宵闇風鈴市

作者:雨音瑛

●耳澄ます夜
 月の無い夜に、灯籠の明かりがひとつ。ふたつ、みっつ――。広場をぼんやりと照らす灯りが、透き通ったシルエットを浮かび上がらせる。
 次いで聞こえるのは、澄んだ音。いくつもの風鈴が呼び合うように揺れては、人々の目や耳を楽しませる。
 春先までは藤の花が咲いていた藤棚に、今は無数の風鈴が吊り下げられているのだ。見上げ、小さなため息をつく男性は、隣に立つ女性の手をそっと握りしめる。男性が何かを言おうとしたその時、二人の間にひとつの笑顔が割り込んだ。
「ねえねえ、ディンと遊んで!」
 口調こそ小さな子どものようだが、実際のところは斧を手にした3メートルほどの巨躯。二人は一瞬の沈黙のあと、すぐに逃走を始める。
「あ、追いかけっこ? ディン、好きだよ!」
 地団駄を踏むディンは追いかけ、斧をひとふり。背中に致命傷を受け、二人は手を繋いだまま倒れる。
「えへへ、ディンの勝ち! でも立ち向かってきてもいいんだよ、ディン、たたかいごっこも好き!」
 無邪気な笑顔に、血まみれの斧。ディンは容赦なく人々へ斧の一撃を喰らわせてゆく。

●夜風吹く場所へ
「エインヘリアルが事件を起こすみたいなの」
 ボクスドラゴン「コハブ」を抱え、メイア・ヤレアッハ(空色・e00218)はヘリオライダーに予知してもらったという内容を話す。
 そのエインヘリアルは、永久コギトエルゴスム化の刑罰を受けていた者らしい。アスガルドで重罪を犯した者であったが、彼を解き放ってもアスガルドに対する反乱勢力にはならないと見なされたため、復活させられて地球に送りつけられたのが事の発端ということだ。
「このエインヘリアルを放っておいたら、人々の命が危ないの。それに、恐怖と憎悪をもたらして地球で活動するエインヘリアルの定命化も考えられるみたい」
 ケルベロスが急ぎ向かうべき場所は、催事が時折行われている広場。
 広場では風鈴市が開催されており、市を訪れている人たちも相当数いる。とはいえ、スタッフと警察には連絡済み。だからケルベロスが行うことは、とメイアが微笑む。
「エインヘリアル『ディン』、彼ひとりとの戦闘だけよ。予知で聞いたのは、ルーンアックスでの攻撃を行うこと、耐久力が高いということね」
 ディン自身は「遊んでくれる相手」――つまり、戦ってくれる相手を求めているようだから、ケルベロスが戦闘を仕掛ければ人々を放置して戦闘に専念してくれることだろう。
 また、ディンは使い捨ての戦力として送り込まれているから、戦闘で不利な状況となっても逃走はしないようだ。
「エインヘリアルを倒したら、風鈴市も再開できるって聞いたの。休憩がてら、風鈴を見て行くのもいいよね。……それじゃ、まずは平穏を取り戻すお仕事に協力よろしくね」
 と、メイアはコハブと共に頭を下げた。
 一仕事終えたら、穏やかな時間が待っていることだろう。


参加者
メイア・ヤレアッハ(空色・e00218)
白藤・織夜(この花を君と・e04812)
八崎・伶(放浪酒人・e06365)
アラタ・ユージーン(一雫の愛・e11331)
ヴェルトゥ・エマイユ(星綴・e21569)
エレオス・ヴェレッド(無垢なるカデンツァ・e21925)
小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)

■リプレイ

●月の無い夜に
 静けさを表す音があるとしたら、きっと風鈴の音もそうなのだろう。
 人工的な光が灯された広場で、揺れる耳を澄ませる人々。
 直後、彼ら彼女らに襲い掛かるデウスエクス。予知されたこととはいえ、駆けつけたケルベロスたちの間に緊張が走る。
「追いかけっこがしたいの? なら私達としようよ?」
 逃げ惑う人々を追いかけようとするエインヘリアル「ディン」に、小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)が声をかけた。
「えっ、おねーさんたち、ディンと遊んでくれるの?」
「ああ、遊んでやるぞ。ディン、アラタ達と追いかけっこしよう!」
 風鈴の揺れる藤棚から離れるように、アラタ・ユージーン(一雫の愛・e11331)は駆け出した。
「あのね、追いかけっこしながらたたかいごっこすると、もっと楽しいんだよ!」
「へえ、そっかそっか――」
 軽々と斧を振り回しながら、ディンはルーンを発動させる。振り下ろす先は、受け答えをするアラタだ。
「……っ、アラタは大丈夫だ! 涼香、頼んだぞ」
「無理、しないでね。ねーさん、いくよ」
 ロシアンブルーのような毛並みをしたウイングキャット「ねーさん」がうなずき、尻尾についている輪を飛ばした。ウイングキャット「先生」の尻尾の輪も、追撃するようにディンに命中する。直後、涼香は足元に流星と重力を宿してディンを背中から蹴りつけると、アルスフェイン・アグナタス(アケル・e32634)が凍てつく弾丸を射出した。
「メイアさん、今だ」
 穏やかな物言いに、メイア・ヤレアッハ(空色・e00218)はこくりとうなずく。まかせて、と口の動きだけで伝えた後は、ディンの正面に立って微笑んだ。
「こんばんは、ディン。わたくしもたたかいごっこ大好きよ。おいで、わたくしたちと遊びましょう」
 鬼さんこちら、と、メイアはさらに風鈴のある場所からディンを引き離すべく動く。
 移動の合間、ボクスドラゴン「コハブ」が先ほどダメージを受けたアラタへと属性を注入する。
「ありがとうな、コハブ! さ、アラタも頑張るぞ――キレイハキタナイ―――キタナイハキレイ」
 前衛に漂うのは紫の薬草と花を砂糖に漬けたシロップの香り。アラタの魔法が、集中力をコントロールする。続くのは、白藤・織夜(この花を君と・e04812)による破剣の加護だ。
「一二三四五六七八九十、布留部 由良由良止 布留部」
 浅紫に輝く一の目に、唇から紡がれる「布瑠の言」。玉の音にも似た響きが、仲間の武器に静かな輝きを宿らせた。
 また、八崎・伶(放浪酒人・e06365)がチェーンソー剣をちらつかせながらディンに声をかける。
「よう、ご機嫌かい? 遊ぼうぜ、ディン」
「わあ、みんなディンと遊んでくれるの? いっぱいあそぶぞー!」
 自身を囲むケルベロスを見て、ディンは嬉しそうに斧を掲げた。すかさずヒールドローンを展開する伶、ブレスを見舞うボクスドラゴン「焔」。
 何事もなければ、静かな夜に涼やかな音色が響いていただろう。細やかな夏の涼を楽しむ催しに紛れ込んだ、風情の分からぬ者――ディンを前に、ヴェルトゥ・エマイユ(星綴・e21569)は小さくため息をついた。
「俺達なら打って付けだろう。……楽しい遊びでは、済まないかもしれないがね」
 ライフルの引き金を絞るヴェルトゥの青銀の瞳が、ディンを見据える。次いで放たれた魔法光線が、ディンを包み込んだ。
 ボクスドラゴン「モリオン」と「メロ」がアラタに属性を注入するのを横目に、エレオス・ヴェレッド(無垢なるカデンツァ・e21925)もディンへと語りかける。
「でも、静かに風鈴の音を聴くのも楽しいですよ?」
 と言って通じる相手ではないのは百も承知。気は進まないが、ここは一緒に「遊ぶ」しかない。
 エレオスは跳躍し、ディンへと星型のオーラを蹴り込む。その顔には、悪戯っぽい笑みひとつ。
「先に相手を斃した方の勝ち、ですよ」

●音を遠くに
 風鈴市の再開のために。そう意気込むケルベロスは多いが、中でもメイアの気合は格別だった。
 瓶屋を営むメイアは、硝子製品が好きだ。なるほど風鈴も硝子製品、テンションが上がらないわけがない。
 コハブの属性注入を受けたメイアは、ディンの興味を惹くようにエクスカリバールをぶんぶん振り、彼の周りを駆ける。エクスカリバールから釘を生やした後は、思い切りディンへとスイングを。
「わたくしのスイング、上手でしょ?」
「いったーい! でもおねーさん、たたかいごっこ上手だね!」
「ディン、正面にばかり気を取られていては本当にただの『遊び』になるぞ」
 夜を溶かした紺の髪をなびかせ、ヴェルトゥが斬撃を繰り出した。ディンの反応を待たず、ヴェルトゥは振り返る。
「エレオス、行けるか」
「はい、任せてくださいヴェルトゥさん」
 いつもの笑顔を浮かべ、エレオスはファミリアロッドを小動物の形へと戻した。魔力を籠めて射出しながら、全体に気を配るのも忘れない。
 ディンの耐久力は、高い。対して、こちらのアタッカーは二人。盾役の一人は回復を、もう一人は相手の防御力低下を目的に動いている。その他、隙あらば状態異常を増やそうと動く者がいくつか。
「この調子でいけば、大丈夫でしょう」
 エレオスがつぶやくと同時に、モリオンがヴェルトゥを癒した。メロもまた、主であるアルスフェインへと属性を注入する。
「そうだな。連携も取れているし、一般人への被害も心配しないで良さそうだ」
 同意を示し、アルスフェインはオーラの弾丸を練る。気合い十二分でディンに相対するメイアを見て、小さく笑みを漏らす。
「風鈴市を楽しみにしている人は、たくさんいるからな」
 弾丸を腹部に受けたディンが、たたらを踏む。
「……ねえ、ディン。たたかいごっこ、たのしい?」
 薬液の雨を降らせながら、織夜が優しく問う。
「うん、ときどき痛いけど、とってもたのしい! おねーさんは『ひーる』が上手なんだね! みてみて、ディンも『ひーる』できるよ!」
「まあ、そうなの。すごいわねぇ」
 優しく応える織夜に自慢するように、ディンはルーンを発動する。
 つまり、敵が加護を打ち破る力を得たということ。ねーさんがディンを引っ掻いた後、涼香は星辰の剣に重力を宿した。同時に周囲を見るが、既に充分風鈴から引き離せているのがわかって安堵する。
「いくよ、ディン」
 重い斬撃。
「ん、まけないよ!」
「がんばるねェ。なら、こいつはどうだ?」
 伶はディンの全身を一瞥し、瞬時に鎖骨の間に掌底を見舞った。
「!!」
 衝撃に声も出ないディンへ、今度は焔が箱に入っての体当たりを決める。
 先生の送る風を受けながら、アラタはひとり目を細めた。バトルオーラ「愛殺」に溜めたオーラをアルスフェインに解き放ちながら、ディンのことを思う。
 ディンが痛々しい男なのは、きっと彼のせいではない。物事を知らないのも、言動が幼いのも、教えてくれる者がいなかったためだろう。
(「誰も、愛してくれなかったんだろうか」)
 そこに思考が至ったとたん、アラタの胸が痛む。
「お前の遊びはこの星の多くには耐えられないから、アラタ達が相手をするよ」
 ディンは、不思議そうに首を傾げるだけだ。
 遊びでは済まない出会いではあるが、終わらせなければならない。
 アラタは歯を食い縛る。目頭が熱いのがわかる。
 熱にうなされるような感覚のまま、やっとの思いでひとつ、息を吐いた。

●遊びのあとに
 ディンの耐久力をものともせず、ケルベロスたちは「たたかいごっこ」――もとい、戦闘を続けている。
「倒れた人もいないし、何より誰一人倒れさせるつもりもないし……風鈴市、無事に再開できそうね」
 伶を大きく癒し、織夜は瞬きをする。
「ええと、次は……そうね。ヴェルトゥさん、いける?」
 もちろん、と答えたヴェルトゥがディンの足元を見つめる。
「少し、じっとしていてもらおうか」
 気付けば、ディンの体を鎖が締め上げていた。
「わ、わわっ!? えっ、お花が咲いてる!?」
 鎖には、無数の桔梗が咲き誇っている。それも、役目を果たすまでの短い間。桔梗が星屑のようになって消えた後、モリオンがおそるおそるブレスを吐き出した。
 目を瞑って耐えるディンに、アルスフェインが掌をかざした。
「夜闇に映える鮮花がひとつ、空へ咲いて地に沈む――こちらへおいで、手向けてやろう。甘く馨る、赤い花」
 赤い紅い華が、掌から舞い始める。鮮やかな紅い刃先にディンは自らの体を投じる。
 その隙にメロがエレオスへと属性を注入して癒す。
「ありがとうございます、メロさん。……さて、そろそろ正念場でしょうか」
 メロに礼を述べた後、エレオスはディンとの距離を一気に詰めた。叩き込むのは、氷を纏わせる一撃だ。
「ディンも、まけ、ない!」
 しゃがみこみ、思い切り跳び上がるディン。振り下ろされた斧の刃は、アルスフェインに向けられている。
「俺だって負けないぜ?」
 そう言って、伶は片腕で斧を止めた。
 ディンが目を見開いている間に、涼香は素早く古代語を詠唱する。石化の魔法が放たれると同時に、ねーさんが尻尾の輪を飛ばした。
「さて、お返しだ」
 伶はチェーンソー剣を振りかぶり、ディンに傷を刻む。さらに、焔とコハブのブレスがディンを弱体化させてゆく。
 このまま押し切れるようにも見えるが、油断は禁物。先生は翼をはためかせ、前衛を癒す風を送り込む。
「ディン、たたかいごっこ、まだ、でき、る……」
 斧で体を支えるディンの前に、アラタが立つ。攻性植物「Kielo」を変形させて締め上げながら、まっすぐに語りかける。
「悪いな、ディン……ごっこじゃない。これは遊びじゃないんだ」
 アラタが攻性植物「Kielo」でディンを締め付けながら、歯噛みしつつ告げる。
「さようなら。……沢山遊べて満足出来た?」
「さよな、ら? よくわかんないけど……ディン、たくさん、あそべた!」
 ディンの言葉に、メイアは優しい笑みを浮かたる。そのまま手のひらに冷気を集め、氷でできた小瓶を作り上げる。凝縮されて小さくなったそれは、もはや魔弾。
「ねぇ、撃ち抜かせてくれるよね?」
 尾を引きながら一直線に進み、ディンの胸に届いて弾けた。金平糖のような光がきらきらこぼれる中、ディンが大の字になって倒れる。
「……とっても、たのしかった、よ!」
「……ばいばい、ディン。アラタはお前のこと憶えてるからな」
 アラタが別れの言葉を口にすると、ディンは空を仰いだまま満面の笑みを浮かべる。
 そうして、ディンの体はゆっくりと消えていった。

●音の市
 やがて外灯が消え、灯籠に光が灯る。
「月の無い夜は暗いばっかりかと思ったが、こうして光の無い方が映えるものもあるんだな。浴衣のひとつも着てくりゃ良かったぜ」
 こういう文化は大事にしていきたいと思いつつ、伶はビール片手に風鈴露店を冷かして歩く。
「はは、ビール柄なんてあんのか。ユニークだねぇ……ん?」
 伶の視線の先には、背伸びして風鈴に手を伸ばす涼香の姿。伶は難なく風鈴を外し、涼香に手渡す。
 夜の街並みを歩く猫のシルエットがカッティングで表現された風鈴を手に、涼香は礼を述べる。
「ありがとう、伶さん……あれ?」
「ん? ……おいおい織夜、そんなとこで何してるんだ? 風鈴ならこっちだぞ」
 涼香の視線で気付いた伶が声をかけたのは、灯籠の灯らない場所でひとり佇む織夜。
「あら? 音を頼りに歩いていたのだけれど……不思議ねぇ」
 ふわふわと笑いながら、織夜は灯籠の灯る場所へと歩き始める。
 見上げる藤棚に織夜が思うのは、藤の花でないものが垂れているという不思議な状況。それでも藤の花に縁がある織夜は、
「でも、これはこれで、とっても素敵ねぇ。風鈴、ちりちり、きれい、ね」
 と、笑顔でつぶやけば「そうでしょう」と風鈴が自慢するような音が重なって聞こえてくる。音に耳を澄ませながら、涼香は静かにうなずく。
「日中とはちがって幽玄っていうか……不思議な雰囲気」
「ああ、折角の風景を守れて良かった。しかし……夏ももう、終わりか」
 ビールを喉に流し込み、伶は光る硝子を目で追った。
 日の光が無い分、音色に集中できる。
 目を閉じて気持ちよさそうにする先生の横で、アラタも風鈴の音に聞き入る。
 風が吹くたび、澄んだ音の波に包まれているようだ。
 それに、音色混じりの風はいつもよりひんやりしているみたいで、優しくアラタの目元を撫でてくれた。
 軽やかな音は、夏夜の涼しさを一層感じさせてくれる。
 アルスフェインは、あちこちに目移りしながら歩くメイアの手をそっと取った。メイアは一度振り返ってから、しっかりと横に並ぶ。
「最近のわたくしの定位置、ね」
「ああ、隣にいなければ落ち着かなくなるくらい、だな。最近は」
「ふふ……あっ、見て見てアルスちゃん、この風鈴、メロちゃんっぽくなぁい? とっても涼しそうだし、絵柄も可愛いの」
 確かに、とアルスフェインは風鈴を覗き込む。
「これだけあれば、君のような風鈴も見付けられるかな。朝陽と空を映し、軽やかに鳴る風鈴……探してみてもいいかい。君がいない時にも逢えるような気持ちになれそうだ」
「あ、それならわたくしも、アルスちゃんっぽい風鈴が欲しいの。翼の色が良いかも、窓辺に吊した時、空と同じ色になる瞬間はきっとすてきだもの」
 そう続けるメイアに、アルスフェインは微笑む。
「不思議だな、同じようなことを考えていた。空色を映す頃にはきっと、君を考えながら目覚めの時間を過ごすよ」
 手を伸ばした風鈴が、呼ぶように鳴った。
 いくつか購入されてもなお、まだ多くの風鈴が藤棚に揺れている。
 初めての光景に、エレオスは声を潜めて翡翠の瞳を輝かせた。ヴェルトゥもまた、これほど沢山の風鈴を見るのは初めてだ。
「音の雨を浴びるようで……心地好いですね」
「どれを選んでいいか迷ってしまうね……そうだ、折角だからお互いのイメージする風鈴を探してみない?」
「良いですね。どれを選ぶか迷っていた所なんです」
 いったん別れて、風鈴探しを始めるふたり。数分の後、ヴェルトゥはエレオスにジャスミンが咲いて小鳥が揺れる白い風鈴を差し出した。
「気に入って貰えると良いのだが」
「わぁ……ありがとうございます、大切にしますね」
 顔を綻ばせながら、エレオスは風鈴を受け取る。代わりに、と差し出すのは星空を映す風鈴だ。揺れる黒水晶の欠片にモリオンを思い浮かべて手にした、とっておきの一つだ。
「ありがとう、相棒をそのまま表してくれたみたいだ。きっとモリオンも喜ぶだろう」
 腕に抱えたモリオンの前で揺らせば、瞬きをして不思議そうに聞き入るモリオン。
 夜風に響く涼しげな音色の中、手にしたふたつの風鈴の音がひときわ大きく聞こえる。
 重なり寄り添う音色に、エレオスは小さく微笑んだ。

作者:雨音瑛 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。