水上の花園

作者:崎田航輝

 花々が、水面に揺れていた。
 五月の風は増々爽やかに、緑の匂いを感じさせる。だけでなく、涼やかな香りの中に花の芳香も混じらせていた。
 そこは街道にある憩いの水辺。バロック式の庭園のような刈り込まれた草木の中にある、小さな湖畔にも似た池だ。
 さわさわと音を生むのは、湖面を満たす睡蓮の花。淡い桃色と橙のグラデーションを持つ美しい花弁は、咲き始めの季節を迎えて所狭しと花開き、水上に明媚な花畑を作り上げていた。
 街道自体も花に彩られ、美しい。人々はそんな景色を眺めながら散歩を楽しみ、ベンチに腰掛けて風を感じ、過ぎゆく春の足音をそれぞれに感じていた。
 だが、そんなとき。
 ふと風に乗って、空から謎の胞子のようなものが漂ってくる。
 それは水面の睡蓮に舞い降りると、花の数片に取り付いて同化。直後には、その睡蓮を蠢かせ、異形に変貌させていた。
 巨花となった5体の姿は、紛うことなき攻性植物。水辺から這い出た異形の睡蓮は、そのまま人々へと襲いかかっていった。

「集まっていただいてありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達を見回していた。
「本日は、攻性植物の事件について伝えさせていただきますね」
 先日より確認されている、大阪での攻性植物の動きの一件だという。
「爆殖核爆砕戦の結果として、大阪城周辺に抑え込まれていた攻性植物達が動き出している、その流れのひとつのようですね」
 攻性植物は、大阪市内を重点的に襲おうとしているようだ。
 狙いは、一般人を遠ざけることで、市内を中心に自身らの拠点を拡大させることだろう。
 今回の敵は、街道にて攻性植物化した睡蓮だ。空から漂ってきた謎の花粉らしきものによって生まれた複数体ということである。
 放置すれば人々が危険なだけでなく、敵の情勢に有利な結果を生んでしまうだろう。
「この侵攻と、人々への被害を防ぐために。攻性植物の撃破をお願いします」

 作戦詳細を、とイマジネイターは続ける。
「敵は、攻性植物が5体。出現場所は、大阪にある街道です」
 明媚な風景を楽しめる街道で、現場はそこに作られた池の周辺だ。
 警察、消防なども駆けつけやすい位置なので、人々の避難は任せてしまっても問題ない。
「皆さんは到着と同時に戦闘に集中していただければと思います」
 一般人を殺そうとする危険な存在だが、一度戦闘に入れば逃走などは行わないので、対処は難しくないだろう。
「とはいえ、敵は5体。数の多さは脅威になりそうです」
 別行動こそしないが、その分しっかりとした戦法を取ってくるらしい。同じ植物同士のためか、連携もそれなりに高度のようだ。
「攻撃法は、円形の葉を飛ばしてくる近単捕縛攻撃、水中に潜伏する耐性付きの遠列ヒール、地面に侵食して襲ってくる遠列催眠攻撃の3つです」
 各能力に気をつけてください、と言った。
「人々と、綺麗な景色を守るために。ぜひ、撃破を成功させてきてくださいね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
八蘇上・瀬理(家族の為に猛る虎・e00484)
エリヤ・シャルトリュー(影は微睡む・e01913)
ロストーク・ヴィスナー(春酔い・e02023)
天野・司(心骸・e11511)
美津羽・光流(水妖・e29827)
アルシエル・レラジェ(無慈悲なる氷雪の弾丸・e39784)
天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)
今・日和(形象拳猫之形皆伝者・e44484)

■リプレイ

●接敵
 花に彩られた街道に、ケルベロス達は駆けつけてきていた。
 現場の人々は、警察と消防の誘導で避難を始めようとしている。今・日和(形象拳猫之形皆伝者・e44484)はそこへ走りつつ、呼びかけも行っていた。
「皆さーん、危ないからそのまま下がっていてね!」
「後の避難は、任せても良さそうだな」
 と、声を継いで前方を見据えるのは天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)。そこに見えてくる池へと、意識を集中させていた。
「わたし達は、戦いへ急ごうか」
「おう、皆、行くぞ!」
 頷いて応えるのは天野・司(心骸・e11511)。明るい声音に戦いへのやる気を漲らせて、一直線に疾駆していく。
 すると程なく、水辺に5体の影がいるのが見えてきた。
 水面から上がってきていた巨花。睡蓮の攻性植物である。葉を揺らめかせ、水辺を這う姿はまさしく異形と言えた。
 日和は少し観察するように見ている。
「あれが、胞子を受けたっていう花? あの胞子、やっぱり悪いコトするためのモノだったんだね!」
「みたいやね。せっかくのきれいな水連をこんなもんに変えてしまいよってからに……」
 八蘇上・瀬理(家族の為に猛る虎・e00484)はぶつぶつ呟きつつ、パイルバンカーの調子を確かめるようにガシュンッ、と空撃ちする。
「倒すしかないねんけど、後味悪いなぁホンマ」
「僕も、睡蓮は静かに浮いているのを眺めるほうが好みだな……」
 ロストーク・ヴィスナー(春酔い・e02023)も、周囲に逃げ遅れがいないことを確認しつつ、声を零していた。
 それから、白手袋を着用して戦闘態勢を取る。
「──とにかく、池から出てくるのはさすがにやんちゃが過ぎるから、おとなしくしてもらわないとね」
「うん。そうだね」
 と、ゆっくりと頷くのはエリヤ・シャルトリュー(影は微睡む・e01913)だ。ふわふわと眠気を含みつつ、改めて友人に視線を向けていた。
「ローシャくん、おしごと、一緒、いっしょ。がんばろうね」
「ああ、頑張ろう。力を惜しまずにね」
 応えるロストークは、友人とともに戦えることに嬉しい気持ちもある。
 だからこそ、敵には先手も譲らぬというように。槍斧“ледников”のルーンを開放し、その刃に氷霧を纏わせていた。
 その力は『Шепот звезд』。星々の囁きのように氷塵を鳴らせ、敵の盾役に初手、強烈な刺突を加えていく。
 同時、エリヤも瞳の魔術回路を起動させて眠気の露を払っている。そのまま明瞭になった動作でウサギのファミリアを解放し、同じ個体に傷を刻ませていった。
 敵も反撃に出ようと蠢いている。が、そこに先んじて接近するものがあった。
 アルシエル・レラジェ(無慈悲なる氷雪の弾丸・e39784)。ふわりと宙を羽ばたくと、涼やかな動作で敵陣へ。中衛の個体に対し、至近からライフルを構えていた。
「そちらが1体ではないように、こちらも数がいるんだよ。悪いけれど」
 瞬間、淀みのない動作で銃口を向けると、牽制の射撃。光線を撃ち当ててその個体を後退させていく。
「さあ、皆、今のうちに」
「了解。まずは態勢を整えさせてもらうで」
 応えたのは美津羽・光流(水妖・e29827)。陽炎の如き揺らめきを水凪の体に施すと、そこから分身体を顕現。水凪の守りを強めさせていた。
「水凪先輩は前衛を頼んますわ」
「ああ、わかった」
 頷く水凪は、水流の如きエクトプラズムを創り出している。宙に流すようにそれを前衛に与えることで、強い耐性を植え付けていた。
 さらに、瀬理も自身に分身の術をかけ、守護を万全としていく。
 敵の盾役は葉を飛ばしてくるが、それは防御姿勢を取った司が受け止めたため、傷は浅かった。逆に司は光弾を広く発射することで敵後衛を攻撃。1体を麻痺で動けなくさせていく。
 そして後衛の残り1体は、自分達の回復に追われる。その間に日和は飛翔し、敵の盾役に迫っていた。
「まずはこれで、燃やしちゃおうかな!」
 言うと、空中で脚に炎を纏う。
 敵の先鋒は、撃墜せんとばかりに葉を飛ばしてくるが、日和はきりもみしてそれを回避。速度をつけて盾役に蹴り落としを放っていた。
「えーいっ! これでも喰らえーっ!」
 燃える衝撃は攻性植物に直撃。吹っ飛ばしながら花弁を炎上させていく。

●意志
 煙を上げながら、攻性植物はしばし苦悶するように体をうねらせていた。
 とはいえ絶命はせず、敵は依然5体。獣が威嚇をするように、体を流動させてこちらに敵意を露わにしていた。
「……ほんま、折角綺麗に咲いたのに台無しやな」
 光流はそれを見て一度目を伏せる。睡蓮は好きな花でもあるために、異形となったそれを見るのは悔しい気持ちもあった。
 日和もほんの少しだけ首を傾げる。
「キレイに咲いてた花がもったいないけど、こうなったら草刈りするしかないのかな」
「だろうな。尤も、なかなか厄介なやつであるし、数が多いだけに始末に悪い。だから簡単ではないであろうが──」
 声を継ぐ水凪は、変化の少ない表情に警戒を浮かべていた。
 それでも退く素振りは微塵も見せず、杖を構え直している。
「──それでもやらねばならぬ」
「そうやな。増えるなら片っ端から刈るだけや。これ以上好きにはさせへんで」
 光流は目の前の敵だけではなく、侵略する攻性植物全てに言ってみせるように、睨んだ。
 瀬理も頷き、パイルバンカーを掲げる。
「うん。うじゃうじゃ湧いてきても、全部叩き潰せば終わる。大阪の街を、もう好きにはさせんよ!」
 そしていつか大阪城にいる親玉の首とりにいったる、と、歯を鳴らしながら嗤った。
 これはその前哨とばかり、瀬理は高速で盾役へ肉迫。強烈な威力で杭を放ち、植物の体を貫通させていく。
 敵の後衛は池から栄養を行き渡らせるように、前衛を回復防護していた。が、その直後には司がブラックスライムを解き放っている。
「守りの態勢なんて作らせはしないぜ!」
 飛来したスライムは前衛の2体を包むと、魔力を食い破るように防護を砕いた。
 手元にスライムを回収しながら、司はバックステップして仲間に向く。
「よし! まずはあの盾を打ち破ってやれ!」
「了解だよ。行こうか、プラーミァ」
 応えたロストークは、自身のボクスドラゴンに声をかけつつ、宙へ羽ばたいていた。
 プラーミァは、主が言うならば聞かないではない、とでも言うように高飛車な鳴き声を一つ。そのまま飛び立って盾役にブレスを吹きかける。
 連続してロストークは飛び蹴りを放ち、体力を大幅に削り取っていた。
「エーリャ、今だよ」
「うん。──《我が邪眼》《閃光の蜂》《其等の棘で影を穿て》」
 と、頷いたエリヤは詠唱と同時、黒いローブに織り込まれた魔術回路を、瞳のものと同期。自身の影を異形蝶の群体に変化させ、針の雨のように射出していた。
 その能力は、影縛の邪眼:《Minois=apis》。蝶の群れは違わず攻性植物の全身を穿ち、その1体の命を奪った。
 敵の中衛は、わななきながらも足元に侵食し始めていた。
「なんや、地下茎から花咲かして花粉でもばら撒くんか? とにかくみんな、気ぃつけて!」
 瀬理が耳をそばだたせながら言うと、皆もそれぞれに警戒を浮かべる。すると予想通りと言おうか、敵は小花を開いて花粉を噴霧してきた。
 ただ、こちらの前衛は焦らず防御し、攻撃役を守る。朦朧としかけた者もいたが、そこには光流が流麗な剣舞を行っていた。
「先輩方はこっち側や。惑わされたらあかん」
 すると周囲に睡蓮の花びらのオーラが展開され、皆の状態が治癒されていく。
 敵の先鋒も同じ攻撃をしようとしていた。が、牽制の狙いをそちらに絞っていたアルシエルが、それを許さない。
「全く。──どいつもこいつも横から隙を窺おうとする。邪魔なんだよ」
 言葉遣いが乱雑なのは、微かに苛立ちが募って猫かぶりが剥がれてきたからか。そのまま呪を込めた弾丸を放ち、『四獣降臨:翠木龍』を行使していた。
「東方より来たれ、青龍」
 瞬間、顕れたのは四神青龍。艶めく翠鱗の胴体をくねらせ、豪速で敵先鋒を締め上げる。
 この隙に、皆は標的を中衛へ。日和が先んじて飛び、如意棒を握りしめていた。
「悪いのはその根っこだね! 葉っぱと一緒に、使えなくなっちゃえ!」
 同時、すくい上げるように根と葉を絡め取ると、如意棒を振り回して千切るように粉々にしていく。
 ふらつく攻性植物に、水凪も翼を輝かせて接近していた。
「これで、霊気に蝕まれていてもらおうか」
 杖に宿した霊力は、空間が揺らめくほどに濃密。刹那、風を切って滑空しながらそれを撃ち当て、攻性植物を内外からの衝撃で転倒させていく。

●闘争
 敵中衛の個体は、よろめくように起き上がる。
 体力は減ってきているようで、動きも鈍り始めていた。後衛の1体がすぐに回復を施していくが、もう1体が治癒行動に移る前に、司は手に霊力を収束させている。
「こんなところで持ち直されちゃ困るからな。少しじっとしててもらうぜ!」
 刹那、手を突き出して霊力を発射。眩い衝撃で後衛の2体を巻き込み、それ以上の治癒行動を取らせなかった。
「この隙に攻撃を頼む!」
「うん、一気に追い込んで見せよう」
 声を返したロストークは、風を掃いて中衛に接近。槍斧で枝葉を斬り飛ばしていく。
 同時、エリヤも合わせるようにファミリアを疾駆させていた。ウサギは駆け抜けながら敵を切り裂き、瀕死に追いやっていく。
「あと一撃、かな」
「なら、うちが引き受けるで」
 次いで、螺旋の力を集中するのは瀬理。そのまま氷結の力にして飛ばすことで、中衛の1体を凍結させ、粉砕していった。
 敵先鋒は葉を日和に飛ばしてくるが、その一撃も瀬理が滑り込んで受け止めてみせる。
「おっと、そっちは行かせへんよ」
「回復もすぐにするで」
 と、直後には光流がケルベロスチェインを宙に走らせていた。描き出された魔法陣は、光を生み出して皆を包み、瀬理を癒やすとともに前衛の守りを堅牢にしていく。
 この間に、水凪が翼で宙を泳いで敵先鋒に飛来していた。
「確実に仕留めよう。まずは動きを鈍らせるから、次を頼みたい」
「うんっ、わかったよ!」
 日和が朗らかに応えると、水凪は頷きを返してグレイブ“pique”を携えた。光を集めた穂先を持つそれは、刺突によって雷撃を生み出し、攻性植物を痺れさせる。
 そこへ、日和は鉄鎖“羂索【Null】”を放っていた。
「これで確実に縛り上げるよっ! 行け、null。アイツを捕まえろ!」
 風鳴りとともに低空を奔った鎖は、違わず攻性植物の根元を縛り上げて拘束していく。
 そこへ、アルシエルがゲシュタルトグレイブを構えて飛翔していた。
 攻性植物は逃れようと鎖の中で藻掻く。だがその一瞬のうちにアルシエルは距離を詰めていた。
「どこにも行かせねーよ。ここで終わりだ」
 穂先に雷光を宿すアルシエルは、決意にも似た色を瞳に浮かべている。
 敵と戦うとき、アルシエルの心に今まであったのは、『仕事がやりにくくなるから人を守る』という気持ちだった。
 だが少しずつ、『何かあれば悲しむ人がいるのかもしれない』という感覚が芽生えつつあるからだろうか。これまで以上に、目の前の敵を逃すつもりも、負けるつもりもなかった。
 瞬間、放たれた突き攻撃が先鋒の1体を貫く。衝撃は雷光の爆破を生み、その1体を千々に散らせていった。

●決着
 攻性植物は残り2体。追い詰められながらも、未だ殺意だけは絶えぬように、体を震わせてわななきを見せていた。
 日和はそれにも怯まず、近づいていく。
「そんなコトしてもダメなんだから! これ以上ココに咲いてた花で悪いコトさせないよ!」
「……ん」
 エリヤは再び影を蝶の群に変化させつつ、頷いて声を継いだ。
「涼しくてきれいな池、きれいな景色。怖い花があったらだめだよね。だから、最後まで守る」
 瞬間、それを高速で飛ばして攻性植物を貫いていく。
 よろめく1体に、ロストークが飛び蹴りを喰らわせると、光流も踏み込んで連続斬撃を浴びせて追い込んでいった。
「今や、倒したってや」
「ああ、全力で焼き尽くす!」
 頷いた司は、杖から燃えさかる火球を飛ばし、2体を巻き込みつつその1体を灰にする。
 1体となった敵は、守りも捨てて攻め込んできた。が、瀬理は焦らずパイルを飛ばし、根元を凍結させていく。
「ここまできたら、もうやられんよ」
「その通り。おとなしく、倒れてろ」
 アルシエルは同時に速度を上げて拳の一撃。衝撃で敵を宙に煽っていた。
 水凪はそこへ杖から霊力を飛ばしている。
「これで終わりだ」
「うん、光と闇の拳で──砕け散れ!」
 と、飛翔した日和も、空中に肉迫して拳に力を込めていた。
 そのまま、水凪の霊力が命中すると同時に、日和は高速の打突。強烈なダメージを与えて攻性植物を打ち砕いていった。

 戦闘後、司は息をついて武装を解いていた。
「やっと終わったな」
「ふぇーっ、疲れたーっ!」
 日和も伸びをするように声を零している。それから池の周囲を見た。
「そういえば、キレイな景色だったんだよね、ここ。散っちゃった花は元通りにならないけど、ヒールできるところはしよっか」
「そうやな。胞子のひとかけらも残さんように」
 頷く光流は、皆とともに石畳をヒールしていく。
 日和も物理で直す処置法の『命脈整流拳』を駆使して、荒れた箇所を整えていた。
「ほらっ、コレで直れーっ!」
 それによって美観も保たれると、皆はその後人々も呼び戻す。
 そうして元の風景が戻ったところで瀬理は見回した。
「さって。終わった終わった。せっかく大阪まで来たんやし、美味いもん食うて帰らへん? 案内するで」
 そんな言葉を機に、皆はそれぞれに帰路につき始める。
 水凪は暫し睡蓮を鑑賞していた。水面ではまだ沢山の花が風に揺れ、明媚な光景を見せているのだ。
「風情のある風景だ」
「そうだね。こういう眺めはぜひ収めておきたい、と」
 言いつつカメラを構えるのはアルシエル。最近は『綺麗な風景を写真に収める』事が好きかもしれないと思い始めていたこともあり、いい機会と沢山シャッターを切っていた。
 エリヤは水辺に座り、ファミリアのウサギを抱えて水面を見ている。
「きれいな池に戻って、よかったね」
「うん。こんなふうに眺められる時間も作れてよかった」
 ロストークは隣で穏やかに相槌を打った。眠そうにぽやぽやとしているエリヤが水に落ちないように、それとなく見守りつつ。
 水面にはロストークの能力の残滓である氷が浮いていた。
 ロストークは枝を拾ってそれを突き割ってみる。するとプラーミァはその上を飛び、やる気なさげに氷を溶かしていた。
「池の近くは涼しいね。涼しいと……ねむ……」
 横ではうつらうつらと、エリヤがまたまぶたを重くしている。そんな和やかな景色の中で、ロストークもまた暫し、涼しい風を楽しんでいた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年5月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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