トライアスロンを行うは強者の証?

作者:なちゅい

●競技会場に現れた罪人戦士
 本格的な冬を迎える手前のこの時期、神奈川県の某砂浜をスタート地点としたトライアスロンが開催される。
 トライアスロンは、スイム、バイク、ランと3種目を同時に1人で行う耐久競技。今回は時間の都合もあってか男女混合で行われ、記録はそれぞれで出されるとのこと。
 この日の為に、アスリート達が鍛錬してきたのは間違いない。
 上位勢は1位をとる為に。一般参加者は己の限界を超える為、あるいは完走という目標を立てるなど、それぞれの目的で参加する。
 そんなイベントの開催直前、そいつは空から現れた。
「ほお、なかなかの強者揃いではないか」
 そいつは軽装鎧を纏い、身長3mはある引き締まった肉体の持ち主。
 格闘家を思わせるこの男、ミロスは罪人として送り込まれたエインヘリアルである。
「1つ、試してやろう」
 デウスエクスの出現に混乱する会場にて、そいつは競技ゼッケンをつけた競技参加者をメインに狙って殴りつけ、あるいは蹴りかかる。
 エインヘリアルの攻撃をまともに受け、一般人が耐えられるはずもない。
 選手達は次々に肉体を破壊され、砂浜は瞬く間に肉片と血が散らばる地獄絵図と化す。
「なんだ? 思った以上に歯ごたえがないな」
 それでも、暴れたりないと感じたのか、ミロスはこの場にいる者全てに躍りかかる。
 全身の気を高めたそいつは一気にそれを解き放ち、浴びせた一般人の体を粉砕してしまう。
「たわいない。……つまらん」
 ミロスはまた新たな強者を探し、赤く染まった砂浜から立ち去っていったのだった。

 罪人エインヘリアルがまたも、地球へと送り込まれてくる。
 そんな予知を聞き、エリアス・アンカー(ひだまりの防人・e50581)はこう告げた。
「強者揃いなトライアスロンは狙われると思っていた」
 オウガである彼としては、この競技に何か感じるものがあったのだろう。
「うん、キミのおかげでこの予知を見ることが出来たよ」
 リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)はエリアスに感謝しながらも、事件の解決をヘリポートへと集まるケルベロス達へと願う。
 送り込まれてくるエインヘリアルは、アスガルドで重罪を犯した凶悪犯罪者らしい。
 これを放置すると多くの人々の命が奪われるだけでなく、人々に恐怖と憎悪を振り撒くことにも繋がってしまう。
「地球で活動しているエインヘリアルの定命化を遅らせることにも繋がってしまうから、なんとしても倒してしまいたいね」
 説明が終わり次第、リーゼリットはケルベロス達をヘリオンで現場へと輸送するとのことだ。
 現れるエインヘリアルは、ミロスという男だ。
 身長はエインヘリアルとしては平均的な3m程度。己の拳と内なるオーラのみで襲い来る強敵である。
「パワーとスピードで攻めて来る格闘家だね。クラッシャーとして戦うのを確認しているよ」
 現場となるのは、神奈川県の某砂浜。トライアスロンの行われる会場だ。
 出現のタイミングが競技開始直前とあって会場には多数の人が集まっているが、エインヘリアルは主に出場選手を狙って手にかけていくようだ。
「襲われる人々には申し訳ないけれど、避難勧告はエインヘリアルの出現後からにしてほしい」
 事前に人がいなくなれば、エインヘリアルも出現場所を変更させてしまう。そうなると、被害を防ぐことすらできなくなってしまうのだ。
 幸い、イベント事とあって警備に当たる人もいてくれる。
 さらに、少しすれば警察隊が駆けつけて完全に避難誘導を任せることができるようになるので、それまでは敵の抑えと人的避難も考えて動きたい。
「あと、敵は不利になっても逃げることはないようだね」
 相手も使い捨ての戦力として送り込まれている事を自覚しているからこそ、死力を尽くして戦うはずだ。
 事後は、イベント再開の為に手早く修復作業を行いたい。
 再び、トライアスロンが始まれば、ケルベロスも招待選手扱いとして参加もできる。
「さすがに戦闘後だから、のんびり見学していってもいいけれどね」
 スイム、バイク、ランの3種を行うアスリート達。己と戦う彼らの姿は、ケルベロスにとっても何か与えてくれるものがあるかもしれない。
「以上だね。……すぐに出発はできるけれど、準備はできているかな?」
 全てのケルベロスが肯定の意思を示したところで、リーゼリットは小さく頷いて。
「アスリート達もこの日の為に頑張ってきたはずだよ」
 彼らの頑張りを無駄にしないためにも、このエインヘリアルの討伐をとリーゼリットは改めてケルベロス達へと願うのだった。


参加者
キーリア・スコティニャ(老害童子・e04853)
神居・雪(はぐれ狼・e22011)
鍋島・美沙緒(神斬り鋏の巫女・e28334)
アベル・ヴィリバルト(根無しの噺・e36140)
天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)
霜憑・みい(一片氷心・e46584)
エリアス・アンカー(ひだまりの防人・e50581)
交久瀬・麗威(影に紛れて闇を食らう・e61592)

■リプレイ

●トライアスロン会場を目指して
 神奈川県の某砂浜へと向かうケルベロス達。
 そこでは、トライアスロンが開催されると言う。
「トライアスロンとは聞いたことはあるのじゃが、実際やろうとすると年寄りにはつらいかもしれんのう」
 少年のような見た目だが、その実還暦を越えた身体年齢のキーリア・スコティニャ(老害童子・e04853)が告げる。
 ケルベロスとしての活動とは違った筋肉を使うことはもちろん、持久力が必要となることも負担として大きいスポーツ。
 キーリアは一般的な分析と自身の状態を合わせ、さすがに自身の競技参加は難しいと判断していたようである。
 さて、そのトライアスロンのスタート地点となる砂浜へ直にエインヘリアルが現れ、競技を台無しにするどころか、選手の命すら奪ってしまうという。
「選手達の頑張りを無駄にさせない為に、エインヘリアルを倒すんだよ」
 和服におかっぱ髪の猫耳少女、鍋島・美沙緒(神斬り鋏の巫女・e28334)がやる気を見せて語ったのに、金髪眼鏡のオウガ、交久瀬・麗威(影に紛れて闇を食らう・e61592)は事前の話を思い出して。
「殴る蹴るっていう競技ではありませんし、鍛錬されてる方を見下す言動も気に入りませんねぇ」
「降りかかる火の粉は払わないとね」
 麗威にとってケルベロスの先生である、地獄の翼を持つオラトリオの天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)が同意し続ける。
「長い間、閉じ込められて戦いを求めて退屈していたのなら、全力で戦って倒されれば本望でしょ」
 今回の敵について、どことなく気品漂う振る舞いも見せるアベル・ヴィリバルト(根無しの噺・e36140)もまた主観を語る。
「興味を持つのは悪くないんだが、やり方には賛同しかねるもんでね」
 人の集まる砂浜を目にし、アベルもまた「さて、一仕事っと」と、目の前の依頼にも軽めな口調で依頼へと乗り出したのだった。

●罪人エインヘリアル、競技会場に
 ケルベロス達が現場へと到着する寸前、そいつは空から降りてきた。
「ほお、なかなかの強者揃いではないか」
 軽装鎧を纏う格闘家を思わせる戦士ミロスは、競技会場にいた参加者の姿に感嘆する。
 そいつの強襲を止めるべく、ケルベロス達も間髪入れずにその場へと介入していく。
「強い相手と戦いたいっていうその意気やよし」
 飛び込む蛍が1つゼッケンを借りて装着し、そいつへとメガホンで呼びかけ、注意を引き付けようとする。
「一般人相手じゃ詰まんないでしょ。戦うのが仕事の私達ケルベロスが相手をしてあげる」
 びびってないならかかってきなよと彼女が挑発すると、敵も瞳をギラつかせて。
「ほう、殊勝なことだな」
 にやりと笑うミロスが拳を慣らすと、エゾオオカミのウェアライダーである神居・雪(はぐれ狼・e22011)も相手の抑えとして前に出る。
「他の奴らが逃がしている間、きっちり敵を抑えてやる」
 雪も自信ありげに、倍ある身長の敵と対していた。
 一方で、会場は突然現れたデウスエクスに動揺する者達も多い。
「早く、砂浜の外へ避難してください!」
 三毛猫のウェアライダーの少女、霜憑・みい(一片氷心・e46584)はプリンセスモードを使い、この場の人々を励ましつつ避難へと当たる。
「細かな行動はみい、任せたぞ」
 自身の自覚なく、馴染む高貴さと上品さを凛とした風として吹かせるアベルはそうみいに呼びかけ、エリアス・アンカー(ひだまりの防人・e50581)、麗威と共に怪我人の運搬を請け負う。
 それに応じたみいはビハインドの兄に現場の確認を任せ、状況が危険な人に指差しで避難指示を頼んでいたようだ。
 指示を聞き、2本の角を額から生やすエリアスは仲の良い麗威と手分けし、人々の激励と、動くのが困難な者を怪力で砂浜の外への輸送に当たっていた。
 再び、エインヘリアルの方に視点を戻すと、ゼッケンをつけた美沙緒が抑えへと回り、人々が避難するのと逆側……やや海側に引き離そうと動く。
「おいおい、逃げるのか?」
「悪いのじゃが、彼らは戦いの選手とかじゃないのでのう」
 ミロスが避難する選手達に呆れを見せると、キーリアが悠然と反論する。
「お主はわしらの相手で我慢して貰うのじゃよ」
 キーリアはすぐさま、エインヘリアルへと攻撃を開始するのであった。

●競技を介せぬパワーファイター
 トライアスロンに参加する競技選手を狙おうとしていたエインヘリアル、ミロス。
「肉弾戦はそこまで得意ではないのじゃが、代わりに魔法使えるぞい」
 そいつに先んじて仕掛けるキーリアは、魔力で巨大な槍型の雷を創造して。
「ほれ、貫けい!」
 その槍を、彼は一直線にミロスへと投擲していく。
「ぬうっ……」
 それに射抜かれた敵が小さく呻くが、1度くらいでは痺れが全身には充満しない。
「よいぞ千罠箱、やって良しじゃ」
 キーリアがさらに、自身のミミックをけしかけていく。
 大きく口を開けたミミックはミロスへと食らい付いて離れない。
「邪魔だ!」
 敵はそのままの体勢で周囲のメンバーへ、回転蹴りを食らわせてきた。
 雪はライドキャリバーのイペタムと、その強烈な一撃を凌いでから攻撃に当たる。
 燃え上がるイペタムが突撃してミロスの身体を焦がすと、雪もまた飛び込む。
 アイヌの血を引く雪はカムイの力をもって、デウスエクスへと対していく。相手の装甲が薄い部分目掛け、カムイの力を宿すブーツ『レプンシラッキ』で蹴りかかっていった。
 ともあれ、人的避難が続く間は相手を足止めせねばならない。
 蛍はヒールドローンを飛ばし、仲間の回復と攻撃を防ぐ為の盾の両方の用途で展開していく。
 直後、美沙緒が取り出す2本の剣『陽』と『陰』。
「人に仇なす悪神を斬り裂け!」
 それらをまるで鋏の如く扱う彼女は、相手の護りごとその身体までも切り裂いていく。
「やるな……」
 口元を吊り上げる敵はさらに、渾身の力で拳を叩きこんでくる。
 それをミミック千罠箱が受け止め、キーリアは仲間の為にとカラフルな爆発を起こして賦活に当たっていたようだ。
「その動きは見逃さないよ」
 ミロスを自由にはさせず、蛍が『独立機動砲台』より砲弾を飛ばし、相手の足を止める。
 4人が敵の猛攻を防ぐ中、周囲には警察隊も駆けつける。
 そちらに人的避難を託し、人々の誘導を行っていたメンバーも徐々に戦列へと加わっていく。
「派手に暴れていますねぇ? ……戦い甲斐がありそうだな」
 相手の死角をついて現れた麗威は表情を引き締め、超高速の爪さばきで敵の体を切り裂いて行く。
「こいつのお披露目は初だが、さて、お前さんには見つけられるかい?」
 アベルが初披露するグラビティ『影縫』(カゲロウ)。
 黒い龍を思わせる針は静かに、速やかにミロスへと接近していく。
「逃げても良いんだぜ? ……出来るならな」
 アベルの放つ黒い針から逃れることは出来ず、ミロスはその場に縫い止められ、刹那動きを止めてしまう。
 うまく仲間達が相手を止めている間に、ビハインドのみいの兄が念を込めた近場のカラーコーンなどを叩きつけさせていく。
 みい自身は仲間達の援護に回る。
「強さと言うものは腕力だけを指すのではないわ」
 オウガ粒子を仲間に行き届くように飛ばす彼女は、さらにミロスへと訴えかける。
 ――目標に向かって懸命に行う努力だって、強さの一つ。
 選手達はその為に、時間を気持ちを費やしたはずだ。
「貴方にそれを気安く奪う権利はありません!」
 チッ……。
 舌打ちするミロスの姿に、エリアスも眉をピクリと動かして。
「お門違いもいいとこだ」
 エリアスは、予知でアスリートを倒してつまらないと告げたミロスに強い憤りを感じていたのだ。
「恵まれた力で、ただ殴り倒すだけのテメェより、特別な力も持たずに自分を鍛え上げたアイツらのが余程強ぇよ」
「ふん、弱いやつほど吠えると知らんようだな……」
 この場から避難したアスリート達を指してエリアスが告げると、ミロスもまた己の力で全てねじ伏せんと、全身の気を高めて放出してくるのである。

 相手の攻撃が強烈なこともあり、攻撃に当たっていたキーリアも回復に当たる。
 深く傷つくメンバーの為に、キーリアは気力による癒しだけでなく、翼を広げて極光も放ち威圧に武器の損傷と受けていた雪の不浄も合わせて元へと戻していく。
「流石格闘家、侮れないな……」
 エリアスも麗威が傷ついたのを察し、すかさず彼の眼鏡をヒールしようとして思わず。
「そっちじゃねぇよ!」
「冗談冗談……さ、立て直すぜ」
 麗威の鋭いツッコミに対し、エリアスは軽く笑って返していた。
 さて、雪は防御態勢を取り続けながら、イペタムと共にミロスを攻め立てる。
 イペタムのスピンに続き、彼女は素早い蹴りで敵の動きを止めようとしていく。
 動きを止めれば、そっと背後から美沙緒が近づいて。
「罪人の仲間が待っている冥府の海へ、墜としてあげるよ」
 相手の首を狙って霊体ごと斬り付けようとするが、敵も身を引いて致命傷を避けてしまう。
「どうした、冥府の海に墜とすのではなかったのか?」
 鮮血が飛ぶも、首ちょんぱ出来なかったと美沙緒は少し残念がっていたようだ。
 ミロスはさらに猛攻を続け、立ち塞がるケルベロス達を追い込もうとする。
 みいも戦線を支えようと光の盾を展開し、さらに喰霊刀に残る魂のエネルギーを仲間に分け与え、癒しへと当たっていく。
 その間、ビハインド、みいの兄も心霊現象を起こしてミロスの動きを止めようと援護してくれていた。
 頃合いと見たキーリアは武装具現化した武器で殴りかかる自身のミミックに合わせ、石化光線を発射する。
 砲台から蛍も一斉発射を行い、雪が炎の蹴りをミロスへと浴びせかける中、己の腕に無数の角を生やすエリアスへと赤く鋭い霜柱を出現させていた。
「うふふ、トライアスロンにはチーム戦もあるのよ?」
 みいから自身の決め技でもあるグラビティを託されたエリアスは、麗威と共に仕掛ける。
「いくぞ、エリアス……!」
 タイミングを合わせ、彼らは巨躯の戦士目掛けて飛び込む。
 麗威は腕に白銀の蜘蛛の脚のような角を伸ばし、エリアスは先ほどの腕で同時にラリアットを叩き込んでいった。
「みいと合わせた朱い針山、血生臭いテメェにお似合いだろ?」
「まだ……だ!」
 トドメには僅かに及ばず、ミロスが立ち上がろうとした。
 そこで、アベルが戦篭手で相手の胸倉につかみかかる。
「そろそろ還りな。見送り位はしてやる」
 漆黒を纏う右腕でアベルは敵の顔面を、強く殴り飛ばす。
「があああああああぁぁぁぁっ!!」
 もんどりうって、砂浜を転がっていくミロスの体。
 高く上がった砂埃が収まると、そこには力尽きた罪人が崩れ落ちていたのだった。

●トライアスロン再開!
 エインヘリアルを倒し、ケルベロス達はイベント再開の為、砂浜の修復へと当たる。
 カムイへと祈りを捧げた雪は清浄な風を砂浜に巻き起こし、イベント会場にある設備を幻想交じりに修復していく。
 蛍はドローンを、みいもオウガ粒子を飛ばして、広範囲の修復へと当たる。
 エリアスは戻ってきた人々に怪我がないかと気遣い、緊急手術を施していたようだ。
「こんなもんでへこたれるアスリートじゃねぇだろ? さ、再開と行こうじゃねぇか!」
 とんだ邪魔が入ってしまったが、エリアスの叫びに会場が大きく盛り上がる。
「やるなら、1番を狙いましょう!」
 現場の人々の無事も確認できたことで、手作業での修復に当たっていた麗威もまた参加に前向きな姿勢を見せる。
「にゃんこが最強っていうのを示すんだよ」
 美沙緒は、オウガ2人にスポーツは頭脳戦であることを教えたいと語る。また、この場では蛍も参戦を決めていたようだ。
 この場のケルベロス数人も参加するとあって、競技参加者達のテンションも上がっていく。
「手加減はなしだ! 正々堂々勝負しようぜ」
 そんなエリアスの姿を傍目で見ていた雪はというと。
「あんだけ戦った後だってのに……。元気な奴らだな」
 のんびりと観戦の構えをとっていたようだ。

 デウスエクスの出現の影響で競技時間が後れていたこともあり、イベント主催は全ての参加者を一斉スタートさせることとする。
 砂浜に響くピストルの音。
 参加者全員が海に向かう中、ケルベロスもまた海に飛び出す。
 身体能力に優れるケルベロスは招待選手扱いだったが、彼らは素早く着水して泳ぎ始める。
 水泳が得意なエリアスがここでは前に出るが、蛍も普段から空を飛んで鍛えている肺活量を活かして泳ぐ。
 彼女は速力のロスとなる息継ぎを少なくしたクロールでスイムに臨み、できるだけ手を前に伸ばして水面をかき分けて進む。
 美沙緒はそんな仲間達につかず離れずの位置から追い、体力を温存していたようだ。
 次はバイク。自転車に乗って長距離を走る区間である。
 蛍は自分用にカスタマイズした競技用自転車を持ち込み、小柄な体のビハインドを感じさせない。
 こまめな水分補給をしつつ、リードしてみせる蛍。その間も、美沙緒は前方を見据えて進む。
 そして、最後にラン。己の足でゴールを目指す最後の区間。
 ここまで到達したメンバー達は、戦いの後の上にスイム、ランと体力の消耗は激しい。
 前方の蛍は自身のペースを維持し、水分補給を忘れずに走っていく。
 ここぞとペースを上げるのは、麗威だ。
 毎日のランニングもあり、走るのに自信を持っていた彼は前との距離を着実に詰めていく。
 ゴールを目指すメンバー達へ、アベル、みいが用意したスポーツドリンクを応援、戦闘での労わりを込めて手渡していく。
 観戦するキーリアや雪も激励の言葉を口にする。
 それらを受け取る面々はさらに歩を進め、ゴール前の直線へ。
 最後のスパートをかける面々。美沙緒が温存していた体力を使い、前に出て行く。
 アベルの菓子が待っているとモチベーションを高めるエリアスも1位を目指すが一歩及ばず、ペース配分に優れた美沙緒が逃げ切る形でテープを切った。
「お疲れさん」
 アベルはゴールしたメンバーに、保冷バックで持ち込んだデザートを差し出す。
 林檎のバウンドケーキに、バナナのクリームブリュレ。
 食べやすさを重視したそれらに、競技参加メンバーは舌鼓を打つ。
 その後は、一般競技参加者がゴールを切る様子をメンバー達はしばらく観戦していたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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