封印城バビロン決戦~竜影海流を寸断せよ!

作者:柊透胡

「リザレクト・ジェネシス追撃戦、お疲れさまでした」
 ケルベロス達を見回し、慇懃に一礼する都築・創(青謐のヘリオライダー・en0054)。
「皆さんの奮戦により、討ち漏らしていた多くのデウスエクスの撃破に成功しました」
 特に、城ヶ島のドラゴンとの戦いは熾烈を極めた。3竜の撃破に成功したが……ドラゴンの命を賭した迎撃の末、固定型魔空回廊が完成。竜十字島から多数のドラゴンが城ヶ島に出現している。
「人口が密集している東京圏内に、ドラゴンの拠点がある危険性は言うに及びません。早速、城ヶ島の奪還作戦の検討を始めていたのですが……複数のヘリオンが、脅威の演算を弾き出しました」
 ドラゴン勢力が城ヶ島に執着していた理由――それは、日本列島に走る龍脈、フォッサ・マグナだったのだ。
「日本列島は、北アメリカプレート、ユーラシアプレート、フィリピン海プレートの3つの境目に在ります」
 厳しい面持ちで地図を広げる創。彼の指が、城ヶ島からプレートの裂け目に沿って北へと辿る――そこに在るのは『封印城バビロン』。
「ドラゴン勢力は、封印城バビロンと城ヶ島を結ぶフォッサ・マグナを暴走させ、関東地方を壊滅させると同時に、大量のグラビティ・チェインを獲得。そのグラビティ・チェインで『惑星スパイラスに閉じ込められた』ドラゴンの勢力の救出しようとしています」
 この企みを阻止するには、作戦の起点である『城ヶ島』或いは『封印城バビロン』の何れかを破壊しなければならない。
「城ヶ島は、固定型魔空回廊より竜十字島の全戦力が投入可能です。竜十字島決戦相当の対決を覚悟しなければなりません」
 畢竟、『封印城バビロンの破壊』が唯一の手段となる。
「我々のバビロン攻略を察知したドラゴン勢力は、『竜影海流群』をバビロン救援に差し向けました」
 『竜影海流群』は、竜十字島近海の防衛ラインを構成していたエルダードラゴンの一種。その移動速度と一糸乱れぬ集団戦に於いて、ドラゴン勢力屈指の能力を誇るという。
「この援軍が大挙して封印城バビロンに押し寄せれば、バビロン攻略は困難となってしまうでしょう」
 『竜影海流群』の援軍阻止に、世界中からありったけの飛行船や気球を集め、空中に城塞が築かれた。
「幸い、迎撃態勢は間に合いました。この空中城塞を足場に、飛来するドラゴンを撃退して下さい」
 『竜影海流群』は鮫のような姿で、翼のように大きくなった両のヒレで飛翔する。額の独角や鋭い牙並ぶ大口で食らい付かんばかりの突進力は、けして侮れない。基本的に、1体撃破出来れば上々が、作戦次第では複数の撃破も可能だろう。
「気球と飛行船をロープや鎖で繋げる事で、飛翔するドラゴンとの空中戦を可能にしています」
 ケルベロスの身体能力であれば、ロープや鎖を伝い、縦横無尽に駆け回ってドラゴンと戦える筈。
「戦場から離脱した場合……高空から地面に叩き落される為、再び戦場に戻る事は不可能です。幸い、落下ダメージは物理的ですから、『とても痛い』だけで致命傷とはなりません」
 ドラゴンの攻撃により危機に陥った場合、落下による離脱も視野に入れて良いかもしれない。
「敵の進路を予知出来たのは幸運でしたが、この空中城塞を構成する飛行船や気球は、流石にドラゴンの攻撃に耐え切れません。戦闘の余波で破壊されていってしまう為、まともに戦えるのは、精々15分程度でしょう」
 この15分の間に、出来るだけ多くの『竜影海流群』を撃破するのが、今回の任務だ。
「敵を突破させない為、戦場全体に戦力を分散して迎撃する事になります。他のチームとの連携は難しいでしょうが……可能な範囲で助け合い、作戦を成功させて下さい。健闘を祈ります」


参加者
アジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)
ラプチャー・デナイザ(真実の愛を求道する者・e04713)
玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)
レオン・ヴァーミリオン(火の無い灰・e19411)
ジェミ・ニア(星喰・e23256)
岡崎・真幸(花想鳥・e30330)
エトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)

■リプレイ

●迎撃は空中城塞にて
 冬の空、高高度なら尚の事、寒気に凍みる。だが、「空中城塞」に降り立ったジェミ・ニア(星喰・e23256)の表情が硬いのは、寒さの所為ではないだろう。
(「同じ空で戦う仲間の為に、ここではない別の場所で戦う仲間の為に……そして、この地球に住む皆の為に」)
 勝とう、絶対――初めての空中戦に緊張は否めないが、強い決意を内に秘めて。
「止めてみせまショウ……ここが舞台デス。盛大に、踊ろうではありませんカ」
 エトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)も静かに肯く。深呼吸すれば、ただ透き通る心地に快さげに銀の双眸を細める。沈着の面持ちだが、足下は余り見ない。
「大丈夫デスヨ」
 互いに家族と慈しむジェミは敏感に察したか。気遣う視線にアイコンタクトで応じるエトヴァ。その実、大空から落下した経験は……些かなりとも苦手意識を植え付けるに充分だろう。
「桜、煩い」
 チュンチュンと囀るファミリアを窘める岡崎・真幸(花想鳥・e30330)は、仏頂面だ。
(「城ヶ島の固定型魔空回廊を阻止出来ていれば……」)
 先の作戦の結果が悔やまれる……作戦を練る時に、もう少し意見言えば良かったとも。だから、今回は言える事は言った。
(「仲間も歴戦揃い……行ける」)
 突破は、させない。
 今回はドラゴンが相手だ。戦前の空気が張り詰めるのも致し方ない事。だが、その一角の雰囲気は、何処か飄軽だ。
「空からのんびりと観光を。なら情緒があったのでござるが、見えるのは竜ばかり。嬉しくないでござるね!!」
 遠方まで見渡せる蒼穹を睨み、じわりじわりと大きくなっていく数多の影に、ラプチャー・デナイザ(真実の愛を求道する者・e04713)は唇を尖らせる。
「この空中城塞の上で戦闘終了を迎えたいものだな。死ななくても痛いのは嫌だ」
 踏み締めようとして、存外に柔かな感触に、足場が巨大な風船と実感する。
「たま殿なら、キャット三転宙返りで――痛い」
「俺は陣内、タマじゃない。ついでに黒豹だ」
 軽口に返る軽口に、更にデコピンで応酬する玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)……というには、重い音がしたような。ラプチャーは額を抱えて蹲っている。
「竜影海流群か……てっきり個体最強が誇りの連中ばかりかと思ってたが、集団戦が得意なやつもいるんだな」
 考え込んだ表情で、「否、違うか」と呟くアジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)。
「寧ろ、個でも強いが協調性もある精鋭ってやつか……はっはっは、こりゃあ厄介だ」
 軽やかに笑い、「救雷」と銘した癒しの杖を担ぐ。
「厄介だから、ここで潰してやろう」
 その言葉に否やは無い。侵略を手段とする敵は撃墜する、とイッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)は気炎を吐く。
「地球の大地を破壊し民衆へ犠牲強いる愚行への援軍なぞ、決して見過ごせません!」
「そぉら、いよいよ獲物が見えてきた。墜とせるだけ叩き潰そうじゃないか」
 対照的に、飄々と不敵に唇を歪めるレオン・ヴァーミリオン(火の無い灰・e19411)。
(「そういや、もうちょっとしたらバレンタインデーだったか……」)
 ドラゴンの企みを阻止できれば、それどころではなくなってしまう……全く、面倒な事に。
「よし、ちょっと働こうか。イベント事の前の面倒事のお掃除さ」

●竜影海流群
 竜影海流群――ドラゴンというより、飛び鮫とでも呼ぶべきか。
 その姿は優美や勇猛には程遠く、だが、大挙して押し寄せる光景は、獰猛な獣の群れと対峙した時の本能的な恐怖を呼び起こす。
 ――否。狩立てる側のケルベロスであれば、そこに恐れなどある筈もない。
「じゃあ、始めようか」
 仲間は歴戦ばかり。実戦経験が1番浅いレオンが先陣を切るのは、通常では難しい。だが、今回は迫り来る竜影海流群を迎撃する側だ。ある程度、戦闘を仕掛けるタイミングは自由になる。
 レオンの全身より放たれる光り輝くオウガ粒子が、開戦の合図。
「刻印『蛇』」
 同時に指を躍らせ、ジェミは蛇の文様を宙に描く。
「さぁ、捕まえておいで」
 Stamp snake――『拘束するモノ』蛇の刻印。描いたイメージを、物理的な力に。
 ――――!!
 狙い澄ました先制攻撃は、確実に飛翔する1体を捕らえる。同時、雄叫び上げたそれは、蛇の軌道を遡るように、独角を槍の如く急降下!
「っ!!」
 猛スピードを遮れた重畳。翳したアジサイの逆沢潟威筒籠手が、独角を受けて鈍い音を立てる。
「アジサイ殿!?」
「この程度、絶望の欠片ですらないな」
 思わず声を上げたラプチャーだが、目の前に角突き立てたドラゴンがいるとなれば。
「大人しくしていて欲しいのでござるよ。そうすれば、痛くはない故」
 近距離から黒い魔力弾を撃ち放つ。命中した敵の内に潜り込んだ魔法魚は、回復量に上回る裂傷を量産するだろう。
「いいか、よく狙えよ」
 一方、中衛に立つエトヴァとレオンに声を掛ける陣内。例えば、獣が我が子に狩りの仕方を教えるように。息の整え方、敵の動きの読み方、時に敵の弱点を――グラビティチェインを乗せた言霊ながら、ウイングキャットと魂分け合う身では、確実な伝授と明言出来ないのがもどかしい。顔を顰める陣内をチラと一瞥して、相棒の猫は尾の先の花輪を勢いよく投げる。
「正念場ですな」
 初手をエンチャントに費やすのは、イッパイアッテナも同じく。こちらは、肩を並べる同胞に窮言葉――心を後押しする言葉で明敏の暗示を施し、前衛の精神を研ぎ澄ます。相箱のザラキも大きく口を開けるや、ドラゴンのヒレにかぶりついた。
 そして、真幸のボクスドラゴン、チビが属性インストールしてくれたのを幸いに、アジサイも妖精弓の弦を引く。ジェミに祝福の矢を放たんと。エトヴァの初手も、メタリックバーストを前衛に掛けた。頼もしい戦友達が、更に頼もしく戦えるように。
「命中率を教えてくれ」
 大体のエンチャントが試みられたのを見て取り、端的に問う真幸。足場が保つのは、戦闘開始から精々15分。時間に限りがあるならば、一手も疎かに出来ない。だが、極端に命中率が低い者がいないのは、幸いか必然か。敵のポジションはまだ読めていない為、真幸は轟竜砲をぶっ放す。その手応えは――硬い。
 ラプチャーとジェミは魔法攻撃、真幸は破壊攻撃だった。何れも『硬い』感触となれば。
「ディフェンダーか」
「多分」
 真幸の呟きに、ジェミも頷く。ラプチャーは厄介そうに溜息を吐いている。
 ――――!!
 咆哮が轟く。次の瞬間、前衛に重圧が圧し掛かる。今度はイッパイアッテナがラプチャーを庇ったが、プレッシャーで全身が風船の足場に埋もれそうな感触だ。
「風船、割れマス!」
 それでも、エトヴァの注意のお陰で、大音声に耐えきれなかった足場から、ダブルジャンプで飛び退く事が出来た。
「報せてくれて、ありがとうございます!」
 律儀に感謝を口にするイッパイアッテナ。エトヴァの慎重な観察眼があれば、崩れる足場の巻き添えに遭わないと思った。

●鮫竜堅固
 陣内が堕天使の炎を以て、カラフルに爆発させる。爆風に背を押されるように、風船を蹴って跳躍するケルベロス達。
 主に体勢を調えるのに費やした初手。次手は打って変わって、ドラゴンに攻撃が殺到する。
 ジェミと真幸のスターゲイザーが相次いで奔る。エトヴァのバスターライフルより凍結光線が迸った。アジサイのライトニングボルト、レオンのグラインドファイアが鮫に似た胴を抉る度、その傷口が凍て付いていく。ラプチャーとイッパイアッテナは、ファミリアシュートで更に厄を深めんと。
(「1匹目は、逃がさない」)
 敵が護りを固めるなら、その防備を貫く『嫌がらせ』を。
「ああ、僕のことは取るに足らない塵と思ってくれ」
 ギロリと睨め付けられたような気がして、ヘラリと笑って見せるレオン。定命如き、と侮られた方が仕事もし易いというものだ。
 ――――!!
 だが、デウスエクスも眼力を具えるならば。命中率から、ケルベロス達の実戦経験もある程度測れるのだろう。
「……ぐっ」
 前衛をすり抜けたドラゴンは、大きく口を開けるやレオンに喰らい付く。喉笛こそガード出来たが、二の腕の肉を持っていかれた。腕を丸ごと喰われず済んだのは、害するものを『拒絶』するという『鏡鱗の腕輪』のお陰かもしれない。
「ドレインか……」
 レオンへのヒールに、ボクスドラゴンの属性インストールでは不足と見て取り、満月のようなエネルギー光球を作り上げる陣内。その視線は、見る見る傷口が盛り上がり塞がっていくドラゴンを注視している。
「……そうか。ヒールとドレインは似て非なる、だな」
 平時の緩い雰囲気と打って変わり、ラプチャーはシリアスな表情で呟く。ドレインによる回復は、アンチヒールでは防げないのだ。
 元より、敵は空中城塞に降りてきて以来、守りを固めている。攻撃も単体ドレイン技、範囲プレッシャー技と防御寄りだろうか。因みに、独角突きは後方にまで届く突進力。ディフェンダーの立ち位置からでも侮れぬ威力だ。
 ――――!!
 ドラゴンの火力を振るう度、足場は確実に損なわれていく。15分、敵が持ち堪えてしまえば、足場を喪ったケルベロス達は重力に逆らえず落下する。即ち敗北と同義。
(「絶望的? 上等だ。絶望しきってないならな」)
 だが、この程度の劣勢、アジサイにはまだまだぬるい。途中落下の「事故」にはケルベロス各自で備えているし、そもそも2体倒す気概で臨んだ戦場だ。
(「ディフェンダーが相手なら……」)
 セオリーは「服破り」の厄。だが、グラビティを用意してきたのはジェミとエトヴァの2人のみ。更に、エトヴァにとって使用優先順位は低い。逆に与ダメージを上げるヒールは陣内が使えるが……生憎と、エンチャントの確実性に欠けるのだ。
 だが、彼らには、考えに考えた作戦がある。今は、己が力を信じるのみ――エトヴァと視線を交わし、小さく頷いたジェミの肘関節よりモーター音が響く。
「……」
 無言でドラゴンに肉迫するや、回転で威力増した一撃を叩き付けた。
「最悪程度で終わると思うな」
 すかさず、ドラゴンを見据えたまま、足下を踏み抜く動作をするアジサイ。それは呪詛の一種。対象に起こる「悪いこと」、その下限を破壊して悪化させる。正に「底抜」。
 そうして、ファミリアロッドを握るケルベロス達は、杖を小動物の姿に戻して次々と魔力を籠めて射出する。
 『ジグザグ』で厄が増える率は、ディフェンダーが庇うのと同程度。その確率はけして高いとは言えまいか……ならば、数で補えば良い。ボクスドラゴンも、ヒールの合間にブレスを吐いた。
 何より、緒戦で足止めを重ねた効がケルベロス達を援ける。
「私達は、負けはしません」
 ディフェンダーの庇う挙動は反射的で、特定の攻撃を見越したり、誰かを目して庇う余裕はない。だからこそ、身を粉にして盾となる気概で、イッパイアッテナは意気軒昂に言い放った。

●一波断裁
 ピピピピッ!
 全員が身に着けたタイマーが、アラームを鳴らすのも2度目――7分経過のシグナルだ。
「……っ」
 眼鏡の内で、ラプチャーの眼差しが険しくなる。敵はまだ、ぐるりとケルベロスらの周囲を滑空する程の余力がある。
 ――――!!
 轟く咆哮。すかさず、イッパイアッテナが黄金の果実を掲げる。だが、同時に、複数の足場が割れる。
「捕まれ!」
 咄嗟に翼を広げた真幸がダブルジャンプで時間を稼ぐ間に、命綱を投げる陣内。辛うじて命綱に手が、残った風船に足が届き、真幸は無意識に安堵の息を吐いた。
「俺達より、足場の崩壊の方が早そうだ」
 アジサイの見立ては恐らく正しい。足場が狭くなれば、ドラゴンの範囲攻撃の格好の的だ。最後の足場から一斉に崩落、だけは避けたい所。
 その為には、攻撃あるのみ。只管に鮫のような竜躯を刻み穿ち、魔法を叩き付ける。
 いざという時、最後の手段を覚悟している者も複数いたが……まだまだ、やれる事はある!
「来たれ神性……相応の働きをしてくれよ?」
 真幸は、異界の神を一部召喚。白く輝く醜悪な神が吐く凍結は無差別。それを弾く防御結界がケルベロス達の周りに出現する。
「この業は短期決戦向きなんだ。いい加減、さっさと終わらせるぞ!」
 替わって、前に出たエトヴァはひっそりと囁く――Frierst Du?
 ――――!!
 突如、身を震わせる鮫竜。レプリカントであるエトヴァは、敵周囲の空間に、電磁的に干渉。氷に閉ざされた地の幻影を見せたのだ。問い掛けの音波をキーに、幻に響くのは悲鳴のような歌。幻覚に呼応して、ドラゴンの筋肉がビキビキと強張っていく。
 そこにジェミのフロストレーザーが重なれば、ケルベロスの攻撃の度、ドラゴンの表皮が凍り付き砕けた。
「ザラキ!」
 それでも、敵はまだ倒れない。イッパイアッテナに迫った独角突きを、庇ったミミックが串刺しのまま掻き消える。だが、それ故に回復が不要となった、この瞬間こそ好機。
 ケイローンの弓に妖精の加護を宿した矢を番え、思い切りよく放つ陣内。その軌道を追って、猫が爪を鋭く振るう。
 刹那、視線をかわせば察して動ける。大切な家族だから――ジェミのスパイラルアームと同時に、エトヴァがフォーチュンスターを蹴り込む。連撃がドラゴンの装甲を切り裂き抉る。
 すかさず、ブラックスライムを鋭い槍の如く伸ばし、アジサイの毒滴る一撃が鮫のような胴を貫く。
 確実に命中させんと、イッパイアッテナが放った気咬弾が弧を描いた。続いて、真幸の流星の如き蹴打を追って、チビが封印箱ごと体当たりを敢行する。
「前往くことは許さない、先を往くなど認めない。ここで腐れて沈んでいけ、塵でしかない我が身のように!」
 風船を巻き込みのたうち回る鮫竜を、影から飛び出した黒縄が縛り上げていく。
「泣いて生まれたんだ。笑って死んでいけ」
 冷ややかなレオンの呟きに、ラプチャーはしみじみと。
「……うん、流石はドラゴン。予想以上に頑丈だった」
 或いは、前衛で攻撃を引き受ける個体に当たってしまったのかもしれない。
(「でも、反省はあれど後悔無し。今ここで、ケリをつける!」)
 古代語魔法――ペトリフィケイション。古の詠唱と共に、魔法の光線が奔る。
 ――――!!
 絶叫したドラゴンの体が、音を立てて石化していく。石化が全身に及んだ時、そのヒレは飛翔の力を喪い、重力に引かれるまま風を切って落下していった。

「11分か……」
 タイマーを見下ろし、アジサイは首を巡らせる。
 まだ時間はあるが、周囲の足場は相当に減じている。他の戦場に向かっている間に作戦が終結しそうだ。
「ヒールしようか?」
「大丈夫、自前がある」
 陣内に返答しながら、アジサイはホッと息を吐く。今回は絶望を請け負わずに済んだ、それで良しとしよう。

作者:柊透胡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年1月30日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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