城ヶ島強行調査~穿つ楔

作者:小鳥遊彩羽

●穿つ楔
 鎌倉奪還戦と同時に、三浦半島南部の城ヶ島を制圧し拠点を作っていたドラゴン勢力。
 島の外へ出たドラゴンはケルベロスによって撃退されたが、島に残るドラゴン達は現在守りを固めつつ、配下のオークや竜牙兵、ドラグナー達による事件を引き起こしていると考えられている。
 多数のドラゴンが生息する拠点であるため、今まで攻略することが叶わなかったが、ケルベロス達の作戦提案により、ついに強行調査が行われることになった。
「とても危険な任務になるだろう。けれど、だからこそ君達に頼みたい」
 トキサ・ツキシロ(レプリカントのヘリオライダー・en0055)は、その場に集ったケルベロス達を前に、静かにそう言った。

 城ヶ島を正面から攻略することは非常に難しい状況にあるため、小規模の部隊を多方面から侵入させようというのが今回の強行調査だ。
 最悪、一部隊でも良いので内部の状況を調査し、その中で城ヶ島の敵の戦力や拠点の情報などが判明すれば、改めて攻略作戦を立案することが可能になるだろう。
「潜入方法についてなんだけれど、多数のドラゴンが警戒している中にヘリオンで侵入することは、わざわざ食べられに行くようなものだから今回は出来ない。だから、皆に任せる形になる」
 小型の船舶や潜水服、あるいは、水陸両用車程度ならば用意することが出来るので、必要に応じて申請し、三浦半島南部まで移動した後は立案した作戦に従って潜入を行ってほしいとトキサは続けた。
「敵に発見された場合は、おそらくドラゴンとの戦闘になるだろうね。……もしそうなってしまったら、例え勝ったとしてもすぐに別のドラゴンが来てしまうから、それ以上の調査を行うことが出来なくなる」
 戦闘になった場合は、出来るだけ派手に戦い、他の調査班が見つからないようにする――といった援護も重要になってくるかもしれない。
 場合によってはドラゴンと正面から戦うことになるなど、非常に危険な任務となるだろう。
 何より、城ヶ島はドラゴンの拠点である。ドラゴンと戦闘になった場合には、勝敗にかかわらずすぐに撤退する必要が出てくるだろう。
 勝利が難しくなった場合は、撤退する余力がある内に可能な限り遠くから撤退し、安全圏まで逃げ延びる必要がある。
「……今回ばかりは、引き際を間違えれば最悪の事態も起こりうることを、念頭に置いて行動してほしい。どうか、くれぐれも気をつけて」
 トキサがそう告げる傍らで、作戦提案者の一人であるアルトゥーロ・リゲルトーラス(エスコルピオン・e00937)が口を開く。
「さすがに一筋縄じゃ行かねぇが、ここが踏ん張りどころだ。――気合い入れて行こうぜ」


参加者
イェロ・カナン(赫・e00116)
ゼレフ・スティガル(雲・e00179)
アンノ・クラウンフェイス(ちっぽけな謎・e00468)
遠野・潮(バッドイーター・e00853)
アルトゥーロ・リゲルトーラス(エスコルピオン・e00937)
黛・繭紗(ピュラモスの絲紡ぎ・e01004)
新条・あかり(くらがりのあかり・e04291)
黒木・市邨(蔓に歯俥・e13181)

■リプレイ

 光を掴むように伸ばした腕が、岩礁を掴む。
 仄暗い海中から水面に顔を出したケルベロス達が振り返ると、幾つもの大きなドラゴンの影が、眼下の獲物目掛けて執拗に襲い掛かっているのが見えた。
 竜達が群がるそこには、共に城ヶ島の東を目指していた二隻の船がいるはずだ。
(「無事であってくれ……頼む」)
 囮となってドラゴンを引きつけてくれた彼らと、途中で別れた他部隊の同胞達の無事を祈りながら、アルトゥーロ・リゲルトーラス(エスコルピオン・e00937)は纏っていた潜水服とフィンを脱ぎ去った。
 他の仲間達も同様に、身に着けていた潜水服を脱ぎ捨てる。
「どうやら、目指していたところにつけたみたい、ですね」
 黛・繭紗(ピュラモスの絲紡ぎ・e01004)が城ヶ島の地図を広げながら小さく告げる。
 GPSのマーカーは、城ヶ島の東端、安房崎の一角を示していた。
 ここから安房崎灯台を経て城ヶ島公園及び白龍神社に至り、そして城ヶ島大橋を渡って戻る――というのが、彼らが想定した探索ルートだ。
 そして、彼らはその入り口である安房崎に辿り着くことが出来た。
 即ち、ここからが本当の戦いの始まりである。
「皆、危険な戦いになるがよろしく頼む」
 共に戦いに臨む皆へ、アルトゥーロが声を掛ける。
「もちろんだよ、アルトゥーロさん。皆でちゃんと、帰って来ようね」
 新条・あかり(くらがりのあかり・e04291)が笑って、繭紗も頷く。
「たくさん準備、してきましたもの。実を結ぶって、信じてます。……笹木さん、も、おねがいします、ね」
 繭紗は微笑みながら、傍らのテレビウムをそっと撫でる。
「折角のチャンスだし、城ヶ島攻略情報的な何かを持って帰りたいよねー」
 常と変わらぬ糸目の笑顔でアンノ・クラウンフェイス(ちっぽけな謎・e00468)が応じ、
「おじさんも頑張るっすよ。……無事揃って、務めを果たせるように」
 更にゼレフ・スティガル(雲・e00179)が緩く笑って、同胞達を振り返る。
「ええ、良き成果が得られるよう、力を尽くしましょう」
 表情こそ硬いものの、しっかりと頷く遠野・潮(バッドイーター・e00853)。
 そんな潮の傍らで、オルトロスのシディがぶんぶんと尻尾を振っていた。
「成功したなら、皆で祝杯でも上げてぇな。……そのためにも、頑張ろうな」
 そう言って、イェロ・カナン(赫・e00116)はにっと笑みを深める。
「――大丈夫。何があっても皆と一緒、なら」
 それまでずっと真剣な表情を崩さなかった黒木・市邨(蔓に歯俥・e13181)は、ほんの束の間、仲間達へと微かな笑みを向けた。
「こういうのは、おじさんに任せてくれると嬉しいっすよ」
 身を乗り出そうとした仲間達を制し、ゼレフが慣れた様子で岩陰から辺りの様子を探る。
 すると、さほど離れていない場所に、蝋燭のような形の白の灯台が立っているのが確認出来た。
「あれが、安房崎灯台……っすかねえ?」
 ゴーグル越しの瞳を眇め、ゼレフが呟く。
 肉眼でもはっきりと捉えられるその白色は、灯台が黒の塔へと変じていないことを示していた。
「そうですね。見た所、外観的には特に変わった様子は見受けられません」
 潮が閉じていた片目を開き、アイズフォンを解きながら言った。
 ネット上にある過去の写真と照らし合わせても、灯台の姿そのものに変化は見られない。
 だが、何よりもケルベロス達の目を惹きつける存在が、そこにはあった。
「どうやら、番人さんがいるみたいだねー? あはっ、なんだか宝探しをしてるみたいでワクワクするね」
 ゼレフの後ろからそっと窺うように灯台の方を見やったアンノの声は、そこに在るものを確かめると、どことなく楽しげに紡がれた。
 灯台の入り口、その前には、一頭の巨大なドラゴンが鎮座していた。
 ――コードネーム『デウスエクス・ドラゴニア』。
 太く長い角と尾を生やし、白とも金色ともつかぬ色の鱗に覆われたその姿は、他のドラゴン達よりも一回り大きく、ある種の神々しさすら感じさせるもの。
 他のドラゴン達とは格が違う存在であることは、一目瞭然だった。
 ――そして、
「……島中が騒がしいようだが、お前達の仕業か」
 雲間に轟く雷に似た声が、空気を震わせた。

 ドラゴンの金色の瞳は迷いなく、ケルベロス達が身を潜める岩陰へと向けられていた。
 隠れても無駄だと言わんばかりに、長い尾が跳ねて地面を打つ。
「見なかったことにしてー……はくれないよな。知ってた」
 小さく肩を竦めるイェロに続きケルベロス達が姿を現すと、巨大なドラゴンは首をもたげ、ケルベロス達を見渡した。
 軽く睨まれただけで容易く気圧されてしまいそうな感覚に襲われるが、ケルベロス達はしっかりと地を踏みしめ、挑むように竜を見据える。
「……先程の船影も囮という訳か。だが、あのドラゴン達が我先にと飛び出して行けたのは、拠点の守りが万全である証と言えよう」
 拠点――その言葉にケルベロス達は眉をひそめるが、尋ねた所で答えがあるとも思えなかった。
「それで、どうするというのだ? たかが八人と二匹で、我に挑むのか?」
「……ああ、やってやるさ」
 静かにアルトゥーロが応じる。
 この状況で、背を向けて逃げるという選択肢はないに等しい。
 灯台そのものが周辺警備の要衝だということを考えれば、ここにドラゴンがいるのはある意味当然のことだっただろう。
 あるいは、灯台の内部に何らかの重要な情報があるのかもしれない。
 いずれにしても、ドラゴンを倒さなければ内部の探索は行えない。
 ならば、答えは一つだった。
 武器を取るケルベロス達を見て、竜は喉奥で笑みを噛み殺す。
「ならば、それがいかに愚かなことであるか教えてやろう」
 パチリと空気が弾け、火花が散る。
 刹那。
 ドラゴンが吐き出した目も眩むような閃光が、前衛に布陣した者達を貫いた。
 前衛を担うのは、ゼレフ、アルトゥーロ、繭紗、そしてあかりの四人と二体のサーヴァントだ。列減衰により威力が抑えられたとはいえ、それでも竜のブレスによる一撃は凄まじい力を感じさせるものだった。
 聳える山の如き巨体に狙いを定め、アルトゥーロが素早く二丁の銃の引き金を引く。
 目にも留まらぬ速さで弾丸が撃ち出されると同時、デクスエクスの残滓たる黒槍を構えたあかりが竜の懐へと飛び込んだ。
 弾丸も黒槍も硬い鱗を掠めただけで、何ら手応えは感じられない。
「流石に、一筋縄じゃいかなさそうだな」
 フードを脱ぎ、柔らかなキャラメルブラウンの髪を覗かせて、イェロが地を蹴った。
「若い子にばかり、働かせてられないっすからね。――どれ」
 流れる星の煌めきを宿した重い蹴りの一撃が突き刺さるような手応えを返した直後、後に続いたゼレフが長剣の抜き打ちと追駆する剣風による斬撃の痕を刻みつける。
「あはっ。これならどうかな!」
 さらに流星の煌めきを重ねたのはアンノ。オルトロスのシディが炎を孕んだ神器の瞳で竜を睨みつけるその背後で、潮と市邨が前衛へ癒しの力を重ねて放つが、二人の力だけでは足りない。
 繭紗の手の中で芽吹いた黄金の果実が更なる癒しと耐性を振り撒き、テレビウムの笹木さんも全力で、皆を応援する動画を画面の顔に映し出す。
 ケルベロス達の畳み掛けるような攻撃にも竜は微動だにしないまま、その巨体をゆるりと起こした。
「お前達の力は、その程度か?」
「……来るぞ!」
 竜が口元を歪めるのにいち早く気づいたイェロが叫ぶと同時に、再び、空気が爆ぜた。
 次の瞬間、吐き出された雷の息が後衛の潮と市邨、そしてアンノを貫く。
 その衝撃に思わず膝をつく市邨とアンノの傍らで、
「シディ――」
 攻撃に身構えた潮の口が、愛犬の名を紡ぐと同時。
 潮の前に身を挺したオルトロスのシディが、白い閃光に打たれてその姿を消した。

 ドラゴンの苛烈な攻撃に、ケルベロス達は圧倒的な力の差を感じ始めていた。
 メディックである潮や市邨は元より、ディフェンダーのあかりや繭紗も回復に手を割かれ、思うように攻勢に転じられないまま、ただ時間だけが過ぎていった。
 炎を纏わせ、毒を注いでも、その手応えは確かにあるはずなのに、竜はさほど気にも留めずに攻め立ててくる。
 即ち、竜がそれほどの体力を備えているということに他ならなかった。
(「……落ち着け」)
 自分に言い聞かせ、市邨は魔道書に記された禁断の断章を口元でなぞる。
「――ここからが本番、でしょ?」
 脳髄に齎される賦活――己の頭を指先でトン、と叩き、市邨は氷の眼差しで竜を見た。
「これでも喰らいな!」
 アルトゥーロが渾身の力を込めて地獄の炎を叩きつける。足止めを重ね、怯むことなく攻め続けた成果か、少しずつこちらの攻撃が通るようになってきたが、それだけだった。
「斬り甲斐がありそうな図体だね」
 口元に伝う血を親指の腹で拭い、ゼレフは己が剣に獄炎を纏わせ斬り掛かる。踊る炎を叩きつければ、まだ手応えがあったのは幸いかもしれない。
「……芳しくない状況ですね」
「大ピンチってやつ? ――ああもう、本当に面倒臭いな……!」
 潮の呟きに同意したアンノが珍しく苛立った声を吐きながら、ナイフを手にドラゴンの元へと馳せる。
 竜の巨体を抉じ開けるように刃を突き立てれば――アンノの手の内でジグザグに変形した刃が肉を深く抉った。
「でけぇ癖に、ちょこまかと動くんじゃねーよ、ってな!」
 煩わしそうに身を捻る竜へ向け、イェロがアームドフォートの主砲を一斉に解き放つと、体を走り抜けた痺れに竜が僅かに顔を顰めたように見えた。
「効いたか……?」
 直後、イェロの視界を覆い尽くした巨大な影は、風を孕んだ巨大な竜翼。
「っ……!」
 そして、イェロの身体を鋭い竜爪が深く切り裂いた。
 その威力と衝撃に耐え切れず、イェロは噴き出した血で全身を赤く染めながらその場に倒れ、意識を手放す。
 潮が薬液の雨を降らせ、市邨が黄金色の聖なる光を齎し――懸命に癒しを届けるが、竜の力はそれを容易く上回る。
 全くと言っていいほど、見出だせない勝機。
「……笹木さん、っ!」
 繭紗のテレビウムである笹木さんが竜の尾に薙ぎ払われて力尽き、その場から掻き消える。
 あかりと繭紗はまだ辛うじて余力を残していたものの、ゼレフとアルトゥーロはほぼ気力だけで立ち続けていたに等しく、状況は絶望的と言っても過言ではなかった。

 ――彼らがここまで辿り着くことが出来たのは、綿密に練り上げられた作戦と用意周到な準備があってこそ。
 そして、同じ場所を目指し進んできた、他部隊の同志達の存在も大きかった。
 どれか一つでも欠けていたならば、元より島に上陸することさえ叶わなかったのかもしれないのだから。

「少しは思い知ったか、愚かな戦士達よ。……まあ、自らの愚かさを悔いて死んでゆくもまた一興だろう」
 ドラゴンが鼻を鳴らし、嘲るようにケルベロス達を見下ろしてくる。
「いや、まだだ。てめぇのその綺麗な顔に、穴を開けてやる!」
 鋏の名を冠した二丁の銃で頭部の一点を狙い撃ちながら、アルトゥーロが吼えた。
 だが、その威勢のいい声も撃ち込まれた銃弾も意に介した様子はなく、ドラゴンは吐き出す雷でケルベロス達を翻弄した。
 自ら降らせたラベンダー色の雨を浴びながら、あかりは、お守り代わりにと貰った小さな琥珀をそっと握り締めた。
 自分達の力だけではこの竜を倒すことは出来ない。
 何より、この竜を倒さずしてこれ以上の調査を続けることは不可能だ。
 撤退の二文字が頭を過ぎる。
 だが、この状況の中、全員での撤退は難しいだろう。
 全員で背を向ければ、竜は容赦なくケルベロス達を屠るだろうことは、想像に難くなかった。
 しかし、全員が──否、『自分を除いた』全員がこの場から逃れるための方法に、あかりは気づいていた。
 おそらくは、他の仲間達も。
「――僕が残るから、皆は逃げて」
 静かな、ひどく落ち着いた声であかりは言った。
 このままでは遠からず、全滅は免れない。
 だが、今ならばまだ、逃げることは出来る。
 一人でも多く帰らせるには――『誰か』がこの場に残って、ドラゴンの足止めをする必要があった。
「……キミは、それでいいの?」
 少女の意図を察したアンノが静かに問いかける。けれど、聞かずとも答えはわかっていた。
「あかりさん――」
 そう、少女の名を呼ぶ潮にも、その覚悟はあった。だが、あかりは微笑んで緩く首を横に振る。
 その視線の先に、倒れたイェロの姿を捉えながら。
「僕じゃ、大人の男の人は抱えられないから。――少ししか保たないと思うから、前だけ見て駆け抜けてね」
 そして、あかりは仲間達に背を向けた。小さなその身一つで仲間達を庇うように、真っ直ぐにドラゴンを見つめて。
「……おじさんにも、格好つけさせてほしかったんだけどなぁ」
 残る力でもってイェロを抱え上げるゼレフが、眉を下げて苦く笑う。
「ごめ、なさ、い、あかり、さん……!」
 心を、声を震わせて、痛ましげに瞳を揺らしす繭紗。
「……ちゃんと、後から来るんだよ。――待ってる、から」
 市邨が落としたのは、ささやかな願いを込めた声。
 それがすぐには叶わないことを、市邨は知っていたけれど。
「すまない、あかり。……行くぞ!」
 アルトゥーロの声を皮切りに、あかりを一人その場に残し、ケルベロス達は駆け出した。
 彼女の言った通りに前だけを見て、決して振り返らずに駆けていく。

 一人残ったあかりを見て、ドラゴンは笑う。
「仲間の為に命を捨てるか。……面白い。その覚悟、我に示してみよ!」
「……言われなくても。――これは、僕の罪。……そして、あなたの、罪だ」
 自らの血を糧に鮮やかな七色の薔薇を咲かせながら、あかりは一人、巨大なドラゴンへと立ち向かっていく。
 その身を人ならざる者へと変じさせ、己が己である証と引き換えに、秘められた力の全てを解き放って――。

 背後で弾けた光に、ケルベロス達は振り返った。
 姿は見えなかったが、光の中から聞こえる微かな音こそが、少女があの場所で一人で戦っている音なのだと、すぐに誰もが理解した。
(「ああ、――笑えるはずなんて、ないじゃないか」)
 遠くに聳える灯台と、爆煙に覆われたその袂を見やったアンノは、目を隠すようにフードを深く被る。
「畜生ッ――!」
 堪らず、アルトゥーロが叫ぶ。しかし、立ち止まっている時間はもうなかった。
 島に残る他のドラゴンが、いつ自分達を発見するかわからない。
 一刻も早く島を脱出するために、ケルベロス達は再び走り出す。

 ――意識の糸が途切れる間際。
 今にも泣いてしまいそうな微かな笑みを浮かべながら、あかりは肌身離さず持っていた、古めかしい懐中時計にそっと唇を寄せた。
(「絵本、返せなかった……ごめんね」)

 そして、一人の少女と竜の姿は、白く眩い閃光の中に消えていった。

作者:小鳥遊彩羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:新条・あかり(点灯夫・e04291) 
種類:
公開:2015年11月24日
難度:やや難
参加:8人
結果:失敗…
得票:格好よかった 63/感動した 17/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 24
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