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船橋市にある猫耳メイド喫茶の天井裏で、影羽衆の螺旋忍軍の男性忍者二人が、顔を寄せ話し合っていた。片方は紺の忍び装束を、もう片方は黒色の忍び装束に身を包んでいた。
「此度のターゲットは……あの猫耳の娘などいかがか?」
「ほうほう、茶色い耳付き清楚系黒髪メイドさん……拙者的にも大・大・大賛成でござる。彼女を改造すれば、さぞ忠実な配下として、どこの勢力へでも売り込めるでござろうなぁ~」
同じ人型を取る忍者同士、どうも女性の好みも似通っているらしい。二人は清楚系ストレートロングの黒髪のメイドさんに狙いを付けたようだ。彼らは襟を正し、ふんと気合いを入れる。
「では、仕事の時間でござる。他の人間どもは……」
紺色の忍び装束の忍者が、ちらりと黒色の忍び装束の方へと目を向ける。
「勝手に逃げるならそれもよし、邪魔しに来るならサクッと皆殺しでござるよ。わざわざ我らに美少女だけでなくグラビティ・チェインまで供給してくれるのなら、遠慮なくいただくべきでござる」
確認するや否や、彼ら二人は天井を破り清楚系茶色い猫耳メイドを拐うと、他の客や従業員達を適当に蹴散らしていった。
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「船橋市の猫耳メイド喫茶のひとつを、『影羽衆』という螺旋忍軍が襲撃しようとしているようだ」
雪村・葵は集まったケルベロス達に事件の概要を説明しはじめる。
「彼らの目的は、サブカル系の美少女や美少年を誘拐し、洗脳・改造を施して自分たちの元から他のデウスエクス勢力へ配下として売り渡すことらしい。罪のない少年少女が襲撃されることも、どこかのデウスエクス勢力の手駒が増えることも、見過ごすわけには行かない。この店に向かい、影羽衆の企みを阻止してきてくれ」
敵は『影羽衆』の螺旋忍者二人。紺色の忍び装束の螺旋忍者と、黒色の忍び装束の螺旋忍者だ。二人は同じように日本刀を装備しており、刀での攻撃を得意としているようだ。
また、事前に避難活動をしてしまうと二人は別の場所を襲撃してしまうため、事件の阻止が出来なくなる。少女達の避難は螺旋忍者二人が現れてから行うようにしてほしい。
「なお……拐う対象は螺旋忍者の好みで決めているらしいな。なので、今回の螺旋忍者達の好みは黒髪ロングの清楚系だ。ケルベロスの誰かが好みの格好をすれば、出現する可能性が高くなるな」
そこまで説明してから、葵は言葉を区切り、ケルベロス達に言う。
「罪の無い一般人を拐うなど、あってはならない事件だ。確実に撃破してきてほしい」
参加者 | |
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バーヴェン・ルース(復讐者・e00819) |
レカ・ビアバルナ(ソムニウム・e00931) |
ヴィヴィアン・ローゼット(色彩の聖歌・e02608) |
葛葉・影二(暗銀忍狐・e02830) |
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690) |
伊礼・慧子(臺・e41144) |
ララ・フリージア(ヴァルキュリアのゴッドペインター・e44578) |
不動峰・くくる(零の極地・e58420) |
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から~ん、と鈴が鳴るような軽い音をさせながら、扉が開く。その音にくるりと振り向くのは、黒のストレートロングのウィッグとダークブラウンのカラコンを装着し、店のメイド服と猫耳を借りたヴィヴィアン・ローゼット(色彩の聖歌・e02608)。
「おかえりなさいませにゃん、ご主人様」
「―ム」
扉をくぐり現れたのは、目立たないよう細心の注意を払い、チョイスした普段着に身を包むバーヴェン・ルース(復讐者・e00819)。案内されるままに席に着き、バーヴェンは背筋を伸ばしたままメニューを眺め、指差す。
「コーヒーとケーキを」
「かしこまりました、にゃん」
少し照れ臭そうに首をかしげ、ハートマークを作るヴィヴィアン。ウィッグの黒髪がふわりと揺れた。その時。
「では美味しくなる呪文を一緒にかけるにゃん! にゃんにゃんにゃん♪ はい、お嬢様も、ご一緒に!」
「にゃ……にゃんにゃんにゃん……です」
隣の席で、猫耳メイド喫茶の元々のメイドに促され、レカ・ビアバルナ(ソムニウム・e00931)が恥ずかしがりながらもにゃんにゃんラテに魔法の呪文をかけていた。
「―ム。あれは、やるのか?」
バーヴェンの問いに、ヴィヴィアンは目を瞬いた。
「ご注文の紅茶とスコーンのセットでござる……にゃ」
たどたどしい言葉遣いで注文の品を運んでいくのは不動峰・くくる(零の極地・e58420)。自前の忍装束の上からメイド服を着たのだが、マフラーは外していない。メイド服にマフラーという不思議な出で立ちではあるが、案外無くはない感じに仕上がってはいる。
「忝ない。では、そこに」
口数少なく答えるのは葛葉・影二(暗銀忍狐・e02830)。口当てを外していないが、どうやって紅茶とスコーンを口にするのか、少し疑問に思わないでもない。
「……何か、用か?」
じっ、と見つめるくくるに問う影二。くくるはにかっと笑って、首を振る。
「なんでもないでござる……にゃ!」
そして、さっと踵を返した。
「世の中には猫耳喫茶なんてものがあるんじゃのぅ……」
不思議そうな顔で店内を見回しつつ、ララ・フリージア(ヴァルキュリアのゴッドペインター・e44578)は呟く。そこへ、ララの頼んだケーキセットが運ばれてくる。
「お待たせいたしましたにゃん」
運んできたのは、同じくメイド喫茶の従業員として潜入した伊礼・慧子(臺・e41144)。いつもはシニョンにしている艶やかな黒髪を真っ直ぐ下ろし、その所作は折り目正しく、正統派猫耳メイドといった風情だった。
「ほう……」
ララはその姿と運ばれてきたケーキと、慧子や他のメイドを見て、目を輝かせる。
「猫耳メイド喫茶……ありじゃな」
そして、ぽつりと呟いた。
そこへ、元々狙われる予定だった黒髪メイドに、ヘアアレンジとメイクを変えて清楚系で無いように振る舞ってもらうか、休んでもらうか、と説得してきた瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)。
ちなみに、彼女は休むことを選択した。
それと同時に、他のスタッフや店長にも事情を説明した。元々客の少ない時間帯ではあったが、店内には数人ではあるが、他の客もいる。しかし、全員に説明し、協力を仰げば違和感が生まれ、もしかしたら予知通りの結果にならないかもしれない。その旨を説明した所、客も含めた全員の安全を保証してもらえるのなら、とスタッフ達は全面協力の意を示してくれた。
からんと鳴ったドアに目を向けた慧子は、一仕事終えた右院を見て一瞬目を丸くした。
「えっ……」
ひら、と手を振った右院に、慧子は気を取り直し、若干ひきつった笑みを浮かべた。
「おかえりなさいませにゃん、ご主人様」
「へぇ……なかなか似合ってるね」
にっこり笑って言う右院に、慧子は慌てたように駆け寄る。
「兄さん、仕事中だから……!!」
ふふ、と微笑ましげに目を細める右院に、慧子は顔を真っ赤にする。
「もうっ……!!」
「にゃん、は無いのかな?」
そう問う右院に、慧子は目を見開き、そして。
「…………にゃん」
小さく付け足した。その時、ぱらりと天井から何かの欠片が落ちてくる。
「ん?」
右院が首を傾げ、天井へ目を向けた瞬間。
「もう黙って見てられんでござる!!!!!」
バキィッ、と天井を突き破り、紺色と黒色の影羽衆の螺旋忍者が現れた。
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「清楚系猫耳メイドさんに兄さんと呼ばれるなど……言語道断!!!!」
そう叫び、黒色の螺旋忍者は氷結の螺旋を右院の足元へ向けて放つ。
「くっ、思ったより早い……。まだメニューも確認できていないのに……!! でも、狙い通り!!」
右院はにやりと口角を上げ、隠し持っていた日本刀を抜き、攻撃を受け止める。しかし、受け止めた螺旋を中心にして広がる氷に、右院は顔をしかめた。
「さあ一緒に行こう、手と手を取って みんなの気持ちが集まれば、迷いも恐れも吹き飛んじゃうよ」
そして、店内に満ちるのは黒髪ウィッグを投げ捨てたヴィヴィアンの歌声。
「な、なん……なんという事でござるか?! 猫耳メイドさんの黒髪が……偽物?!」
明るく希望に満ちた歌は、右院の受けた傷も広がる氷も癒していく。
「あなたたちの企みは、あたしたちケルベロスが止めるから!」
その言葉に、呆然としていた店内の客達がざわめきだす。
「ここにいる全員、非常階段から逃げろ。大丈夫だ。お前達の安全は、拙者達が守る……絶対に」
そう指示を出しながら立ち上がる影二の手には、淡い白色に輝く霊力を纏った刀。影二のその言葉に、前もって事情を聞いていたスタッフ達も何も聞いていなかった客達も、居る住まいを正す。
「俺たちはケルベロスだ。安心していい」
その背を押すように発せられたバーヴェンの言葉に、客達が安堵したように息を吐く。そんな客達の様子に、店長は今がチャンスとばかりに口許に手を当て、言う。
「では、慌てずに避難して下さい」
「皆様、店長さんの指示に従うよう、お願い致します」
レカはそう声を掛けると同時に、殺界形成を発動する。本能的な恐怖とケルベロス達の指示の元、スタッフ達は避難誘導を行い、他の数人の客達は素早くそして礼儀正しく非常口から外へと逃げていく。そちらへと螺旋忍者二人の視線が向いたのを見て、影二は鋭く叫ぶ。
「貴様らの相手は……拙者達が務めさせて貰う!!」
そして、影二は構えた刀を非物質化し、霊体のみを汚染破壊する斬撃を放った。その一撃は、黒色の螺旋忍者へと命中する。
「くっ……しかし、こっちの猫耳メイドさんの黒髪は本物っぽいでござる!!」
紺色の螺旋忍者は腰の日本刀の鞘に手を添え、鋭い視線を向けた。
「黒髪メイドさんは逃がさんでござる……!!」
「―ム。そうはさせん」
螺旋忍者が日本刀を抜くより早く、バーヴェンは鉄塊剣を振りかぶる。
「せめて祈ろう。汝の魂に……救いアレ!!」
地獄の炎を纏った鉄塊剣は、紺色の螺旋忍者の身体を真っ二つに斬り裂く勢いで振り下ろされる。
「ぐうっ……!!」
紺色の螺旋忍者が姿勢を崩した隙を突くように、メイド服のくくるが両腕のガントレットを構え、黒色の螺旋忍者へ向けて走る。
「罪なき子供らを拉致して洗脳・改造とは、許せる所業ではござらん! 拙者の『轟天』、『震天』の力にて、打倒してくれるでござる」
子供ら、という表現が正しいかどうかは不明だが、とにかくその怒りは本物だ。
「氷か、炎か、雷か……選ぶでござる! ……お主らの一番嫌な方法で料理してやるでござるから」
その視線の先の黒色の螺旋忍者は顔を歪め、防御の姿勢を取るがしかし、螺旋忍者の返答は無く、そしてくくるにも最初から返答を待つ気は無く。
「左腕『震天』、氷結粉砕機構稼働。唸れ絶対零度の氷刃! 凍結手裏剣!」
左腕の震天を起動し、巨大な氷の手裏剣を形成。黒色の螺旋忍者へと投げつけるが、しかし。
「そうはさせんでござる!!」
間に割り込んだ紺色の螺旋忍者がそれを受け止めるが、投擲の勢いで吹き飛ばされ、壁に叩き付けられた。
「ぐあっ!!」
次の瞬間、炸裂した氷の手裏剣は、紺色の螺旋忍者の熱を奪い、凍結させていく。
「紺色の!!」
慌てた黒色の螺旋忍者は、紺色の螺旋忍者を目で追い、舌打ちを一つ。
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ケルベロス達の猛攻に、黒色の螺旋忍者は顔を歪め、呟く。
「圧倒的に不利でござる……撤退も視野に入れて……しかし清楚系猫耳メイドさん……っ!!」
じりじりと後退する黒色の螺旋忍者へ、ララは銃口を向けた。
「猫耳喫茶で働く者は、ここでなければそなたらが気に入るようなパフォーマンスは発揮せぬと思うぞ」
「そんな事はきっと無いでござる……猫耳メイドさんはいついかなる環境においても、猫耳メイドさんなのでござる!!!!」
躍起になって言い返す黒色の螺旋忍者へ向け、ララは引き金を引いた。
「これの実験台になるといいのじゃ」
「話してる途中は卑怯でござ」
言い終わる前に着弾した拘束弾は重力を発生させる。
「るぅっ」
身体にかかる過剰な重力に顔をしかめる黒色の螺旋忍者へ、レカは矢を番える。そして。
「外しません。どうか、お覚悟を」
そして連射された氷を受け、黒色の螺旋忍者は凍りつき、程無くして砕け散った。
「黒色の!! くそっ……ケルベロスども、許さん!!」
壁に手を着き、立ち上がった紺色の螺旋忍者の瞳には、怒りが宿っていた。そして構えた日本刀は、天井の電灯の白い光をきらりと反射する。
「嘆きの妖精の導きは、栄光の死へ至る」
そんな紺色の螺旋忍者へと、右院はバンシーの傷嘆を放つ。
「ぐう……!!」
バンシーの泣き声と同じ作用をもつ引っ掻き傷に苦しむ螺旋忍者だが、未だ膝を突く迄に至らず。むしろ、このままでは終わらないとばかりに、力強く刀を握った。
「黒色の……仇っ!!」
渾身の力で放たれた弧を描く斬撃は、くくるが受け止めた。
「逆恨みもいいところでござる……っ!!」
がくりと姿勢を崩したくくるへと、ヴィヴィアンがすかさずサキュバスミストで回復を施していく。その横を、影二が姿勢を低く、駆けていく。その腰元には鞘に納められたままの二振りの刀。
「っ……やる気でこざるな!!」
迎え撃つ姿勢の螺旋忍者の視線の先で、影二の姿は螺旋状の気流に包まれ、姿を消す。
「何……」
螺旋忍者がたじろいた、その瞬間。
「実は虚であり、虚は実……我が刃は影を舞う」
死角に回り込んだ影二の刀が、螺旋忍者を斬り裂く。影二は刀の血を振り払い、螺旋忍者に背を向ける。
「……討伐完了」
影二は静かにそう告げた。
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「せめて祈ろう。汝の魂に幸いあれ……」
バーヴェンは螺旋忍者を倒した付近で小さく呟き、それから床の凹みをヒールで補修する。
他にも、螺旋忍者がぶち破った天井や、壁やその他諸々、破損した箇所などをヒールで直し終えた頃、スタッフ達が帰って来た。
「直してくださったんですか? ありがとうございます」
頭を下げる猫耳メイドさんに、レカは首を横に振る。
「いえ、お気になさらず……それよりも、皆様ご無事で安心致しました……! 先程は素敵なおもてなしをありがとうございました」
深々と腰を折るレカに、猫耳メイドはびっくりして目を丸くし、それから先程のレカと同じように首を横に振った。
「黒髪ロングの清楚系……初めてなってみたけど結構楽しかったな。またやってみたいかも」
ヴィヴィアンは今日の格好が案外気に入ったらしい。集まった猫耳メイド達を眺めつつ、呟いた。スタッフ達が全員無事だったのを確認してから、数歩すたすたと歩き、扉から外に出てたくくる。そして、くくるはメイド服姿のまま、懐から煙管を取り出す。
「仕事上がりの一服は身に染みるでござるにゃ」
そう言って、目を細めた。
その頃、店内では。
「修理代になる故、此方を使うと良い」
影二は店長にそう言ってケルベロスカードを手渡した。
「いえ、ここまで直していただきましたから」
そう遠慮する店長に、影二はもしかしたらこれから不具合が出る箇所もあるから、と言えば、店長は頷き、礼を述べつつ受け取った。
「では……せめてお礼に、ご馳走させていただいてよろしいでしょうか。皆様どうぞお席に」
店長の厚意を素直に受ける事にしたケルベロス達。
「店長……あ、このお店の店長ではなく、こちらの……」
いつもの癖で、向かいに座る右院にそう言い、慧子はメニューを向ける。
「何を頼みますか?」
「……どれも興味深い、けど……このニャンニャンスペシャルなんてのは」
謎のメニューを指差す右院に、慧子は目を丸くする。
「え……それを頼むんですか?」
「今後の参考になるかと」
そう言う右院に、慧子は微妙な顔で答える。
「多分……参考にはならないと思いますけど」
えぇ、と渋りながら尚もメニューを覗きこむ右院と、無難にニャンニャンラテを勧める慧子。静かな攻防を他所に、ラテはぱちんとメニューを閉じて、スタッフに手を上げる。
「にゃんにゃんケーキセットが良いのじゃ! よろしくなのじゃ」
楽しみにしていた、と笑うララに、他のケルベロス達も同じように顔を綻ばせる。
こうして、螺旋忍者による猫耳メイド喫茶の清楚系黒髪猫耳メイドを狙う事件は終わりを告げたのだった。
作者:あかつき |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年10月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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