、差し入れとしてもらったたこ焼きを口にする。
 ファルゼン、アビスの傍では、同じヴァルキュリアのアンナが地元民より口に熱々のたこ焼きを突っ込まれ、悶絶してしまっていた。
 ランサーもたこ焼きを手に、大阪の街を眺めて。
(「嫌な予感がするな……」)
 ランサーはこの市街戦を序章に過ぎないと捉えている。
 次、敵勢力がどう動くか。注視する必要があると彼は考えていた。
 そして、幽は再び、第四王女のことを思い返して。
「レリ……いつか必ず、互いの信念と正義をぶつけ合う日が来る筈よ」
 その時、どちらが倒れるか。
 彼女はその邂逅を待ち侘びつつ、遠くに見える大阪城へと視線を走らせていたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年6月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。