城ヶ島強行調査~竜の集う場所

作者:雷紋寺音弥

●強硬偵察
「城ヶ島……。ドラゴン勢力の拠点になっている、危険な場所っすけど……」
 いよいよ、その城ヶ島に強硬偵察を仕掛ける時が来たと、黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)はケルベロス達に告げた。
 鎌倉奪還戦の際、ドラゴン勢力は三浦半島南部の城ヶ島を制圧し拠点を作っていた。しかし、島の外にでてきたドラゴンはケルベロスによって撃退されたため、現在は守りを固めつつ、配下のオークや竜牙兵、ドラグナー達による事件を引き起こしている。
「今回の調査は、篁・悠(黄昏の騎士・e00141)さん達を始めとした、ケルベロスの皆さんの情報収集や作戦提案によるものが大きいっす。とはいえ、城ヶ島には今でもたくさんのドラゴンが生息しているっすからね。正面から突っ込んで島を攻略することは、さすがに危険過ぎるっす……」
 顔を曇らせるダンテ。現在、ドラゴン勢力の制圧下にある城ヶ島には、近づくことだけでも自殺行為に等しい。そのため、小規模の部隊を多方面から侵入させ、1部隊でも良いので内部の状況を調査してくることが必要となる。
「敵の戦力や拠点の情報が判明すれば、攻略作戦を立案することもできるっすからね。ただ、島への潜入方法は皆さんに任せるっすけど、島の空域にヘリオンで侵入することはできないっす」
 多数のドラゴン達が警戒を強めている空域にヘリオンで侵入すれば、最悪の場合、敵に気付かれてヘリオンを撃墜され兼ねない。小型の船舶や潜水服、あるいは、水陸両用車程度ならば用意できるので、作戦に応じて申請をして欲しいとダンテは告げた。
「自分達が皆さんを送れるのは、三浦半島南部までっす。そこから先は、立案した作戦に従って潜入してもらうことになるっすよ」
 なお、敵に発見された場合、おそらくはドラゴンとの戦闘になる。その場合、仮に戦闘に勝利しても瞬く間に別のドラゴンがやって来るため、それ以上の調査を行うことはできないだろう。
「最悪、見つかった場合は、できるだけ派手に戦って囮になるのもありっすね。ただ、ドラゴンは強力なデウスエクスっす。戦うにしても、撤退のタイミングだけは間違えないようにして欲しいっすよ」
 今回の任務は、場合によってはドラゴンと正面から戦うことになり、それ故に危険性も極めて高い。それこそ、引き際を誤った場合、最悪の事態も覚悟せねばならぬと付け加え。
「目的は、あくまで調査と情報収集っす。無謀なことはしないよう、ちゃんと約束して欲しいっすよ」
 最後に、それだけ言って、ダンテはいつも以上に真剣な眼差しでケルベロス達に依頼した。


参加者
篁・悠(黄昏の騎士・e00141)
黒鳥・氷雨(何でも屋・e00942)
デジル・スカイフリート(欲望の解放者・e01203)
ヘイゼル・ハイドランジア(ティアレタヒチ・e01401)
ケルン・ヒルデガント(戦場駆ける戦乙女・e02427)
水沢・アンク(クリスティ流神拳術求道者・e02683)
杉崎・真奈美(眠り陰陽師・e04560)
ハインツ・エクハルト(守護竜は笑顔を背負う・e12606)

■リプレイ

●怒れる海
 城ヶ島を目指し、海中を進むケルベロス達。青木造船所方面を上陸地点として決めた者達の数は、海上を船で進む者達も加えれば、総勢で40名を越えていた。
 隠密行動で調査を行うにしては、どう考えても多過ぎる人数。だからこそ、目立ってしまうのもまた必然だったのだろう。
「あいつは……」
 こちらに迫る3体の影を確認し、黒鳥・氷雨(何でも屋・e00942)が慌てて仲間達へとサインを送る。その間に、早くも最後尾にいた一団が、踵を返して離脱しているのが見て取れた。
 だが、既に先行する他の班の面々が発見されてしまったことで、やり過ごすのは困難である。ここで攻めるか、それとも戦いを他の者達に任せて迂回するか。思案している数秒の間に、現れた海竜の一体が、先行している他の集団へと猛毒のブレスを放っていた。
「どうやら、撤退のタイミングを逃してしまったようですね。ならば……クリスティ流神拳術……参ります!」
 右腕の地獄を解放し、水沢・アンク(クリスティ流神拳術求道者・e02683)は躊躇うことなく前に出た。見れば、他にも海竜に発見された者達が戦闘に突入しており、巻き込まれるのは必至だった。
「仕方ないわねぇ……。こうなったら、やるしかないか」
「ドラゴンは、強敵……。力を、合わせ、ない、と……」
 地獄の業火を叩き付けるアンクの姿に、覚悟を決めたのだろうか。デジル・スカイフリート(欲望の解放者・e01203)とヘイゼル・ハイドランジア(ティアレタヒチ・e01401)の二人が、それぞれ毒のブレスを受けた者達へと癒しの力を解き放った。
 具現化した浮遊する光の盾が、杖より放たれた雷の壁が、猛毒に侵された者達の身体を癒して行く。が、それだけでは完全に回復しきれない程に、敵の攻撃は重かったようだ。
「目的は、あくまで偵察だが……避けられぬ戦いなれば、当方に迎撃の用意あり!」
 しかし、それでも辛うじて立て直していることを知り、篁・悠(黄昏の騎士・e00141)もまた敵の懐へと斬り込んだ。
「ピスケスよ、畝る悪意を凍れる顎門で打ち砕け! 双魚! 星氷剣ッッ!!」
 絶対零度の一撃が、竜の鱗を瞬く間に凍らせる。されど、それとて掠り傷に過ぎぬとばかりに、敵は軽く身体を捻るだけだった。
「さすがに、強い。でも……」
 刀の柄を握り締める、杉崎・真奈美(眠り陰陽師・e04560)。平時であれば、ドラゴンなど撤退させるのが精々かもしれない。
 だが、仲間の数だけで考えれば、こちらに勝機がないわけではなかった。だからこそ、与えられたチャンスを無駄にはしない。
 先行した別の班も、既に態勢を整え終えていた。その流れに乗り、真奈美は一瞬にして敵へと肉薄し、真一文字に斬り捨てる。
 鋭刃、一閃。確かな手応えを感じた真奈美だったが、それでも敵は未だ健在だった。
「ち、しょうがねぇ……。撃ち落とさせてもらうぜトカゲ野郎」
 自分は後方に下がりつつ、氷雨がライドキャリバーの宵桜を突撃させた。次いで、ケルン・ヒルデガント(戦場駆ける戦乙女・e02427)とハインツ・エクハルト(守護竜は笑顔を背負う・e12606)の二人もまた、荒れ狂う海竜へと果敢に挑み。
「これならば妾の本領じゃ! 派手に暴れて派手に皆で帰ろうではないか!」
「帰ってくるのを待ってる人がいるんだぜ。何としても、全員無事に帰らなきゃな」
 時空を凍結させる弾丸が、具現化した光の刃が、それぞれに敵の身体を穿つ。地獄の番犬と巨大な海竜の戦いは、まだ始まったばかりだ。

●厄海の死闘
 水中での死闘は苛烈を極めた。サーヴァントも加えれば、こちらは20名近い集団で1体の敵を包囲していることになる。が、しかし、それでも敵は怯む素振りさえ見せない。初手で、あれだけの集中攻撃を受けたにも関わらず、何ら勢いを落とさずに爪を振るって来た。
「……っ!?」
 攻撃を避けきれず、真奈美が苦悶の表情のまま痛みを堪えた。たった一撃で、こちらの体力を大幅に削る攻撃力。名のある敵でないにも関わらず、その力は並のデウスエクスと比べても極めて高い。
「今日はしっかり癒してあげるから、遠慮なく行っちゃって♪」
 サキュバスミストを放つデジル。しかし、それだけでは傷を完全に癒すには至らない。
「私も、力を、貸す、よ」
 ビハインドのステラに援護させつつ、ヘイゼルも真奈美に生命を賦活する電撃を浴びせた。が、それでも全快とは言い難い現実が、敵の攻撃力の凄まじさを物語っていた。
 このままでは、いずれ追い詰められる。そう、誰ともなしに思った矢先、新たな力が真奈美へと届いた。
「これは……?」
 先程、ドラゴンの毒ブレスを受けた部隊の者達によるものだ。互いに同じ敵を狙う者同士で協力し合えば、平時では苦戦を強いられる難敵相手でも勝機は見える。
「総ては、牙無き人の未来の為に!」
 雷の霊力を宿した悠の一撃が敵の身体を貫いて、他の面々もそれに続いた。真奈美の一閃が、氷雨の銃弾が、次々と敵の鱗を海中に散らせ、ケルンとハインツの攻撃が、海竜の動きを封じ、容赦なく傷口を広げて行く。
 少しずつ、しかし確実に追い詰められて行く海竜。群がるケルベロス達を巨大な尾の一撃や猛毒のブレスで一掃せんと暴れるが、数の暴力を前にしては、さしものドラゴンも敵わなかったのだろうか。
「よし、押しておるぞ。もう少しじゃな」
 満身創痍な竜の姿に、ケルンが勝利を確信する。その言葉に、真奈美が間髪入れず不可視の斬撃で急所を抉ったが、敵を倒すには少しだけ足りず。
「見かけ通り、タフなやつだな」
「よし……。こうなったら、オレとチビ助も……」
 そう言って、氷雨とハインツが敵に狙いを定めた瞬間、攻撃を仕掛けたのは他の部隊の者だった。
 左手のバトルガントレットが敵を引き寄せ、そのまま右手で容赦なく粉砕する。絶命する海竜の身体が海を揺らし、それが戦いの終わりを告げる証となった。
「むぅ……。手柄を立て損ねてしまったのぅ」
「仕方ありませんよ。私達だけで戦った場合と比べ、損害が少なくなっただけでも、良しとしましょう」
 どこか煮え切らない様子で呟くケルンを、アンクが静かに諌めた。予定とは少し違う流れではあったものの、島への上陸は問題なく果たせそうなのが救いだった。

●牙の守る場所、そして……
 青木造船所を経て三崎工場へと辿り着いたケルベロス達を待っていたのは、竜牙兵の群れだった。
「やれやれ……今度は普通に観光で来たいもんだな」
 ぼやく氷雨。現れた敵の数は8体。こちらの総力を合わせれば勝てない相手ではないが、しかしそれは、先行する一団が戦闘に突入したことで裏切られた。
「敵が、増えた、よ……。どう、するの?」
 続々と集まる竜牙兵を前に、ヘイゼルが尋ねた。統率こそ取れていないが、あの数を相手にするのは厄介だ。敵の総数も不明なまま、ここで仕掛けるべきか、否か。
「目的はあくまで偵察だ。あまり騒ぎを大きくするのも、どうかとは思うが……」
「さすがに敵が多過ぎるな。予定通り、オレ達はオレ達で調査を進めようぜ」
 自分達は、戦うために来たわけではない。そう言って悠とハインツが改めて目的を確認したところで、他の者達も無言のまま頷いた。
 同じ地点に上陸した者達は、既に竜牙兵との戦いへと向かっている。ならば、彼らが敵を引き付けている今が、この場から撤退するチャンスでもある。
「ううむ、情報が戦闘における、重要位置を占めることはわかっておったが……」
 勢いに任せて加勢できないことで、ケルンが言葉を切った。しかし、最終目標地点の白龍神社へ向かうことを優先した場合、ここで騒ぎを大きくするのは得策ではなかった。
「……行きましょう。私達に、立ち止まっている時間はありません」
「そうね。人々の可能性の為にも、此処でしっかり情報を確保しなきゃね♪」
 アンクが仲間達を諭し、デジルもそれに頷いた。
「白龍神社……。祭神とドラゴンに、何か関係があるのでしょうか?」
 誰に言うともなしに、口にする真奈美。後方で繰り広げられる激戦の音を背に、一同は白き龍の伝説が眠る社を目指し転身した。

●ドラゴン包囲網
 三崎工場より転身したケルベロス達が向かった先は、他でもない城ヶ島公園だった。
 最終目標地点である白龍神社へと潜入するには、まずは洲の御崎社へと足を運ばねばならない。城ヶ島公園は、あくまで通過地点に過ぎないと思っていたが……果たして、その考えは少々甘過ぎた。
 公園へ足を踏み入れると同時に、巨大なドラゴンがケルベロス達を見下ろすようにして姿を現したのだ。遭遇戦にも関わらず、敵の瞳から解るのは明確な敵意。おまけに、かなり興奮しているらしく、こちらを見つけるや否や炎のブレスで周囲をまとめて焼き払って来た。
「ちょっ……! い、いきなり!?」
 出足を挫かれ、デジルが叫んだ。前衛でなく、敢えて狙撃と回復を担う後衛を狙う。凶暴な性格と外観ながらも、決して知能が低い相手ではないようだ。
「また、戦闘。今度は、避けられ、そうに、ない……」
 瞬時に状況を把握し、ヘイゼルが雷の障壁を張る。が、それだけでは持ち直しきれない程に、敵の攻撃は強大だった。
「貴方達がなりたい自分、その姿を見せて?」
 鹵獲した魔術の一端を解放し、デジルは自身や仲間達の身体に纏わりつく炎を振り払った。続けて、宵桜に攻撃を任せて下がる氷雨を横目に、真奈美と悠が斬り込んだ。
「左から攻めるわ! そちらは右を!」
「任せろ! 揺蕩う海は果てなく広がり、星の光に輝き揺らめく。そして水は溢れ出し、大魚となりて総てを飲み込む。来たれ、星をも砕く凍れる顎門よ!」
 双魚の星辰が秘めし魔力を帯びた斬撃で、敵の足下を斬り裂く悠。その傷口から鮮血は流れず、しかし瞬く間に魔氷へと閉ざされる。次いで、真奈美の一撃が敵の身体を覆う氷を広げて行くが、それでもドラゴンの巨体は揺るがない。
「さすがに、一筋縄では行かない相手のようですね。ならば……これが今の私に出来る全力……! クリスティ流神拳術壱拾六式……極焔乱撃(ギガントフレイム)!!!」
 氷漬けになって脆くなった個所に、アンクが地獄の炎を纏った連撃を叩き込んだ。さすがに、これは少々効いたのか、ドラゴンの巨体が微かに揺れたが。
「このまま行けば、押し切れ……否、なんじゃ、あれは!?」
 敵の後ろより現れた者達。それを視界に捉えた瞬間、ケルンの瞳が思わず大きく見開かれた。
 そこにいたのは、紛れもないドラゴンの群れだった。そのどれもがケルベロス達の姿を捉えており、戦闘になるのは完全に時間の問題だった。
「城ヶ島公園が、連中の巣だったのか?」
 歯噛みする氷雨。しかし、その間にもドラゴン達は天を轟かせるような咆哮を上げ、更に仲間を呼び集めている。そればかりか、ともすれば陣形の手薄な個所を狙って、一斉にブレス攻撃を仕掛けて来た。
「悠、危な……!?」
 攻撃が集中していることを察し、咄嗟にハインツが悠を庇った。が、たった一人で受け止めるには、ドラゴン達による集中砲火は威力の程が高過ぎた。
「……っ!? こいつら……!!」
 慌てて駆け寄る悠。誰の目から見ても、ハインツは戦闘を継続できる状態ではない。
「だ、大丈夫……だ……。オレもみんなも無事に帰るって……約束したんだからなっ……!」
 それでも、辛うじて気力だけで立ち上がり、ハインツは前方に群がる竜の巨影を睨みつけた。
「……潮時か。離脱しよう」
 後方から、更に集まって来る敵の影を見て、悠がハインツの様子を気に掛けつつも仲間達に告げた。このまま戦い続けたところで、敵に囲まれて全滅するのがオチだ。
「今回の目的は調査……無理は禁物です。役目を確実に、ですね」
「偵察って大変なのじゃな……身に染みてわかったのじゃ」
 俯きつつも、後退を始めるアンクとケルンの二人。他の者達も、それに続く。調査目標を一つに絞らず、かつ敵戦力の多い場所を狙い過ぎてしまったのが悔やまれたが、致し方のないことだ。
 ここは、命を捨てる戦場ではない。さしたる情報も手柄も得られなかったが、無理を通せば死ぬのは自分である。
 続々と集まって来るドラゴン達。その姿を前にしたケルベロス達に残された道は、撤退の二文字以外に在り得なかった。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年11月24日
難度:やや難
参加:8人
結果:失敗…
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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