ふわふわころころ

作者:雨音瑛

●もふもふ
 秋田駅前にある、アゴラ広場。直訳すれば「広場広場」になってしまうその場所は、イベント用の広場として県民に親しまれていた。
 本日開催されているのは『手作りぬいぐるみの市』。その名の通り、手作りのぬいぐるみが販売される市場だ。
「ねー、これお揃いで持とうよ。紫色の猫、かわいいよ?」
「おかーさん、『こばんざめ』みてみて! かばんとか服にくっつけられるんだってー!」
「亀さん! 亀さん買ってー!」
「あらまあ、電車のぬいぐるみなんてあるのねえ。孫に買って行こうかしら」
 と、集まった老若男女で大賑わい。
 そんな賑わいは我関せずと、曇天を割って降り注ぐ巨大な牙。
 広場に突き刺さった後は、鎧兜を纏った兵――竜牙兵へと姿を変えた。我先にと逃げ出すには時既に遅し、竜牙兵たちは手にした大鎌で人々を斬りつけ、グラビティ・チェインを奪ってゆく。
「グァァァハハ! ナケ、ワメケ!」
「ドラゴンサマのカテとナルノダ!」
「ソレで逃げているツモリか、遅いゾ!」
 斬撃に悲鳴、血だまり。
 どこかほっこりとした市場は、たちまちのうちに凄惨な場となった。

●襲撃阻止へ
 以上が、クラリス・レミントン(夜守の花時計・e35454)がヘリオライダーから聞いたという予知の内容だ。クラリスの危惧から行われた予知は見事、人々の危機を察知したといえるだろう。
「場所は、秋田県のアゴラ広場。今から向かえば充分に間に合うみたいだよ」
 ただ、気をつけたいことがあるとクラリスは人差し指を立てた。
「ケルベロスが広場に着いてから竜牙兵が現れるまで、およそ5分。その間、避難勧告をしてしまうと、竜牙兵は他の場所に出現してしまう……つまり、事件の阻止はできず、被害が大きくなってしまうみたいなんだよ」
 しかし、ケルベロスが広場に到着した後は、避難誘導は警察に任せられる。実際、現地の警察には連絡済み。
 そうなれば、ケルベロスの仕事は竜牙兵の撃破のみ、ということだ。
「出現する竜牙兵の数は3体で、全員が簒奪者の鎌を装備、それと……全員がクラッシャー、って聞いたよ。ケルベロスとの戦闘が始まれば、撤退もしないし、一般人を狙うこともないんだって」
 現地に到着するのはおよそ午後2時頃、曇天の下。雪の降る気配は濃厚だが、戦闘中に降り始めることはないだろう。
 戦闘となる場所は市が開かれているくらいの場所だ、戦場としての広さは申し分ない。ぬいぐるみの入ったワゴンもいくらか置かれているが、ケルベロスならば難なく立ち回れる。
「竜牙兵を撃破できれば、市も再開できるみたい。そうなったら、市を見て回るのも楽しそうだね」
 未だ見ぬ、ふわふわころころとの出会いを心待ちにして。
 クラリスは、笑みを浮かべた。


参加者
火岬・律(迷蝶・e05593)
リューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)
イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)
月岡・ユア(孤月抱影・e33389)
アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)
クラリス・レミントン(夜守の花時計・e35454)
長久・千翠(泥中より空を望む者・e50574)
エトワール・ネフリティス(夜空の隣星・e62953)

■リプレイ

●冬風
「……クソみたいな事をする敵もいたものだね?」
 アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)の、曇天色の髪が冷たい風に揺れる。中性的な顔立ちに怒りを滲ませるのには、もっともな理由がある。
 このアゴラ広場で開催されているのは、ふわふわころころのぬいぐるみが集う「ぬいぐるみの市」なのだ。
「竜牙兵が空気を読まないのは今更です……」
 ため息交じりに呟くのは、火岬・律(迷蝶・e05593)。翳る深紫の瞳は、竜牙兵の現れる天、人々で賑わう地を注意深く観察している。
 何せ、竜牙兵は恐怖や血、グラビティ・チェインを目的としているのだ。
 でもさ、と、長久・千翠(泥中より空を望む者・e50574)が豪快に笑う。
「ふわふわもふもふのぬいぐるみに、かっちかちの骨ばった竜牙兵……これはぬいぐるみの圧勝ということで、あっちはご退場願うしかないよな!」
 細腕の先、その拳を握りしめ、千翠は気合い充分。
「ふわふわでぎゅっとしたくなっちゃうぬいぐるみ、それがたくさん集まった市場……それを邪魔する竜牙兵の勝手は許さないんだから!」
 そう豪語するイズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)も赤い瞳で空を睨み、胸の前できゅっと両の拳を握りしめた。
 ふわふわのぬいぐるみという単語に反応したのは、モノトーンで揃えた服装の中、鮮やかな赤いマフラーが風になびくリューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)。灰から黒のグラーデションで彩られた翼を少し動かし、目を閉じて耳を澄ませる。
 が、異音を察知し、すぐに目を開く。
「護るべき理由はそれで充分だ、行くぞ」
 巨大な牙が広場に突き刺さるのとほぼ同時に、警察が避難誘導に動き出した。これならば避難の呼びかけも不要だと、リューデは速やかに敵へと駆け出す。
 金の髪に髪飾り揺らすエトワール・ネフリティス(夜空の隣星・e62953)にとっても、ふわふわは至高。
「それを邪魔する悪い子たちは、めーなんだからねっ! 手加減、してあげないから!」
 エトワールが手にする翡翠の宝石揺らす金色の杖は、ガジェット「翡翠の星」。それを組み替え、臨戦態勢となる。
 どうやら、ふわふわころころを愛する気持ちは老若男女同じのようだ。仲間の様子を見て、クラリス・レミントン(夜守の花時計・e35454)は再確認する。
「暖かな気持ちの集う場所に冷たい刃と竜牙兵は似合わないよ」
 そう告げるクラリスは一般人を背に、律はぬいぐるみを背に立つ。
「迷惑な客人には速やかにお引き取り頂きましょう」
「さぁ、骨野郎共、覚悟するんだよ?」
 さも楽しそうに金色の瞳を細め、月岡・ユア(孤月抱影・e33389)は日本刀「終焉ノ月律」を抜いた。
「ばらばらにしてあげるんだから」
 真昼の月は、微塵も容赦するつもりはないようだ。

●守
 此度の戦い、ケルベロスたちは万全の役割分担をして臨んでいた。
「クラリスさん、続いてお願いできますか」
「まかせて、律」
 フェアリーブーツ「Mistletoe」で、クラリスは律に続いて跳躍した。
「皆の命は勿論、ふわころが掛かってるんだもの。絶対に負けられないよ!」
 盾役を担う率とクラリスが虹を纏った蹴りを喰らわせれば、竜牙兵の注意は二人へと向かいやすくなる。
 積極的な攻撃を仕掛けるのは、アンセルムとユアだ。
 先に動いたのは、アンセルム。
「爆ぜろ、檻よ」
 竜牙兵の1体を覆う檻が展開し、内部で爆発が起きた。元は防御魔術であったはずのそれは、今は炎が出る魔法として運用されている。
 加えて、今回はぬいぐるみを巻き込むことなく攻撃できる安心の魔法といえるだろう。
「月岡、頼んだよ」
「はーいっ!」
 元気よく返事して、ユアは一瞬で竜牙兵との距離を詰めた。
「皆が楽しくぬいぐるみ見てるのに、邪魔するなんてダーメっ」
 可愛らしいウインクに対し、惨殺ナイフ「喰命鬼」の刃はえげつないまでに骨を抉る。
「千翠さん、チャンスだよ!」
「よし、任せろ!」
 両の手を打ち鳴らし、千翠が応える。
 今回、千翠の役目は確実に状態異常を付与し、戦闘を優位に運ぶことだ。
 殴ったり蹴ったりする方が性に合っている千翠であるが、自身を蝕む呪いを活用することも厭わない。
「絡め捕れ。焦がし尽くせ」
 呪いを変容させる言の葉で、鎖のついた枷が竜牙兵を拘束した。拘束の威力は高く、そのまま竜牙兵を砕く。
「ヤツラ、デキル……!」
「シカシマダ、終わりではナイ!」
 投擲された大鎌ふたつ、律とクラリスへ迫る。律は薄い笑みを、クラリスは強気の笑みを浮かべた。想定済みの動きに身構える動きはいたく自然。
 もうひとつの大鎌は、アンセルムへと振り下ろされる。
「当たらないよ」
 ぬいぐるみを抱き上げた青年は、鎌の一撃を難なく回避する。付与された状態異常、そして防具のおかげだ。
「ほら、こっちだよ。かわいい真白のオオカミさんの、あげるね」
 ワゴンの少ない場所へと立つイズナが、笑みを浮かべた。
「――不聞は許さない。狼の哮りは地を揺らすもの」
 薄氷の杖が、やにわに変化する。現れたるは、真白の狼。呻りに次いで告げられる遠吠えは、荒れ狂う衝撃となって竜牙兵たちを襲う。
 仲間が各個撃破に動く間、イズナは他の個体の牽制へも動く心づもりだ。
 ふわころは死守、無論人々も。そう誓うリューデの極光が前衛を包み、傷を癒してゆく。
「ふわころに仇なす者は滅する」
「うん、許すわけにはいかないよね!」
 真顔でそう告げるリューデに本格的な回復を任せて、エトワールは仲間の援護を。かちりとスイッチを押し込めば、鮮やかな爆発が前衛の背後を彩った。
「さあ、この勢いで行っちゃおう!」
 いつかは、育ててくれた「お爺さま」のような『森の護人』になれるように。戦いのたびに少しずつ研鑽を積みながら、エトワールは的確な援護を行ってゆく。

●攻
 アンセルムの詠唱で、氷河期の精霊が現れる。
「さっさと倒れて欲しいよねえ」
 掌をかざせば、厚い氷が竜牙兵たちへとまとわりつく。それらを解除する手段を持たぬ竜牙兵は、ただ大鎌にて攻撃するのみだ。
 すなわち、連携して戦闘に臨むケルベロス側には、不利になる理由がないということ。
「シュペルリング、」
「まかせて!」
 アンセルムが名を呼ぶが早いか、イズナは光の翼を暴走させた。瞬く間にイズナは光の粒子へと変わり、竜牙兵の1身体を弾き飛ばした。
「グッ……マダダ!」
「コレデモ、クラエ!」
 防備を低下させる大鎌の飛来を躱すリューデ、体力を奪う斬撃を受け止める律。
「ヒールは……任せられそうですね」
「ああ、任せてくれ」
 律の言葉にうなずきつつ、リューデは無傷のワゴンをちらりと見た。
 リューデはもふもふが好きだ。
 故に、ぬいぐるみには親近感を抱く。
 故に、敵に容赦は無い。
 表情ひとつ変えず、リューデは仲間の攻撃力を増強するべく華やかな爆発を前衛の背後で起こした。
「ありがと、リューデさん♪」
 心起きなく戦えるのは、仲間の援護があるからこそ。
 ユアは呼吸を整え、音を含んだ言葉を響き渡らせる。
「聞コエテマスカ?イノチノ警報音。――さぁ、覚悟を決めて…逝ってらっしゃい」
 冷酷なテイストを含んだオルタナティブソングが、竜牙兵の骨を軋ませる。耐えきれず倒れ伏した彼を、死界への御案内が彼を待ち受けることだろう。
「よし、あと1体!」
 最後の竜牙兵の懐へと飛び込み、千翠は如意棒を振り回した。大鎌を制し、叩き込む一撃は鮮やかに決まる。
「このまま押し切っちゃおう! ね、キミたち。悪いことはもう、お終いだよ」
 無邪気に笑い、エトワールは翡翠の杖をしゃらりと鳴らた。
「お星さま、ボクに力を貸してね……お星さまとの鬼ごっこ。キミは逃げ切れるかな?」
 描かれるたくさんの星型が現出し、星屑となって竜牙兵を追いかける。逃げても逃げても、星屑は竜牙兵を確かに追尾する。
「クッ……!」
 立ち止まり迎え撃とうとする竜牙兵、しかし星屑は容赦なく竜牙兵へと襲い掛かった。
 どうにか星屑を打ち払った竜牙兵を迎えるのは、扇の羽による鞭打ち。竜牙兵の纏う氷が分厚くなったかと思えば、扇の羽根は律の手元へと戻ってゆく。
「これで、最後よ!」
 勢いよく踏み切ったクラリスが、如意棒を手に竜牙兵へと迫る。着地の寸前、如意棒で大鎌を弾く。大鎌を手放すまいと竜牙兵が焦る。その横っ面へ、クラリスは強かな一撃を見舞った。
 弾き飛ばされた竜牙兵は、途中で砕け散った。
 広場に、ぬいぐるみの市に、平穏が戻った。

 イズナが仲間のヒールを終えたところで、次は会場の修復だ。
 修復完了と見るやいなや、リューデは人の目が無いところへと移動する。数分の後、現れたリューデは『鷽』の鳥ぐるみを着用していた。その姿で市の再開を伝えるべく活動すれば、まばらに人が戻り始める。
「ケルベロスのおねーさん、ありがとー!」
「どういたしまして。もう大丈夫だよ」
 小さな子どもと視線を合わせ、イズナは笑顔で応えた。

●あたたかな冬
 『鷽』の鳥ぐるみを着用したリューデは、元の賑わいを取り戻すべく真面目に呼び込みをしている。
「ふわころが沢山だ、見ていくといい」
 その表情は真顔そのもの、とはいえ着ている鳥は可愛らしく、子どもたちが不思議そうな顔をして集まってくる。
「おや、あちらは子どもに大人気だね。しかし、ふわふわぬいぐるみ……。素晴らしい響きだね」
 長い嘆息を漏らしながら、アンセルムがワゴンのぬいぐるみたちを眺める。歓声を上げたいほどにテンションが上がっているが、和やかな雰囲気を壊さないよう気をつけているのだ。
「ちっちゃいのとか面白いのとか、かわいいぬいぐるみがいっぱいだね」
 その隣で、イズナもぬいぐるみたちを見てゆく。探すのは、可愛くっておっきな狼のぬいぐるみだ。
「小さいのはあるけど……大きいのはないのかなあ……ぎゅっと抱きしめたらぜったい気持ちいいと思うんだよねー」
「大きいのだったら、あっちのワゴンにあったよ」
「ほんと? ありがと、行ってみるね!」
 アンセルムが指差した場所にイズナが向かってから数十秒。イズナの歓声が聞こえた。
「ふふ、お目当てのものがあったみたいだね」
 それにしても、とアンセルムはデフォルメされた犬のぬいぐるみを凝視した。見ているだけでも可愛いが、それだけでは物足りない。ぬいぐるみは抱っこしてふかふかしてこそだ。
「……さわっていい?」
「もちろんです、どうぞ!」
 快諾を得られるが早いか、アンセルムはわんこたちを両手で抱き上げ、ふかふかを堪能する。特にいいのは、ふかふかボディに潜んだもちもちの感触がたまらない豆柴のぬいぐるみだ。その他のぬいぐるみも、できることなら全部持ち帰りたいくらいだ。だが、と財布を取り出して中身を確認する。
「予算の壁って分厚いな……」
 苦笑しつつ、もう一度豆柴のお腹に触れるアンセルム。その様子を見て、千翠は驚きを隠せずにいた。
「ぬいぐるみって、基本的に女子供が愛でるもんじゃないのか……?」
 首を傾げつつ、千翠も隣でもふもふを堪能する。
「……うん。色々見たけど、こいつにしようかな」
 枕にもなりそうな、酒瓶のぬいぐるみ。お買い上げの印としてリボンがきゅっと結ばれると、なんだか可愛さがより上がった気がする。
 その様子を、ユアが覗き込んだ。
「へえ、酒瓶のぬいぐるみなんてあるんだ!」
「あ、うん……め、珍しいよな!」
 少し恥ずかしがりながら、千翠はユアにぬいぐるみを見せる。
「面白くて可愛いぬいぐるみがいっぱいだよねぇ。ボクはどれにしようかなあ……? うん?」
 悩むユアの視界に、猫コーナーが目に入った。その中にひとつ、黒い猫のぬいぐるみ。しかも、怪盗のような衣装で楽しそうな表情をしている。
「わぁっ、可愛い!……この子、誰かに似てるような……?」
 首を捻って数秒、脳裏にひとりの顔が思い浮かんだ。
「よし、これをお土産にしよう。きっと、喜んでくれるはず! ……えへへ、とっても可愛い!」
 ラッピングをして、リボンをかけてもらって。渡して、開けた時に彼はどんな顔をするだろう。驚く顔も喜ぶ顔も楽しみに、ユアは大切にぬいぐるみを抱えた。
 律もまた、贈り物としてぬいぐるみを探していた。贈る相手は、経営するレストランの従業員たちだ。
 まだぬいぐるみを喜ぶ年頃の少女も多く在籍している。日頃の感謝を込めてクリスマスの贈り物に何か良いものはあるかと探す中、律の興味を引いたのはひときわ小さなぬいぐるみたちだった。
「『サンタシリーズ』、ですか」
 親指ほどの大きさをした動物のぬいぐるみは、どれもサンタ帽をかぶって小さなプレゼントボックスを手にしている。
「ああ、これが良さそうですね。いくつか買っていくとしましょう」
 犬、猫、ライオン、小鳥……誰にどれを贈るか、はたまた買ったものからそれぞれ選んで貰うか。贈り物というのは楽しく、難しいものだ。
 どの子を連れて帰ろうか目移りするエトワールの肩を、誰かの指が叩いた。
「……ねぇねぇ、あなたはどんな子を選んだの?」
「ふにゃっ!? ……わ、クラリスちゃん! あのね、ボクはこれにしようかなって。いつもいっしょのお隣さんなんだ」
 エトワールがそっと手に取ったのは、白兎と黒兎が寄り添うぬいぐるみだ。
「とっても素敵」
 そう顔をほころばせるクラリスの手元には、まだぬいぐるみは無い。
「ありがと! ね、クラリスちゃんはどんな子探してるの?」
「私はまだ決まってないの。猫も兎も……あ、羊もかわいい」
「それは、ボクもいっしょに探すの手伝うよっ! このへんは鳥さんのコーナーかな?」
「言われて見れば、いろんな鳥がいるね……あ」
 埋もれた白が、目移りするクラリスの目に留まった。それは、大きな丸い白梟だ。
「大きくて丸い白フクロウさんは可愛いけどそっと見守る姿がなんだか安心するね」
 ふわり笑うエトワールに、クラリスはうなずいた。
 クラリスが両の手で持ち上げた、優しく凛々しい眠らぬ夜の守護者。皆が寝ている真夜中にも、側で静かに見守っていてくれそうで。
(「……そんなふうに、私もなりたくて」)
 クラリスは白梟の翼を撫でて、クラリスはその子に決めたのだった。
 他の人はどんなぬいぐるみを見つけたのだろうとそっと会場内を見渡せば、鷽の鳥ぐるみを着用したリューデが立ち止まっているのが見えた。
 彼の眼前には、丸くてふわふわした『鷽』のぬいぐるみ。見れば見るほど、いまの自分によく似ている。
 しばらく見つめ合った後は、おもむろに財布を取り出して。
「……これを貰おう」
 ふわころは、良いものだ。
 それが戦いの後であっても、身も心も温めてくれるのだから。

作者:雨音瑛 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年12月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 1
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