東の果てのプライベートビーチで出会った彼は豚でした

作者:ハル


「これってサメじゃん! ヤバイじゃん!」
「そのサメはネムリザメっていうあまり人を襲わないサメだから」
「でも、こんなウヨウヨいたらさすがに怖いって!」
 小笠原諸島沖にあるプライベートビーチ。そこを訪れていたのは、総勢10名からなる二人の保護者含む女子高生の団体。
「男子も連れてくる予定だったのになー」
 旅行発案者の少女が、口を尖らせる。その件については、旅行に際して保護者の同伴必須という条件を突きつけられた際に頓挫していた。
「まぁ今回は私達だけで楽しもう」
「だね。旅費は親に出してもらえる訳だし。むしろラッキーだ――ぶへっ! や、やったわねっ!?」
 気を取り直し、少女達は透き通る海に身を浸し、海水を掛け合う。
 その様子を浜辺のパラソルの下、保護者である二人の母親が微笑ましく見守っていた。
 すると――!
「こんな人目につかない無人島に女ばかりで、誘っているとしか思えないブヒ!」
「ひぃっ! や……いやっ!」
 突如出現した回廊から、続々とオークが飛び出してくる。オーク達は歓喜と共に、若い果実を弄ぼうと触手を伸ばす。
「何をしているの!」
「子供の前で熟れた母親達を弄ぶのも良いが、まずは夏の醍醐味から満喫ブヒ!」
 母親が、子供達を助けようと奮闘する。だが、オーク達は母親を動けないよう拘束だけして、少女達の水着を少しだけズラす。
「うおおおっ! この焼けた肌と、水着によって白いままの肌とのコントラスト! これこそ夏!」
「へ、変態! 変態っ!!」
 オーク達は欲情も露わに、水着に隠されて白い肌の部分だけをしゃぶり尽くす。
 プライベートビーチに、少女達の悲鳴がいつまでも響いていた。


「ようやく天気も回復して、ついに海水浴の季節です。多くの方々が予定を立て、楽しみにしている所だろうと思いますが……」
 ……オークです。山栄・桔梗(シャドウエルフのヘリオライダー・en0233)がポツリといった。例の黒い虫と同じで、オークも最盛期を迎える時期である。
「情報を寄せてくれたのは、レーヴ・ミラー(ウラエウス・e32349)さん。オークが苦手な彼女ですが、頑張って情報を集めてくれました。それを元に調査を進めた結果、小笠原諸島沖のプライベートビーチで14体のオークが確認されました」
 桔梗が、深く溜息をつく。
「標的とされたのは、計10名の女性です。内訳は、女子高生が8人、保護者で同伴しているママさんが2人となります。また例の如く、オークの行き先が変わってしまうので、事前の避難は不可となっています。ご注意ください」
 ケルベロスには、オークを確認してから動いてもらいたい。
 その後避難という流れになるが、避難が完了できないと、戦闘中にも女性達がオークに弄ばれてしまう懸念がある。できるだけ避難させてあげて欲しい。
「14体のオークの中に、突き抜けた戦闘力を有する個体がいない事は判明済みです。ですがただ一つ、今回出現したオークは、焼けた肌と、布地に覆われて焼けていない肌との対比に異常な情欲を抱くそうです」
 パラソルの下にいて、かつ日焼け止めを入念に塗っていた保護者にはあまり興味を示さなかった事を鑑みれば、オークを引きつける際に重要な情報となるかもしれない。
「ケルベロスを除けば、現場には彼女達しかいません。周辺を警戒する必要はないでしょう。なにせ、プライベートビーチですからね。そういった意味では、避難はそう難しくはないと思われます。ただ、ママさん達も必死になって女の子達を助けようとするでしょうから、そちらは注意が必要でしょう。上手く対応すれば、ママさん達の動きによって女の子達をスムーズに避難させる事も可能かもしれません」
 それ以外にも、最も確実かつ簡単な手段として、少女達の全身を事前にくまなく日に焼いてしまうという手段もあるが。
「それをするには、少女達をどうにかして全裸にしなければならない訳でして……」
 異性の目がなければ可能かもしれないが、方法を誤ればこちらが変態扱いされかねない。
「ともかく、せっかくのバカンスです。オークの魔の手から、女の子達を守ってあげて下さい。無事に終われば、皆さんも少しごゆっくりして来ても大丈夫ですからね」


参加者
ラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)
盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
レーヴ・ミラー(ウラエウス・e32349)
ピクシー・ガリトラップ(ヴァルキュリアの鹵獲術士・e41032)
フィオドラ・グランツヴァルト(花を護りし者・e46626)
アーシャ・シン(オウガの自称名軍師・e58486)
山下・仁(旅団巡り中・e62019)

■リプレイ


「直るまで暇なのー! ふわりもね、一緒に遊んで良いの?」
「え!?」
 盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)の声に、パラソルの下で腰掛けていた保護者二人は振り返った。一瞬警戒の色を見せた彼女らではあったが、ニヘラッと相好を崩すふわりの緩い雰囲気に、
「あら、どなたかしら?」
 それは無用の産物であると思ってくれたようだ。
「ふわり、遊ぶ算段の前に、まずは説明をしなければならないわ。急に押し掛けて御免なさいね、実は船が故障してしまったみたいで……」
「ええ、その船の修理が済むまで、ここに上陸させてもらえないでしょうか? ……そうお願いしに参ったのです」
 ふわりの後を引き継ぐように、フィオドラ・グランツヴァルト(花を護りし者・e46626)とアーシャ・シン(オウガの自称名軍師・e58486)が告げる。
 保護者二人は驚いたように顔を見合わせると、「それはもちろん」そう了解を示してくれた。

「でしたらこのプライベートビーチは、旦那さんが?」
「ええ」
 アーシャは二人の保護者の傍に腰掛け、世間話を。聞けば、このプライベートビーチは、アーシャの問いかけに頷くママさんの夫が所有しているらしい。
(「だったら、この近郊で獲れる美味しい魚や、地酒についても知っているかもしれないわね」)
 生唾を飲み込みながら、話題を徐々に食事関係に持って行こうとするアーシャ。
 そんな彼女の眼前では――。
「乗ってたボートが故障して、この島に漂着したんだ。良かったら、仲良くしてよ!」
 緑色のビキニを着たピクシー・ガリトラップ(ヴァルキュリアの鹵獲術士・e41032)が、何故かドヤ顔で女子高生達とコンタクトを図ろうとしていた。
「海で楽しみましょう! ご迷惑でなければ……でございますが」
 18歳の姿となった白ビキニのレーヴ・ミラー(ウラエウス・e32349)は、無理矢理作ったような笑みを浮かべている。恐らくは、これから襲い来るであろうオークの存在を少しの間でも忘れようとしているのだろう。
「歳も近いようだし、どうかしら?」
 フィオドラが確認をとる。
「いいよー、人数は多い方が楽しめるしね、特にこんな場所ならねっ!」
 広い砂浜の下、開放感に溢れた彼女達に、否はないようだ。すぐに打ち解け、熱い太陽の下で互いに海水を掛け合う。
「っ、あ……こんなに、丹念に塗らなければ……んぅ、いけないのだなっ……!」
 だが、ふいに聞こえてきたエメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)の色っぽい声に、視線がそちらに集中する。
「入念にやらなきゃダメなのー♪」
 見れば、背中の大部分が露出している黒いモノキニを纏ったふわりが、楽しそうにエメラルドの肢体……黄色のビキニの下にサンオイルを塗りたくっていた。
「か、彼女達に見られているではないか! ……っ……んぐっ……」
 甘い吐息を堪えながらエメラルドは主張するが、「エメラルドちゃんはそういうのが好きな事、ふわり知ってるの♪」そう言って取り合ってもらえなかった。

「う~ん、夏ですからビーチに出現するのは分かってましたが……プライベートビーチに出現するとは……」
 10名の女性達の様子を隠れて伺いながら、ラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)は視線を逸らしながら言った。エメラルドの声は、ここまで漏れ聞こえていたのだ。
「そうですね」
 エメラルドだけでなく、楽しそうにはしゃぐ少女達の声に、山下・仁(旅団巡り中・e62019)も苦笑を浮かべた。猛烈な炎天下の中、自分達は男二人で何をやっているのだろう……そういった気持ちに駆られるのも、自然な事だろう。
「おっと、ネムリザメですか……ちょっとお願いしてみましょう」
 手慰みに、仁が餌用エビを撒くと、ネムリザメがウヨウヨと寄ってくる。
「すごいですね」
「何故か仲良くなれちゃうんですよ」
 ラインハルトが目を丸くすると、仁は少し得意げに鼻頭を掻いた。
 ――と。
「わぁーい!」
「ひぅっ!? オ、オオオ、オークです! ……ひき…ひきつけますっ! プラレチ…傍にいてくださいね……離れないでくださいねっ!」
 ピクシーとレーヴの、対照的な悲鳴が響く。
「来たわっ! こっちに逃げて!」
 フィオドラが、オークと逆方向を指差した。
「僕達はケルベロスです、皆さんを助けに来ました!オークは僕達に任せてどうか避難を!」
「このバスローブで体を隠して、お母様達と一緒に逃げて!」
 聞き付けたラインハルトと仁は飛び出すと、避難誘導を開始するのであった。


「こんな所をピンポイントで狙うなんて、てめぇらの嗅覚は一体どうなってやがんだよ!」
 アーシャは手近なオークに彗星の如きタックルを喰らわせつつ、保護者と女子高生達を逃がしていく。
「きゃああ!」
「ブヒィ、日焼け後の中に映える白い肌を晒け出すブヒィ!」
「や、やめなさい! その子達に触れないで!」
「ああ、たくっ! あの子達は必ず逃がすから、俺達に任せろ!」
 だが、何分オークの数が多い。こちらを取り囲もうとするオーク達に、何人かの少女達が触手で嬲られそうになる。大事な娘や、預かった子供達を守るべく、決死の覚悟で立ち向かおうとする保護者達を宥めるのにアーシャは苦労していた。最も、堪え性がないアーシャは、お姫様抱えで強引に避難を促すのだが。
「仁からでも、わたしからでもいいから、バスローブを受け取って逃げる事に集中して! 大丈夫、指一本触れさせたりしないわ!」
 アーシャの若干雑な点を、フィオドラが上手くフォローする。バイオガスで、逃げた少女にこちらの様子が見られないよう配慮し、かつオーク達が少女に伸ばす触手を地獄の炎を纏わせた鎌で斬り払いながら。
「でも、なんとかなりそうっすね!」
 全身に「鋼の鬼」を浮かび上がらせながら、仁が言う。
 女子高生達を追いかけるオークは、それほど多くはない。
「ねぇ、ふわりと一緒に遊んで欲しいの……日焼けしちゃって痛いから、水着をその触手で脱がして欲しいの……♪」
 そう言って積極的にオークへと絡んでいくふわり達……囮役が、上手く役目を果たしていた。
「まぁ、オークが相手だとこうゆう目にあいますよね……」
 だが、当の囮役は壮絶な目に合っているようだ。楽しそうなピクシーとふわり、悔しげなエメラルドとレーヴの痴態を前に、ラインハルトは視線を泳がせ、赤らむ頰を誤魔化すように、電光石火の蹴りで集中砲火を受けたオークを肉塊に変えるのであった。

(「くっ! 今に見ていろ!?」)
 エメラルドは、寝ているふりをするために閉じた瞳を薄らと開けた。2体のオークが彼女の黄色のビキニをズラし、丹念に触手で嬲っている。
「こいつもビキニ部分だけ焼けてないブヒよ!」
「ひぅっ!? あ、やめ……あぁっ!」
 サンオイルは役に立ったようだが、嫌でも反応してしまう敏感な身体が恨めしいと、エメラルドはオークに身を任せつつ唇を噛んだ。
「……あっ……お、おかしい、です……また、変な……あの変な感覚がぁ……あぅぅ……」
 背後から拘束されながら、レーヴは身を捩って背筋を這い上がってくる感覚に堪えていた。プラレチも尻尾の輪を飛ばしてレーヴを助けようとするが、何分多勢に無勢だ。
「レーヴちゃんも楽しまなきゃ損だよ? ねっ、白いでしょ。今度は君達の触手で、白くして欲しいな」
「ガ、ガリトラップ様、そんなぁ、お止めくださ――あぅぅ……!」
 だが、それだけでは勿論終わらない。ピクシーがビキニをクイッと引っ張って肌の白く残っている部分を見せつけると、触手やオークの悍ましい舌がピクシーの白と褐色の境界を舐め回り、レーブもその余波を受ける。
「こういうの、好きなの? ……ふふ、変態さんなの♪」
「そういうお前も、相当な好き者だブヒ!」
「そういうの女の子に言うのはメッ! なの。でも、ふわりを気持ちよくしてくれるなら、許しちゃうかもなの♪」
「肌がふやけるまでしゃぶりつくしてやるブヒ!」
「やんっ! あっ……ああっ!」
 ふわりの纏うモノキニは、変わった形状をしているものが多い。新鮮さとセクシーさを感じさせる日焼け後に欲情したオークが、ふわりを我が物にしようと殺到していた。


「て、てめぇ、気色悪いんだよ!」
 アーシャ達前衛に、オークが触手と舌をネットリと這わせる。嫌悪感も相まって身体を硬直させるオークの行動に、全身に鳥肌を立てたアーシャが黄金の角で串刺しに。
「男はいらないブヒ!」
「そう言われて引き下がる訳には行かないんですよ!」
 広範囲に及ぶ触手は、仁とラインハルトにも影響を及ぼしている。最も、幸か不幸か女性陣に対するような性的なものではなく、殺意が込められたものであるが。
 全員の避難完了まで、残り一人。仁は花びらのオーラで縦横無尽に薙ぎ払われるオークの触手の勢いをできる限り殺しつつ、最後まで少女達の誘導を手伝ってくれた保護者の女性を庇っていた。
「あなたの子供達を想う愛情に、敬意と感謝を」
「こちらこそ、あの子達を助けてくれて、ありがとうございます!」
「いいのよ。さぁ、あなたも行って!」
 フィオドラが保護者に感謝を告げると、むしろ向こうからも感謝を伝えられる。懸命に逃げるその背を見送って、「虚」の力を宿した鎌で迫るオークを仕留めた。
「なんとか避難を無事に終えられましたかっ!」
 続けて、ラインハルトが放つオーラの弾丸が、オーク達を押し返そうとする。
「――っ! 後ろに、あ゛ぁ゛!!」
 だが、依然として数で押してくるオークに背後を取られ、抱き竦められたフィオドラが好き放題される。
 しかし!
「待たせたな! これからは、今まで以上に回復と支援に専念させてもらおう!」
 囮役から解き放たれたエメラルドが、ピクシーにオーラを注ぐ。
「そういう訳なんだ、ごめんね!」
 すると、光の粒子と化したピクシーが、フィオドラを襲うオークを粉砕した。
「でもでもー、オークさん達まだまだ一杯いるのー♪ 次はオークさん達をたくさん『日焼け』させてあげちゃうの!」
 ふわりが、炎弾で弾幕を張ってオーク達を炙る。
「……そ、そうでございますね。日焼け痕の関係で、私達が狙われやすいのは変わらないのですよね、うぅ……!」
 レーヴは涙目になりながら、「月光の癒しを」懐から取り出したカードで自らを癒やす。まるで、自身の身体に纏わり付くオークのネチッコイ愛撫の感触を振り払うように……。

「……あ、し……白」
「死ね!」
 アーシャに足払いされて転ばされたオークは、最後に桃源郷を覗き込んだ。だが、夢の世界も一瞬、アーシャの脚が勢いよく振り下ろされると、オークの頭部を粉砕する。
 避難完了から一気に攻勢をかけたケルベロス達により、オークは瞬く間に数を減らしていた。
「ホント何処にでも湧いてくる厄介な連中ね」
 とある事情からオークの存在を許容できないフィオドラは、触手に嬲られた箇所を忌々しげに眺め、眉根を寄せた。混沌の波が解き放たれると、オーク達が呻きを上げながらのたうち回る。
「……あの、そろそろ目のやり場に困るのですが……」
 オークが多数存在していた時は、戦闘に集中してそれ所ではなかったが、余裕が出てくるとそうもいかない。オークを手や口……身体の至る部位を使って搾り取ろうとするピクシーをラインハルトはチラチラと横目で見ながら、
「虎王完了」
 レーヴを襲っていたオークの首と腕を破壊し尽くすが、格好がつかないというものだ。
「堂々と見てもいいんだよ?」
「そうなのー! 遠慮する必要ないの……ねぇ、エメラルドちゃん!」
「わ、私に振らないでくれないか、ふわり殿!」
 だが、ピクシーやふわりに、恥じらいは期待できないようだ。エメラルドは心外そうにラインハルトと仁の視線から身体を隠すが、さすがに今更というものだろう。
 ともかく――。
「彼の者は来たれり! 見よ! 空を穿ち、大地を揺るがし、海を割りて、今ここに凱旋するべく奮い立つ! 我らが英雄の不敗たるを称えよ!」
 エメラルドが、最後のラッシュも見据えて勇壮な歌を奏でる。
「ふわりはね、あなたの事も愛してるの。見えなくてもいつだって隣にいるし、いつだって愛してあげるの。いつでも、いつまでも……一緒なの」
 ふわりが自分の顔を両手で隠すと、オークはふわりを認識できなくなった。笑みを浮かべたふわりは、オークの意識の外から接近し、抱きついた。分厚い胸板にキスの雨を降らしながら、恐怖と快楽に溺れるオークの急所を貫く。
 ピクシーが、業火に包まれたゾディアックソードでオークを断つ。
「よ、ようやく終わるのですね……!」
 スノーが爪で襲い掛かるのとタイミングを合わせ、レーヴが降魔の一撃を放った。
「さぁ、退場願いましょうか!」
 残り2体となったオークに、仁が大量のミサイルを浴びせかける。爆風と粉塵が吹き荒れた。それが収まった時、プライベートビーチにようやく平穏が帰ってきたのであった。


「本当に、ご苦労様でした……」
 見ないように俯きながら、ラインハルトが女性陣にバスタオルを手渡していく。暫くして皆が身体を隠してくれたものの、当分の間はラインハルトの脳裏から肌色が消えることはなさそうだ。
「楽しかったね!」
「なのー♪」
 オークの感想を言い合うピクシーとふわり。
(「…………楽しかったの、でございますか!?」)
 そんな二人に、レーヴは愕然とした視線を向けた。同時に、レーヴは姉のことを思い出す。姉ならば、オークも平然といなしていただろう。色事に関する自分の至らなさを思い知りつつも、やはり羞恥は捨てきれないレーヴ。
「くっ……! また私は、恥ずかしげも無くあんな声を!」
 エメラルドは、四つん這いになって快楽に溺れた自分を反省していた。何をされても堪えるつもりが、結局はいいようにされてしまったのだから。だが、今日の所は前回のオーク戦の傷の完治が間に合っただけでも、良しとするしかない。
「そんなもの持って来てたんだ!?」
「ま、まぁ、そうっす」
 仁が残っていた餌用エビを撒くと、またネムリザメが寄ってくる。仁は物珍しげな少女達と一緒に、ネムリザメ鑑賞を堪能した。
「いやー、悪いですね。こんな高そうなお酒を頂けるなんて!」
「娘や子供達を助けてくれたお礼です。ご遠慮なさらずに」
 アーシャは保護者達と共に、酒盛りに興じていた。プライベートビーチを所有しているお金持ちだけあって、次々と高い酒が運ばれてくる。
「ふぅー!」
 フィオドラは、喧噪から少し離れ、大きく伸びをした。
「あら?」
 しばらく浜辺を散策していると、キラキラと日光に照らされる綺麗な貝殻を見つける。
「これ、フェオに似合いそうね」
 フッと、フィオドラは微笑する。貝殻を空に翳しながら、女子高生達がオークを忘れて、楽しい夏の思い出として今日を刻んでくれる事を願った。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年7月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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