桜花絢爛

作者:雨音瑛

●お花見日和
 果実が実るように、花が咲いている。花の隙間からぴょんと飛び出た鮮やかな葉は、メジロの尾のように可愛らしい。
 公園に吹くあたたかな風で、八重桜が揺れる。快晴、ということもあるのだろう、お花見会場は今日も大盛況だ。
「よう、楽しそうだな! オレも混ぜてくれよ!」
「おう、いいぜ! これも何かの縁だ、一緒に楽しも……う……?」
 快活な声に反応して振り返った男は、絶句する。
 声の主は、3メートルはあるかという体躯。桜の葉よりも鮮やかな緑色をした鎧、それに白銀の剣は陽光を反射して眩しい。
 返答した男が「目の前の者はエインヘリアルである」と認識するには少しばかり遅かった。既に男の首は胴体を離れ、どさりとレジャーシートの上に転がっている。
「オレ、こう見えても賑やかな場所が好きでな!」
 やたらに大きな声で宣言しながら、男は剣を振り回す。その度に誰かが倒れ、鮮血が飛び散る。
「あと、剣を振り回すことも好きなんだ!」
 子どものような無邪気な笑顔を浮かべて行われるは、殺人鬼もかくやという無慈悲な所業であった。

●心地よい季節に
 4月も下旬に差し掛かり、花見のできる場所もいよいよ限られてきた。
 神乃・息吹(虹雪・e02070)は付箋のついたガイドブックを開き、話し始める。
「このお花見会場に、エインヘリアルが現れるのよ」
 聞けば、お花見会場にデウスエクスが現れるのではないかと危惧した息吹がヘリオライダーに予知を依頼、とある公園にエインヘリアルが出現することが判明したのだという。
「このエインヘリアルは名前を『アルベロ』といって、もともと凶悪犯罪者だったみたい。そんなわけだから、彼を放置すれば人々の命が危ないし、地球で活動するエインヘリアルの定命化を遅らせる、なんてことも考えられるのよ」
 無論、ケルベロスとしてそれを許すわけにはいかない。
 今からヘリオンで現地に向かえば、ちょうどアルベロが現れたところに介入できる。
「戦闘となるのはアルベロ1体のみで、双子座のゾディアックソードを装備しているのよ。特筆すべきは攻撃力、どの攻撃もダメージが大きいから十分に注意したいところだわ。それとアルベロは戦闘で不利な状況になっても撤退はしないみたいで……なんでも、使い捨ての戦力として送り込まれているから、だとか」
 思案顔で、息吹は続ける。
「予知によると、あまり知能は高くないみたいなのよ。剣を振り回すのが好きなようだから、到着後、武器をちらつかせる程度で興味を惹けるはず」
 そうなれば、一般人たちへの避難誘導はそこそこに、すぐに全員で戦闘を始められることだろう。
「そうそう、大事なことを言い忘れるところだったのよ。アルベロ撃破後は、公園が安全になったという告知を兼ねてお花見なんてどう?」
 虹色を帯びた螺鈿の瞳に、どこからか飛来した桜の花弁が一瞬、映った。


参加者
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)
八柳・蜂(械蜂・e00563)
神乃・息吹(虹雪・e02070)
ヴィヴィアン・ローゼット(びびあん・e02608)
森光・緋織(薄明の星・e05336)
城間星・橙乃(雅客のうぬぼれ・e16302)
カッツェ・スフィル(しにがみどらごん・e19121)
ナナリア・クレセント(フルムーンシンガー・e37925)

■リプレイ

●花潜
 ヘリオンから見た風景は、圧巻の一言であった。
 例えるならば桜の海、だろうか。時折吹く風が花々という名の水面を揺らし、舞い散る桜の花びらは波頭から弾かれた水滴のようにどこかへと飛んでゆく。
 端的に言っても心躍る光景であるが、それどころではないというのを神乃・息吹(虹雪・e02070)は充分に承知していた。
「それじゃ行くわよ、アダム」
 自慢の真白いツノに乗るサバクミミズクのアダムをちらりと見て、息吹はヘリオンから飛び降りる。
 続いて飛び降りるのは、城間星・橙乃(雅客のうぬぼれ・e16302)。
「エインヘリアルを倒して、お花見の再開。ケルベロスにかかれば、造作も無いことね」
 春の陽気を全身に受けながら、橙乃は澄まし顔で一直線に降下してゆく。
「ふわぁ~、綺麗……すごく贅沢な気分」
 とは、ヴィヴィアン・ローゼット(びびあん・e02608)の言葉。満開の桜に目を奪われながらも、ピンク色の瞳には確かな意思を宿している。
 この場所が血で汚れるようなことは、絶対に止めなければならない。手に握ったマイクのスイッチを入れ、ヴィヴィアンは思い切り息を吸い込んだ。次いで、
「こらぁぁーー! お花見の邪魔しちゃダメーー!!」
 と叫べば、怪訝そうな顔のエインヘリアル「アルベロ」が見えた。
「ただ武器を振り回すだけなんてただの子供ね。いや、子供以下かしら」
 オラトリオの少女、ナナリア・クレセント(フルムーンシンガー・e37925)の言葉はため息交じりに。
「やーいガキンチョ。べーだ」
 お尻を叩きながらのあからさまな挑発に対し、アルベロが剣を振り回しているのが見える。
 カッツェ・スフィル(しにがみどらごん・e19121)は、翼を出してふわりと着地した。普段は尻尾だけを出している人派のドラゴニアンであるが、今日は曰く「天使のよう」に降り立った。
 一度は公園に着地したナナリアであったが、すぐに翼で飛行しながら人々へと避難を呼びかける。
「私たちはケルベロスです! エインヘリアルが現れました! こっちへ逃げてください!!」
 桜の間を縫うように飛行するナナリアの姿は、よく目立つ。加えて普段から歌を歌っているためによく通る声が、人々の耳に届く。
 ナナリアが人々を誘導する場所は、森光・緋織(薄明の星・e05336)が上空から観察して把握していた一番大きな出入り口だ。
「見事な桜を朱に染めようとはな。無粋な輩もいるもんだ」
 人々が避難を開始したところで、水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)はキープアウトテープを取り出した。桜の木やベンチなどを上手く使い、侵入禁止のエリアを作ってゆく。
 ナナリアが人々を逃がし、鬼人が立ち入りを禁止すべく動く間、残りのケルベロスはアルベロと対峙していた。
 一般人を背に着地した息吹は、ロッドを握った手を振る。
「ハロー、ハロー。エインヘリアルさん。桜を楽しむつもりがないのなら、早々にお引取り願えるかしら」
「みんなの楽しい時間を壊すような真似、絶対許さないから。どうせあなたには、桜の綺麗さなんてわからないんでしょ」
 ヴィヴィアンも臨戦態勢をとりながら、それとなく人々の進行方向とは逆の位置で戦闘できるように動く。
「サクラノキレイサ? 確かに、何のことかオレにはよくわからないな! オレが好きなのは、剣を振り回すことだからな!」
 豪快に笑うアルベロに、緋織が対照的なまでの柔らかな笑みを向ける。
「でも、ただ振り回すだけでホントにいいの? 戦うことが好きだって言うなら、オレ達が相手になってあげる」
 少しでもアルベロの注意を引けるよう、緋織は堂々とした態度で真正面から話しかける。
「とは言っても……あなたにあたしたちの相手が務まれば、の話だけれど」
 くすりと笑うのは橙乃。どこか尊大な態度で、アルベロへとドラゴニックハンマー「玻璃鱗」を向ける。
「遊びましょう。弱い人間より、何度切られても立ち向かう番犬の方が楽しいですよ」
 その言葉の意味を、アルベロはきっと理解できないだろう。八柳・蜂(械蜂・e00563)が閃かせたナイフの刃には、自嘲気味に笑う彼女の横顔が映り込んだ。

●花守
 刃を交え、受け止め、時には躱して。ケルベロスたちは的確にアルベロの体力を削ってゆくが、彼自身は焦る様子もない。
「すっげえ楽しいな!」
「それは良かった」
 短く返す緋織は、内心安堵していた。もちろん、アルベロが楽しんでいることにではない。屋台の少ない場所にアルベロを誘導できたためだ。
 とはいえ、アルベロを倒すまでまだまだ安心はできない。
「……動かないで」
 緋織の左目に、赤い光が灯る。その先にいるアルベロの動きが鈍ったのを、橙乃は見逃さない。ライトニングロッド「碧雷針」の先端に雷光が重なったかと思えば、瞬く間にアルベロを包み込む。
「今のは堪えたぜえ! にしても楽しい上に賑やかたぁ、実にいいねえ」
 剣を振るアルベロを、息吹は冷ややかな目で見つめる。
「賑やかな場所が好き、と言うのはイブも同じだけれど」
 言いつつ、前衛の傷をエクトプラズム製の疑似肉体で塞ぐ。
「イブの求める賑やかさと、貴方の求める賑やかさは違うみたい。さぁさ、どうぞ桜のように、潔く散って頂戴な」
 息吹の譲った場所に、避難誘導を終えて駆けつけたナナリアが着地する。武器から生成した凍てつく弾丸はアルベロへと投擲され、彼を貫通する。
 不意にナナリアの視界に、阻止したはずの風景――アルベロが楽しそうに花見をしていただけの人々を殺す様子が、重なった。
「……ちょっと、いえ、かなり許しちゃおけないわ。シングも頼んだわよ」
 テレビウム「シング」は笑顔で頷き、手にしたタンバリン、その枠の部分でアルベロのすねを殴りつけた。
「いっ……てぇー! くそっ誰だどこだ、何しやがる! ああもう誰でもいい、喰らいやがれ!」
 振り下ろされる刃の先にいるのは、橙乃だ。
「ヴィヴィアン、ここは任せて」
 そう告げて、カッツェは橙乃の前へと躍り出た。橙乃に振るわれるはずであったその刃を、掴むようにして受け止めながら。
「うわー、こいつ強いぞ。カッツェちゃんもうやられちゃいそー」
 感情のこもらない、いわゆる棒読み。顔には「自信しかない」と言わんばかりの不敵な笑みが浮かんでいる。
「オレが頭悪いと思ってバカにしてるのか?」
「あれ、わかっちゃった? こいつ思ったより頭いいみたいだよ、黒猫」
 愛用する鎌の1本「Schwarze Katze」に話しかけ、カッツェは握っていた刃を捨てるようにして振り払う。
 直後、日本刀「越後守国儔」を振るうのは、キープアウトテープを貼り終えた鬼人。
 仲間が与えた傷を正確になぞると同時に、身を翻してアルベロの付近にある桜の木を背に立つ。折角の桜だ、ここで散らすにはあまりに勿体ない。
「続くよ、鬼人!」
 そう告げるヴィヴィアンが歌うのは「月白の慈母に捧ぐ譚詩曲」。心からの感謝をこめた唄がアルベロの耳に届くと、一瞬だけ穏やかな表情となった。しかしすぐさま浄化の炎に包まれ、すかさず動いたボクスドラゴン「アネリー」の体当たりを受ける。
「綺麗な桜を血で汚すなんて、悪い人」
 例えるなら、玩具を貰ったばかりの子どもか。自身の体温のように冷えた言葉を向け、蜂はアルベロを正視した。
「剣を振り回すのが好きなようですが、特に剣の扱いが上手いようではないようですね。でもあんよは上手、ですね。……なあんて。――あたたかさを、ちょうだい」
 ベンチを足場とした蜂が、軽やかに跳ぶ。そこからの刺すような一撃で、アルベロの体に今度は氷が纏わり付く。
 戦闘においては盾役を担うことが多い蜂ではあるが、此度担った役割――実は久々だったりする――も、なかなかどうして板についている。
 炎と氷を付与されたアルベロの背中から、いたく呑気な声が聞こえてくる。
「黒猫ー。食事時なのに残念だけど味は期待できそうにないね」
 振り返ろうとしたアルベロの背には、縦の直線が刻まれていた。削り取られるアルベロの生命力が、カッツェの傷を塞ぐ。
「予想通り、美味しくなかったね?」
 Schwarze Katzeに話しかけ、カッツェは素早くアルベロとの距離を取った。

●花散
 アネリーのブレスが、アルベロを包み込む。
 一方、全身をオウガメタルで包み込んだヴィヴィアンは、その拳でアルベロの胸部に痛打を加えた。
「ぐ……あっ……!」
 全員が揃ったいま、ケルベロスが圧倒的に有利だ。状態異常を加速させるべく、緋織はエクスカリバールでアルベロの頭部を殴りつける。
「蜂、」
 なるほど、アルベロがよろめいている。
 蜂は視線と瞬きで返答し、惨殺ナイフ「Mirror.」でアルベロの腹部を抉った。アルベロはただのナイフ、と侮っていたのだろう。蜂が手元に引き戻したナイフの刃は、深手を負わせるには充分なほどに連続したZ字状になっていた。
「イブさん、今のうちに」
「了解、なのよ」
 隙あらば攻撃を仕掛けようと思っていた息吹であったが、満月を思わせる光の球を鬼人へと飛ばした。
(「頼もしい皆さんが集まってくださったし、イブの出番はなさそうよね」)
 肩をすくめつつ、揺れるカッツェの尻尾を見遣る息吹。
 次の瞬間、カッツェの姿が消えていた。
「残念だねー。ここから先は通行止めだよ!」
 アルベロから見て、右上方からの声。と、アルベロが気付いた頃には縛霊手「Schwarze Katze (Illusion)」が彼の頭部を地面へと叩きつけた。
「月明かりしか見えない♪真っ暗な夜♪君たちは何も見えず怖くて震えるの♪♪」
 這い上がろうとするアルベロが聞いたのは、ナナリアが作詞作曲した月をイメージした歌。とたん、アルベロの視界が月だけが見える夜のように暗転した。
 それは、原始的な不安を煽るには充分な光景だ。
 そろりと近付いたシングが、今度はアルベロの脇腹にタンバリンを打ち付ける。
「そろそろ観念する? 観念したところであなたはここで倒れることになるのだけれど」
「へっ、誰が負けを認めるかよ!」
「そう、それじゃ仕方ないね」
 橙乃はゆっくりと息を吐き、至極穏やかに詠唱の言葉を紡いだ。
「轟轟と鳴り響くは雪の訪れ」
 今の季節は確かに春だというのに、どこからともなく冬を思わせる冷気と雷鳴が訪れる。
 微かに光り輝くものは碧雷、辺りを漂うのは水仙の花。冷たく乾いた風が吹き荒れ始めるや否や、水仙が冷気と碧雷を纏ってアルベロの身体に創傷を負わせた。
「こンの……程度――!」
 アルベロが渾身の力で振るった剣から、星辰のオーラが放たれた。
 ヴィヴィアンは鬼人の前で、アネリーが橙乃の前でそれぞれ腕を広げる。
 礼を述べようとする鬼人は、ヴィヴィアンのウインクに制された。今は敵を倒すのが先。そう視線で告げるヴィヴィアンに頷き、鬼人は帽子のつばを少しだけ押し上げた。
「――お前の運命を極めるダイス目だぜ?よく味わいな」
 オウガメタルがサイコロ状に変化し、ブレイズキャリバーの炎を貯め始める。ダイス目は1、2と徐々に増えてゆき、最大目である6を表示した瞬間、すべてを解放した。
 極小の太陽を思わせるものとなった炎のダイスがアルベロに触れると、球状の炎が彼を包み込む。
「――!」
「使い捨て戦力での嫌がらせって奴か? いつも思うんだが、エインヘリアルって脳筋種族なのかね」
 鬼人はヴィヴィアンに貰ったロザリオに手を当て、無事に終えられたことに祈りを捧げた。

●花舞
 ヒールで修復した公園に人々を呼び戻せば、公園は当初の賑わいを取り戻し始めた。
 風に乗って飛んで行く花弁たちを見て、橙乃は思わず目を細めた。
 空中から桜を見る機会はそう無いものの、やはり地上で見る桜は良いものだ。

「そういや、屋台であったら、食べてみたい奴があってよ」
 婚約者であるヴィヴィアンと歩く鬼人は、出店を見回しながら声を弾ませる。
「お、りんご飴だ!」
「あ、りんご飴の屋台だ!」
 一瞬の沈黙ののち、ヴィヴィアンが顔を赤らめた。
「……べ、別に花より団子ってわけじゃなくて……花もお団子も大事なの」
 わかってる、と微笑む鬼人が屋台で林檎飴を買って戻って来たが、その手の林檎飴は1本だけだった。
「一つしかなかったから、これ、ヴィヴィアンの分。あ、後で一口くれ!」
「あたしだけ食べるのも悪いし、かわりばんこに食べよ」
 ひとつの林檎飴を交互に食べながら、二人は空を見上げる。
「……何度も、一緒に桜を見たけどよ。やっぱ、いいもんだなぁ」
 桜は青空に負けないくらいに鮮やかで、堂々と咲き誇っている。
「あたし桜ってもっと儚い花だと思ってた。でも、こんなに強い花だったんだね。なんだか、見ていてすごく励まされるよ」
「もうすぐ、この桜も散っちまうんだろうけど、また、来年には新しい芽を付けて、咲き誇るんだら、凄いよな。……また、来ようぜ。一緒に、よ」
「そうだね、また来年も、その先も……一緒に見ようね」
 桜の雨を身に受けながら、二人はそっと寄り添った。

「骨と桜って絵になるよなー」
 桜の木の上方に腰掛けるカッツェの腕には、Schwarze Katze (Illusion)。それをかざしながら見る風景は、絵画かはたまた浮世絵か。カッツェがひとり楽しそうに笑うと、どこか遠くで子どもの笑い声が聞こえた。

 綿菓子と林檎飴を捕獲した蜂は、お花見を楽しむ気満々だ。
「……食べきれないのわかってて買っちゃうのよね、つい」
 呟きつつ見遣った桜の木の下に息吹とナナリア、緋織を見つけたものだから、蜂はすかさず手を振る。
 甘いものは好きだが、そう多くは食べられない。けれど、お裾分けをしたなら。自分も友人も楽しめて、一石二鳥というものだ。
「三色団子を持参したのだわ。沢山あるから、良ければどうぞ、食べて食べて」
「……おだんごあるの? 欲しい欲しい」
 団子を振る舞う息吹に、揚げたてのからあげを手にした緋織が元気よく挙手をする。
「美味しそうね。せっかくだからいただくわ、息吹」
 と、ナナリアも一本受け取り、最初のひとつへとかじり付く。
「あっ、シャッターチャンス」
 緋織は団子を口にくわえたまま、花びらが飛んでゆく様子をスマホで撮影する。その後は簡単なメッセージを添えて友人に送信した。
 それは、ほんの数十分前とはうって変わって、穏やかな時間。
「桜ってどうしてこんなに、綺麗なんでしょうね」
「不思議よねぇ……それに、春はあっと言う間に過ぎるわよねぇ……」
 蜂の疑問に同意を示しながら、息吹は散る花びらたちを視線で追う。
 次の季節は、暑い夏。そう思うと、少し憂鬱に感じる息吹だ。
「桜も春も、もっと長く楽しめたら良いのに……」
 ため息交じりの言葉と同時に伸ばした手、その指先を一枚の花弁がくすぐっていった。

作者:雨音瑛 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年5月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
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