ナイト・バカンス

作者:志羽

●ナイト・バカンス
 八月も真ん中。
 周辺には観光地がありリゾート施設などがあるとある都市。
 そこは様々な場所へと通じる主要道路が走っており、この時期はいつもよりも交通量が多かった。
 それは夏休みであるために家族連れや学生同士などの旅行客が沢山訪れるからだ。
 が、しかし。
 デウスエクスでの襲撃により、この一帯を通る主要道路の一部が破壊された。
 それにより、主要道路から周辺道路への迂回やなにやらで都市に住まう人々の生活に支障をきたしてしまっているのが現状だという。
 夏休み中という事もあり、修復は早い方が良い。
 ということで、ケルベロス達へと都市の人々から修復願いが出されたのだった。

●ケルベロスさんにお願い
「修復のお願いが来てるんだ、道路なんだけどねー」
 夜浪・イチ(蘇芳のヘリオライダー・en0047)は集ったケルベロス達へとある地方にある道路の修復を持ちかけた。
 デウスエクスの襲撃により破壊された主要道路。観光地も近くにあり、夏休み現在渋滞など様々な問題を起してしまっているという。
「ということで、道路の修復をお願いしたいんだ。そのついでに遊べる場所も見つけたので、夏の思い出づくりにどうかなーと」
「はいはい、いくー!」
 しゅぴっと手を挙げたのはザザ・コドラ(鴇色・en0050)だ。そして、それはどんなところと言葉続けた。
「プール」
「プール……」
「うん、ナイトプールもあるよ」
「ナイトプール!」
 ナイトプール――それは夜も運営されているプール。
 イチ曰く、修復する道路近くのリゾート施設で運営されているものだという。
 流れるプール、それから波が起こるプールと遊べる所も色々。スライダーなどもあるらしい。それらは昼間のみなのだが、屋内プールがナイトプールとして運営されているのだという。
 そこはSNS映え向きにライトなどでデコレーションされたプールもあり、いろいろなフロートが用意されている。それらを使って遊んだりもできるという。
 またプールサイドには席が用意され、そのまま食事などもとれ大人な雰囲気なのだ。
「ということで、修復してそのままプールにって流れはどうかなーって」
「楽しそう……!」
「ナイトプールなので未成年はーってとこもあるんだけど。保護者同伴なら大丈夫みたいだし」
 それから、とイチは続ける。他の人に迷惑になるようなことはしないこと、と。
「まぁ、ヒールしてからになるけど十分遊べる時間はあると思うから」
 夏の一時を楽しんできてねとイチは紡いだ。


■リプレイ

●夏夜のプールサイドにて
 波間を描く濃い青の水着に腰に魚籠と釣り竿と。今年ヒコが誂えた水着は御伽噺の住人の様。
「但し竜を抱いた此の身に悲観は無く、凡ては粛々と受け入れるのみ ――……なんて、な」
 と、人工的かつ幻想的な水辺に視線を向ける。
 海底に楽園が或ると云うならきっとここだろうと。
「――よう、イチ。 楽しんでいるか?」
 常夏味を傾けつつ、好みの子は居たかい、と茶化してニヤリ笑えば、そっちこそと笑い返される。
「この非日常な空間じゃ本当に時を忘れちまいそうだよ」
 楽し気な歓声を耳にヒコは零す。
 夜だからこその時間はまだ始まったばかり。

 ぱたりと羽根を動かせば、二つに分けて三つ編みにした金色の髪も揺れる。
 水兵さんのような水着はオフショルダー。その白に青のラインとそれから赤色スカーフはアクセント。
 そして腰には星のチェーン煌めき、スカートは淡い夜空のような色だ。
 そんなかわいい雰囲気のメロゥと対照的にラスキスは大人っぽく。
 メロゥは女優さんみたいでかっこいいわと紡ぐ。
 胸の部分はストライプ。ひらりと黒のワンピースタイプの水着は、深く切れ込み入りすらりとした足が綺麗に伸びる。
 そんなラスキスはあならたしさがぎゅっと詰まってる、とメロゥの足元に視線を。さりげなくフラッグか飾られているのもお洒落と笑んで。
 その言葉に嬉しいような、恥ずかしいような。ありがとうとメロゥは返す。
 お互いの水着姿を褒め合うのは女の子同士ならではの会話の様。
 どのフロートにする? と笑い合って選んだのは貝のフロート。
 そこでまた楽しいひと時。

 貝殻のフロートを浮かべそれに乗る。
 夜空を映した色の水着に淡い白のレースとリボンの水着。それに星を躍らせながら春乃がよばれた声に振り返り、にーっと元気よく笑って見せれば撮影音。
「あああっ、アルさん! も~。勝手に撮っちゃ、めっ」
 正直言うと、撮るのはアラドファルも照れ臭い。
 けれど水着姿は冬には見れず、皆も撮っているからと説き伏せればあと一枚だけという。
 けれど響くのは連写の音。
 真赤になりつつ気が済むまで撮られ続けた春乃はわたしにも撮らせてねと紡ぐ。
 濃い紫色の水着に金のラインで描かれた模様。長い三つ編みには水着と同じ色の花。
 君の格好いい姿も残したいのと紡ぎ、手を伸ばす。
 お姫様の言う事は聞くこと、なんてと春乃はアラドファルの鼻先を指で押し楽しそうに笑えば、姫の言うことならば仕方ないと紡ぐ。
 それまでしばしの、遊覧。

 昼間、散々遊んで疲れてスヤスヤ寝顔のミュゲを膝上に、つかさとレイヴンはひと時を。
「ナイトプールはこう、大人っぽい感じだな……上手く言えないが」
「如何にもバカンス、って感じだな?」
 流石にアルコールは無しだけど、と話をしていると。
「おっと、ミュゲ、おはようさん?」
「ん、ミュゲ……おはよう。もしかして御飯に釣られたのか?」
 レイヴンの言葉に違うと言いたげに照れた表情。
「はは、大丈夫だよ……ちゃんとミュゲの分もあるから」
 その様子みつつ、そういえばとつかさはレイヴンに視線向け。
「あんたの水着、今年のもいいな……男前っぷりが上がってる」
「お前と対になる様にしてみたんだけど、似合ってるか?」
 問いかけつつ、そわそわ。
 落ち着きがない尻尾につかさは小さく笑っていると、つかさの視線をレイヴンは追って。
「……尻尾? 尻尾がどうかしたのか?」
「んー? 何でもない」
 教えたら勿体ないから内緒と笑って。

 大きなウミガメのフロートに並んでのんびり。
 藍色の水着には和柄が映える。そして腰帯も、飾り紐も、それは帷らしさを感じさせるものだ。
「よく似合うね」
 藍染めみたいで綺麗な色、と千鶴は言う。
 帷のこんな姿はちょっと新鮮で、かっこいいなあと見惚れたのは内緒だ。
 千鶴の言葉に照れる事もなく、普段通りに有難うと紡ぐ帷は改めて千鶴に視線向ける。
 千鶴は、白レースのホルタ―ネックの水着。シンプルに見えるが飾り気がないわけではない。
 でも派手ではなく、清楚な雰囲気で良いと帷は思う。
「……やはり千鶴は白が似合うな」
 その言葉にじわりと赤くなりつつありがとと返し、千鶴は、爪先でぱしゃりと水を蹴る。
 足が長いと笑う千鶴に身長の差もあるかもしれないと言いながら、真似て帳も水を蹴った。
 また遊んでねと、約束しながら。

 プールサイドに腰かけて過ごす二人は鬼人とヴィヴィアン。
 夜の中でも目を引く赤のベストと黒の水着。これで水鉄砲を構えれば鬼人はハンターと言ったところ。
 黒と紫で彩ったヴィヴィアン。
 ひらりと水の上に揺らめくパレオはひっそり肌の色を透かして、足でしゃらんと音が鳴る。
 狩るか、狩られるか。水鉄砲構えて遊んだけれど今は一時休戦といった所。
 本当は、今すぐ狩られても良いとヴィヴィアンは思っている。
 その胸に飛び込みたいと。
 そんな思いを我慢するヴィヴィアンの想い。
 そして魔女に魅了される――そんな男の気持ち。それも悪くないと思いつつ鬼人は、今は心の奥にそれを仕舞い込んでヴィヴィアンと一緒に過ごす。
 互いの手を取り合うのが今の精一杯で、クールダウンにプールの中へ。

 アナスタシアの水着姿に照れるけれど、晴翔は嬉しかった。
 水着を着てくれた事を嬉しく思うと、ありがとうと紡げば。
「ありがとう。ハルもよく似合っている。かっこいいぞ?」
 アナスタシアの頬は赤く染まる。嬉しそうにはにかみながら返せば晴翔もまた笑んで。
「へへ、なんか二人っきりで遊ぶのって珍しくね?」
 こういうのもたまには良い。
 ちょっと照れるけど、と紡ぎながら晴翔はあっちに行こうと手を差出す。
「ああ、思い切り遊ぼう。こういう時間は貴重だしな。いろいろと巡ってみよう」
 アナスタシアは晴翔の手を握る。
 その視線には愛おしさが滲んでいた。

 平らな長方形のフロートの上でのんびりと。
 紺色のビキニ。縁には白の指色。カレンはドリンク飲みつつ、はしゃぐ妹達へと視線向ける。
 手首にはリボンのアクセサリつけ、青い三角ビキニ姿のユーロはルリィのフロートへとはしゃぎながら乗り込んだ。
 その水着と色違いのお揃いのルリィ。青ではなく赤。縁のフリルは白でお揃いだ。
 はしゃぎながら甘えてくるユーロの相手をしつつ、ルリィはカレンへと視線向ける。
 仲良いよねーと笑っている姉に甘えてみたかったりするけれど口にはせず。
 でもその気持ちは尻尾に現れていた。
 それに気付いたカレンは自分の尻尾を絡める。
 すると、私もとユーロもそこに甘えるのは三姉妹の仲の表れ。

 夏と言えばフルーツたっぷりのパンケーキ。
 ユタカはそれを前に瞳輝かせ。
「レオン殿って、確か甘い物いけましたよな?」
 はい、一口あーん! と差出す。
 イチゴを食べ、次はアイス多めとリクエスト。
 そしてカクテルっぽく見えるフルーツジュースと差出す。
「レオン殿ありがと、こっちのジュースも1口どーぞ?」
 その言葉に一口貰うってから、レオンはこれって間接キス? とからかうように。
 お腹いっぱいになったら、あとは泳ぎに。
「えへへ、レオン殿……折角故これ、脱がして?」
 と、ユタカはTシャツの裾をパタパタさせ、にやり。
「……それじゃあ、はいばんざーい」
「んーばんざい、ってちょっと子供っぽい……む」
 そう、ちょっとだけむくれた顔に不意打ち。
 僅かの内に落とされたキス。
 人の多いところで、恥ずかしい奴め! と小さな非難と裏腹に、お返しのキスひとつ。

 これならねーさんも濡れないから大丈夫だろ、と壬蔭はシェル型フロートに涼香を。
「ゆらゆらが楽しいし、とても偉い人になった気がする!」
 そう言う涼香の上、ねーさんも大あくびひとつ。
「でも、このフロート、私とねーさんだけじゃ大きすぎるみたい。お隣、来ませんか?」
 促され、壬蔭は隣に。
「水着とても似合ってるよ。凄く可愛い」
 その言葉に涼香は嬉しいと思う。
 好きな人に褒めて貰うだけで、特別。
 そんな魔法をかけてくれるこの人こそ、格好良い。
 そんな気持ちで自然と涼香が浮かべる笑顔に壬蔭は一瞬ドキッとする。
「今日の涼香、とても色っぽい……」
 そう、落とされた言葉に涼香も心跳ねる。名前の呼び捨てに。
「プールサイドのバーカウンタへ行かないか?」
 その誘いに涼香は瞬いて。
「ね、ね。みかげさん。私あまりお酒呑んだ事ないんだ。呑み方、みかげさんが教えてくれる?」
「ああ、構わないが……無理せず、自分のペースで楽しく呑む……かな」
 大人だしね、と笑って紡ぎ目的の場所へ。

「どんな天上の星々よりも、紫姫の水着姿は夜空に映えるな」
「風太郎さんも水着、似合ってますわよ?」
 大人の男として平静装っても、いざ目の前にすれば風太郎の、胸の高鳴りは抑えきれない。
 交際して半年――バレンタインデーから今日までは有っという間だ。
 一緒にいる事でお互い刺激を受け変化はあったが誓い――紫姫が剣、風太郎がその鞘というものは変わらない。
 そして互いが、互いの拠り所であれば、紫姫にとって喜ばしい事。
 泳ぎの練習をして、ふと溺れそうになった紫姫を風太郎が助け、二人の肌と視線が合えば。
「愛してる」
「私も、大好きです、風太郎さん」
 言葉の交わして、二人の影は重なった。

「お疲れ、ヤン。……疲れてねえ?」
 染は足元の水揺らしながら、ヤンへとカクテルを。するとヤンは驚きながら染を見る。
「……こういう場所で大人っぽく一杯、ってのも良いだろ」
「……あぁ、こういう洒落たのも……」
 悪くないなと、ヤンは眼を細める。
「……お前、普段座り仕事なのにずるくない?」
 目に付いた歳上の、ヤンの引き締まった筋肉。
 向けられた視線に首傾げ、ヤンは自身の脇腹の肉を摘んで。
「何、筋肉なんて過去の産物さ」
 笑うヤンが、飲み終わりグラス置いたタイミングで染が彼の背に置いた掌に力を籠めれば派手な水音。
「染……やってくれたな……」
 綺麗に顔からプールに落ちたヤンは顔の水を上げながら恨めし気だ。
 笑ってごめんと手を差し伸べれば――口端あげた笑みが見え、大きな音がもう一度。
 自ら顔上げて、お前なと放つ恨み言。
 けれどそれも愉しい。

「保護者同伴のようなものだし、夜も問題ないよね?」
「……たとえ、浮き輪がぱんださんの柄だって、大人だもん。しっとりなんだもん!」
 悪戯するように笑むウリル。予想通りのリュシエンヌの反応にまた一層笑み深くなる。
「保護者じゃないのよ? 旦那さまだもん」
 そんなウリルに抗議しつつ、子供っぽいって思ってるんでしょと、言いかけたのだが。
「……まあ、そう言うと思ったけど」
 くるくる変わる表情が可愛くてつい揶揄いたくなってしまう。
 子供っぽいのは俺も同じだろうかとウリルは思う。
「寒くない?」
 ぎゅっと抱き寄せれば、近付く距離。
 ふいに抱きしめられて、リュシエンヌは腕の中の温かさにもう出たくないと思って。
「……うりるさん、だいすきよ」
 心までぬくぬくにしてもらったお礼とちゅっと可愛らしい音一つ。
「ね? 保護者じゃないでしょ?」
 それは嬉しくて、独り言のように。
「自分からしたくせに照れる所も可愛いから困る」
 ウリルは小さく呟いて笑み。
「はいはい、ルルは大好きな奥さんだよ」
 その言葉に大好きな、旦那さまなのとリュシエンヌは抱き着く。

 ちゃんと憩えているかしら? とオルテンシアはイチに声かけ、他愛話と共にじっと見つめれば、どうしたのと瞬き視線合わせてくる。
「イチも、私が秋波送ったところで靡かない界隈よね。知ってたわ」
「ええ? そんなことも無いけど」
 それに瞬いて、ひとつ思いついたようにオルテンシアは笑み。
 黒と、瞳の色に似た赤の水着はしゃらりとチェーンの音させて。
 腰に纏うパレオは夜空の色を抱えて人魚のよう。
 それは今年の水着だけれども。
「来年はあなた好みに化けてみるのもいいわね。いまここで意見貰える?」
 移り気な花がひととせちゃんと覚えていられたなら、或はと。
 更ける夜の余興、一賭けの行方は――今は知らず。

「カワイイでしょって見せつけちゃお」
 と、ルナは早速プールへ。
「バッチシきめてカワイイじゃん?」
 するとすでに浮輪も水着もお揃いの。双子の姉、レイラは水の上でぷかぷかと。
 はやっ、と零すルナはそうだとスマホを。
「あ、そーだ。セッカクだし写真撮ろ」
「あ、なにルナルナ。写真撮ってくれんの? さっすが準備イイ」
 自撮り棒に取り付け、二人で並ぶ。
「カワイクとってよね」
「オッケー」
「1、2、チャオ!」
 と、掛け声とピース。
 そのまま、ルナは連写を。
 そして写真を取ったら次のお楽しみ。
「写真もとれたし、遊んだら甘いの食べに行こ。気になってたんだ」
「いっぱいあそんだらオイシーのたべいこっか?」
 その互いの提案は声かさなって、笑いあう。
 遊んだら甘いものも大事。

 三日月のフロートの上、二人で並んで浮かべば現実から引き離された場所。
 冥界の神の如く。首からは金と紫の飾りを。纏う布を重ねて、そして紫色の布で腰を縛る。
 荘厳な誂えは貴方に怖いほど良くお似合いとアイヴォリーは思いながらかしゃりと機械音と共に一枚。
 微笑む顔の静謐さに思わず一枚。
 独り占めしたら罰が当たりそうと思いながら、画像に鍵かけると一安心。
 そこへふと。
「君は月の女神か美の女神か、或いはインプト?」
 貝殻のビキニにパレオは薄い桃色から濃い色へ。
 その端から美しく伸びた脚も、健康的な肌も。
 それに彩る花々も。良く似合う。
 今宵は一層艶めいて――綺麗だよと顔を寄せ、甘く囁き重ねる唇。
 ぱしゃんと小さな水音たてて、手から零れたものの心配は無用。

 イルカのフロートに乗ったアリシスフェイル――可愛い。
 水着姿の彼女が可愛いと奏多は思いながらプールサイドで。
 視線は通りすがる水着美人に向けられたりもするが、アリシスフェイルの元に引き戻される。
 逸れない様に、なんていうのはわかりきった言い訳だ。
 白い水着に夜色のストールを。
 その姿は白い鳥のようだ。
 腰の後ろから伸びた白色はひらひらと水面を泳ぐ。その様は羽根が広がったよう。
 髪飾りも羽根を合わせ、羽根のようなレース重なるスカートから伸びる足は水を跳ねさせた。
 そして、夜の水面で遊び近づいてくる。
 アリシスフェイルは上目遣いでちらりと伺い。
「……この水着、似合ってる、かな?」
「綺麗で、とても似合ってる」
 今更聞くのもと思いつつ返った言葉。
 いつも通りの表情なれど、水際の揺らぎは動揺の如く。

 やっぱり大人な空間、と思いながら絃は隣へと視線を向け。
「――可愛い」
 露出控えめな事にこっそり安堵しつつ、ひそやかに染まる頬と共にぽそりと落ちた声は月夜の耳に届いて。
「ふふ。イトも、かっこいい」
 シンプルながら縁を彩るデザインがお洒落と言いながら月夜は手を伸ばす。
「あ、ここ。アジアンなデザイン」
 飾り紐を悪戯するようについついと突けば。
「……こら」
 困ったように微笑む絃。
 これなら一緒に乗れるかなとジンベエザメのフロートに。
 バランスとりながら寄り添って、ぷかぷかと浮かぶのは夢の中で揺蕩っているような心地だ。
 そういえば、と。
 絃が取り出したのは防水のカメラ。
 掲げて、寄り添ってぱしゃりとシャッターを切る。
「いつの間に、買っていたの?」
「ん。月夜も撮る?」
 興味深げに目を輝かせた月夜は私も撮ってみたいとそれを受け取る。
「思い出を残すには一枚じゃ足りない」
 なんてと、月夜は笑う。
 目映い光と水の世界で、二人きりを切り取って。

作者:志羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年9月9日
難度:易しい
参加:35人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 1
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