強靱なる身を奮いて

■リプレイ

●白き城を砕き
　神奈川県小田原市の小田原城。
　難攻不落の城址と言われ、堂々たる城の偉容は、多くの海外からの観光客の注目を集める。
　……そしてその白き城壁は、陽の光に美しく映え、何処か煌めいている様にも見える……そんな美しい城址へと、突如姿を現してしまったのが、巨大なロボット型ダモクレス達。
「またダモクレスが現れるのですね。それにここ、小田原城は見に来た事の有る場所ですし……ここに巨大ロボット型ダモクレスが居た等、驚きなのです」
　と東雲・菜々乃（のんびり猫さん・e18447）が顎に指を当てながら零すと、ルピナス・ミラ（黒星と闇花・e07184）と如月・沙耶（青薔薇の誓い・e67384）、吉良・琴美（白衣の悪魔・e36537）らが。
「そうですね。小田原城……かなり歴史のある日本の建物。私もすごい好きです。本当はゆっくりと観光したいところですけど……今日はそう言う悠長な場合でもありませんね」
「ええ、有名で歴史在るお城は観光客の方が多くいらっしゃるでしょう。でもそこに乱入する巨大ダモクレス。その無遠慮で無差別な暴力を罪無き人々に振るう暴挙は許せません。必ず止めます」
「ああ。巨大ロボットとはずいぶんと言い趣味をしている。軍事的にはナンセンスと聞いた事があるが、果たしてどの程度のものか……分からないが、取りあえず放置しておいて良い状況ではない」
「そうですね。本当は観光で来たかったですけど、ダモクレスが出現したからには、ここに居る人達も、お城も守ってみせるのです」
　ぐぐっ、と菜々乃が拳を握りしめ、決意。
　……その一方で、そのダモクレスが出ると予測された、城の周りの濠を確認のために歩くのは明空・護朗（二匹狼・e11656）と上月・紫緒（シングマイラブ・e01167）、鋼・柳司（雷華戴天・e19340）とセルリアン・エクレール（スターリヴォア・e01686）。
「……ここが小田原城の濠か……本当、城をぐるりと巡っているんだね」
「そうですね。巨大ロボット型のダモクレス、そして場所も相俟って、まるで攻城兵器みたいですね」
「ああ。城の濠から突如姿を現す巨大ロボット……想像するからに絵になる光景ではあるが、実際に出てこられても厄介なだけだな」
「全くだね。個人的にはお城とか遺跡とか、凄い好きなんだよね。だからこそ、そういった所が破壊されかねないのは困るんだよ。だからさくっとやる事にしようか」
「勿論です。お城もみんなも、紫緒が纏めて守りますからね」
「頼もしいな。ならば俺は、ロボット型ダモクレスをきっちりと始末させて貰うとしよう」
　そんな仲間達の言葉にこくりと頷き、そして護朗も。
「ん。そうだね。タマもよろしくね」
　その言葉に、護朗の妹、オルトロスのタマもこくん、と頷くのであった。

●鉄拳唸る
　そしてケルベロス達は、濠の近くへと展開。
　周囲にはやはり、様々な国からの観光客が訪れており、国内なのに色んな言語で感嘆が紡がれている。
　……そんな一般人達の声を聞きつつ、ケルベロス達は濠の中を注視し、いつ現れても良い様に待機。
　そして、数分の後……。
『……グゥゥゥン……』
　と、地中深くの咆哮から響く、稼働音。
　その音に素早くケルベロス達は反応し、音の響いた方角へと駆ける。
　……程なく音の鳴りし濠から、ブクブクと水蒸気のような者が溢れ……そして、水面を割り開き、姿を現すダモクレス。
『うわあああ！！』
　と、周囲から上がる悲鳴が、混乱を伝搬していく。
　……そんな一般人へ。
「皆さん、慌てないで下さい。私達はケルベロス、皆さんを誘導します、あのダモクレスから遠ざかるよう、至急避難をお願いします」
「大丈夫。僕たちが必ず守るから……ああ、日本語分からない、なら……」
　沙耶はりんとした声で扇動し、護朗とタマは混乱している人に声を掛けながら、避難を促す。
　勿論、外国人の方々を見捨てる事もせず、ハイパーリンガルにて、彼らが理解出来る言語で話し、落ち着かせた上で避難を促す。
　そして、護朗とタマ、沙耶が避難させている最中に、残るケルベロス達はダモクレスの上がってくる濠の所に移動し、対峙。
　腕と足で、濠を上がってきたダモクレスに構えながら……それぞれのタイマーをスタート。
「さて、今回は制限時間に気をつけないとね」
　とセルリアンの言葉に紫緒は頷きつつ。
「そうですね。でも、お城は壊させませんよ。だって、紫緒がぜんぶ止めちゃいますからね！」
　と先陣を切り、突撃。
「さぁ、鬼さんこちらー、ですよ！！」
　と、ファナティックレインボウにて、怒りを付与する一撃を叩き込む。
　更に菜々乃が戦術超鋼拳で殴り掛かり、同時に彼女のウイングキャットはキャットリング。
　更に柳司の縛霊撃、セルリアンの雷刃突に、琴美のボクスドラゴンがボクスタックル、そしてルピナスが。
「この一撃で、凍結させてあげますよ！」
　と、達人の一撃による強烈な一撃を叩き込む。
　そして、ケルベロス達の行動が一巡した所で、対するダモクレスの攻撃は……その巨大な図体から、殴り掛かるのみ。
　頭上から振り落とされるその一撃は、流石に目の当たりにすると恐怖を抱かざるを得ないが……気を強く持ち、敢然に立ち塞がる。
　そして……一分が経過。
「そろそろ……大丈夫かな」
「ええ」
　大方、至近に居た一般人の方達は攻撃が届かないくらいの距離までは避難が完了。
　避難誘導していた沙耶と護朗が、仲間達の元へと合流すると、背後に沙耶がキープアウトテープをぱっと張り、更にセルリアンが殺界形成を展開し、周囲へ殺気を巡らせ、一般の立ち入れない結界を形成する。
　そして、ケルベロス達の攻勢へ。
「余り時間はない。基本攻勢で進めるぞ」」
「ああ、そうだな」
　と柳司に琴美が頷き、そして琴美は敵の巨躯を一度全体眺めた後。
「それにしてもまあ、こんなオモチャをわざわざ実戦投入するような奴の神経が知れんな。頭をこじ開けて、どんな脳みそをしているのか確かめてみたいもんだが……作った奴はこの近くに居ないのだから、仕方ないな」
　と言いつつ、サイコフォースの一閃。
　それに続く護朗は、ブレイブマインを前衛裂に向けて付与、壊アップを付与。
　続くスナイパーの柳司会がスターゲイザーで襲撃すると、更に沙耶のゼログラビトン、タマのソードスラッシュ。
　後衛陣の猛攻の後、更にセルリアンの雷刃突、琴美のボクスドラゴンがボクスブレスを破棄、そしてルピナスが。
「御業よ、敵を焼き払いなさい！」
　と、熾炎業炎砲で焼き尽くす。
　と、そこまでで一端、行動を待つ。
　対峙するダモクレス……その拳を振り落とす攻撃を、ディフェンダー陣は確りと構える。
　直撃すれば、かなりのダメージなのは間違い無いが……どうにか耐える。
　そして攻撃を受けた後、その体力の状況を見越して、菜々乃がルナティックヒールで回復。
　同時にプリンが猫ひっかきでかき傷を着けると、紫緒のフォーチュンスター。
　そんな2刻目のケルベロスの猛攻で、どうやら敵の体力は3割ほど削れていく。
　……勿論、まだ油断は出来る様な状況ではないが。
「まだだ。更に猛攻を加えて行くぞ」
　と柳司が気を引き締めるように告げる。
　……その後も更に猛攻を続け、戦闘開始から五分。
　各々の時計から、ピィィイ、とアラーム音が鳴り響く。
「五分経過しました……！」
　と、ルピナスの言葉。
　丁度その瞬間、同時にダモクレスの身体からも、水蒸気のような物が噴出。
「皆さん、フルパワー攻撃が来ます。注意して下さい！」
　ルピナスの警告に対し、臆すること無くダモクレスの真っ正面へ立ち塞がる紫緒。
「私だって盾になるくらいはできますからね。例え私が倒れたって、セルリアンさんやみんながいますから！」
　と強い口調で叫び……それと共にダモクレスの強烈な一撃が振り落とされる。
　紫緒の身体が、大きく吹き飛ぶが……ギリギリの所でどうにか耐えきる。
　そして……フルパワー攻撃を経た後のダモクレスは、軽いオーバーヒート状態の様に陥り、一気に動きが鈍ってしまう。
「良し、今だ！」
　後衛から状況を注視していた琴美が号令。
　その号令一下、全てのケルベロスが動く。
　紫緒、菜々乃、プリンのディフェンダー陣は、ダモクレスの真っ正面から接近。
　更に沙耶がマジックミサイルで迎撃、更に柳司が。
「雷華載天流は対デウスエクスを旨とする拳法。当然、デカブツも仮想敵の内だ」
　と言い放ち『蒼龍雷穿』を脇から叩き込む、そして生じた隙を更に沙耶が。
「貴方の運命は……皇帝の権限にて、命じます！！「止まれ」」
　『運命の導き「皇帝」』を掲げ、パラライズ効果の付与。
　そして、セルリアンが。
「ーーこれから先に、キミは必要ない　故に、疾く逝け　空虚の彼方へ」
　『殺月禍』を放ち……その一撃にて、巨躯のダモクレスは断末魔の叫びと共に、その場に崩壊するのであった。

●白き片に
　そして、どうにか巨大ロボ型ダモクレスを逃す事無く討ち倒したケルベロス。
「ふぅ……どうにか終わった、かな？」
　と汗を拭い、息を吐く護朗。
　周りの仲間達も武器を下ろし、そしてセルリアンらが殺界形成を解除。
　そして……周囲の被害具合を改めて確認。
「うーん……全力攻撃の流れ弾は外れたから良いものの、流石に被害なしで、という訳には行きませんねぇ……」
　と紫緒が溜息一つ吐くと、菜々乃も。
「そうね。まぁ……ダモクレスの尻拭いをするのも、私達の仕事の範疇だし、仕方ないわね」
　と溜息をつく。
　……ともあれ、もうひと踏ん張り。
　ケルベロス達は、巨大ロボ型ダモクレスが色々と破壊してくれた壁、地面、濠の縁等を手分けして、早々にヒールグラビティを活用し、復旧。
　歴史ある風景に、多少のファンシーさのグラデーション……それもまた格別、とは言えないけれど、壊れているままの風景よりは未だマシだと言えるだろう。
　そして、一通り周域の片付けを終えると共に。
「さて、と……折角小田原城まで来たんだし、観光位はいいよな？　皆はどうする？」
　とセルリアンの言葉に菜々乃はびしっ、と手を上げて。
「はいはい、わたし、行きたいですっ！！　折角小田原まで来たんですし、お土産も……ああ、かまぼこが有名でしたっけ？　是非買って行きたいです！」
　そう言う菜々乃の顔は、もう満面の笑み。
　それにルピナスと紫緒もくすりと笑い。
「まぁ、そうですね。わたくし達の護ったお城ですし、少しの時間ではありますけれど、見ていきましょうか」
「ええ。それじゃ皆、行きましょう♪」
　そしてケルベロス達は……守りきった小田原城へと、駆けていくのであった。

作者：幾夜緋琉	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2018年12月1日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 1／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 0
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