城ヶ島強行調査~隠密の刻

作者:犬塚ひなこ

●潜入捜査
 鎌倉奪還戦後、ドラゴン勢力は三浦半島南部の城ヶ島を制圧した。
 半島を拠点化した現在、城ヶ島の外に出たドラゴン達はほとんどがケルベロスによって撃退された。そのためドラゴン達は守りを固め、配下のオークや竜牙兵、ドラグナー達による事件を引き起こしていると考えられている。
 そして、これまでの状況を説明したセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は、現状を語った。
「三浦半島は多数のドラゴンが生息する拠点なので攻略は難しいと考えられていました。ですが今回、皆さんからの作戦提案が多数あり、調査を決行することになりました」
 危険な任務ではあるが行う価値は十分にある。
 セリカは提案者のひとりがカリオストロ・オーバークロック(不可逆の針・e14475)であると話した後、説明役を彼に任せた。
 
 白髪交じりの髪に軽く触れ、カリオストロは仲間を見渡す。
「元は城ヶ島周辺でドラゴンの侵略がないか警戒し巡回を行いたいと考えていたのですが、そうするよりも潜入調査をしてしまう方が早いと結論付けました」
 学者然とした様相の彼は自分の考えを語り、どうだろうかと問いかけた。
 しかし、城ヶ島を正面から攻略する事は難しい。
 そのため、まずは小規模の部隊を多方面から侵入させ、内部の状況を調査してくる事が必須となる。そうすれば城ヶ島の敵の戦力や拠点の情報が判明し、本格的な攻略作戦を立案することが可能となる。
「今回は潜入する為の方法と、何を調査していくかが重要になります」
 城ヶ島への潜入方法や、どんなことを重点的に調べるかは部隊次第となる。だが、多数のドラゴンが警戒する空域にヘリオンで侵入することは自殺行為になるので不可能だ。
 その代わり、小型の船舶や潜水服、あるいは水陸両用車程度ならば用意できるので作戦に応じて申請が出来る。事前準備はお任せください、とセリカが手を振り、カリオストロも必要なら申し出て欲しいと告げた。
「しかし、ドラゴン達がいる以上は調査も簡単ではないでしょう」
 敵に発見された場合、高確率で戦闘になってしまう。
 更に戦いになれば戦闘音を察した別のドラゴンがやってくる可能性も高い。そのため、それ以上の調査を行うことはできなくなるだろう。
「ですが、戦闘がすべて無駄というわけではありません。できるだけ派手に戦えばこちらが目立ち、他の調査班が見つからないようになる援護にも成り得ます」
 自分達が囮になって他部隊を活かすのも作戦のうち。つまり、最低でも情報を持ち帰るのは一部隊でも構わないということだ。
 ドラゴンはとても強力なため、正面から戦って勝ち続けることは難しい。
 他班の援護代わりに引き付ける攪乱行動も大事だが、引き際を誤れば最悪の事態もあるかもしれないので撤退タイミングの見極めが肝心だ。しかし及び腰になって撤退条件を緩くしすぎしてしまうと、情報も得られず、敵も引き付けられずただ逃げ帰ってきたという結果になるので注意しなければならない。
「この調査はきっと今後の標になるものです。気を引き締め、事に当たりましょう」
 危険は大きいが、三浦半島とドラゴン勢力の行方はこのミッション次第となる。カリオストロは真剣な眼差しと共に、仲間達に信頼を向けた。


参加者
月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132)
ナレイド・ウィンフィールド(月追い黒狼・e00442)
アジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)
アストラ・デュアプリズム(グッドナイト・e05909)
カリオストロ・オーバークロック(不可逆の針・e14475)
リルカ・リルカ(ストレイドッグ・e14497)

■リプレイ

●迎撃
 視界に入ったのは三浦半島から伸びる城ヶ島大橋。
 真っ直ぐに続く橋を横に、島へと向かう船はエンジン音を響かせながら進んでゆく。小型船舶を操縦し、ヴォルフ・フェアレーター(闇狼・e00354)は周囲を見遣った。
 同じく大橋側からの突入を試みたのは数班。
 自分達を含めた船が二艘、水陸両用ホバークラフト、漂流物に偽装されたボートが一艘ずつだ。大橋は城ヶ島の玄関口ともなっており、実質的にこの潜入は真正面からのアプローチとなる。
 揺れる船の上、アストラ・デュアプリズム(グッドナイト・e05909)はスマートフォンで島の様子を映した。
「ドラゴン達が沢山いる島での陽動は怖いけれど、ボクなりに頑張るよ」
 その言葉を聞いたリルカ・リルカ(ストレイドッグ・e14497)も頷き、思いを強める。
 鎌倉の一件はいままで我慢しっぱなしだった地球側の第一歩。
 それならばこれは二歩目。ここからどこまで切り込めるかが決まる大事な局面だ。
「自信があるわけじゃないけれど、やらないと」
 リルカが気合を入れる中、アジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)は上陸予定地であるとある店の駐車場との距離を計った。
(「たとえ俺が倒れても、仲間皆を無事に帰す。これが俺の、今回の役目だ」)
 胸中で思いを強めたアジサイは先に見える陸地を瞳に映す。
 カリオストロ・オーバークロック(不可逆の針・e14475)も双眼鏡を用い、周辺の状況を逐一確認していった。すると――。
「おや、あれは……」
「どうやら察知されたようだな。敵影だ」
 カリオストロが疑問の声を零すと同時にアスベル・エレティコス(残響・e03644)が一点を指差す。アスベルが示した先には、橋の周囲で警戒していたと思われる三体のドラゴンが見えた。
 赤鱗の竜、蒼鱗の竜、そして紫鱗の竜。
 月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132)はコキンメフクロウのポルテをファミリアロッドへと変え、こちらに向かって飛んでくる三体のドラゴンを見据えた。
「おそらく船上での戦いになるだろうな」
 オルトロスのリキをそっと撫でた朔耶は敵を見遣る。ナレイド・ウィンフィールド(月追い黒狼・e00442)は軽い溜息を吐きながらも、これも運命だと実感した。
 真正面の突入を選んだのだから、戦いもまた正面からが良い。見れば、橋には壁歩きで隠密に潜入しようとする班がおり、漂流物を装った班のボートは波に乗って隠密上陸を目指している。きっと、彼等を無事に陸に辿りつかせるのが自分達の役目だ。
「陸地までは行けそうにもねェな。だが、それならそれで派手に暴れてやろうぜ!」
 ナレイドが腕を振りあげると、その風貌が狼男めいたものへと変じてゆく。
 波に揺らぐ船の上、ドラゴンとケルベロスの視線が重なり――そして、戦いが幕開けた。

●使命と役目
 船に乗るケルベロス達は迎撃の意志を見せ、上空のドラゴンを振り仰ぐ。
 一体目の赤鱗の翼竜が先ずホバークラフトに乗る班を狙って翼を広げた。二体目の雷の力持つらしき蒼い竜は隣の船を狙い、三体目の毒々しい紫色の竜はヴォルフ達の船に狙いを定めているようだ。
「俺達はあちらだな。さしずめ毒竜といったところか」
 呟いたヴォルフは船を操縦し、紫のドラゴンへと船体を寄せる。迫り来るドラゴンは飛行しており、近距離攻撃は届かないだろう。
「遠距離での打ち合い勝負になりそうですね。皆さん、気を付けてください」
 カリオストロは冷静に状況を判断し、仲間に呼び掛けた。竜語魔法を詠唱するカリオロストロに続き、頭上の毒竜を見上げたリルカは思いきり派手に攻撃してやろうと狙う。
「大盤振る舞い、持っていけっ!」
 刹那、装填された全銃弾が敵に叩き込まれてゆく。リルカの一撃が激しい音を立てて爆発を起こしていく最中、ドラゴンも毒のブレスを吐いてアジサイを狙った。
 毒が彼を蝕んでいく中、アストラはスマートフォンを弄って癒しの力を発動する。
「えっと戦闘中なう……かな」
 コメントの弾幕が超スピードで送信され、なんやかんやで毒が取り払われていった。
 ミミックのボックスナイトは主人に変わって攻撃を担当し、偽物の財宝をばらまいて敵を惑わせていく。
「船上から動けないってのが気に入らねェが……」
「そもそも、ドラゴン風情が地球の土地を占拠しようとは、不愉快極まりない」
 ナレイドも螺旋の氷縛波を放ち、続いたアスベルは爆炎の魔力を込めた大量の弾丸を連射した。更に朔耶が魔法の矢を紡ぎ、リキと共に敵へと狙いを定める。
「リキ、合わせていこか。ほな頼むな」
 その名を呼ばれたオルトロスは神器の瞳で敵を睨みつけた。同時に放たれた矢がドラゴンを貫き、衝撃を与える。
 そのとき、別所から激しい音が響き渡った。
 アジサイが視線を向けた先には赤竜を振り切って猛スピードで陸地へ向かうホバークラフトの姿が見える。アストラは他班が上陸を目指して離脱したのだと理解し、アジサイも自分達が相手取る毒竜を引き付けておかねばならないと察した。
「――お前を殺す。故に俺を殺せ」
 アジサイは自らの怒りを込めた砲弾を真っ直ぐ敵に撃ち込み、自身との殺し合いを望むように仕向けた。その一撃は怒りを引き起こすには至らなかったが、注意を自分達に向け続ける狙いは成功したようだ。
 ヴォルフも気狂いの暗殺の名を冠する一閃を毒竜へと差し向ける。名の通り、目標物を何処までも追い詰め攻撃する事だけを目的とした一撃はドラゴンを捉えて離さなかった。
「待て、あの赤竜……」
「まずいな、ドラゴンがあっちの船に取り付いてしまったみたいやな」
 ヴォルフが眉をしかめ、朔耶がもう一艘の船の様子を皆に報せる。
 本当ならば、二体のドラゴンを同時に相手にすることになった他班の助けに向かいたかった。だが、ナレイドはそれは出来ないと察して奥歯を噛み締める。
「邪魔なンだよ、テメェ!」
 ナレイドは上空の紫竜に毒づき、怒りをあらわにした。他班の助けに向かおうと狙ったとしても、あの毒竜がそれを阻もうと動くだろう。ナレイドは舌打ちしながらも甲板を蹴り、炎を纏った一撃をドラゴンに浴びせかけた。
「一刻も早く全てを駆逐したくはあるが、それは未だ時期尚早というもの。まずは此度の勤めをしかと果たすとしようか」
 アスベルも今は目の前の敵を倒すことに集中しようと判断し、御霊の殲滅砲を放った。
 船上での戦いは更に巡り、毒の吐息がケルベロス達を容赦なく襲う。
「流石に辛いね。でも、まだまだ……!」
 毒を受けたリルカは体力が奪われていく感覚に身を震わせたが、気力を振り絞ってアームドフォートの主砲を敵に差し向けた。次の瞬間、放たれた光線が竜の翼を貫く。
 敵が怯んだ隙を突き、アストラはネットに心暖まるエピソードを投稿した。すると、リルカの毒が再びなんやかんやで癒されていく。
「そろそろ帰りた……何でもないよ!」
 思わず自宅警備員としての本音が漏れそうになったが、アストラは首を振って自らの使命を思い返す。ここで頑張らなければいつ頑張るというのか。その思いを体現するかのようにボックスナイトがぴょこんと跳ねる。
 そして、アジサイが更なる一閃をドラゴンに打ち込み、敵の力を一気に削り取った。
「その爪、その尾。力を殺がせてもらう」
 アジサイは好機が生まれたと感じ、攻撃の機を得たカリオストロへと合図を送りながらもう一撃を敵へと放った。刹那、カリオストロの招来した黒き触手が毒竜に迫る。
「障害となるのならば屠らせて頂きましょう」
 表情を崩すことなく、淡々と紡いだカリオストロは敵をしかと見据えた。まだ勝負の行方は分からない。それでも、仲間だけは生かして返す。
 その気概は強く、静かな気迫となって戦場へと巡っていった。

●急転
 頭上から放たれるブレスに対し、ケルベロスは攻撃を打ち返し続けた。
 両者ともに遠距離からの攻撃であるために決定打はなかなか見えない。だが、アスベルは毒竜が徐々に弱っているという手応えを感じていた。
「この流れならば我輩達が勝て――いや、拙いぞ」
 アスベルは途中まで言いかけていた言葉を止め、横手を見遣る。リルカもはっとして隣で戦っている船の異変に気付いた。
「見て、向こうの船に取り付いてたドラゴンが船ごと沈んでいくよ」
 倒れた赤竜が船と一緒に沈んでゆく姿を見つめ、リルカは皆に呼び掛ける。
 とっさにアストラとナレイドが他班の仲間の安否を案じたが、どうやら彼等は沈む前に船から脱出したようだ。
 だが、隣の船と戦っていた敵は二体だったはずだと気付いたヴォルフは空を振り仰ぐ。
「上空の方の蒼いドラゴンが来る。……備えろ」
 ヴォルフの予想通り、蒼い雷のドラゴンがこちらに向かってきている。
「向こうが頑張ってくれてたンだ。次は俺達がやる番だな!」
 ナレイドは身構え、毒竜と雷竜との同時戦闘を覚悟した。飛行しながら船上のケルベロスを狙う二体のドラゴン達はこれまで以上に激しい攻撃を行ってくるだろう。事実、リキは既に力つきて倒れている。
「まずは毒竜からや!」
 朔耶はリキの分まで一気に攻め込もうと決め、弱ってきている紫鱗のドラゴンを狙い撃った。だが、二体相手となれば癒しの配分もこれまでと同じではいけない。
 アジサイはヒールドローンを操り、味方を警護させてゆく。
「行け、守りを固めろ」
 彼の言葉に呼応するようにドローン達が前衛の補助を行った。アストラもバラージストリームを発動させ、皆の癒しを担う。片方のスマホで状況を録画し、もう片方のスマホでコメントを送るアストラは最早面倒がってなどいない。
「死ぬ気でやれば……何だってできる」
 少女に続いてミミックが黄金をばらまき、二体の敵を惑いに誘っていった。
 カリオストロも二体同時の戦いという危うさの上で、極冷静に戦況を考えてゆく。たとえここで負けたとしても、次が勝てばいい。
「いざというときは――」
 暴走も視野に入れるのだという言葉は胸の奥に仕舞い、カリオストロは魔法の光線を放っていった。それによって毒竜が石化の呪いに包まれ、がくんと高度を落とす。
「一気に片をつけてやるか、っと……アイツ、逃げてくぜ!」
 ナレイドは敵の異変に気付き、尻尾の毛を逆立てる勢いで叫んだ。その言葉通り、弱り切った毒竜は逃げ去るように半島の方へと飛んでゆく。
 撃破できなかった事に悔しさを覚え、ナレイドとアスベルはどうするべきかと視線を交わしあった。目の前に残っているのはほとんどダメージを与えられていない雷竜のみ。
「追うことは出来ぬな。それに、向こうを見ろ」
 戦闘中も周囲の警戒を行っていたアスベルは、敵影が現れたと告げる。
 新たに城ヶ島から飛来してくるドラゴンは三体。このままではこの船は四体もの敵に囲まれてしまうことになるだろう。
 それだけではない、自分達以外のチームも迎撃されてしまう。
 同じことに気付いたケルベロス達の心はそのとき、既に決まっていた。
「撤退作戦に変更だね。それから……全力で派手に騒いで陽動しようッ!」
 リルカは瞬時に判断を下し、朔耶をはじめとした仲間達も頷きを返した。そして、朔耶は身構えながらヴォルフに願う。
「義兄、また船の操縦頼むな?」
「言われずとも分かっている」
 ヴォルフは即座に運転席へと戻りながら答えた。刹那、スピードを上げつつターンした船が大橋から大きく遠ざかる進路を取る。
 波飛沫をあげて海上を走る船。それを追いかけて飛翔する四体のドラゴン。
 自分達が城ヶ島に上陸することは叶わない。
 だが、それでも構わないとカリオストロは感じていた。船を攻撃しようと迫る竜達に対し、カリオストロは全力の魔力を紡ぐ。
「其が過去に囀るは狂乱狂想――。侵し、貪り、喰い尽くし、汝自らの手で己が喜劇を幕引くがいい」
 己の躯体を一個の楽器として放つ音狂魔術が周囲に響き渡り、蒼竜を穿った。
「これ以上の被害は、食い止めねばなるまい」
 攻撃によって激しく揺れる船体の上、アジサイは癒しの力を広げた。
 たとえ自分達がどうなろうとも陽動は果たせる。襲い来る敵の一撃は強力なれど、この仲間達とならば最後まで戦える気がした。

●脱出劇
 解き放たれるブレスが船の一部を削り取り、船体が大きく歪んだ。
 大橋から数十メートル離れた現在、既に船も限界だ。いつかはドラゴン達に追い付かれてしまうことは分かっており、アジサイとナレイドはそのときに向けて準備を行った。
「こちらは準備が出来た。用意はいいか?」
「ふふん、派手にやらかすといえばコレしかねェよな。行くぜ!」
 発煙筒を手にしたアジサイの声に尻尾を振り、ナレイドは用意していた花火を掲げる。
 そして――。
 船を操るヴォルフが最大スピードまで速度を上げたと思った刹那、空に向けて幾重もの花火が打ち上げられ、大きな音を立てながら青空で花ひらいた。
 同時に発煙筒から煙が朦々と吹き出し、船を覆い隠す。
「皆さん、今の内に船から降りましょう」
 敵の意識が花火と煙に向けられている今がチャンスだとカリオストロが呼び掛け、船の縁を大きく蹴り上げる。アスベルは手を伸ばし、脱出しようとアストラを呼ぶ。
「デュアプリズム嬢、こちらだ!」
「うん、もう帰ろう!」
 アストラはボックスナイトを連れ、思い切って海に飛び込んだ。
 更にアジサイとナレイドが続き、船がそのまま進み続けるように設定したヴォルフも朔耶を伴って船を脱出する。
 自然と最後になったリルカはぎゅっと拳を握り、一気に身を投げた。
(「無事に帰らないといけない。皆には居場所がある。勿論、あたしだって――」)
 水中は冷たく、傷に滲みる。
 だが、リルカはドラゴン達が煙をあげながら海上を走る船を追いかけていく様をしかと確認した。その後、船は遠くの方で攻撃を受けたらしく、爆発と共に沈んでいった。
「……どうやら行ったようだな」
 波に逆らわぬよう身を潜めていたアスベルはほっとする。
 派手な仕掛けを行ったため、皆はドラゴン達に見つからずに済んでいた。ひとまずは城ヶ島とは反対側の陸地に向かおうと決め、仲間達は泳ぎ出す。
「映画のワンシーンみたいだったね」
「だな、『ケルベロス大脱出!』ってところか」
 ぷかぷか浮かぶミミックに掴まったアストラがぽつりと口をひらくと、人形態に戻ったナレイドがニヤリと笑った。アジサイは疲弊した身体を押さえながらも、全員が無事であったことに心から安堵した。
「さあ、何はともあれ陸地を目指しましょう」
 カリオストロは行く先を示し、微笑みあう仲間の姿を瞳に映す。
 ドラゴンは倒せなかったが、陽動作戦は果たすことができた。情報収集や敵の撃破は他のチームがやり遂げてくれるだろう。次の展開への道はきっと繋がったはずだ。
 確かな信頼と役目を遂げたという誇りを抱き、仲間達は広い大空を振り仰いだ。

作者:犬塚ひなこ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年11月24日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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