いまからいくよ

作者:坂本ピエロギ

 暗く、埃の積もった倉庫の隅に、小さな機械が転がっていた。
「キリキリ……キリキリ……」
 子供の掌に収まりそうなサイズの、携帯ゲームを思わせる古めかしい機体。それは旧世紀の日本で広く愛用され、携帯電話の登場と共に姿を消した通信機器である。
 その名を、携帯用無線呼出機『ポケットベル』――通称『ポケベル』。
「キリキリ……キリキリ?」
 時代の流れに取り残され、顧みる者すらいないこの機械に、音を立てて近づく者がいる。
 コギトエルゴスムに蜘蛛のような脚を生やした、小型のダモクレスだ。
「キリキリキリ!」
 ポケベルに取りついたダモクレスは壊れたパーツを修復し、瞬時に体を作り変えてゆく。
 そして――。
「ポケベルウウウウウウウウ!!」
 新たな姿に生まれ変わったダモクレスは物置を叩き壊し、グラビティ・チェインを求めて街へと進撃を開始するのだった。

「皆はポケベルって知ってるか? 半世紀以上も前から使われてる通信機でさ、オレはこのレトロな雰囲気がケッコー好みなんだよな」
 レンカ・ブライトナー(黒き森のウェネーフィカ・e09465)は名刺入れサイズの機械を掌中で弄びながら言った。レンカ曰く、昔のポケベルは数字以外のメッセージを送ることが出来ず、数字の羅列を暗号文のように解読してやりとりをしていたらしい。
「バイバイなら『8181』、サンキューなら『999』。他にも色々パターンがあって、電報に近い感覚だったのかもな……で、こっからが本題なんだけど」
 そんなポケベルがダモクレス化する未来が予知された――。
 そう言って話を切り出したのは、ヘリオライダーのセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)だった。
「事件が発生するのは、東京郊外の民家の物置です。家には夫婦と小学生の一人娘の3人が暮らしていますが、幸いなことにダモクレスの出現時には外出していて、即座に被害が発生する状況ではありません。どうやら、娘さんの誕生日プレゼントの買い物のようですね」
 とはいえ、ダモクレスを放置すれば犠牲が出るのは避けられない。迅速な排除が必要だ。
 ダモクレスの出現はケルベロスが現地に到着した直後。民家は2階建ての一軒家で、物置は広い庭に面している。戦闘を行うには十分なスペースだ。
 このダモクレスは、ホワイトボードを一回り大きくしたサイズの巨大なポケベルに、黒く細長い手足が付いた姿をしていて、画面に表示された数字を飛ばして攻撃してくる。
「性能的には改造スマートフォンに近いもののようです。此方への攻撃は単体のみですが、火力が高いことに加え、防御力を上昇させる回復能力も有しています。一筋縄でいく相手ではないと思って下さい」
 周辺への避難の呼びかけはセリカが行うので、ケルベロスは戦闘に集中し、確実に敵を撃破してほしい。また、依頼の成否には直接関係ないが、戦闘終了から程なくして、家族3人が買い物から帰ってくるという。
 身元を明かせば3人は事情を理解してくれる。伝えたい事や渡したい物があれば、その時に行うと良いだろう。
「説明は以上です。皆さんのご健闘をお祈りします」
 セリカはケルベロス達に敬礼すると、ヘリオンへと乗り込んだ。


参加者
不知火・梓(酔虎・e00528)
イルリカ・アイアリス(すばらしいうつくしきせかい・e08690)
レンカ・ブライトナー(黒き森のウェネーフィカ・e09465)
ソル・ログナー(鋼の執行者・e14612)
地留・夏雪(季節外れの儚い粉雪・e32286)
ココ・チロル(一等星になれなかった猫・e41772)
アルフレド・コナー(熟れ得ぬ林檎・e46170)

■リプレイ

●4649(よろしく)
 街の郊外へと続く道路を、昼の木漏れ日が照らしている。
 アルフレド・コナー(熟れ得ぬ林檎・e46170)は帽子で日差しを避けながら、本部から預かった小型通信機を弄んでいた。
「ポケベル……か。名前は知っているが、数字を解読だなんて暗号の様で興味深いな」
「秘密のサインみたいですね。なんだか面白いです」
 地留・夏雪(季節外れの儚い粉雪・e32286)は興味深げな表情でアルフレドのポケベルをしげしげと眺めている。
 時代遅れを通り越し、骨董の域に達していそうな小型通信機。しかし夏雪――人間社会に溶け込んで間もない少年のヴァルキュリアは、そこにこそ魅力を感じる。制約を乗り越えて自分の想いを伝えたい、そんな地球人の意思の結晶に。
「人間ってやっぱり凄いですね……!」
「面白いですよね、こんな機械で通信を行っていたなんて。ソルにぃは何か知ってる?」
 イルリカ・アイアリス(すばらしいうつくしきせかい・e08690)は好奇心を湛えた目で、隣のソル・ログナー(鋼の執行者・e14612)を見上げる。
「いや、持った事がないから解らん。しかし本部もよくこんなモン保管してるよな」
「今もサービス自体は受けられるようだからな。貸出とはいえ現物が触れるのは有り難い」
 カジミェシュ・タルノフスキー(機巧之翼・e17834)は持参したポケベル入門書を手繰りながら、数字を用いたメッセージの一覧を眺める。
「この台詞回し……いや、番号回しか。言葉遊びの粋というものを感じる」
「『500731』がごめんなさい、『1056194』が今からいくよ、『114106』が愛してる、か……マジで暗号だな。読めねェだろ、こんなモン」
「ああ。惜しむらくはそれも、この機械とともに忘れ去られゆく定めである事だが……」
 カジミェシュはふと、己の姿をポケベルに重ね合わせる。大昔に滅んだ重騎兵スタイルで戦う彼にとって、この機械は単なる標的ではない、ある種のシンパシーを感じさせる。
「オレたちの相手も、物置に転がってるものらしーからな。持ち主が誰だか知らねーけど、思い入れはあんまねーのかもな」
 レンカ・ブライトナー(黒き森のウェネーフィカ・e09465)は道端の小石をブーツの爪先で蹴飛ばして、ぽつりと呟く。
「ま、日々進化する文明の利器なんてそんなもんだな」
「ポケベル、です、か。使った、ことはありません、が」
 仲間たちの話を聞きながら、ココ・チロル(一等星になれなかった猫・e41772)はふと家出した姉の顔を思い出した。
 自分とは対照的な天才肌の姉。もしも姉と交信できたなら、一体なにを伝えるだろう。
 そして考える。これから戦うポケベルにも、まだ伝えたいことがあったのだろうか、と。
「いえ、今考えても、仕方のないことでした、ね」
 これからココたちが相対するのはダモクレスだ。人々を手にかける前に、自分たちの手で止めねばならない。現場となる民家の門を通って開けた庭に辿り着くと、不知火・梓(酔虎・e00528)は欠伸を噛み殺して言った。
「ポケベルかぁ……懐かしいねぇ。最盛期は、俺のもう1つか2つ上の世代だった筈だなぁ」
 そんな梓の言葉をかき消すように、早くも物置の中から派手な物音が聞こえ始めた。
「ポケベルウウウウウウウ!!」
 戸を勢い良く突き破り、飛び出すダモクレス。軽トラックの荷台にまるまる収まりそうな巨体にはめ込まれた横長のディスプレイに、黒い数字がチカチカと点滅する。
「ま、懐かしんでばかりもいられねぇ。ダモっちまったからにゃぁ、きっちりスクラップにしてやらぁ」
 長楊枝を吐き捨て、瞬時に意識を先頭へと切り替える梓。その後ろで、ガジェットを展開装着したソルの視線が、敵の液晶画面の数字へと向く。
「デカッ。えー、と、何? 何て書いてあるんだあれ」
「46497、『よろしくね』だな」
「何だと……ちょっぴりカワイイな。さて、気を取り直して――変身!」
 レンカの博識に驚きつつ、ソルは変身モードを起動。ガジェットの『mortality arms』と連動したベルトが漆黒の鎧兜と化し、彼の身を包む。
「いざ勝負だ、ダモクレス!」
「誰かにとって大切だった道具の記憶。それを歪めるような横暴はさせません……!」
 エアシューズで地面を蹴り、駆け出すソル。隣のイルリカがゲシュタルトグレイブの鋒を向けて、戦いの始まりを告げた。

●5110(ファイト!)
「それじゃ、さっさと片しちゃおうかねぇ」
 初撃を見舞ったのは梓だ。バスターライフル『Des Teufels Auge』でフェイントを交えた射撃で敵を穿ちつつ、ソルの進むルートを作り出す。
「ポケベルウウウウウ!」
 させじとダモクレスが反撃。ディスプレイの『500731』の数字が生き物のように浮かび上がり、螺旋を描きながらソルへと迫る。
「させん!」
 すかさず進路に割り込み、攻撃を庇うカジミェシュ。
 ソルはさらにエアシューズの速度を上げる。
「カミル、敵を撹乱するぞ!」
「心得た。ボハテル、後衛で味方を支援しろ!」
 属性インストールを浴びたカジミェシュは、ゾディアックソードを構えて星の加護で前衛を包むと、ソルと二人で取り囲むように敵の周囲を旋回する。
 ソルは物置の屋根を足場に跳躍、猛禽の如き急降下キックでダモクレスの足を蹴り砕く。息を合わせて放つレンカのドラゴニックッミラージュが、敵を紅蓮の炎で包み込む。
「ポケベルウウウウウウウウ!!」
「バレ。突撃」
 地面を踏みならし雄叫びを上げる敵めがけて、ココのライドキャリバーがエンジンを唸らせ体当たり。バランスを崩したダモクレスは、大きな地響きを立てて転倒する。
「いま……援護します」
「ソルにぃ、皆、頑張って!」
 その間にココはボディヒーリングを発動し、バッドステータスから身を守る加護を後衛の仲間に施していった。そこへイルリカの『虹彩術符/狂気の十八番・揺らぐ狂月の調べ』と夏雪が歌う寂寞の調べが加わり、前後衛の火力をぐんぐんと上げてゆく。
「ありがとう。さて、まずは足を止めるとしようか」
 肌に染み込む真夏の雪が、後衛の味方に加護を剥ぐ力を付与してゆく。冷気を感じさせるグラビティで体を覆い、プラズムキャノンで敵の機動力を奪いにかかるアルフレド。
「跡形もなく、破壊する!」
「ってわけでポケちゃんね、悪く思わないでね」
 いっぽうソルと梓は、イルリカの作り出した空間のもたらす興奮状態を心に感じながら、雷刃突と絶空斬の十字斬りをダモクレスへ浴びせる。
 直撃を受けた機体を大きく凹ませ、ノイズ交じりの悲鳴をあげるダモクレス。反撃で飛び出した『114106』の数字がとぐろを巻いて襲いかかり、イルリカの体に噛みついた。
「……っ!」
「大丈夫……痛くない、です……」
 苦痛に顔を歪めるイルリカを、夏雪の『初夏の雪解け』が包み込んだ。白い花びらのような粉雪が音もなく舞い降り、染み込んだイルリカの傷を塞ぎ、体を冴え渡らせてゆく。
「ありがとうございます!」
 催眠をシャウトで吹き飛ばしながら、礼を言うイルリカ。その前方では、仲間達が更なる攻撃をダモクレスに浴びせかけていた。
「茫漠の空は即ち深淵、明星一つを導きとし、求むる仇の臓腑を抉る――」
 カジミェシュが射手座のゾディアックソードを掲げて詠唱を始めた傍ら、ダモクレスへと突っ込んでいくレンカとアルフレド。
 負けじと数字を並べて攻撃態勢に移るダモクレスをファミリアシュートで牽制するココ。そして――。
「右のかいなに鋭き一矢。左のかいなに長き弓。射貫き貫き、夜天を越えろ!」
 星の力を帯びた必殺の突き、カジミェシュの『遥けき夜を射る哮星一矢』がダモクレスを貫いたところへ、掬い上げるようなレンカの旋刃脚が叩き込まれ、
「食らえ!」
 真っ向から振り下ろされるアルフレドの得物砕きが、敵の巨体を地面に叩きつける。

●8181(バイバイ)
 ダモクレスはすぐに『1056194』の数字で体を覆い、傷を癒しはじめた。
「いまからいくよ……か。お前、もう少し気の利いたメッセージは表示出来ねーのか?」
 身を躍らせたレンカが敵の間合いへと潜り込む。振りかぶる得物は『ブラウ・ローゼ』、青いバラの名を冠する簒奪者の鎌だ。
「なかなか旨そうなfutterじゃねーか。遠慮なくいただくぜ! Hust du es gesehen?」
 『幻影の衣纏いし狡猾なる獣』の術に落ちた者は、敵であるレンカを味方だと錯覚する。果たしてダモクレスは、何かに誘われるようにぺこりとレンカに体を傾けた。
 容赦なく振り下ろされる青薔薇の一閃。悲鳴をあげるダモクレスの傷口から、衝撃で砕けた基盤の破片が覗く。
「ポ……ポケベルウウウウウウウウ!!」
「ほら、画面に出してみろよ『11014』……痛いよってな!」
 意味不明な数字の羅列を並べるポケベルに向かって、レンカは招き手で挑発した。肉食獣を思わせる物騒な魔女の笑み。そんな彼女に触発されてか、ソルとカジミェシュも数字の使い方を着々と体得しはじめ、
「行くぞカミル! 09067!」
 『血鮮技・斬閃』で敵を切り裂くソル。
「おお、ソル! 556810!」
 高らかなシャウトで返すカジミェシュ。
「えーとえーと、09067が『おくれるな』で、556810が『こころえた』で……」
 マインドソードを発射する傍ら、辞書を手に二人の言葉を翻訳にかかるイルリカ。
 そんな3人を遠目に眺める梓が、雷刃突で敵を切り裂きながらしみじみ嘆息する。
「いやぁ、若いってなぁいいねぇ。おっさんになると機械が弱く……おっ、援護999!」
「僕も、戦います……!」
 回復に余裕が出てきたことで、援護を兼ねた攻撃へと回る夏雪。粉雪で覆ったダモクレスめがけて容赦のない溜め斬りを叩き込む。
「ごめんなさい、愛してる、か……元の持ち主は情熱的な方だったのだろうか」
 ココは、自分に続いてプラズムキャノンを発射したアルフレドの言葉を聞いてふと思う。目の前のポケベルと、かつての持ち主と関係を。
 この家に住む家族は夫婦と子供の3人暮らしと聞く。きっと若い頃の夫か妻が、もう片方の伴侶に向けて送ったメッセージだったに違いない。
(「恋人同士が、夫婦になって、かつての道具、は、忘れ去られる。悲しいです、ね」)
 塗装を剥がれ、カバーを壊され、無惨な姿に成り果てたダモクレスに、ココは言いようのない哀愁を感じた。
「私たちが、あなたを、止めます」
 追い詰められて怒り狂い、レンカめがけ『500731』の数字を飛ばすダモクレス。ココは即座に進路へ割り込み、螺旋を描いて飛んでくる数字を受け止める。
 その横を駆け抜け、惨殺ナイフ『氷雪刃』に呪詛を込めて斬撃を斬り下ろす夏雪。数字を示すディスプレイの真下が横一文字に切り裂かれ、傷口が淡い粉雪で覆われた。
 ダモクレスの体内で輝くコギトエルゴスムの輝きで、白い雪が妖しく光る。曝け出された敵の急所、そこを梓のバスタービームは逃がさない。
「ほらほらダモちゃん、大事な石が丸見えだよん」
 直撃を受け、ダモクレスの体がぐらりと傾いた。そこへ仕掛けるイルリカとソル。
 稲妻突きとサイコフォースの軌跡が交叉するようにダモクレスを捉える。
「ソルにぃ!」
「ああ。悪いが、封殺させて貰う!」
「ポ……ポケベルウウウウウ!!」
 開いた傷口から溶解したハンダの煙を立ち上らせ、悲鳴をあげるダモクレス。
 敵に抵抗する力は残っていない。あとはとどめを刺すだけだ。グラビティブレイクと得物砕き叩き込みながら、カジミェシュとアルフレドがレンカを振り返った。
「さあブライトナー、トドメを」
「最後の一言は、もう決めてるだろ?」
 どうやら彼らも、同じ言葉を思い浮かべたらしい。二人に向かって、レンカは頷いた。
「Abschluss……これで終わりだ」
 古ドイツ語の呪文と共に浮かび上がる、ドラゴンの幻影。
 それを敵へとけしかけて、詠唱の最後にレンカは叫ぶ。
 さよなら、を意味するポケベルの数字。敵への最後のはなむけを、仲間と一緒に。
『3470!』
「ポ……ポケベルウウウウウウウウウウウ!!」
 コギトエルゴスムを砕かれたダモクレスは、断末魔の悲鳴と共に爆散した。

●0401(おしまい)
 修復を終えた家の庭で、ソルはダモクレスの残骸を見下ろしていた。
「古き良き発明、か。忘れ去られたモノの叛逆と考えたら、何ともな……」
 焦げた部品を握りしめ、ひとり呟くソル。と、その時、門の前に一台の車が止まった。
「お、帰って来たみたいだ」
「お話に、行きましょう、か」
 車を降りた親子に手を振るソルとココ。少女の両親は一瞬驚いたものの、彼らの羽織ったケルベロスコートを見て事情を察したようだった。
 それを見た梓は長楊枝を咥えて、飄々とした口調で帰り支度を始める。
「それじゃ、おっさんは退散しますかねぇ。一杯ひっかけて帰るにゃぁ、早ぇかなぁ……」
 いっぽう、礼を言いながら家へと戻ってきた夫婦を見て、アルフレドは思う。
(「なるほど、仲の良さそうな夫婦だ。彼らがポケベルの……ん?」)
 ふとアルフレドは、夫婦の娘に目を留めた。
 彼女が大事そうに抱える誕生日用の包装が施されたプレゼントボックスに。
「なるほど。誕生日の買い物の帰り……贈物とはとても羨ましい」
「お邪魔してごめんなさい、もう大丈夫ですよ。良かったらこれ、3人で食べて下さいね」
 夏雪はそう言って、そっとお菓子を少女に差し出した。
 少女はケルベロスが珍しいのか、礼を言う両親の隣で夏雪たちをじっと見つめている。
「贈り物は大事にするんだよ。いつか、勝手に動き出すとも限らないから……ね」
 小声でそっと耳打ちするアルフレド。そこへ話を聞きつけたレンカが加わった。
「これ、知ってるか? 玩具みてーだろ? 小学生には珍しーもんなんじゃねーか?」
「うん……知らない」
 興味に目を輝かせる少女に、レンカは説明を続ける。
「これはポケベルっていう通信機器だ。スマホと違って数字しか出てこねー。だから文章を当てるのが、クイズみてーで面白かったりするんだぜ? 例えばな……」
 それを見た両親が、ふと懐かしそうな表情を浮かべる。
「ほら、お父さん。私にくれたメッセージ、送ってみたら? ポケベルの供養と思って」
「えっ……こ、ここで?」
「これをお貸ししましょうか? 今も使用できますよ」
「ありがとうございます。じゃあ……お言葉に甘えて」
 アルフレドの差し出すポケベルを受け取り、父親が懐かしそうにスイッチを弄ると。
 PiPiPi――PiPiPi――。
「よーしよし、いま親父さんが数字を送ってくれたからな。いいか、これは――」
「うんうん!」
 レンカと数字当てに興じる少女。
 こうして午後の一時はゆるやかに過ぎていった。
 ポケベルの奏でる、電子の音色と共に。

作者:坂本ピエロギ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 0
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