窓の向こうの小さな幸せ

作者:質種剰


「大分県郊外のデパートにて、『窓から覗く世界』をテーマにした展示即売会が予定されていたのですが……」
 小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が、表情を曇らせて説明を始める。
「デウスエクスの襲撃に遭ったのであります。人的被害が全くなかったのと、搬入前の商品が無事だったのは不幸中の幸いでありましたが」
 しかし、会場のデパートが見るも無残に倒壊してしまったせいで、即売会は中止。
「そのデパートの常連さんや展示即売会を楽しみにしてらした人々が、それはもうがっかりなさっていらして、おいたわしい限りなのでありますよ」
 崩れたデパートを全て元どおりに建て直すとなれば、何日かかるか知れたものではない。
「という訳で、ぜひ皆さんには倒壊したデパートのヒールがてら、展示即売会をお楽しみいただけたらと思います♪。
 デパートの修復を終えたら、開催者側がせめてものお礼の代わりにとすぐさま展示即売会を開いてくれる為、自由に買い物を楽しめるという。
「即売会はですね、『窓から覗く世界』とのテーマ通りに『窓のついた小物』ばかりが売っていて、どれもとっても可愛いのでありますよ!」
 封筒や便箋へ枠つきの窓の形に穴を開けたレターセット、同じく窓のついた箱入りハンカチ。
 蓋に窓がついて中が見える懐中時計や、窓つき表紙の手帳、窓や屋根がファンシーな家の形をした小物入れ。
 こちらは穴こそ開いていないが透明な窓のお陰で中の飲み物が仄かに見えるマグカップなどなど、窓のついたデザインなら何でも取り揃えているようだ。
「ではでは、皆さんのご参加楽しみにお待ちしてますね。皆さんのお気に召す窓つき小物が見つかりますように♪」
 注意事項は未成年者やドワーフの飲酒喫煙禁止、それだけである。


■リプレイ


 崩壊したデパート。
 ティアの歌う「ブラッドスター」が響く中、エリザベスは地面にゾディアックソードを軽く突き立て、すらすらと守護星座を描き始める。
「なんつうか、可愛い誘いだな……」
「ええ。声をかけましたら、皆様快く応じてくださいましたの。とっても楽しみですわ」
「まぁ、ヒールはしっかりとやらせてもらうな」
 その傍ら、それぞれの武器から魔導金属片を含んだ蒸気を噴出するのはリュシアンとべゼリアイト。
 薬液の雨を広範囲に散布すべく、無邪気に駆け回っているのはリアンだ。
 こうして修復活動を終えた旅団『雨花』の面々。
 早速窓つき小物を探そうと、臨時の展示会場へ足を踏み入れた。
「今日は両手に花っていうレベルじゃなくて、なんだか凄く華やかな人達とご一緒だな」
 リュシアンは、第一声にティアやペゼリアイト、エリザベスといった女性陣の美幌を褒めそやしてから、
「小さい子もいるし、のんびりとしたペースで動くとするか」
 リアンから目を離すまいと保護者らしい意識も持ちつつ、歩みを進めた。
「窓がついた小物……なんだか素敵だね。どんな窓があるかな」
 エリザベスもゆったりと微笑んで、店内を見て回る。
「僕は、マグカップを探そうかな? 窓の絵が描いてあるやつ。最近寒くなってきたからさ、あったかいものが恋しくて……。朝とか特にさ」
「お菓子とかキラキラをいれる小物入れ探すの♪」
 リアンは元気に宣言して、雑貨の並ぶ棚を探していた。
「リアン、迷子にならないように、大丈夫なら手を繋ごう」
 すかさずリュシアンが呼びかけ、兄妹のように手を繋いで隣を歩く。
 そんな彼らの後をついて歩くのはティア。
「……皆がどんなもの……好きなのか、興味があるのか、気になるから……」
 と、皆の買い物を眺めるだけでも楽しそうにしていた。
「リアンちゃん、ティアさん、早くない? 大丈夫かしら」
 ベゼリアイトは時々後ろを振り返って、2人の歩くペースを気遣いながらも微笑ましく見守っている。
「さて、今日は眼鏡ケースを探しにきたんだが……」
 リュシアンは、リアンと一緒になって日用品や雑貨の棚を物色していた。
「お、渋い紫のやつがあるな」
 シックなカーテンを思わせる紫の蓋は、半分ほど窓の木枠が見えるように細工が施されている。
 そして、カーテンつきの窓の中からは、黒い体毛の犬が顔を覗かせていた。
「……なるほど、これにするかな」
 まるで主人の帰りを待っているかのような犬の表情に惹かれて、ケースを手に取るリュシアンだ。
「リュシアンさん、あまりメガネのイメージないから意外なんだよ?」
「ん、そうか?」
 そんな彼を、リアンは不思議そうに見上げている。
「リュシアンさんのは眼鏡ケースなんですわね、とっても愛らしいわ」
 一方、ベゼリアイトは彼のセンスを素直に褒めた。
「眼鏡ケース……素敵……窓から見た景色はどんなものだろう……? 今度、教えて……?」
「おう。ティアは何かいいの見つけたか?」
 リュシアンがおもむろに友人の頭へ手を伸ばして問いかける。
 ティアは撫でられたのが嬉しいらしく、ほんの少し笑みを浮かべて、
「これ……星を入れるやつ」
 金平糖を入れる瓶を見せた。
 瓶自体は透明なガラス製で、窓のデザインにだけマット加工を施し、曇りガラス風に仕上げている。窓の端を彩るカーテンの白も繊細だ。
 下の方には緑鮮やかな草と茎が描かれていて、丁度金平糖を詰めれば花が咲いたように見える寸法だ。
「ふふ、眼鏡ケースに金平糖の瓶……どの窓も素敵。どの窓からも素敵な風景が見えそうだ」
「ええ、左様ですわね。それぞれリュシアンさんやティアさんによくお似合いのデザインですわ」
 エリザベスやベゼリアイトはティアのガラス瓶を前に、目を細めている。
「ティアお姉さんもかわいいものすき?」
 思わず同好の士を見る目になって、リアンはティアへ問いかけた。
「あ、これいいかな。かわいい」
 ふと、控えめに歓喜の声を上げるのはエリザベス。様々な食器が並ぶ陳列棚を探し始めて間もない時だ。
 見つけたのは、深い青色の壁に窓の絵が描かれたマグカップ。
 窓自体は透明なのだが、マグカップの内側が家の中の灯りを思わせるクリーム色である為、飲み物が入っていなくても一幅の絵画のように風景を成立させている。
「僕はこれにしようっと。明日の朝が楽しみだな」
 冬に向けて使うに相応しい、温かみのある冬景色だろう——と、エリザベスは満足そうに頷いた。
「ベスお姉さんの探し物は心も身体もあったまれそう?」
 リアンが背伸びして彼女の手元を眺める。
「エリザベスさんのは、マグカップ……まぁ、とっても使いやすそうね」
 感嘆の息を洩らすのはベゼリアイト。
「本当だ。エリザベスのカップもいいなぁ」
 リュシアンもそちらへ視線を向けて屈託なく笑った。
「そうだね。きっと明日から暖まれるよ」
 エリザベスがにこりと微笑み返して皆へマグを見せてあげれば、
「リアもキラキラにあう小物入れ見つけたの♪」
 リアンもキラキラと嬉しそうに瞳を輝かせ、小物入れを掲げた。
 それは、丸みを帯びたアーチ型で観音開きの窓がそのまま蓋になっている小物入れ。
 ガラスの食器棚をそのままミニチュアにしたような風情である。アクセサリーを無造作に入れるだけでも映えそうだ。
 加えて、お菓子を入れる為の蓋つき深皿もリアンは選んでいた。こちらは陶製で、蓋にビスケットを思わせる形の穴がくり抜かれている。
「ふふ、本当に色んな窓があるな」
「みんなと嬉しいの気持ちわけあいっこするの」
 エリザベスの優しい眼差しにリアンは満面の笑み。
「ふふ、そうね、幸せは沢山、わけあいっこできたらとっても嬉しいわ!」
 ベゼリアイトもこっくりと頷いた。
 そんな彼女か探していたのは、窓の形をしたピンバッチ。
 白い窓枠の中は濃い青色のレジン液で満たされ、さも満天の夜空を切り取ったかのような星々に見立てたラメが瞬いている。
「もしよろしければ、色違いで皆様にも」
 と、皆のイメージに合わせて見繕うのも楽しそうだ。
「ベゼリアイトさんは、ピンバッチ? ふふ、幸せのおすそ分け。ありがとう」
 エリザベスが、選んでもらった雪景色の映える窓を見つめて微笑む。
「へぇいいな、是非いただこうかな」
 リュシアンをイメージしてベゼリアイトが選んだのは、今にも太陽が顔を出しそうな青紫色のグラデーションが美しい、薄明の空が映る窓だ。
「ベゼリお姉さんは、とってもきれいなの探すの上手そう」
 そんなリアンの期待に応えるべく差し出したのは、白い砂浜の向こうに煌めく青い海やもくもく沸き立つ入道雲の眩しさを伝える窓。
「誰かと色違いの物、初めて……ありがとう……仲良しの証みたいで嬉しい」
 ティアは微かに目尻を染めて、青空の下に広がるピンクの花畑が映った窓を受け取った。


「ん……料理でヒールできる様になった……」
 さて、この日のリーナはいつにも増して修復活動にやる気満々であった。
「これでデパート直したり、かけらやガイバーンさんを治療したりできる……」
 それと言うのも、『召喚・混沌料宴』なる、回復にも攻撃にも使えて便利なグラビティを自力で編み出したからなのだが、あくまでそれはリーナ視点の話。
 兄のセイヤに言わせれば、
「頼む、ガイバーンにかけら。リーナの料理が恐ろしいグラビティに昇華したんだ。説得を手伝ってくれないだろうか」
 となる。
「……リーナや。今日はフローレスフラワーズにしてみてはどうじゃ?」
「え……? なんで……?」
「その〜ほれ、他にもヒールグラビティはあるのじゃから、食材を大切にせんとのう」
 キシャーと鳴く謎料理と化した時点で、セイヤとしては食材へお悔やみ申し上げたい心地だが、ここは詭弁を弄するガイバーンに任せた。
「ん……わかった。じゃあ……ガイバーンさんにかけらも、今日の分はまたいつかご馳走するね……」
「……」
 説得成功したものの要らん代償を背負わされて、思わずセイヤを睨む2人。
「しかし、ヒールでの修理時に毎回思うが、ヒールの弊害のファンタジー化についてはみんな気にならないのだろうか……?」
 慌てて話を誤魔化すセイヤだ。
「窓付きの小物……。マグカップとか窓から中身が見えたりするんだね……」
 ともあれ、リーナは小檻を誘ってお買い物を楽しむ。
「小物入れとかも可愛い……窓型の鏡とか可愛いし便利かも……」
 気の赴くままに可愛らしい小物を色々物色していたリーナだが。
「ん……下着……?」
 ふと下着コーナーを見つけて立ち止まった。
「窓付きの下着なんてあるんだ……。でも、窓付きの下着って……何で窓なんてついてるんだろう……?」
 心底不思議そうに質問されて、声もなく慌てふためくガイバーン。
「それは殿御がお手洗いなさる時に楽だからでありますよ。セイヤ殿のボトムスにも社会の窓がついてるでしょう。それと同じであります」
 小檻は嘘偽りなく事実を教えて、もう半分の事実、女性用の下着に於ける窓の用途については余計な事を教えずに伏せておいた。
「あ……そっか……」
 リーナは納得して買い物を続ける。
「あ……小窓型のロケットペンダント、可愛いな……。みんなの写真やにいさんの写真入れたり良いかも……」
 次に見つけたのはアンティークな設えのロケット。蓋をしたままでも窓枠の隙間から中の写真が見えるのは珍しい。
「……ガイバーン。この小窓付きの鉢植え、盆栽を植えるのにどうか?」
「うむ、水の捌け具合が解り易くて良いのう」
 男達は安堵して、小窓付きの植木鉢を物色する。
 加えて、セイヤは中の様子が見える小窓付きの調理器具も探して回った。
「どうしても実用性の方に偏るのは悪い癖だな」
 そうは思うものの、丸い窓のオーブンなど面白い物に当たると興味を抑え切れないようだ。

 一方。
「窓付の下着とか言うからどんなエロイ下着かと思ってたら、男性用のパンツとかの事かよ……」
 果たしてリーナへ対する小檻の説明が聞こえたのかは判らないが、がっくりと肩を落としているのは航。
(「そうだよな、社会の窓とか言うもんな。俺の期待を返せとかいうのは八つ当たりだよな。くぅ……」)
 年相応の若者らしく膨らませていた期待を裏切られて、内心悔しがる航は気づいていない。
 小檻がこそこそと隠れて自分用、即ち女性用の窓つき下着を購入していた事を……。
(「……っと、こんな事考えてるの悟られるわけにはいかないな。平常心平常心」)
 気を取り直してしゃんと背筋を伸ばす航だが。
「航兄は何でいきなり超がっかりした顔してるんですか」
 眠そうな声の天にツッコまれた。
「……何で航君は下着コーナーで急にがっかりしたんでしょう?」
 彼方もおっとりした声で首を傾げている。
 航の気分の浮き沈みなど、彼と付き合いの長い女性陣からすれば手に取るように判るのだろうか。
「窓といえば、おっぱいでパッツンパッツンになってできたシャツの隙間を天使の小窓って言うそうですね。どーでもいいですけど」
「天使の小窓か。あれは良い物dげふんげふん。いや、けしからんな、うん」
 ともあれ、天が話を変えてくれたのでそれに乗っかるものの、その内容からしても自分の思考を見透かされてやしないかと航の疑惑は残る。
「航君と月神さんは、何か欲しい物はありますか?」
 彼方は流石に何の衒いもなく、2人へ向かって微笑みかけた。
「欲しいもの? とりあえずそろそろ新しいスマホが欲しい」
「あ、いえ、この展示即売会の中でです」
 航に天然な答えを返されて、くすりと苦笑いする彼方。
(「航君には普段から装備を融通してもらったりしていますし、今回お誘い頂いた感謝の気持ちも含めて、また何かお返しをしたい所です」)
 1人だと修復活動へ行く機会がなかなか得られないと述懐する彼方が、律儀な決意を固める傍らでは、
(「面倒い。って言いたい所だけど、航兄からのお誘いなんてレアだし、ま、たまにはいっか」)
 月も似たような感謝の念を兄貴分へ対して抱いていた。
(「天城せんせーと話す機会も中々ないもんね。あーでも交流とかめんどくさーい! 何話せばいいのかわかんないー!」)
 とは言え、生粋の面倒臭がりである彼女の意識が、次第にコミュ症方向へ逸れていくのは仕方のない事かもしれない。
「懐中時計……は航君いつも持ち歩いてますよね。窓付きの」
 航の欲しそうな物を考えに考えて、ふと呟く彼方。
「あぁ、何だかんだ気に入ってるんだよな、これ。『銀月華』って言ったっけ?」
 航はベルトに引っかけていた銀の懐中時計を、ズボンのポケットから取り出して眺める。
 中央がガラス張りになっている銀の蓋へ彫り込まれた花のような模様が、繊細ながら冴えた陰影を放っている。
「ああ銀月華。大事にしてくださいね、それオーダーメイドで結構したんですよ。具体的には10連ガチャ50回分程」
 天が少し誇らしげに胸を張った。
「そうかそれは大事にしなきゃな……じゃなくて。値段はともかくその換算方法は何だ。一気に回した事あるのか50回も」
 航は目を丸くしてまじまじと時計を見つめ直したが、そこは熟練のツッコミ、天へ軽く手刀を入れずにはいられない。
「別に。ちょっと服に使い過ぎたらこれくらいいきますし」
「そりゃ、女の人はお洒落にお金かかるだろうし、服なら多少の出費も構わんけども、ガチャって……」
 妹分の散財ぶりを嘆きながら歩いていた兄貴分の目に、ふと留まった風景。
「あ、これいいな。オルゴール」
 それは、白い窓つきの城を模したオルゴールで、窓の中には夜空に浮かぶ満月が映っている。
 窓は左右に2つあって、右の窓からは自然豊かな峠の遠景が見えた。
「あら、可愛いオルゴール」
 オルゴールの蓋を開けた彼方の顔が綻ぶ。中は夜空の色と同じベロアの布が張られていた。小物入れとして使えるらしい。
 流れ出したのはロマンチックな夜想曲である。
「ふふ、では私も同じ物を一つ。お会計してきますね?」
「よろしくー」
「天城せんせーありがとー」
 かくて、航と天はお揃いの城型オルゴール——nocturneを彼方に買って貰ったのだった。


「窓付きティーカップに、窓付き懐中時計……!」
 可愛らしい小物に囲まれて、思わず歓喜の声を上げたのはマリオン。
「なるほど、窓から少しだけ中身が見えるんですね……! とっても素敵……!」
 銀の蔓草が巻きついた意匠の窓越しにティーカップの中を覗いて、感動に瞳を輝かせる。
「へぇ……時計の内部って、こうなっているんですか……ほぇ~~~……」
 アンティークな懐中時計の窓は上蓋と文字盤の二重になっていて、文字盤のガラスからは赤錆色の歯車達の噛み合う様子が見えた。
「こうして歯車を見ているだけでも楽しいんですが……頭の歯車吹っ飛んだうちの弟は何処に……」
 ふと、弟思いのマリオンが彼を探してきょろきょろと辺りを見回した、その時。
「姐さん! 写真立て買ってきました!!!」
 当のルイスは、一体どこで見つけてきたのか、鉄格子付き写真立てを掲げて、会場内を疾走してきた。
「……って……」
 いかにも裏社会の上下関係を臭わせる呼び方を大声でするルイスの企みが、今更解らぬマリオンではない。
「見て見てガイバーン殿、さっきルイス殿が姐御のお写真入れてたフレーム、可愛かったから買っちゃった♪」
 現に、周りでは自分の写真のせいで鉄格子フレームの売れ行きが伸びているとなれば、なおさら怒りもいや増すもの。
「……いやぁ懐かしいですね! 網走だったかな? それとも府中? あ、それとも病院のお世話になってた時でしたっけ?」
 ましてやルイスは1人でうんうんと頷き、ある事ない事——もとい、ない事ばかりをさも事実かのように語り出すものだから。
「おんっどりゃああああああああ!!」
 青筋立てたマリオンが、とうとう憤怒の形相でブチ切れるのも無理はなかった。
「なにお姉ちゃんの窓枠フォトフレームに鉄格子付けとんじゃああああああ!!」
 そして、マリオンの怒声を全く意に介さず、いつも通り勝手に話を進めるルイス。
「テーマは『窓から覗く世界』……なるほど、言い得て妙だなぁ……早く娑婆に出たい、娑婆に出たら今度こそ真人間になるんだって、しきりに言ってましたもんね、姐御……」
「誰が言うかヴォケエエエエエ!!」
 どうやらルイスの中では、雑居房仲間のマリオンは完全に更生ができず、出たり入ったりを繰り返している設定らしい。
「……全然駄目だったけど」
 ハッと鼻で笑ったのを皮切りに、ぶっふーwwwゲラゲラゲラwwwと大笑いするルイスの声からは、いわゆる大草原を生やしているのが目に見えなくても丸わかりだ。
「しかも等身大に引き延ばしやがって、鉄格子付いた窓から覗いているとか、何処だよここ!? 完全にやべー奴だろ!!!」
 そう。ルイスの巧妙なところは、マリオンの写真を鉄格子に合わせて引き延ばし、さも鉄格子つきの窓から顔だけが外を覗いているかのように仕立て上げた事だ。
「お前の頭の中身はマジでどうなってんだよ!?? 窓開けて見てやりたいわ!!」
 幾ら怒っても暖簾に腕押しな弟へ地団駄踏むマリオン。
「……さーて、アホ姉ちゃんで遊ぶのも飽きたし、窓付き植木鉢でも買って帰るかな~」
 ルイスはそんな姉貴分をほっぽって、さっさと園芸品売り場へ歩き出した。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年9月27日
難度:易しい
参加:12人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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