●定めを嫌う闇の影
静けさに包まれた、岡山県岡山市、金山山中。
昼だというのに、周りは鬱蒼としており、陽射しは木々に遮られている。
……そして、そんな山中を歩くのは……最早虫の息のオーク。
何処からやって来たのかは分からないが……このまま放置されていれば、死ぬ事は間違い無い。
……しかし、そんなオークを、冷たい目線で見つめる一つの影。
漆黒の黒衣に身を包み、白い肌の死神。
彼女は、死にかけのオークを見つめ……そして僅かに微笑む。
そして……オークがその場に蹲り、空を仰ぎ……死を待つばかりになった所で、そっと近づく。
その肩口に、球根の様な『死神の因子』を、そっと植え付けると共に。
「さあ、お行きなさい。そしてグラビティ・チェインを蓄え、ケルベロスに殺されるのです」
と、静かなる指示を与えると、オークは。
『……グガアアア!!』
と、目を見開き、叫び声を上げて……山を駆け下りて行くのであった。
「皆さん、集まって頂けた様ですね。では、早速ですが、説明を始めます」
と、セリカ・リュミエールは、集まったケルベロスらに一礼すると共に。
「今回、皆さんには岡山県岡山市の人里へと向かって頂きたいのです」
と指し示すは、岡山県岡山市の少し北側。
「ここに死神によって『死神の因子』を埋め込まれたデウスエクスが暴走している様なのです」
「この死神の因子を埋め込まれたデウスエクス……大量のグラビティ・チェインを得る為に、人間の虐殺を指示されています」
「もしも、このデウスエクスが大量のグラビティ・チェインを獲得してから死ぬ事になれば、死神の強力な手駒になるのは間違いありません」
「その為にも、このデウスエクスが人間を殺し、グラビティ・チェインを得るよりもは早くに撃破しなければなりません。皆さんにはこの対処をお願いしたいのです」
そしてセリカは。
「今回、死神によって傀儡となったのは、近辺で誰かによって瀕死の状態にさせられたオークです。一度は仕掛け、命も愚弄された存在ではありますが……今は死神によって暴走状態にさせられている様です」
「その結果、彼は体力の残り状況に厭わず、全力攻撃以外してきません。体力も暴走状態と共に一度は完全回復している様ですが……死神の因子に囚われた存在ですから、その残り体力状況には常に注意を払わねばなりません」
「普通にこのオークを倒すと、その死体から彼岸花の様な花が咲く事でしょう。そしてその花は咲くと共に、直ぐに煙のように消えてしまう様です……それは恐らく、死神によって回収された事を示す様です」
「しかし、デウスエクスの残り体力に対し過剰過ぎる程のダメージを与えて倒す事で、その死神の因子毎破壊する事で死体は死神に回収されずに済む様です。可能な限り、死神の因子を開花させずに仕留める様にお願いします」
「尚、オーク自身の攻撃手段ですが……普通のオークと同様、触手で手足を拘束する事で動きを封じ、更に凌辱する……という行動を起こす様です。既に自我を失っている様なので、男女問わずに目に付いたのを凌辱する様なので、ご注意下さい」
そして、最後にセリカは。
「最近の死神の動きには気になる所はありますが……これも、一つの死神の動きであるのは変りません。死神が強力になるのを防ぐ為、宜しくお願い致します」
と、頭を下げるのであった。
参加者 | |
---|---|
ヴォルフ・フェアレーター(闇狼・e00354) |
ラリー・グリッター(古霊アルビオンの騎士・e05288) |
リュセフィー・オルソン(オラトリオのウィッチドクター・e08996) |
チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323) |
宇原場・日出武(偽りの天才・e18180) |
七隈・綴(断罪鉄拳・e20400) |
細咲・つらら(煌剣の氷柱・e24964) |
浜野・真砂(本の虫・e41105) |
●掘り出す者は
岡山県岡山市、金山山中。
昼の刻だと言うのに、その山中には木々が生い茂り、灯も届かず、鬱蒼とした雰囲気を醸し出す。
ただ……そんな山中の陰鬱さよりも陰湿な、死者を操り、己が糧にしようとする死神と……その死神によって死を利用されし、虫の息のオークの出現の報を聞いたケルベロス達。
「ふーむむーんっ、何ともまたご趣味の悪い敵さんでいらっしゃるっ!」
「ええ、オークを強化して襲わせるだなんて、許せませんね!」
「そうそう。すーぐにえっちっちーな事をしてくるオーク、つららちゃんオークさんの事はあーんまり好きになれません!」
細咲・つらら(煌剣の氷柱・e24964)とリュセフィー・オルソン(オラトリオのウィッチドクター・e08996)の会話。
元々オークは死神に取り憑かれていない時からも女性を襲いかかる事で知られている。
しかし、今回のオークは、というと……死神の因子を植え付けられ、正気を失い……正しく目に映る者全てを凌辱の対象として、凌辱の限りを尽くすと言う。
「むむ。既に一度死んでいるというのに、それでも女性を襲うのですか。それに男も女も見境無いとは……なんとかは死んでも治らないという奴でしょうか。いや、治るどころか、もっと酷くなっている気がしますね」
と、宇原場・日出武(偽りの天才・e18180)が溜息を吐くと、それに七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)が。
「ええ。オークは見境なく女性を襲う厄介な相手でしたけど、死神の因子を加えられ、更に凶暴になってしまったら手の施しようがありません。せめて、死神の手駒にさせないようにしなければいけませんね」
ぐっと拳を握りしめて、決意。
そんな仲間達の会話に、ラリー・グリッター(古霊アルビオンの騎士・e05288)は。
「しかし、リュミエールさんの予知だと、オークがわたし達に倒される事も想定内っぽいんですよね……この死神の目的が何なのか……さっぱりです!」
胸を張るラリーに、チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)が。
「うーん……そうだね。でもこの死神の因子って何に使ってるんだろう? その調査もしないといけないから、ここで逃がす訳にはいかないねっ!」
ぴょんとジャンプすると、ロップイヤーと大きなお胸が揺れるチェリー。
……ともあれ、今回依頼としてケルベロスが来たからには、死神の傀儡となったこのオークを倒さねばならない。
「まぁさっくり死ねずに再利用されちゃうだなんていうのはさすがに可哀想ですねっ! これでは死後の夢身も悪かろうというものっ! 夢なんて見られないくらい、完膚なきまでにてってー的にっ! おやすみなさいをしてあげちゃいましょうっ!」
「そうですね! わたし達ケルベロスのやるべき事は変わりません! 悪は討ち! 策略は砕くまでです!」
つららとラリーも力強い言葉で、気合いを入れる。
そんな仲間達の決意を聞きつつも、目を閉じ、作戦のシミュレーションを何度も重ねていたのは浜野・真砂(本の虫・e41105)。
「……今回はメディック……周りに一般人は居ない様ですが、取りあえず戦闘区域に人が立ち入らない様にキープアウトテープを張って……オーバーキルが必要ですから、そこはクラッシャーさんにお任せするとして、直前にサポート、と……」
呟き続ける真砂に、ヴォルフ・フェアレーター(闇狼・e00354)が。
「大丈夫か?」
軽く声を掛けると、はっ、と気づいてこくりと頷く真砂。
「ええ……ヴォルフさんはクラッシャーですよね? 直前にサポートするので、トドメ前に一言、お願いしますね」
軽く微笑む真砂にヴォルフは。
「ああ、宜しく頼むな」
と、その肩を励ます様に、軽く叩くのであった。
●暴影
そして、人里から金山の方向へと向かうケルベロス達。
幸いな事に、人々が出歩いている事は余り無い……だが。
『……ウウウ……』
と、獣の様な唸り声が、遠くの方から聞こえてくる。
「……人外の声なのは間違い在りませんね。こちらでしょうか」
と綴が指し示し、ラリーとヴォルフが。
「分かりました! 急いで向かいましょう、一般人に害をなす前に!」
「ああ。人里に来る前に仕留めなければな」
と会話しながら、声のした、森の更に奥地の方へと進んで行く。
……そして、山中に分け入り十数分。
『……グゥ……グルルゥゥ……!!』
更に強い呻き声を揚げた人外の存在。
と、次の瞬間……傍らの樹を薙ぎ倒し、姿を現わす暴走オーク。
不意打ち気味の攻撃ではあったが……その一撃、咄嗟にチェリーが立ち塞がる様にして、迎撃のデスサイズシュート。
一撃を食らったオークが、間合いを取り直す様にバックステップ。
そしてその間に、残るケルベロス達が居並び……。
「それでは皆さん、宜しくお願いします」
「うん! さあ、ボクたちの力、見せてあげる!」
と後方についた真砂が、チェリーを一応オラトリオヴェールで回復。
体力全快である事を確認すると共に、続くラリーが。
「死神に回収させもしませんよ!」
と、サイコフォースの一閃で、確実に命中する一撃を放つと更に、リュセフィーもスターゲイザーで足止め。
そして綴は。
「色とりどりの爆発よ、皆の士気を上げて下さい!」
と、前衛陣に向けてブレイブマインの強化。
そして前衛陣が強化された所で、クラッシャーのヴォルとつららが。
「取りあえず、強力な一撃を当てていくとしよう」
「うん!」
そしてヴォルフがバレットタイムを使用し自己強化、一方つららは紅蓮大車輪による一閃を繰り出していく。
更にディフェンダーに属する日出武、リュセフィーのミミックが連携し、戦術超鋼拳と愚者の黄金を重ねていく。
そして次の刻。
……ただ狂気に包まれたオークは、理性的な行動をする事など無く、ただただ無差別に攻撃するのみ。
その触手を思う存分振り回し、男女問わず凌辱しようと暴れ廻る。
そんなオークの無差別触手を、身を呈して守り続けるチェリー。
「こ、このオーク……! もう死んでるっていうのに!」
触手が、胸の下へと潜り込もうと蠢いてくる。
顔を僅かに紅くさせながらも、その触手を力尽くで引き離すが……例え千切られようとも、オークは決して諦めない。
そして、そんなオークの凌辱をすぐ真砂がオラトリオヴェールか、『砂漠の宝』を掛けてキュア。
一度だけで上手く行かなかった場合には、更にリュセフィーもウィッチオペレーションを重ね掛けし、拘束攻撃から解放させる。
「ありがとうっ!」
とチェリーが感謝の言葉を紡ぎつつ、反撃へ。
「勇往邁進! ……逃げられるかなっ!」
と、『雷鳴拳聖の発勁』でホーミング効果の一撃。
更に日出武のフォーチュンスター、ミミックのガブリングが続き、噛みついていく。
そして綴が。
「オウガ粒子よ、皆の感覚を覚醒して下さい!」
とメタリックバーストの強化を付与する一方で、ラリーがグラインドファイア。
更にヴォルフとつららのクラッシャー陣が。
「さぁ、食らえ」
「ふふっ! どうしたのかな、もーっと頑張って欲しいな!」
ヴォルフは真摯に、一方つららは、何処か楽しそうに。
稲妻突きと、ジュデッカの刃の連携攻撃によって、オークの体力を確実に削り取っていく。
……一度暴走状態になった結果、体力全開にまで戻ったオーク故、中々死なない。
とは言えオーバーキルしなければ、死神の糧になってしまう訳だから……常に油断が出来ない状況なのは変らない。
そして。
「輝く刃をもって……正義に祝福を、邪悪に裁きを!」
とラリーの『Sacred Energy Shooter』に、リュセフィーのライトニングボルト。
更に綴がジョブレスオーラで、チェリーにBS耐性を付与し、拘束から逃げやすい様にする。
そして……オークの不意の登場から十分ほどが経過したその時。
『グ……アアゥ!!』
日出武の攻撃に、今迄とは違う咆哮を上げたオーク。
「む……そろそろ限界の様だな」
と日出武の言葉に頷きながら、チェリーが。
「そうみたいだね、真砂さん!」
と指示を与えながら、己もルナティックヒールでつららの壊アップ。
更に指示を与えられた真砂も。
「分かりました、クラッシャーさんお願いします!」
と脳髄の賦活をヴォルフに掛け、壊アップ。
そして、つららが。
「さぁ、少しばかり、遊んでくださいな」
と『氷鬼』の一閃を、真っ正面から叩きつけ、更に。
「さあ……終わりだ」
と冷たい視線と共に、ヴォルフの稲妻突きが胸を打ち貫き……その一閃に、オークは崩れ墜ちた。
●煌めきは鈍く
そして……死した静寂が、辺りを包む。
「さて……と。死神の因子は……どうなりましたでしょうか?」
と、死後の花を確認する様に綴が呟くも……死せるオークの花は咲かなかった様で。
「大丈夫の様ですね……ふぅ。これで、暴走オークは倒せましたね……」
とリュセフィーが安堵する様に頷くと、ラリーが。
「ええ……でも、もしかしたら死神の因子を回収に死神が来たりしないでしょうか……? ……ちょっと、息を潜めて待ってみましょうか」
と周囲を暫し警戒。
ただ、数分待ってみても、特に死神が姿を現わす事は無く。
「……現れなさそうですね。噂に聞く限りでは、花が咲けば自動的に回収される様ですから、わざわざ己が手を汚さなくてもいい、という事なのでしょう」
綴の言葉にラリーは。
「その様ですね……仕方ありません。では、大事なもう一つの仕事を頑張るとしましょう!」
すぐに気持ちを切り替え、オークが触手で破壊した木々等を、一つ一つ治し始める。
勿論ラリーだけでなく、真砂や綴も手伝い、治していく。
……森の中だから、治した跡は少々わかりにくいのだが……取りあえずは一通り、オークの被害に逢ったぽい所を全て治す。
全ての修復が終わる頃には、空は真っ暗。
持ち込んだか有りが無ければ、数メートル先の顔も見えない位に真っ暗闇で。
「これは暗いですね。遭難する前にさっさと帰りましょう」
と日出部が提案。
流石にその暗さにちょっと不安を覚えたケルベロス達。
遭難する前に、急いで金山を後にするのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
|
種類:
公開:2018年9月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|