毎日三食女体盛り!

作者:雷紋寺音弥

●究極の皿
 波の音が微かに聞こえる、埠頭に置かれた倉庫内。
 かつては水揚げされた魚などが置かれている倉庫だったが、今は完全に空き倉庫。そんな場所の真ん中にて、今日も今日でビルシャナが、怪しげな教義を語っていた。
「諸君……料理というものは、それが盛られている皿まで含めて料理である。故に、英語でも料理のことを、dishと言うのである」
 そんな皿として最高に素晴らしいものは何か。それは全裸になった女性の身体であると、ビルシャナは臆することなく言ってのけた。
「つまり! この世で至高の料理とは、それ即ち女体盛りなり! 朝、昼、そして晩、あらゆる食事のあらゆる皿を、美しい女体にするべきなのだ!」
 どう考えても、セクハラ待ったなしの酷い教義だ。しかし、周りにいる者達はビルシャナの影響を受けているのか、何ら疑問も持たずに盛り上がり始め。
「そうだ! 外食産業は、ウェイトレスの女の子が、自ら皿になって料理を提供するべきなんだ!」
「学食は、皿役の女の子をバイトで集めて提供しろ! 給食も、美人な女の先生に盛りつけて、皆で食べれば好き嫌いだってなくなるぜ!」
 生みの親が見たら絶望して死にたくなるような台詞を吐く信者達のせいで、倉庫の中は異様な熱気に包まれていた。

●お約束な展開
「うぅ……。菩薩累乗会は食い止めても、やっぱり変なビルシャナは出て来ちゃうんですね……」
 その日、ケルベロス達の前に現れた笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)は、もういい加減にしてくれと言った表情で、自らの垣間見た予知について語り始めた。
「えっと……エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)さんが心配していたことが、本当になっちゃったみたいです。その……ビルシャナの教えなんですけど……は、裸の女の人をお皿にして、そこに盛られたお料理が最高っていうもので……」
 そこまで言って、ねむは俯きながら言葉を濁した。
 どうやら、今回のビルシャナと信者達も、お約束の変態集団のようだった。だが、ここで呆れていても仕方がない。事件が起きることが確定している以上、なんとしても阻止しなければ、今に信者達まで変態ビルシャナとして覚醒し兼ねない。
「戦いになるとビルシャナは、お洋服とか鎧を溶かすお醤油みたいな液体や、猛毒ワサビで攻撃して来たり、無理やりお料理を盛り付けて動けなくしたりしてきます。それに、上手に説得できていないと、ビルシャナの配下にされていた人達もサーヴァントみたいな感じになって、戦いに参加して来ちゃいます」
 ねむの話では、既に10名程の一般人がビルシャナの配下にされているとのこと。もっとも、その戦闘力は極めて低く、ケルベロス達のグラビティを食らえば一発で昇天は間違いなしだ。
「配下の人達の目を覚ますには、ビルシャナの言葉に負けないような説得が必要です。でも……普通に説得しても、たぶん聞いてくれないです」
 なにしろ、女性の身体を皿と言い張り、それを含めて料理だと豪語する連中である。単に高級な料理なんぞ出しても、「それを女体に盛ればもっと美味い!」と反論されて、新たな女体盛りのネタにされるだけである。
 説得の際、重要になるのはインパクト。多少、斜め上の発想でも構わないので、女体盛りより衝撃的な料理を提案できれば、それでよい。
「こ、こんな人達が増えたら、ねむもお皿にされちゃうんでしょうか? うぅ……もう、怖くてお外に出られません!」
 このままでは、今に自分好みの皿を手に入れると称して、信者達が気に入った女性を誘拐し兼ねない。さすがに、それは拙かろうと、立ち上がったのは成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)。
「相変わらず、こんなビルシャナばっかりだね……。でも、放っておくわけにも行かないし……」
 とりあえず、さっさと成敗して街に平和を取り戻そう。なにやら、自分に言い聞かせるように呟いていたのは、果たして気のせいだろうか。


参加者
癒伽・ゆゆこ(湯治杜の人形巫女・e00730)
六連星・こすも(ころす系お嬢さん・e02758)
橙寺・太陽(太陽戦士プロミネンス・e02846)
ジョニー・ファルコン(夜をぶっとばせ・e04101)
アヴァラ・ガヴァラ(ドラゴニアンの鹵獲術士・e11468)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
ティーフォリア・ルキアノス(サキュバスの鎧装騎兵・e28781)
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)

■リプレイ

●変態の密会
 毎日三食女体盛り。そんな下らない教義を広めるビルシャナが現れたとの報を受けて、埠頭の倉庫へと向かったケルベロス達。
「毎回ほんっ……とうに懲りないな。ビルシャナは」
 あまりの馬鹿馬鹿しさに、エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)は倉庫の扉を開ける前から、既に頭が痛かった。
「でも……お仕事だし、放っておくわけにもいかないよ……」
 そんな中、もはや諦めの境地に達したのか、成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)が小さな声で呟いた。もっとも、その足取りは他の者達に比べても更に重く、半ば投げやりな雰囲気も見て取れたが。
「さて……。報告が正しければ、連中はこの中にいるはずだが……」
 そう言って、アヴァラ・ガヴァラ(ドラゴニアンの鹵獲術士・e11468)が重たい鉄扉を開けた瞬間、中からビルシャナと信者達の、耳を覆いたくなるような言葉が聞こえて来た。
「……で、あるからして、料理は女体盛りこそが至高なのである! 女性は皿として料理を盛り付けられてこそ、その美しさが強調されるのだ!」
「うぉぉぉっ! 女体盛り、万歳! 世界中の女性達は、皿となって俺達に料理を提供しろぉぉぉっ!!」
 なんというか、これは酷い。女性はあくまで皿であると主張する信者達の脳内からは、更にされる女性達への権利だの尊厳だのといったものは、綺麗サッパリ吹き飛んでいるのだろう。
「さ、さすがに、これはちょっと……その……」
 あまりに異様な信者達の熱気に気圧されして、早くも癒伽・ゆゆこ(湯治杜の人形巫女・e00730)がドン引きしていた。が、信者達の冒涜的な発言を聞いた他の者達は、大人しく黙ってなどいなかった。
「女体盛りって、馬鹿すぎる上に不衛生だろ!!」
「女の人の体をお皿にして、料理を盛りつけるなんていけません……セクハラすぎます!」
 開幕早々に突っ込む、橙寺・太陽(太陽戦士プロミネンス・e02846)と六連星・こすも(ころす系お嬢さん・e02758)の二人。だが、そんな彼らからの突っ込みを受けても、ビルシャナと信者達はどこ吹く風。
「うるせー! 女体は皿、これは真理なんだよ!」
「それに、誰も洗ってない身体に料理を盛るなんて言ってねーぞ! 皿は洗って使うもの! 最初に風呂にでも入ってもらえば問題なしだぜ!」
 女性の身体は皿である。そんな斜め上の主張を本気で信じ、決して曲げようとしない無駄な潔さ。
「女の子の体をなんだと思ってるわけっ!? こんなの逮捕よ!」
 獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)が手錠をチラつかせながらブチ切れたが、そんな彼女の姿を見ても、やはり信者達は止まらない。
 やれるものなら、やってみろ。正義は真理を追究した我らにある。頭の先端から爪先まで女体盛り教に毒された信者達には、一般常識など通用しない。
「……うん、馬鹿としか言えそうにないね」
 もはや突っ込む気力さえ失せたのか、ティーフォリア・ルキアノス(サキュバスの鎧装騎兵・e28781)は力無く肩を落として溜息を吐いた。
「分からなくはない。……が、野放しには出来ないな」
 それでも、ここで彼らを放置するわけにはいかないと、ジョニー・ファルコン(夜をぶっとばせ・e04101)は気を取り直し、拳を掌に叩き付ける。
 女体盛りは、果たして本当に良いものなのか。信者達の心に刻み込まれた幻想を打ち砕くべく、ケルベロス達の身体を張った説得が始まった。

●伝説の料理
 女体盛りの魅力に脳髄を毒され、人間として大切なものを忘れようとしている信者達。そんな彼らの目を覚まさせるべく、最初の声を掛けたのはジョニーだった。
「ああいうのは、実際にやっても大したことないぜ。オレも試したことあるからよく分かる」
 どうせ盛るなら、普通に船盛りでは駄目なのか。いや、それよりも、身体に盛るなら女体限定というのはどうなのか。
「サキュバスの翼盛りや、ビルシャナの翼盛りなんてどうだい? 手を汚さずに食べられるぜ?」
 そう言って、自分の翼に適当な料理を乗せて見せる。が、一般的に料亭で出される船盛りは勿論、単に翼に料理を乗せただけでは、信者達は揺らがなかった。
「船盛りだぁ? それの、どこが至高の皿なんだ?」
「最高の皿は女性の身体なんだよ! 違うっていうなら、船やら翼やらが至高の皿っていう証拠を出してみやがれってんだ!」
 全裸の女性に料理を盛り付けた物体に比べれば、ニッチ度が全然違っている。そういう意味では、信者達の心を揺さぶるには、もう少しだけパンチが足りなかったか。
「そもそもデウスエクスって、不死身でグラビティチェインがエネルギーだから、食事の必要がないが皿を食う……エロい事したいだけかと察する」
 人間なら兎も角、既に人を捨てたビルシャナに食事は不要ではないかと説く太陽だったが、それはあくまでビルシャナに限ってのみ。しかし、怒り心頭であるのは他の者達も同じようで、続けてこすもが信者達に突っ込んだ。
「料理を楽しむことが目的じゃなくて、お箸でつついて女の人の反応を楽しむのが目的なんでしょう? 学校給食を美人の先生に盛りつけて、子供のうちから妙な性癖を植え付けるなんてもっての他です!」
 そもそも、料理には美味いと感じられる温度がある。冷えたおでんに、生温かくなった刺身など、とてもではないが食えたものではない。
「女の人をお皿にしたら、乗せる料理は基本的に人肌の暖かさになります。だから、熱い料理や冷たい料理を美味しく提供することができないんです」
 熱々のおでんを身体に乗せて喜ぶのは、テレビに出ているリアクション芸人だけだ。思わず帽子を床に叩き付けて叫んでしまったが、それでも信者達は動じない。
「ハッハッハ! 何を言い出すのかね、お嬢さん?」
「女体こそが、至高の皿! ならば……その皿よりもたらされる温度こそ、料理にとっての真の適温! 料理に残された皿の感触を味わいながら、じっくりと楽しむのがいいんじゃないかぁ♪」
 変態的な欲求丸出しで、妄想の世界に浸る信者達が、ドヤ顔でこすもに反論して来た。やはり、この手の変態相手には、正論での説得は無理があったようで。
「なら、自分の家でやる場合は、自分の母親やおばあちゃんが女体盛りの皿でも食うんだよな? 違うと言ったら矛盾してるぞ」
「お、おう……。母親だろうと、婆さんだろうと、皿は皿だしな……」
 全ての女性が皿になるなら、その対象は肉親や老人にも及ぶはず。そんな太陽の言葉には、さすがの信者達の間にも、少しばかりの動揺が走った。
「そんなにいいと言うのなら……じゃあ、女体盛りってのを実践してあげよーじゃないかー。だからとはいっても服は脱がないけどさっ」
 そう言って、ティーフォリアが待っていましたと言わんばかりに、自分の胸元に生の魚肉を置く。
 この季節、生ぬるくなった刺身など、食中毒の原因でしかない。これを食って、女体盛りの真実を知れと、信者達に勧めて周り。
「ヒャッハー! ちょっと小ぶりだが、こいつは紛うことなき女体盛りだぜぇ!」
「さしずめ、お通しの小皿ってところか? なかなか、気が利くじゃねぇか!」
 何の疑いもなく、差し出された刺身を口にする信者達だったが、程なくして数名が、腹を抱えてうずくまった。
「うぅ……。な、なんか、腹の調子が……」
「お、お前もか……。がぁっ! も、もう我慢できん!!」
 慌てて倉庫から飛び出して行く信者達だったが、しかし残念なことに、この近くにトイレはない。こうなれば、海に用を足してやろうとズボンに手を掛けた瞬間、慌てて足をもつれさせ、次々に海の中へと水没して行った。
「……ねぇ、あれ見たでしょ。もう、いい加減に目を覚まそうよ……」
 あんな風になりたくなければ、今すぐビルシャナの教義を捨てた方がいい。半ば呆れ顔で理奈が残る信者達に声を掛けたが、しかし返って来たのは賛同の言葉ではなく、何故か怒りと罵倒だった。
「やっかましい! よくも、風呂に入っていない身体に料理を盛って、俺達に食べさせやがったな!」
「食品衛生法違反だぞ! 料理を盛る前に皿を洗う……これは常識じゃねーか!」
 食中毒になったのは、あくまで皿役の女性が風呂に入った直後でなかったからだと叫ぶ信者達。なんというか、屁理屈もここまで極まってしまうと、もう手の施しようがない気がする。
 こうなれば、より精神的に満足できる食べ方を提案することで、信者達の気持ちを女体盛りから離れさせるしかない。あくまで相手の考えは否定せず、しかしより楽しい食べ方があると、エメラルドは信者達に声を掛けた。
「地球の文化として女体盛り、というのがあるのは聞いた事があるし、それ自体を否定するつもりは無いよ。だが……互いに食べあう方が楽しい場合もあるのではないか? 食べる量は半分になってしまうが、充実感も得られるだろう」
 そう言いつつ、持参したスティック状の菓子を口に咥えて、その先端を信者達の方へ向け。
「これの先端を、互いに咥えて食べ合う文化もあると聞いた。気恥ずかしい食べ方ではあるが……私と、やってみてくれないか?」
 ここに来て、まさかの大胆発言。さすがに、これは信者達も黙っておらず、我先にとエメラルドの方へと突撃し。
「よっしゃぁぁぁっ! 俺様が一番乗りだぜぇっ!」
 競争を制した信者の一人が菓子の先端に齧り付き、凄まじい速度で食して行く。
(「ちょっ……! な、なんだ、このスピードは! 殆ど私が食べられていないじゃないか!?」)
 予想して以上のスピードで、エメラルドに迫る信者の顔面。このままでは、殆ど菓子を食べられないまま、彼女の唇に信者の男の唇が……。
「す、すまない……やはり、恥ずかしさが勝ってしまうな」
 残念ながら、唇が触れてしまう直前でギブアップ。申し訳なさそうな上目遣いで信者を見るものの、しかし周りからはブーイングの嵐。責任を取って、まずはお前が女体盛りの皿になれと、とんでもない暴言も飛んで来た。
「えとえと、あつあつスープとか、ひえひえジュースとか……あと、年齢次第ではお酒なんかも、に……にょたいもりにはできないと思うのです……。無理矢理しちゃうと痛い思いをさせちゃいますですし、未成年にお酒は別の意味でNG案件なのですっ」
 このままでは、今にエメラルドが信者達に襲われて、女体盛りにされてしまう。事態を収拾させるべく、ゆゆこが女体盛りにできない料理について述べた上で、新しい食べ方を提案し。
「ですので……エメラルドさんが言ったような、いっしょにあーん、とか、1つの飲み物を2人で、とかの方がぐっどだと思うのですっ。そっちなら先の物でもできますですし……未成年にお酒以外は、ですけどっ!」
 実際に、2本のストローが刺さった冷たいジュースを用意した上で、銀子もまたパフェやケーキ等を取り出して。
「女体盛りなんて触れ合いが足りない。食事はあーんして食べさせ合うのが一番よ」
 そう言いつつ、笑顔で胸元を強調しながら信者達に迫り、スプーンで掬った甘味を食べさせる。熱いものは息を吹きかけて冷ましてから食べさせるなど、幸せな雰囲気を演出するのも忘れずに。
「どう? 女体盛りじゃ、こんなに幸せな雰囲気にはならないでしょう?」
「う~む……確かに、そうなんだが……」
 もっとも、目の前に至高の皿が転がっているのに使わないのは、信者達としては魅力半減要素だった模様。黒ビキニ姿の銀子の存在は、彼らにとって単なる焦らしプレイである。あまつさえ、我慢できなくなった信者達が、「女体盛りでも両手は使える! 皿役の女の人が箸を使って、盛られた料理を食べさせてくれれば魅力倍増!」などと言い出す始末。
「フッ……。やはり、私の理論に穴はない!」
 いや、いったい、それのどこが完璧な理論なんだよ。ドヤ顔のビルシャナに呆れるケルベロス達だったが、その間も信者達の暴走は止まらない。
「それに、液体が盛れないとか言ってたが、正座した股の間の窪みになら、ジュースだろうと何だろうと注げるよな?」
「それが無理なら……そうだ! 皿役の女の人が口に酒やらスープやら含んで、口移しで飲ませてくれればいいんじゃないか!」
 ついには、先のエメラルドやゆゆこの意見を曲解し、女性にわかめ酒スタイルを強要したり、より危険な女体盛りを開発しようとする始末。
 変態、ここに極まれり。もはや打つ手なしかと思われたが……そんな時、今まで後ろで何かを準備していたアヴァラが、自らの身体を台車に乗せたまま割り込んで来た。
「クックックッ……真に至高の皿は、ドラゴニアンの肉体であることを知らしめてくれるわ!」
 これぞ、女体盛りならぬ伝説の竜体盛りだ。仲間達だけでなく、ビルシャナや信者達までも呆気に取られる中、アヴァラは堂々とハッタリをかまし。
「お前達も知っているだろう? 竜とは古来より、最強の生き物。故に、その肉体もまた極めて希少価値が高い!」
 その証拠に、並いるデウスエクスの中でも、ドラゴンは究極の戦闘生物ではないか。そんな竜の肉体や、それに近しいドラゴニアンの身体を皿にした方が、より素晴らしい料理になるのだと。
「……な、なんと! しかし、確かにそうだ!!」
 先程までの勢いはどこへやら。なぜか雷に打たれたような表情になり、納得し始める信者達。
「竜は最強の生物……と、いうことは、ドラゴニアンのお姉さんに、女体盛りさせるのが一番ってことか?」
「いや、それじゃあくまで『竜っぽい何か』だろ。それよりも雌のドラゴンを狩って、そいつの身体を皿にした方が『本物』だぜ!」
 善は急げ。究極の皿を手に入れるべく、自分達は今から竜を狩らねばならない。そう言って、残る信者達は次々に立ち上がると、手近な棒切れ等、武器になりそうな物を拾い上げ。
「よっしゃぁぁぁっ! そうと解れば、俺達もドラゴン退治に出発だぁっ!」
 遠くから聞こえる、角笛っぽい音色をした船の汽笛を背景に、4人1組になって駆け出して行く。そもそも、一般人にデウスエクスは倒せず、それどころか餌にされるのがオチだと思うのだが……まあ、彼らはドラゴンの住処も知らないので、放っておけばいずれ諦めることだろう。
「おのれぇ……。貴様達、よくも神聖なる女体盛りを穢してくれたな! 許すまじ!」
 全ての信者を失って、ブチ切れたビルシャナがケルベロス達に迫る。肉壁である信者を失ってもなお、ビルシャナだけは往生際が悪かった。

●お前が皿になるんだよ!
 頭のネジが吹っ飛んだ信者達を引き離し、残るは変態鳥頭のみ。だが、数の上では圧倒しているケルベロス達であったが、ビルシャナの繰り出す攻撃を前に、なかなか普段の調子が出せなかった。
「うぅ……わ、わさびが目にしみます……」
 猛毒ワサビを顔面に食らったことで、ゆゆこが涙を拭いながら懸命に神へと祈っていた。
 だが、彼女はまだマシな方である。醤油色の溶解液を食らって防具を溶かされ、果ては強制的に身体へ料理を盛られた面々は、恥ずかしさで戦うどころではなくなっていた。
「ちょっ……溶かすな、乗せるな! 食べるのだめー!」
 料理の重さで動けなくなった銀子へ迫るビルシャナの魔手。ふと、横を向けば、そこには同じく料理を盛られ、動けなくなっているこすもの姿が。
「食べ物を粗末にできないから……動けません」
 実際は、乗せられた料理が落ちたら最後、ポロリしそうなので動けないというもあるのだが。ちなみに、特に指示もなく戦闘に参加していた理奈は、早々に服を溶かされて全身に料理を盛られた挙句、顔面にはワサビを盛られて完全にダウンしていた。
「フッフッフ……お主、なかなか平坦で盛りやすいな。これは実に良い皿だ」
 勝ち誇った口調で、ビルシャナがこすもに次なる料理を盛ろうとする。
 だが、その一言は恐るべき地雷! 絶対に言ってはならない、NGワードナンバーワン!
「……タダじゃおきませんよ? 覚悟はできていますよね?」
 突然、瞳から輝きを失って、こすもの拳がビルシャナの鳩尾に食い込んだ。
「……ぐはっ!?」
 予想外の強烈な一撃。思わずその場に蹲るビルシャナだったが、時既に遅し。
「シュッ……もらったな!」
「獅子の力をこの身に宿し……以下略、さあ、ぶっ飛べっ!!」
 好機とばかりに間合いを詰めたジョニーが、追い討ちに稲妻の軌跡を残す拳で猛烈なラッシュを決める。同じく銀子も魔術の力を取り込んだ肉体で、ビルシャナを容赦なくフルボッコ!
「あっ……がっ……! ちょっ……待っ……!?」
 残念ながら、待てと言われて待つ馬鹿などいない。
「この爪の一撃を食らうがいい!」
「太陽の刃で叩き割るっ!!」
 アヴァラの爪がビルシャナの尻に突き刺さったところで、太陽が脳天を炎の大斧で叩き割り。
「食べ物を武器にしちゃうなんて、許せないのです!」
 ゆゆこのライフルから放たれた光がビルシャナから力を奪ったところで、エメラルドとティーフォリアが同時に星型のオーラを蹴り込んだ。
「そ、そんな馬鹿な……ぎゃぁぁぁっ」
 最後はティーフォリアのライドキャリバーに轢き潰され、醜く散って行く鳥頭。
 女性は皿だ。そう、主張するビルシャナの末路は、しかし自らが皿のように平たく潰されるという、実に情けないものだった。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年5月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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