凶鳥、害獣駆除!?

作者:雷紋寺音弥

●暗闇ハンター
 生臭い空気の漂う都会の路地裏。夜の帳が降り、既に人気のなくなった場所を、セレッソ・オディビエント(葬儀屋狼・e17962)は油断なく周囲の気配へと意識を張り巡らせていた。
 ここ最近、連続して起こっている動物達の不審死。普段であれば、路地裏の野良犬や野良猫が死んだ程度では、誰も興味を示さなかったであろう。
 だが、今回ばかりは少々勝手が違っていた。殺された犬や猫達は、そのどれもが一撃で急所を撃ち抜かれていたのだ。
 虐待趣味を持った悪質な人間の仕業にしては、随分と無駄のない仕事ぶりだった。それだけに、次は人間が標的にされるのではないかという不安が、水面下で街の中に漂い始めていた。
「……どうした、タフト?」
 ふと、オルトロスのタフトが足を止めたところで、セレッソもまた歩みを止めて、目の前の暗闇の中に蠢く者を見据えた。
「ほぅ……。私の気配を察するとは、少しはできるようですねぇ」
 積まれたゴミ山の裏から、羽毛に包まれた影が姿を現す。その手に握られているのは、黒光りする狩猟銃。左手には動物注意の標識を掲げ、なんともシュールな格好ではあるが。
「……っ! お前は!?」
「野良犬程度では狩りの足しにもなりません。やはり、生きた獣人を狩るのが一番です」
 思わず叫んだセレッソを余所に、現れたビルシャナは狩猟銃を静かに構える。教義など語るまでもない。否、これから行うことこそが、自らの教義であると言わんばかりに。
「私はね、狙った得物は決して逃さない性分なんですよ。さあ……せいぜい、逃げ回って私を楽しませなさい。愉快な愉快な、害獣駆除の始まりですよ」
 暗闇の中、煌々と輝く赤い瞳。狂った鳥人の叫びを皮切りに、天を貫くような銃声が夜の街に響き渡った。

●獣人を狩る者
「召集に応じてくれ、感謝する。セレッソ・オディビエントが、宿敵であるデウスエクスの襲撃を受けることが予知された。急いで連絡をしようとしたんだが、一切の連絡が繋がらなかった」
 大至急、セレッソの救援に向かって欲しい。そう言って、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に、自らの垣間見た予知について語り始めた。
「セレッソを襲撃するのは、デスピアダドという名のビルシャナだ。なんでも、『ウェアライダーは害獣であり、それを狩るのは害獣駆除である』と言い張っているようだが……ふざけた教義の内容とは反対に、なかなか好戦的なやつだから注意してくれ」
 それこそ、従来の色物と同様に考えてかかれば、怪我だけでは済まない目に遭わされるだろう。ウェアライダーを狩猟すると豪語するだけあって、狙撃の腕は極めて正確。謎の標識の力によって足を止められたところを狙われたが最後、急所を撃ち抜かれて一気に仕留められかねない。
「敵の使用する武器は、狩猟銃と標識だ。特に狩猟銃の方は、単発と連発を任意で切り替えられる上に、急所に当たった際のダメージも馬鹿にならない。ビルシャナ本人も狙撃を好むことを考えると、なかなか厄介な組み合わせだぜ」
 このままでは、遠からずセレッソは敗北し、ビルシャナに狩られてしまうことだろう。幸い、今から襲撃場所である路地裏に向かえば、セレッソが襲われる直前に介入可能なため、一気に体勢を整えて戦うことも可能になる。
 なお、深夜ということも相俟って、周囲に人の気配はない。自分の狩りを存分に楽しむため、ビルシャナが事前に人を払ったのだろう。戦いに一般人が紛れ込む可能性もないので、セレッソと合流した後は、戦闘だけに集中できる。
「ウェアライダーは害獣、か……。そんなことを言うビルシャナを、このまま野放しにはできないぜ」
 それを抜きにしても、ここでセレッソを放っておくわけにはいかない。そう言って、クロートは改めてケルベロス達に依頼した。


参加者
アイリス・フィリス(アイリスシールド・e02148)
風鈴・響(ウェアライダールーヴ・e07931)
月見里・ゆの(現代のバネ足ジャック・e08462)
白銀・ミリア(白銀の鉄の塊・e11509)
黒須・レイン(海賊少女・e15710)
セレッソ・オディビエント(葬儀屋狼・e17962)
神居・雪(はぐれ狼・e22011)
カーラ・ラクシュ(剛毅壊断・e50415)

■リプレイ

●摩天楼ジャングル
 深夜の路地裏に響き渡る銃声。排水口から立ち昇る生臭い空気と共に漂うのは、獲物を追い詰める硝煙の臭い。
「ふふふ……さあ、どうしたんですか? もっと泣き叫んで逃げ回ってもらわなければ困りますよ?」
 ライフル銃を構えたビルシャナが、徐々にセレッソ・オディビエント(葬儀屋狼・e17962)へと距離を詰めながら言った。だが、そのビルシャナ、デスピアダドが未だ本気を出していないことは、セレッソ自身が良く解っていた。
 敵の狙いは百発百中。この距離で外すはずもない。つまり、あの憎き鳥頭の怪人は、敢えて狙いを逸らすことで、こちらの恐怖を煽り挑発しているのだ。
「……なんでお前がここにいるんだ」
 ようやく振り絞って出した一声が、それだった。だが、それでも歯を食いしばり、セレッソは決して背中を見せることをしなかった。
 本当は、逃げ出したいくらいに恐ろしい。しかし、ここで逃げ出そうとすれば敵の思う壺。あのビルシャナは、今度こそ容赦なく、自分の急所を撃ち抜くだろう。
「おや? なんですか、その顔は? 気に入りませんねぇ……。もっと、怯えて竦んでいただかないと、こちらも面白くありません」
 不退転の覚悟を決めたことが気に食わなかったのだろう。今までセレッソへと銃口を向けていたデスピアダドは、その先端を静かに斜め下へ向け。
「それならば……相方が痛い目に遭えば、少しは狼狽していただけますかねぇ?」
 赤い瞳を不気味に細め、突如としてオルトロスのタフトへ向けて銃撃を放った。
「……タフト!?」
 立て続けに連射された魔弾が、瞬く間にサーヴァントの身体をハチの巣にする。一見、物理攻撃にしか見えないが、魔術的な何かが作用しているのだろうか。
 防御の穴を突かれ、黒い犬の身体が宙を舞う。すぐさま受け身を取って主の足元へ駆け寄るが、守りに徹していなければ、それも適わなかっただろう。
 次はお前だ。再びセレッソへと銃口を向けるデスピアダド。だが、続けて放たれるはずの銃弾は、果たして標的を射抜くことはなく。
「てめぇ! なに、あたしのセレッソにきたならしい手で触ってんだおらぁ!?」
「下らぬ大義名分を振りかざし、無益な殺生を正当化するか……。こざかしい!」
 突然、闇の中から繰り出される二振りの拳。地を裂き、岩をも砕く衝撃に、デスピアダドの身体が吹き飛んだ。
「くっ……! な、何者ですか! 私の狩りを邪魔するのは!?」
 銃身を杖のようにして、デスピアダドは踏み止まりつつも、顔を上げた。そこにいたのは、拳を構える白銀・ミリア(白銀の鉄の塊・e11509)と黒須・レイン(海賊少女・e15710)の二人であり。
「同胞の為、因縁の敵をぶっ潰す。いいじゃねぇか。俺様もやる気が出る」
 起き上がりを狙い、カーラ・ラクシュ(剛毅壊断・e50415)が組み付いて動きを封じ込めた。それでも、強引にライフルの引き金へと翼の先を伸ばすデスピアダドだったが、そこは神居・雪(はぐれ狼・e22011)がさせなかった。
「誰が害獣だっての。ふざけやがって……。好き勝手させねぇし、これ以上野放しにもさせやしねぇ!」
 ライドキャリバーのイペタムを突撃させた上で、雪は神殺しの矢で敵の手元を容赦なく射抜く。漆黒の矢によって肉体を穿たれたが最後、いかに正確無比な狙いとて、時に手元が狂うはず。
「ぬぅ……。貴様達、あくまで邪魔をするつもりか! ならば、そこの害獣共々、まとめて狩って……ぶごっ!?」
 楽しみを邪魔され、怒りに満ちた表情で立ち上がるデスピアダド。しかし、彼が言葉を言い終わるよりも先に、テレビウムの凶器が容赦なく背後から頭を叩き割り。
「ウェアライダーは害獣なんかじゃありませんっ! そんな事をする悪い鳥さんは成敗です! 成敗!!」
 月見里・ゆの(現代のバネ足ジャック・e08462)が、真正面から堂々の宣戦布告。先の連射で傷を負ったタフトへと、自らの蓄えた気を分け与え。
「大丈夫か? ……中々エグイことしてくるな」
 同じく、風鈴・響(ウェアライダールーヴ・e07931)もまた、セレッソへ満月にも似た光の球を力として分け与えた。
「私を成敗する、ですか? ……いいでしょう! それならば、この私の力……存分に魅せて差し上げましょう!」
 翼を広げ、デスピアダドが吠える。どうやら、遊びはここで終わりということらしい。瞬間、周囲の空気が震えて冷たい刃のようにケルベロス達の肌を刺したが、こういう時こそ怯んではいけない。
「みなさん、闘いというものは臆した者に負けがおとずれます。だから、ファイトー!です!!」
 防御用のドローンを全周囲に展開し、アイリス・フィリス(アイリスシールド・e02148)が後方から仲間達を鼓舞した。
 ウェアライダーを害獣と見做して狩猟するビルシャナ。その、危険な遊戯を終わりにすべく、路地裏での死闘が幕を開けた。

●狩猟遊戯
 巨大なビルとビルの谷間で、人知れず繰り広げられる激しい戦い。多勢に無勢の混戦であるにも関わらず、百発百中を誇るデスピアダドの魔弾は、ケルベロス達の身体を正確に捉えて来る。
 色物のビルシャナと同列に考え、気を抜いた瞬間に弱点を射抜かれる。そう、誰もが解っていたからこそ、攻撃の手を休めることはなく。
「見た目に騙されて、油断したら駄目だよ」
「わかってる! 容赦なく全力でめっためたにしてやる……!」
 元より、長引かせるつもりはない。セレッソの言葉に頷いて、ミリアは二振りの斧を構え高々と跳躍した。
「おらぁっ! その汚ねぇ翼、斬り落としてやるぜ!」
 振り下ろされる鋼の刃。間合いを取ろうと下がるデスピアダドだったが、それよりもミリアの方が僅かながらに速い。
「グェッ!? この私の腕を……っ!?」
「……いつまでも、怯えて狩られるだけだと思うなよ」
 真横から殴り掛かったセレッソの拳が、強引にデスピアダドの腹へと捻じ込まれた。羽毛を散らせ、ゴミ箱に激突する鳥頭。頭の上に乗った生ゴミを払い落とし、赤い瞳がケルベロス達を睨み付ける。
「おのれぇぇぇっ! こうなれば、お前達は全員駆除してやりますよ! どいつもこいつも、駆除、駆除、駆除だぁぁぁっ!!」
 巨大な標識を取り出して、怒れる鳥が高々と吠える。瞬間、標識に描かれた動物のマークが怪しげに輝くと、それを受けた者達の足が、鉛のように重たくなった。
「ふっふっふ……もう、逃げられませんよ。一人ずつ、急所を撃ち抜いてあげますから、覚悟してくださいね」
 動きさえ止めれば、こちらのもの。そう言って不敵に笑うデスピアダドだったが、それでもケルベロス達は怯まない。
「そうそう、好きにはさせませんよ」
「まだまだ……そんな攻撃じゃ、ユノは止められないのです!」
 アイリスの降らせた薬液の雨が光の楔を溶かしつくし、ゆのもまた気合いで拘束を吹き飛ばす。その上で、光には光で対抗だとばかりに、テレビウムの画面を激しく明滅させて。
「ぬぅっ……! こ、これでは目が……!?」
 思わず、デスピアダドが翼で目元を覆った隙に、響と雪が飛び出した。
「貴様のような悪党に……」
「……誰が駆除されるかっての!」
 二代のライドキャリバーと共に斬り込んで、魔を食らう一撃と紅蓮の蹴りをお見舞いする。標識を盾代わりにして衝撃を殺し、辛うじて体勢を立て直すデスピアダドだが、背後に気配を感じて思わず振り返った。
「……オイ、俺様から逃げんじゃねぇよ。ビビるにはまだ早ぇだろ?」
「な、なんと!? この私が後ろを取られるとは、とんだ油断を……!?」
 残念ながら、その言葉は最後まで紡がれない。未だ敵の身体に残る赤い炎へ、カーラが強引にナイフの切っ先を捻じ込んだのだ。
「まだだ! ついでに、こいつも持って行きな!」
 悶絶するデスピアダド目掛け、レインが大鎌を投げ付ける。奇妙な軌道を描いて回転する刃が、敵の胸元を大きく斬り裂いて羽毛を散らせた。

●魔狼の牙
「ぬぅ……これは拙い。実に拙い……」
 薄暗い路地裏の一角で、間合いを計りつつライフルの照準を合わせるデスピアダド。表情には出していなかったが、しかし彼の言葉の端々から、焦っているのは明白だった。
 ウェアライダーを狩るハンターを自称している自分が、獲物を狩るどころか追い詰められている。このままではハンターの名が廃るが、しかし火力ではケルベロス達の方が断然に上なのだ。
「私に、レインに、皆を守る力を……!」
 巨大な十字架で殴り掛かるレイン。そのまま接敵し、至近距離で大口径の砲弾を叩き込めば、続けてカーラもまた金棒片手に距離を詰め。
「手加減は無しだ。全力でぶっ転がしてやるよ!」
 呪符を剥がした金棒で、空間諸共に敵を打つ。肉が潰れ、骨が砕ける音がしたが、それで終われば、まだ幸せだった。
「地獄じゃ生温い!! 更に底まで墜ちやがれぇええ!!!」
 こいつだけは許さない。緋爪を携え、ミリアが幾度も敵に斬り掛かる。紅き軌跡を描いて爪が振るわれる度に、敵の羽毛が激しく散った。
「ぬぅ……こ、このままでは……」
 完全に追い詰められたデスピアダドには、もはや逃げる場所さえ存在しない。もう、いい加減に諦めろ。無言の圧力を以て追い詰めるケルベロス達ではあったが、やはり狡猾なるビルシャナの本質は最後まで変わることはなく。
「認めませんよ、こんなのは……。どうせ死ぬなら……せめて、私の当初の目標だけでも、果たさせてもらいましょうか!」
 そう言うが早いか、ライフルを構えてセレッソを狙い撃つ。今度は見せ技でも足止めでもない。正真正銘、必殺の一撃が、セレッソの額目掛けて飛翔するが。
「……ッ!」
 果たして、彼女の額が撃ち抜かれることはなく、代わりに身体を射抜かれたのは、射線に割り込んできたタフトだった。
「くっ……! み、身を挺して主を護ったというのですか!? 害獣のために自らを犠牲にするなど、なんと小癪な……」
「うるさい! もう、許さないぞ……絶対に!」
 腕の中で消えて行くタフトの姿に身体を震わせ、セレッソは射るような視線を敵へと向けた。
 主さえ無事であれば、サーヴァントは力を取り戻す。しかし、それを抜きにしても、このビルシャナの所業と言動は許せない。それはセレッソだけでなく、響や雪にとっても同様であり。
「行くぞ、雪! まずは、あいつの動きを止める!」
「テメェは狩る側じゃねぇ! アタシらに狩られる側だ!」
 響と雪の二人が、炎を纏ったライドキャリバーを突撃させる。ライフルの銃身を盾のようにして耐えるデスピアダドだったが、こんなものは見せ技だ。
「動きは止めたぜ……! 後は任せた!」
 牽制の矢を放ちつつ、雪が叫ぶ。その言葉に、響だけでなくアイリスやゆのも頷いて。
「セレッソさん、後は任せましたよ!」
「ユノの力も、持って行ってください!」
 賦活の電撃に、満月の如き力の証。それらの全てを受け取るセレッソだったが、しかしまだ終わらない。
「オマケだ! こいつも使え!」
 同じく、響の投げたエネルギー球も受け取って、セレッソの身体が輝いた。
「……行ける。これならば……」
 その姿は、さながら満月の力を糧に目覚める魔狼の如し。追い詰められた手負いの狼が、ついに凶暴なる牙を剥いたのだ。
「遠く離れて手の届かない獲物に襲い掛かろうと、狼は梯子のように連なっていく……。千疋狼、聞いた事はないかい?」
「なっ!? こんな時に、いったい何を……!?」
 槍を構えつつ問い掛けるセレッソの姿に、デスピアダドは困惑しながら尋ね返した。だが、その答えを彼女が告げることはない。代わりに敵へ送られるのは、魔狼の名を冠した槍による一撃だ。
「ここで死んで、二度と姿見せるなぁ!!」
「ひっ……! そ、そんな馬鹿な!? 私は……私は、全ての害獣を狩る最高のハンターに……!?」
 堪らず逃げ出そうとしたデスピアダドの首筋を、槍の一撃が貫いた。獲物に襲い掛かった狼が、その喉笛を食い千切るように。
「あ……ぁぁ……」
 ライフルも標識も取り落とし、崩れ落ちるデスピアダド。赤い瞳が光を失い、やがてその全身は、闇に溶けるようにして消え去った。

●復讐の果て
 静かだった。
 全ての戦いを終え、路地裏に簡単なヒールを施したケルベロス達。これで、セレッソの因縁も終わったのか。そう思い、誰ともなしに彼女へと語り掛けようとしたが、しかしセレッソは静かにその場で崩れ落ちると、地獄化した左腕を握り締めて涙を零した。
「復讐は終わったのに……何も解決しないじゃないか……」
 仇敵を倒しても、失ったものは戻らない。復讐を成し遂げたというのに、この心の中にある靄のようなものは何だろう。
「憎い、まだ憎いよ……」
 心の痛みも、憎しみも消えない。それが、とてつもなく怖かった。死してなお、あのビルシャナが自分を縛っているような気がしてならず、自分の心が闇に食われるような気がして恐ろしかった。
「心配するな……。もう、終わった……全部、終わったんだ」
 震えるセレッソの背中にそっと手をかざし、ミリアが優しく声を掛ける。そんな二人の姿を見て、何かに気付いたアイリスだったが、しかし今は口に出すのは止めておいた。
「……復讐、か」
 何か思うことがあるのか、響もまた小さく呟いて空を仰ぐ。
 復讐の炎に身を焦がせば、その果てに待つのは虚無か、破滅か。しかし、それでも大切なもの、大切な人を奪った相手が目の前にいれば、怒りと憎しみを止められないのも人間だ。
 復讐をしても満たされない。それは相手に、『自分が悪かった』と認めさせることができなかったからであろう。悪逆非道の限りを尽くし、殺されても己の罪を認めない。そんな状態の相手を倒したところで、それは勝ち逃げされたにも等しい行為。
 戦いに勝って、勝負に負ける。復讐とは、時にそういった戦いになるのかもしれないと。そんなことを思いながら、ケルベロス達は帰路に着く。
 夜空を貫く摩天楼。しかし、その底に漂う暗雲は晴れず、大都会の夜は、まだ明けない。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年7月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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