肉を喰らう! 肉フェスに並ぶ新鮮な血肉!

作者:天木一

「んーこのローストビーフはビールに合う!」
「いやいや、こっちの焼肉はごはんがいくらでも食えるよ!」
 炎天下の野外に出店が設営され、どこもかしこも肉の焼ける良い香りが漂う。
 暑さも気にせず、人々は肉を食らい酒を飲み米を食べる。汗を流しながらも嬉々として食事を、肉を楽しんでいた。
「ステーキもうまーー! これはいい、ビールお代わり!」
「このチキン食ってみろって! チーズとろとろでごはんにめっちゃ合うって!」
 誰も彼もが肉に夢中になっている時、その上空に巨大な牙が現れていた。それが落下し地面に突き刺さると5体の武装した竜牙兵へと姿を変えた。
「ゾウオを! キョゼツを! キサマらにノゾムのはそのふたつのみ!」
「オマエらはここでシヌ! ドラゴンサマのためにシネルことをホコリにオモウがいい!」
「さあ、バラバラにキリコロシテやるぞ!」
 竜牙兵達は剣を大鎌を振り上げ人々に襲い掛かる。
「わあーーーー!!」
「化け物!?」
「誰か助けて―!」
 次々と逃げる人々が狩りのように斬り殺され、血の匂いが充満し土に染み込む。屋台の火がひっくり返って出店が燃え、燃え移った炎が転がった死体を焼いて、辺りに焼けた肉の匂いが漂った。

「人の集まるフードフェスティバルに敵が現れるんじゃないかと調べたんだが、どうやら的中したようだ」
 レイヴン・クロークル(水月・e23527)が新たな事件を見つけたとケルベロス達に告げる。
「竜牙兵が人々を襲いグラビティ・チェインを奪取する事件が起きます。今ならば敵が現れる前に現場で待ち構える事ができるので、犠牲が出ないように敵を倒してもらいたいのです」
 詳しい説明はこちらからと、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が話し始める。
「敵は東京の野外会場を襲うようです。そこでは肉をメインにしたフードフェスティバルが行われているようで、大勢の人で賑わっています。敵が現れる前に到着できますが、敵の狙いは多くの人であるため、出現前に避難させることは出来ません。ですので警察が避難活動をしている間、敵の注意を引き付けてください」
 避難は警察が行ってくれる。その間ケルベロス達が敵の相手をして巻き込まないようにしなくてはならない。
「敵戦力は竜牙兵が5体。ゾディアックソードと簒奪者の鎌で武装しているようです。ケルベロスを優先して攻撃し、死に絶えるまで戦い続けるでしょう」
 ケルベロスが来たと知れば、一般人をわざわざ狙うことはない。
「ただ食事を楽しみに集まった人々が殺されてしまいます。犠牲者が出ぬよう、皆さんの力で人々を守り敵を撃破してください」
 無事に終われば肉フェスを楽しんでくるのもいいかもしれませんとセリカが説明を終え、ヘリオンへ向かう。
「肉を食いもしないのに肉フェスに乱入とはな。せっかくの肉料理が台無しにされないよう、叩きのめしてやろうか」
 不敵に笑うレイヴンの言葉に頷き、ケルベロス達も準備に動き出した。


参加者
アリス・ヒエラクス(未だ小さな羽ばたき・e00143)
藤守・つかさ(月想夜・e00546)
リーゼン・トラ(さすらいのヤンキードクター・e03420)
舞阪・瑠奈(モグリの医師・e17956)
桜庭・萌花(キャンディギャル・e22767)
レイヴン・クロークル(水月・e23527)
猫夜敷・愛楽礼(白いブラックドッグ・e31454)
陽月・空(陽はまた昇る・e45009)

■リプレイ

●肉フェス
 ジュウジュウと肉が焼け、湧き上がる煙が旨い香りを漂わせる。ぐいっと冷えたビールを呷り肉を食う姿は食欲をそそられる。広場に出店が並び肉フェスが開催されていた。
「いい匂いだぜ、腹が減ってきやがる」
 目を奪われたリーゼン・トラ(さすらいのヤンキードクター・e03420)は、終わったら肉を存分に喰らおうと誓う。
「暑い日こそスタミナの付く肉料理だよな」
「確かに、冷えたビールにも合いそうだ」
 食欲のまま肉を喰らう人々を見て、藤守・つかさ(月想夜・e00546)も腹を空かせ、レイヴン・クロークル(水月・e23527)も流れる汗を拭ってビールが飲みたくなる。その足元ではテレビウムのミュゲが肉に目を奪われていた。
「おいしそうなお店がいっぱいあるね」
 楽しそうな肉祭りの様子に、桜庭・萌花(キャンディギャル・e22767)も祭りに参加するように店を見て回る。
「竜牙兵って、食べ物の味とかってわからないんでしょうか? わからないなら、ちょっと不憫です。……ですけど、人々の平和な暮らしを邪魔するのは、絶対に許しません! 成敗します!」
 こんな美味しそうなものを食べられないのかと憐れむのを打ち消し、人々も店も守ってみせると猫夜敷・愛楽礼(白いブラックドッグ・e31454)は夏の暑さにも負けぬ闘志を燃やす。
「……竜牙兵さんが来ると美味しいご飯が食べられる。竜牙兵さんはご飯の使者?」
 食べ物と竜牙兵が結びついて連想できてしまうと、無表情のまま陽月・空(陽はまた昇る・e45009)が首を傾げた。
「暑い……美味しい肉があるのに料理できない食べれない。来るのが遅いぞ。まさか、道に迷ってるんじゃないだろうな」
 じーっと出店を見ていた舞阪・瑠奈(モグリの医師・e17956)は、美味しそうな匂いだけの拷問を受け、恨めしそうに敵が来るのを待つ。
「からあげおいしい……これも偽装の一環」
 我慢する仲間を尻目に美味しそうな匂いに釣られ、アリス・ヒエラクス(未だ小さな羽ばたき・e00143)は唐揚げを買って頬張っていた。そうして祭りの空気を楽しんでいると、空に巨大な牙が現れる。それを見たケルベロス達は一斉に動き出した。

●竜牙兵
「ゾウオを! キョゼツを! キサマらにノゾムのはそのふたつのみ!」
「さあ、バラバラにキリコロシテやるぞ!」
 地面に刺さった牙が5体の竜牙兵へと姿を変える。
「良い感じに賑わってる祭りに乱入とか無粋過ぎだろ、さっさと潰して肉食いに行くか」
 リーゼンは手にしたスイッチを押し、カラフルな爆発を起こして仲間達を癒し闘争心を湧き上がらせる。
 ライドキャリバーの火珠が敵の群れにスピンしながら突っ込み、撥ね飛ばして停車し道を塞ぐ。
「私たちはケルベロスです! ここは引き受けますからみなさんは落ち着いて避難してください!」
 敵の気を引こうと大声で宣言した愛楽礼は、大鎌を持つ敵に光で出来た弓を構え光の矢を放って敵の胸を貫く。
「私達が引き付けますので皆さんはゆっくり避難して下さい」
 敵との間に割り込んだ瑠奈が一般人に声をかける。人々は準備していた警察官に誘導されて逃げ出していく。
「離れる前に火は消して下さい。それと、食べ物は落とさないで、私が食べる分が減りますから」
 そんな食い意地の張った言葉を投げかけながらも、黒太陽を具現化させて黒光を照射して敵の目を晦ませる。
「ケルベロスだと!? ワレらのジャマをするか!」
「ドラゴンサマのジャマをするオロカモノよ、ミナゴロシだ!」
 剣を振るい己らを強化すると、大鎌を持つ竜牙兵2体がケルベロス達に斬り掛かる。
「食べられる肉と食べられない肉の違いは大きいんだよ?」
 わざとらしい真顔を作った萌花は、足を撥ね上げて敵の腕を蹴り上げて片方の攻撃を止める。
「さて、一先ずは俺達と遊んでくれるだろ? 何、すぐに皆が遊んでくれる」
 つかさは剣を持つ敵達に黒い雷を撃ち込み、黒き閃光が迸り感電させてもう一体の敵を痺れさせた。
「ミュゲ、食事は後だ。まずは人と店を守るぞ」
 敵の行く手を遮るレイヴンが月光の輝きをアリスに飛ばして肉体を強化し、ミュゲはやる気満々で傘を振り回し痺れた敵の足に叩きつけた。
「一刻も早く片付けてしまうのよ。おにくがわたしをよんでいる」
 口に含んでいた唐揚げを食べ終えたアリスは、螺旋を描く氷雪を放ち敵を鎧の上から凍らせていく。
「キサマらのゾウオとキョゼツをモラウ!」
 竜牙兵が剣を振るい星座の力が放たれる。
「言い分はどうでも。僕が興味あるのはご飯、早く倒して食べるだけ」
 そちらの考えはどうでもいいと、すれ違うように飛び込んだ空は冷気を帯びた手刀を振るい、敵達を纏めて凍結させる。
「竜牙兵の身体は骨で出来ている故に、肉が無い……つまり、肉フェスを襲うその魂胆は……ある種の嫉妬………きのせいだったのだわ」
 ふと思いついた事を口にしたアリスは首を傾げて否定し、音も無く駆けて接近すると炎纏う足で敵を蹴り上げた。そこへ横から大鎌が振り下ろされる。
「させねえよ!」
 リーゼンはメタルを腕に纏わせて真っ直ぐに殴りつけ、敵の顔面を打ち抜き仰け反らせた。
「コロス! ニエとなれ!」
 竜牙兵が突っ込んで剣を振り下ろそうとする。
「そこはちょっと遠いんじゃないかなー」
 萌花は魔法光線を放って敵の脚を石に変え、踏み込みを止めて攻撃を逸らした。
「早くしないと焼きかけの肉が焦げてしまう」
 空は黒い液体を広げて敵群を呑み込み、表面を覆うグラビティごと喰らわせる。
「大体逃げ終わったかな……そちらにはまだ食材が残っている。攻撃はさせない」
 避難を確認していた瑠奈が戻りながら縛霊手の掌を向け、巨大光弾を放って敵の陣を崩すように纏めて弾き飛ばした。
「ほら、全員揃った。ここから皆で遊んであげるよ」
 踏み込んだつかさは雷纏う槍を甲冑に突き入れ、電撃を流してショックを与える。だがそこへフォローしようと大鎌が投げつけられた。
「数が多いと厄介だな。一体ずつ叩いていこう」
 オーラを纏ったレイヴンが割り込み、敵の攻撃を腕で受け止め押し戻す。
「世のため人のため、人々を襲うような悪党をのさばらせはしません!」
 愛楽礼は燃え盛る炎のオーラを凝縮し、砲弾のように撃ち出して敵の腹部に当てて吹き飛ばした。
「ヒトなどニエにすぎぬは! スベテはドラゴンサマのため!」
 竜牙兵達は次々と斬撃を放ち、ケルベロス達に斬りつけていく。萌花とレイヴンが仲間へのダメージを減らそうと己が身を盾として攻撃を防ぐ。激しい攻撃に近くの店が壊れ放置されていた肉が地面に落ちた。
「出店は直せても、食材は元には戻らないんだぞ」
 落ちた肉を見た瑠奈は、己が心が具現化したような黒光で敵達を照らし、怯ませて動きを止めさせた。
「安心しな大した傷じゃねえ。まだまだ戦いはこれからだぜ」
 リーゼンは月の如き光を放ち、一瞬にして萌花を癒し血を止め、その身に宿る獰猛ね野生を猛らせる。
「お前達の痕跡を一つも残すつもりはないんでな」
 駆けるレイヴンの足元からオーラの花びらが舞飛び、仲間達を癒し状態異常を消し去る。
「あつそう……涼しくしてあげる」
 甲冑姿に向けてアリスは渦巻く吹雪で敵を閉じ込め骸骨の氷像の如く凍らせる。すると割れて左腕が落下した。
「……冷たくしすぎたのだわ」
 失敗失敗と横から襲いくる大鎌を躱してアリスを後退する。敵は慌てて剣を掲げて解凍しようとする。
「正義の心が悪に負けることはありません!」
 一気に間合いを詰めた愛楽礼は、音を置き忘れたような速度で横蹴りを叩き込んで凍った敵をぶっ飛ばし、地面を転がりながらバラバラに砕け散った。
「キサマ!」
 そこは大鎌が投げつけられ首を狙って刃が迫る。
「はっずれー。残念だけど、そんな攻撃じゃ当たらないよ」
 跳躍した萌花は大鎌を踏みつけて落とし、更に高く跳び上がりながらにっこり笑って敵の顔を蹴り飛ばす。
「ゾウオし、キョゼツせよ!」
 竜牙兵達は反撃に武器で斬り掛かる。
「興味ない。今興味があるのは美味しいご飯だけ」
 怖れず踏み込んで屈み攻撃を躱した空は、低く手刀を薙いで足元を凍らせ地面にくっ付けさせた。
「馬鹿の一つ覚えみたいに毎度毎度、憎悪も拒絶も持って帰ってくれ。よく言うだろ? ゴミは各自でお持ち帰りください、あれと同じだよ」
 皮肉りながらつかさは大きく弧を描いて槍を薙ぎ払い、大鎌を持つ敵の胴を斬り裂き内部の骨まで断ち切った。

●邪魔者
「おのれおのれ! ケルベロスめ!」
 2体の竜牙兵が大鎌を投げ、弧を描き出店を破壊しながらケルベロスへと襲い来る。それをミュゲが広げた傘を盾にして攻撃を防ぎ、火珠が突進して大鎌を撥ね飛ばした。
「おっと、掴まえた。料理も出店も壊させる訳にはいかんな」
 素早く駆けこんだレイヴンは縛霊手で大鎌をキャッチしようとした敵の腕を掴み、掌から発する光で腕を吹き飛ばした。帰って来た大鎌が敵の脇腹に突き刺さる。
「わたしが食べるおにくをだめにするのは許さない」
 足音を立てずに跳んだアリスは敵の背後に影のように着地し、ナイフを鎧の隙間に突き立て背骨を抉ってグリグリと傷を深める。
「あつまれ! カイフクするぞ!」
 剣を掲げた竜牙兵が星座の力で癒しをかける。
「そんなに纏まっていいのか? こっちは攻撃しやすいからいいけどな」
 つかさは黒い雷を放射状に撃ち出し、敵全てを麻痺させて動きを止めた。
「骨は食べられないから、バイバイ」
 内に秘めた無数の呪詛を文字の形にして全身に纏った空は、その力を乗せ一気に踏み込むとナイフを一閃し、傷だらけだった大鎌の刺さる敵の体を縦に両断した。
「ゼッタイにキサマらをゾウオさせてやる!」
 剣を掲げた竜牙兵が麻痺を解除する。
「これ以上暴れさせない。肉を守ってみせる」
 瑠奈は鎖を伸ばして猟犬の如く地を走らせ、敵の脚に絡みつかせて束縛した。
「体に肉がないからそんな風に食べ物をムダにできるのかな?」
 萌花は降魔の力を宿した蹴りを胸に打ち込み、甲冑を凹ませて押し倒した。さらにそこに踏みつける蹴りを叩き込んで胸を圧迫して骨を折った。
「あと少しだ。こいつで敵の動きを丸見えにしてやっから、ガンガン攻めやがれ!」
 リーゼンは自慢のリーゼントに癒しの力を溜め、無数の光の針と変化させて敵味方無差別に撃ち込んだ。仲間に刺さった針は癒しの力を流し込み傷を癒し、敵に刺さった針は光って目印のように動きを目立たせる。
「ジャマするなケルベロス!!」
 大鎌を手にリーゼンに向かって突っ込んで来る。
「私たちがあなたの邪魔をしてるのではありません。あなたが平和に暮らす人々の邪魔をしているのです!」
 愛楽礼は光の矢を放ち、飛翔する矢が角度を変えながら敵の腕を貫いた。
「キサマ!」
 腕に刺さった矢を引き抜きながら敵が振り向く。
「おい、こっちだ。無視ししてんじゃねーぞ!」
 リーゼンは前蹴りを叩き込み、敵の腹を打ち抜いて尻餅をつかせた。
「食材が痛む前に終わらせる」
 単発式拳銃をグラビティで生成した瑠奈は、E・DB弾を装填して撃ち出し敵の鎧に当てる。対デウスエクス用細菌が纏うグラビティを侵食し消し去った。
「肉がないから捌くのは簡単」
 空はナイフを振るい、付け根あたりから右腕を切り落とす。
「どちらがほんものでしょう」
 アリスは己と同じ姿の幻影を作り出し、同時に敵を攻撃する。敵の腕が幻影に触れると泡沫の様に消え去り、その隙にアリスはナイフで首を斬り落とした。
「……其のままおやすみ」
 竜牙兵はごろりと落ちた首を拾おうとし、前のめりに体を突っ込ませて動かなくなった。
「ゾウオとキョゼツをヨコセ!」
 最後の竜牙兵が剣を振り回し、一人でも戦う意思をみせる。
「そんなものよりあたしが最高の絶望をあげる!」
 萌花は幻想の白茨を伸ばし、敵を追いかけて巻きつき体の自由を奪い取る。
「ここは断頭台、その首頂きます!」
 跳躍した愛楽礼は足を大きく振り上げ、全身全霊の力を込めて踵落としを頭に叩き込んだ。剣で受けようとするが、半ばから刀身を叩き折り、そのまま兜を凹ませ頭を打ち砕く。
「オオオ……!」
 頭を割られながらも、よろめき竜牙兵は折れた剣を突き出す。
「ゴミはここで一つにまとめて出さないとな」
 カウンターでつかさは槍を突き出し、胸を貫き風穴を空けた。
「お前で最後だ。燃えないゴミにしてやる」
 地獄化した己の左眼から焔を溢れさせたレイヴンは銃身に纏わせガンナイフと化し、獣の如く敵の周りを駆けながら刃を振るい全身を斬り裂き解体した。

●肉三昧
 壊れた出店にヒールを掛け終えると、周囲には人が戻り始め客を呼び戻そうと肉の焼ける煙が漂い始めた。
「みんな、お疲れ様。せっかくだし、食べ歩きしてこ。ほら、スタミナ付けるってやつ?」
「勿論、行く。全店制覇するよ」
 いい香りにお腹が空いてきたと萌花がみんなを誘うと、表情はないものの戦いよりも真剣な雰囲気を放つ空が深く頷いた。
「肉だ肉。まあ食い過ぎは要注意だが、動いた分は食わねーとな」
 消費したエネルギーを得るように、リーゼンは旨そうに焼肉に食らいつく。
「肉ばかりじゃ体に悪いからな。野菜や果物も用意しておいた」
 瑠奈が新鮮な野菜を切り始める。
「いいか。肉は何でも焼けば良い物でも無い」
 鍋奉行ならぬ肉奉行とでもいうべき指示を出してゆく。
「見事に肉、肉、肉だな。つかさはどうす、る……」
 尋ねるレイヴンの視線が肉を前に目をキラキラさせるミュゲで止まった。
「まずは食いしん坊に聞くべきだったか」
「はは、ミュゲは肉も野菜も好きだもんな?
 笑ってつかさがミュゲを抱き上げ、屋台で買ってきた串肉を一緒に食べ始める。レイヴンはその様子を微笑ましく眺めキンキンに冷えたビールを飲む。
「なんだよ……ほら、あーん? な? 美味いよな?」
「むぐ……っ? ははっ、確かに美味しいな」
 視線に気づいたつかさに肉を押し込まれ、レイヴンは思わず笑い出し、二人でビールの杯を合わせた。
「夏ですし、食欲を無くさないようにしっかり食べないとですね! ……食べ過ぎは禁物ですけど!」
 そう言いながらも肉の魅力に負けてしまいそうだと、愛楽礼はあっちこっちへと目移りしては買い食いしてしまう。
「……やはり都会はおいしいものがいっぱい……善き哉……」
 シュラスコを見つけたアリスは夢中になって頬をパンパンに膨らませていた。
「たくさん動いたからいつもより美味しく感じるね!」
 笑顔で萌花がお肉を食べると、その隣では両頬を膨らませた空がモグモグと並べた肉料理を堪能してうんうんと頷いた。
 ケルベロス達は旨そうに肉を喰らい、暑さを吹き飛ばすようなエネルギーを補給してお祭りを楽しんだ。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年7月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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