金色風呂の美神

作者:雷紋寺音弥

●甘く危険な金色の香り
 冬の街を吹き抜ける風は、今日も今日で冷たかった。
 こんな季節は、早く帰って熱い風呂にでも入るに限る。その後は、炬燵に籠ってミカンでも食べながら、猫の背中でも撫でつつのんびりしたい。
 そんなことを考えながら、獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)は家路を急いだ。気のせいか、微かに石鹸と入浴剤の匂いが漂っている気がする。それも、上品で香しい、随分と高級そうな石鹸の香りが。
「なんで街の中に、急にこんな香りが……って、ちょっと! なによ、あれ!?」
 だが、香りの漂って来る方に目を向けた瞬間、銀子の目が思わず点になった。
「うふふ……。ようやく、強そうな人が見つかったわ。今日の私は、ラッキーかもね♪」
 空中に浮かぶ金色のバスタブ。そこに身を沈めた女が、玩具を見つけて喜ぶ子供のような笑みを浮かべている。気が付けば、辺りには人の影も見えない。甘い香りの漂う大通りは、いつの間にか、目の前の女のテリトリーと化していた。
「空飛ぶお風呂って……あ、あなた、何者なの!?」
「どうだっていいじゃない、そんなの。私はただ、私のお風呂の素晴らしさを、強い人達に教えてあげたいだけよ」
 そういうわけで、そちらの命を貰い受ける。その後は、しっかり湯船の底からサルベージしてやるから心配するな。そう、女が告げたことで、銀子も敵の正体に気が付いたようだ。
「サルベージ……さては、あなた死神ね!」
「大当たり~♪ そういうあなたは、随分と色気のない恰好してるわね。でも、私にサルベージされれば、もっと美しい姿になれるわよ。そう……この、私のようにね」
 死神の女が、にやりと笑う。無論、それに応じる銀子ではない。
「上等よ! そんな恰好で外を歩き回って、おまけに自分勝手な理屈で殺人予告……。公然猥褻罪と脅迫罪の現行犯で、逮捕してあげるわ!」
 相手がデウスエクスでも容赦はしない。浮遊する黄金風呂に身を委ねる死神を前に、銀子は武器を構えると、躊躇うことなく向かって行った。

●高慢なる死の女神
「招集に応じてくれ、感謝する。獅子谷・銀子が、宿敵のデウスエクスに襲撃される事が予知された。連絡を取ろうと思ったが……どうやら、敵は人払いや通信障害を自由に発生させる能力を持っているようでな」
 恐らくは、ある種の結界のようなものなのだろう。このままでは孤軍奮闘を強いられた挙句、銀子は遠からず敗北する。大至急、現場へ援護に向かって欲しいと、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に告げた。
「銀子を襲撃するデウスエクスは、ヴィフローテという名の死神だ。空中を浮遊する黄金の湯船に漬かり、そこから出ることなく攻撃を繰り出してくるぞ」
 なんとも艶っぽい相手だが、色香に惑わされたら最後、悲惨な結末が待っているのは火を見るよりも明らかだ。敵は攪乱を得意とし、浮遊する湯船自体が彼女の武器。
 湯船より噴き出す熱湯は魔術的防御さえも洗い流し、泡の見せる幻覚に惑わされたら最後、敵と味方の区別さえもつかなくさせられてしまう。おまけに、こちらが与えたダメージも、風呂の魔力で回復して来るので厄介だ。
「ヴィフローテは自分の湯船と美貌に絶対的な自信を持っているようだからな。そこを踏まえて怒らせれば、冷静さを失わせることも可能だとは思うが……」
 ただし、本気で激高した彼女は一切の情けも容赦もなく、なりふり構わずに敵を殲滅しにかかってくるだろう。銀子を助けるという目的を考慮すれば、安易に怒らせるべきではないのかもしれない。
 どちらにせよ、このまま銀子を見捨てるわけにも行かないはず。くれぐれも油断することなく、しっかりと死神を撃破して欲しい。
 そう言って、クロートは改めてケルベロス達に依頼した。


参加者
叢雲・蓮(無常迅速・e00144)
除・神月(猛拳・e16846)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)
旗楽・嘉内(魔導鎧装騎兵・e72630)
 

■リプレイ

●誘う死神
 金色の浴槽に身を沈めたまま、優雅に宙を舞う奇妙な死神。妖艶なるヴィフローテを前にして、獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)は現状を如何にして切り抜けるかを思案していた。
「バスタブの死神さん、私を狙ったのは間違いだったと思い知らせてあげる」
 そう言って拳を構えるも、しかし迂闊には攻められない。悔しいが、敵の実力は自分よりも数段上だ。そのことは、ヴィフローテの方でも解っているのだろう。
「思い知るのは、あなたの方よ。さあ……まずはその身体を、綺麗に洗ってあげるわね♪」
 まずは小手調べだと言わんばかりに、ヴィフローテがバスタブから凄まじい勢いで熱湯を発射してきた。幸い、広範囲に湯が拡散したことで、そこまで酷いダメージはない。が、それでも、このまま攻撃を受け続ければ、力量の差からいずれは押し切られてしまうだろう。
「うふふ……。どんなに逃げ回っても、私のお湯の前には無意味よ。大人しく、私と一緒にお風呂に入りなさい♪」
 年頃の少年が聞いたら赤面卒倒間違いない台詞を吐きながら、ヴィフローテの魔の手が銀子に迫る。だが、彼女が死神である以上、その誘惑に身を委ねた先にあるのは絶望のみ。
(「さて……口では言ってみたものの、このままじゃ防戦一方ね」)
 打開の一手が見当たらず、銀子の顔に焦りが出始める。それに気づいたヴィフローテは更なる追い打ちを仕掛けんと迫るが、しかし今度はそう上手くは行かなかった。
「そこまでだよ! 銀子姉は、やらせないのだ!」
 聞き覚えのある声に、銀子が思わず振り返る。その先にいたのは、叢雲・蓮(無常迅速・e00144)を始めとした、銀子を助けるべく馳せ参じた仲間達。
「空飛ぶ風呂に入った死神、ねぇ……」
「風呂に入ったまま生活してんのかアレ? 便利な風呂みてーだけド、あたしは遠慮してーナー」
 旗楽・嘉内(魔導鎧装騎兵・e72630)や除・神月(猛拳・e16846)、ヴィフローテの姿を見て早くも苦笑い。
「しかし、同性とは言え目のやり場に困る死神だな……公共の浴場なら良いが、ここはただの道路なのだぞ」
 エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)に至っては、もはや開いた口が塞がらないと言った様子か。もっとも、あれは人間ではなくデウスエクス。地球の常識の範疇外にいる存在であるが故、羞恥心や公序良俗の概念もまた、人間のそれと違っているのだろう。
「あらあら、今夜はお客さんが多いわね。でも、いいわ。そっちの方が、なんだか色々楽しめそうだし♪」
 折角、こうして出会えたのだ。今から、ここにいる全員を、地獄の混浴へご招待。あくまで余裕な態度を崩さないまま、ヴィフローテはケルベロス達を自らの湯船に沈めるべく、黄金のバスタブと共に襲い掛かって来た。

●怒りの美神
 黄金のバスタブを駆る奇妙な死神。外見だけで考えればイロモノに過ぎないヴィフローテだが、しかしその実力は、なかなかどうして侮れない。
 熱湯による攻撃はこちらに能力を強化する隙を与えず、弱体化を狙おうにも風呂の力でリフレッシュされれば意味はない。肉体派な雰囲気は欠片もない相手でありながら、しかし実際の戦いでは純粋な殴り合いを要求されるので、性質が悪い。
「ああ……なんか、もう疲れちゃったわね。ちょっとくらい、休んでもいいかな……」
 泡による攻撃から味方を庇い過ぎたのか、銀子の意識は早くも朦朧とし始めていた。そのまま、何の警戒も抱かずに、敵の入っている黄金風呂へとふらふら近づいて行ってしまい。
「おい、なにやってんだヨ! 今はそんなことしてる場合じゃ……ぐはっ!?」
「……素敵な入浴、邪魔するな」
 慌てて止めようとした神月の腹に、銀子の拳が突き刺さる。泡の幻影に惑わされ、完全に敵味方の区別がついていない。
「気をしっかり持て! 私の気を受け取って……」
「おっと、そうはさせないわよ♪」
 銀子の目を覚まさせようとエメラルドが気を練って送ろうとするが、残念ながらヴィフローテの方が一手早い。防御の手薄になったところを狙い、今度はエメラルドに泡を飛ばし、彼女もまた夢幻の地獄へと御招待。
「う……こ、これは……」
 混濁する意識に抗おうとするエメラルドだったが、凄まじい効果を持った敵の呪力を前に、抗う術が見当たらない。平時であれば、一発食らった程度では揺るぎもしないのだろうが、しかしヴィフローテの得意な間合いは攪乱だ。
「……何と美しく、芳しいのだ……ヴィフローテ殿。貴女を傷付けるなど、私には出来ない」
 気丈なる精神を持ったエメラルドであっても、通常の3倍近い呪力を誇るヴィフローテの技の前では無力だった。そのまま跪き、忠誠を誓うようにしてバスタブから覗く足先に口付けをし、銀子に分け与えるはずであった気をヴィフローテに渡してしまう始末。
「うわわ! な、なんだか、大変なことになってるんだよ!」
 さすがに、このままでは拙いと蓮が叫ぶが、攻撃に特化した彼の力では二人の目を覚ます術はない。しかし、盾と癒し手が催眠状態に陥っている状況は、確かにとんでもないピンチである。
 こうなれば、もう後は敵を怒らせることで理性を失わせ、その隙に畳み掛けるしかない。殴り合いを意識しすぎ、各々が幻覚に抗する策を持たなかったのは拙かったが、それを言っていても始まらない。
「水も滴るイイ女とでも言いてーのカ? 裸で釣ってるだけじゃねーノ?」
 とりあえず、その恰好をなんとかしろと、神月がヴィフローテを嘲笑した。ついでに言わせてもらうなら、そんな狭い風呂は遠慮したいとも。
 プライドの高い相手なら、これで乗って来ないはずはない。もっとも、そのプライドの高さ故に、怒らせるためには相手の琴線へ確実に触れることが求められるが。
「うふふ……。あなたのような筋肉女に言われたくないわね。それとも、胸さえ大きければ、それで良いとでも思っているのかしら?」
 案の定、こちらの挑発に乗っては来たが、しかし向こうも挑発で返すだけであり激昂はしない。が、それでも今は、戦いから少しでも意識を離させ、彼女を怒らせることが先決だ。
「え~っと……ボクのお家のお風呂の方が広くて大きいもん! それに、ジェットバスが付いてなさそうだから嫌だし……後、アヒルさんが浮いてない!!」
 思い付く限りの否定の言葉を浴びせる蓮。しかし、なんとも可愛らしい発想だけに、これにはヴィフローテも苦笑しながら手招きするだけだ。
「あらあら、アヒルさんとか、可愛いわね。……君、よかったら、私と一緒にお風呂に入らない? 身体も心も、ぜ~んぶ綺麗に洗ってあげるわよ♪」
「えっ! えぇっ!?」
 まさかの申し出に、蓮、困惑! お姉様好きな彼にとって、これはとんでもないカウンター!
 このままでは、銀子やエメラルドに次ぐ新たな犠牲者が出ないとも限らない。万事休す、万策尽きたりと思われたが……そんな中、嘉内だけは妖艶な肢体に目もくれず、至って冷静なままだった。
「……んー、30点。いや、黒髪ロングの分だけ加点して35点か。浴槽に入った美人と聞いて期待して来てみたけど、年は食ってるし余計な肉はついてるし、とんだ期待はずれだったな」
 女子中学生を基準にすれば、目の前の美女さえババアに過ぎない。色々と問題のある発言のような気もするが、それはそれ。さすがに、そこまで言われれば、ヴィフローテとて黙ってはおらず。
「私が年増ですって! まあ、定命の者からすれば、不老不死の私がそう思えるのも仕方ないけど……そういうあなたこそ、この脚線美に惚れないなんて、もしかしてロリコンじゃないのかしら?」
 口では平静を装っているが、しかし目が完全に笑っていない。先程までとは違い、明らかに怒っている。ならば、これはオマケだとばかりに、嘉内は浴槽にも駄目出しを。
「浴槽が金ピカというのも成金趣味で頂けない。よくそんなのを外で晒せるな。……あ、もしかして、人払いなんてかけたのは、実はその浴槽を人に見られたくなかったからか?」
 黄金風呂などという代物が、既に色々と間違っている。本当は、恥ずかしくて人に見せられない代物だから、目撃者を殺しているのだろう。そんな嘉内の言葉が、決定打だったのだろうか。
「……むっきぃぃぃっ! さっきから黙って聞いてれば、好き放題言ってぇぇぇっ!」
 今まで湯船に浸かったままだったヴィフローテが、拳を握り締めて立ち上がった。その瞬間、胸元が盛大なポロリをかましていたが、彼女はまったく気にしていない様子だった。
「殺してやる! あんた達、全員湯船に顔面沈めて、そのまま海に捨ててやるぅっ!!」
 お前達には、魚の餌がお似合いだ。間違っても、サルベージなどしてやるものか。憤怒の形相で浴槽ごと突っ込んでくるヴィフローテだったが……しかし、それだけであり、何の攻撃も飛んで来なかった。
「あれ? なんか凄い迫力だったけど、それだけなの?」
「どうでもいーゼ! そっちが来ねーなら、こっちから行くだけダ!」
 蓮が、神月が、文字通り丸腰状態のヴィフローテに真正面から仕掛けて行く。殴られ、斬られ、散々な目に遭うヴィフローテだったが、それでも彼女は不敵な笑みを浮かべており。
「……さあ、お仕置きの時間よ、あなた達! 全員溺れて、私の前から消え去るがいいわ!」
 浴槽から溢れ出す凄まじい熱湯の奔流で、神月達を纏めて洗い流す。その威力は、今までの戦闘で見せたものの比ではない。
「うぅ……びしょびしょだぁ……」
「あ、熱っ! な、なんだって、急に威力が……!?」
 いきなり火力を増した敵の技に、蓮と神月は驚きを隠せない。後方に控える嘉内もまた、これは拙いと歯噛みしていた。
「気をつけろ。やつは、どうやら本気で俺達全員を殺すつもりらしい」
 そのために、敢えて不利を覚悟で間合いを変えた。得意の攪乱戦法を捨て、力技で押し切ることが可能な間合いに。
「……ハッ! 面白れーじゃねーカ! やっぱ、殴り合いは搦め手なしでナンボだゼ!」
 口元の雫を拭い、立ち上がる神月。ここから先は、本気と本気のぶつかり合い。そうでなければ面白くないと、怒れる美神を前に高揚する気持ちを抑え切れなかった。

●女達の意地
 ケルベロス達の挑発に乗り、己の得意技を捨て去ったヴィフローテ。確かに、これで幻覚による被害は軽減されたが、しかし今度は限界まで高められた火力による攻撃が、情け容赦なくケルベロス達に襲い掛かる。
「……っ! さ、さすがに……これ以上は、ヤベェかもナ……」
「正直……甘く見ていたわね……。敵の本気が……これほどなんて……」
 熱湯や泡から幾度となく仲間を庇った結果、既に神月も銀子も限界だった。特に、銀子に至っては敵の攻撃を防具で軽減することができず、その負担は神月以上。
「うぅ……わ、私は……」
「混乱してる場合じゃないのだ! 目を覚ましてくれないと、泣いちゃうんだよ!」
 未だ幻覚に惑わされたままのエメラルドの背中を、蓮が半分涙目になって叩く。その言葉に、辛うじて我を取り戻したのか、エメラルドは自らの気で幻覚を振り払い。
「……すまない。なんとか正気を取り戻せたようだ」
「やったー! エメラルド姉が元に戻ったのだ!」
 こうなれば、もう何も怖くない。二振りの喰霊刀を引き抜いて、蓮は一気に距離を詰める。そのまま、擦れ違い様に斬り付ければ、ヴィフローテだけでなく黄金風呂にまでも盛大な亀裂が!
「あぁっ! このクソガキィィィッ! だいたい、あんた達もなによ! どいつも、こいつも、筋肉女ばっかりじゃないの! いい加減、私の美貌の前に平伏しなさいよ、この雌ゴリラどもぉぉぉっ!!」
 自慢の身体と湯船を傷つけられて怒り狂うヴィフローテ。その姿は、もはや美神の面影さえない。が、そんな彼女の言葉を聞いて、静かな怒りを覚えたのは銀子も同じ。
「誰が何ですって!」
 未だ目の前を漂う幻覚など関係ない。怒りに任せ、黄金風呂を蹴りまくり、果てはヴィフローテの腕を掴んだまま湯船の中で馬乗りに!
「鍛錬して引き締めなきゃ。磨くだけじゃ足りないわ!」
「うるっさいわね! 私の美貌に見惚れないやつなんて、みんな死んじゃえばいいのよ!」
 グラビティさえ用いずに、罵倒を重ねて殴り合いする二人。完全なキャットファイト状態に呆然とする仲間達だったが、このまま眺めているわけにもいかず。
「年増の嫉妬は見苦しいぞ」
「綺麗に洗ったお前の魂、どんな味がするか喰ってやるヨ!」
 嘉内が星型のオーラを蹴り込めば、それに続けて神月が魔を食らう拳でヴィフローテを風呂から叩き出し。
「そろそろ、風呂から上がる時間よ。真っ向からの殴りあい、得意なんだから!」
 自らの身体に取り込んだ魔の力を紋様として刻み、銀子の拳が炸裂する。
「獅子の力をこの身に宿し……以下略、さあ、ぶっ飛べっ!!」
「ちょっ……! や、やめなさい、この脳筋女! 私が消えたら、それは世界の損失……ぶべらっ!?」
 命乞いなど、最初から聞くつもりもない。徹底的にボコボコにした上で、止めは黄金の浴槽共々、盛大に夜空の向こうへとカチ上げた。
「そ、そんな……この私が……私の美貌がぁぁぁっ!!」
 一糸纏わぬ姿で吹っ飛びつつ、消滅して行くヴィフローテ。そんな彼女の残滓に向けて、銀子は最後に手錠を取り出し罪状をひとつだけ付け加えた。
「……忘れていたわ。あなたには、公務執行妨害も加えるわね」

●魅惑の入浴
 戦いの終わった夜の街は、いつもの喧騒を取り戻していた。
 ここで何があったのかも知らず、夜道を行き交う車や人。その光景に安堵の溜息を吐きつつ、エメラルドは改めて仲間達に提案した。
「こういった敵を倒すと、ちゃんとしたお風呂に入りたくなるな……近くに銭湯があれば良いのだが」
「賛成ね。身体も冷えたし、温まらないと風邪をひきそうだわ」
 水に濡れた服の裾を見て、銀子も苦笑しつつ答える。その言葉に小躍りして喜ぶ蓮だったが、ふと何か大切なことに気が付いて。
「銀子姉達と銭湯なのだ! ……あ、でも、さすがに中では別々なのだよね……」
 さすがに、一緒に入るわけには行かないか。嬉しいような、悲しいような……そんな彼の気持ちを察したのか、神月が軽く蓮の頭に手を置いた。
「まー、そうガッカリすんなっテ! 水着OKな健康ランドみてーな場所か温水プールなら、男も女も一緒に入れるだろーからサ!」
 ただし、その時は可愛がってやるから覚悟しておけ。なにやら意味深な笑みを浮かべつつ、徐にスマホを取り出して、店を調べる神月。豪華な装飾の一人風呂も結構だが、こうして皆で楽しむのも一興だと。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年1月31日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。