過去からのシシャ

作者:秋津透

 千葉県館山市、房総半島南端近く。
 その場所は、椏古鵺・笙月(蒼キ黄昏ノ銀晶麗龍・e00768)にとって「密かなお気に入り」だった。崖の上から、海に沈む夕日を眺めていると、なぜか心が、わずかではあるが落ち着くような気がする。殊更に人に告げたり、誰かを連れてきたことはないが、笙月はけっこう頻繁に、単身でこの場所を訪れていた。
 しかし、その日。
 その場所に降り立った笙月は、妙な違和感を感じて周囲を見回した。もともと、よほど本格的な崖登り装備でも揃えないと一般人は入れない場所だが、しかし、獣や鳥の気配がまったく感じられないのはおかしい。しかも、それらに代わって僅かな腐臭、血臭を伴う異様な気配が……。
「初メマシテ。伯父サマ」
 岩陰から姿を現わした異形が、たどたどしい口調で告げる。オラトリオなのか、一対の白翼を備え、黒と金半々の髪に花をつけた子供のように見えるが、左腕と左足だけが不釣り合いに逞しく、そこから螺旋の力が漏れ出ている。そして、全身から発する気配は……明らかに死人。
(「……屍隷兵?」)
 眉を寄せる笙月に向け、異形は言葉を続ける。
「ボクハ、夢月。母サマノ言イツケデ、伯父サマヲ迎エニ来マシタ。ボクト一緒ニ、来テクダサイ」
「行かないと言ったら?」
 いつも使っている癖の強い言葉ではなく、ごくストレートな語調で笙月は訊ねる。
 すると異形……屍隷兵「産み落とされし幼児『夢月』」は、小首を傾げながら応じる。
「ソノ時ハ……殺シテデモ連レテコイト、母サマニ言ワレテイマス」

「緊急事態です! 椏古鵺・笙月さんが、何か只事ならない因縁があると思われる屍隷兵に襲われるという予知が得られました! 急いで連絡を取ろうとしたのですが、連絡をつけることが出来ません!」
 ヘリオライダーの高御倉・康が緊張した口調で告げる。
「笙月さんは、千葉県館山市、房総半島南端あたりの、海に臨んだ断崖の上にいるので、今すぐ全力急行します! 一刻の猶予もありません!」
 そう言って、康はプロジェクターに地図と画像を出す。
「現場はここです。屍隷兵は「産み落とされし幼児『夢月』」と名乗り、オラトリオの子供に、螺旋忍者の左腕と左足を付けた姿をしています。おそらく、オラトリオの種族グラビティと螺旋忍者のジョブグラビティを使うと思われます。ポジションはクラッシャーと思われ、攻撃力の高さは危険と推定されます。自意識、自己判断力を持ち、少なくとも並の屍隷兵ではありません。一対一で戦ったら笙月さんに勝ち目は……ないとは言いませんが、かなり危ないでしょう。何より、その、屍隷兵が笙月さんを「伯父サマ」と呼んでいる因縁が、非常に危ない感じがします」
 そして康は、一同を見回して続ける。
「幸いというか何というか、敵は単体で、増援は呼びません。撤退はするかもしれませんが、逃がしてしまったら非常にマズいと思います。どうか笙月さんを助けて、屍隷兵を斃し、皆さんも無事に帰ってきてください」
 よろしくお願いします、と、康は深々と頭を下げた。


参加者
ベルフェゴール・ヴァーミリオン(未来への種・e00211)
椏古鵺・笙月(蒼キ黄昏ノ銀晶麗龍・e00768)
日柳・蒼眞(無謀剣士・e00793)
パトリシア・シランス(紅蓮地獄・e10443)
ソフィア・フィアリス(傲慢なる紅き翼・e16957)
安海・藤子(道化は嘲笑う・e36211)
一目連・双樹(目一箇・e36930)
天神・希季(希望と災厄の大剣使い・e41715)

■リプレイ

●シシャよ、真厄の名を告げよ
(「なんでそれで立っていられるんだ!?」)
 千葉県館山市、房総半島南端近く。岩陰から姿を現わした異形……屍隷兵「産み落とされし幼児『夢月』」を目にした椏古鵺・笙月(蒼キ黄昏ノ銀晶麗龍・e00768)の第一印象は、ある意味当然ながら、相手の異様な容姿……手足のアンバランスさに対するものだった。
 しかし、すぐに笙月の視線は、異形の幼い顔立ちと、小さな双翼、その髪についている花に向けられる。
(「幼い……魅羽と同じぐらいか。そして、その髪の花は……キンセンカ……」)
 笙月の記憶は、いやが上にもあの日……郷が死神に襲われた日に遡り、行方不明になった妹の姿を思い起こす。笙月はドラゴニアンだが、妹はオラトリオ……兄妹は異種族間の混血で、それぞれ親の資質を受け継いでいた。
(「妹の髪についていた花は金盞花……この『夢月』には、当時の妹の姿が重なる……母娘、いや、複製か?」)
 自分を伯父サマと呼ぶ異形を、笙月は見据える。すると異形は、たどたどしい口調で笙月に告げる。
「母サマノ言イツケデ、伯父サマヲ迎エニ来マシタ。ボクト一緒ニ、来テクダサイ」
「行かないと言ったら?」
 笙月の問いに、異形は小首を傾げる。
「ソノ時ハ……殺シテデモ連レテコイト、母サマニ言ワレテイマス」
「そうか……殺してでも、ね」
 どうやら、夢月とその母親……の、更に背後にいる何者かにとっては、私と私の死体は等価のようだな、と、笙月は呟く。
(「この子は屍隷兵……継ぎ接ぎされた死体だ。もしかすると母親も、生きた存在ではないかもしれない。……そういう、命を冒涜する悪辣な企みを好む者を、私は知っている」)
 笙月の胸の奥に、微かに、しかし確実な手応えを以て、強い憤りが湧き上がる。
 しかし、その憤りを寸毫も見せない穏やかな声と表情で、笙月は訊ねる。
「夢月よ。オマエのその腕と足は、誰にもらったものか、教えてくれないか? オマエに、力ある腕と足をあげたのは私だよ、と、オマエに言った人がいるだろう?」
「ハイ、ボクニ力アル腕ト足ヲクダサッタノハ、濫威サマデス」
 ごく素直に、異形……夢月は答える。笙月は深くうなずいて、言葉を続ける。
「そうか……オマエも、オマエの母サマも、濫威サマの言うことなら、どんなことでも従うのだね?」
「ハイ、ソウデス。濫威サマハ、トテモ偉イ御方デス」
 疑うことを知らない幼子の口調で、夢月が答える。笙月は再度深くうなずき、不意に口調を変えて応じる。
「はは、そうざんしか。濫威サマの……あのちょーいけ好かんクサレ死神サマの企てざんしか。それじゃあ、たとえオマエに殺されようと、意地でも従うわけにはいかないざんしねえ」
「……エ?」
 笙月が何を言っているのかわからない、という表情になって、夢月が小首を傾げる。
 すると、その時。
「ショーゲツ、まだ生きてる?」
 身も蓋もない問いとともに、名無しのライドキャリバーにまたがったパトリシア・シランス(紅蓮地獄・e10443) が高空から鮮やかに降下し、笙月と夢月の間にぴたりと着地する。
「生きてるかと問われれば、御覧の通りと答えるしかないざんしね」
 軽い口調でパトリシアに告げると、笙月は夢月を見やって言葉を続ける。
「ここは、秘密にしていたお気に入りの場所だったに、オマエの所為で皆に見つかってしまったざんしよ」
「……エ? エ?」
 ますます、何が起きているのかわからない、という様子で、夢月は笙月とパトリシアを見やる。
「見ツカッテシマッタ……ッテ、何故? ……ボクノ所為、ナノデスカ?」
「いやいや、夢月は悪くないざんしよ。悪いのは、オマエに、ここで私を待つよう命じた死神野郎ざんし」
 まったく、あの死神にここを知られていたのかと思うと、知り合いに見つかったとか何とか以前に、この場所にはもう二度と来たくないざんしね、と、笙月は唸る。
 そして、パトリシアに続いて、ミミック『ヒガシバ』を従えたソフィア・フィアリス(傲慢なる紅き翼・e16957)が降下してくる。
「ショウゲッちゃん、無事? ヒガシバ先行させようか?」
「いや、大丈夫ざんしよ……ソフィア姐には、わざわざのおでまし、恐縮至極」
 少し大袈裟におどけて笙月が応じると、着地したソフィアは夢月をじろりと見やって告げる。
「ふん、これが……子供のお使いにしては色々とブッソウじゃないの?」
「どうも、本人はともかく、裏で糸引いてる奴が極悪至極のようざんして」
 笙月の答えに、ソフィアは眉を寄せたまま訊ね返す。
「それって、母親?」
「……いえ、もう一枚裏が……おそらくは、死神」
 妹が陰謀の主体とは思えない……いや、思いたくないざんしね、と、笙月は内心呟く。ふうん、と、鼻を鳴らしてソフィアは更に訊ねる。
「だったら、これは、どうするの?」
「本来在るべき場所へ」
 寸毫の迷いもなく笙月は応じ、同時に、それまで不意討ちに備えてディフェンダーに置いていたポジションをクラッシャーに変える。
「なるほど……詳しい話は、まあ、後でいいわ」
 ソフィアが応じた時、日柳・蒼眞(無謀剣士・e00793)が降下してきて笙月の横に着地した。
「無事か?」
「……御覧の通り」
 蒼眞の問いに笙月は短く答える。そこへ降下してきた安海・藤子(道化は嘲笑う・e36211)が、無遠慮に訊ねる。
「変わり種の屍隷兵か……笙ちゃんの身内かもしれないそうだけど、鹵獲できたらしてもいい?」
「随意に。ただ、この子の製作に関わったらしい死神の性格考えると、もし鹵獲できるとしたら、まず間違いなくちょータチの悪い罠が仕掛けてあるざんしよ」
 ごく淡々と笙月が答え、傍らで聞いていた蒼眞が、ものすごく微妙な表情になる。
 そして笙月は、更に淡々と続ける。
「私としては、鹵獲狙うはリスク高すぎるので単純に包囲撃破狙い。もし遺骸が残ったらここに埋葬するつもりざんしけど、罠のリスク承知の上なら、サンプル取って研究資料に使うのは構わないざんしよ」
「ん……了解」
 うなずいて、藤子は仮面を外す。そこへ降下してきたベルフェゴール・ヴァーミリオン(未来への種・e00211)が、単刀直入に笙月へ訊ねる。
「何か有益な情報は得られた?」
「有益かどうかは知らんざんしが……まあ、それなりに」
 応じると、笙月は集結してくるケルベロスたちを半ば呆然と見やっている夢月へと声をかける。
「もう一つ、教えてもらえるざんしかね? 夢月よ、オマエに兄弟姉妹はおるざんし?」
「ハイ、妹ガ大勢イマス」
 夢月が素直に答え、蒼眞とソフィア、ベルフェゴールがうげっという感じの表情になる。藤子は声を出さずに面白そうに嗤い、パトリシアと当の笙月は、まったく表情を変えない。
「そういうわけで、この子に私を連れて来いと命じて送り出したのは、たぶん試作兵器の実用試験みたいなものざんしね」
 笙月に告げられ、ベルフェゴールはやるせなさげに溜息をつく。
 そこへ天神・希季(希望と災厄の大剣使い・e41715)が降下してきて、いささか空気を読まずに大声を張り上げる。
「お待たせー! しょーちゃん、無事? あたし参上だよー!」
 そして希季は、夢月を見据えて告げる。
「なんだか左右でちぐはぐすぎて変な感じだねー、片足立ち? でも、どんな敵であれ、友達だって思える人が危険に晒されてるなら、あたしは助けるよ!」
「危険ニ……晒ス?」
 やはりまだ事態が把握できていないらしく、夢月はケルベロスたちを見回す。
「アノ……ソノ……ボクハ、伯父サマヲ連レテクルヨウ言ワレテ……アノ……伯父サマハ、ボクト来テ、クダサラナイノデスカ?」
「それについては、もう言ったざんしね。たとえオマエに殺されようと、意地でも従うわけにはいかないと」
 笙月が応じ、ベルフェゴールが言葉を添える。
「笙月をキミに渡すワケにも、殺させるワケにもいかないよ。素直じゃないけど、大事な友人だからね」
「ツマリ、皆サンハ……ボクノ邪魔ヲスル、ト?」
 やっと理解できた、という感じで、夢月は一同を見回す。
 そこへ最後の一人、一目連・双樹(目一箇・e36930)が、ウイングキャットの『花風鈴』とともに降下してきた。
「領主殿、間に合ったか……しかし」
「しかし?」
 問い返す笙月に、双樹は余計なことを言ったかな、という表情で答える。
「いやその、機嫌悪そうだな、と」
「それはもう、長年行方が分からなかった身内が、死神の手先にされ果てていて、子を産まされたのか複製されたのか、できた成果を念入りにも継ぎ接ぎの死体に仕立てられて差し向けられてきたんざんしよ? 機嫌よくしろと言われても、それは無理ざんし」
 殊更に淡々とした口調で、笙月は告げる。
「だけど、もちろん、来てくれた皆には感謝してるざんし。何がどうだろうと、クサレ死神の企みを易々と通すことだけは、断じてしたくないざんしからね」
 そう言って、笙月は夢月に告げる。
「夢月よ、オマエには何の罪もない。だけど、クサレ濫威の手先……いや、道具とされた以上、オマエが奴の意を受けて動くのは止めねばならない。それこそ、殺してでも」
「ソウデスカ……伯父サマガ何ト言オウト、母サマノ、ソシテ濫威サマノ言イツケニハ背ケマセン。邪魔者ハ排除シテ、伯父サマヲ殺シ、母サマノ元へ連レ帰リマス」
 言い放つと、夢月は笙月へと襲い掛かる。躱す笙月を追って異形の腕が触れるか、と見えた瞬間、ミミック『ヒガシバ』が飛び込み、代わって攻撃を受ける。
「オノレ、邪魔ヲ……」
「するというのは、承知していただろう?」
 いっそ優しげな口調で告げながら、笙月は夢月の異形の足に向け、ドラゴニックハンマー『愛染神楽』をカウンター気味に叩き付けた。

●眠れ、幼きシシャよ
(「オラトリオの身体に螺旋忍者の手足……人間を素材にしたものよりは確かに強力なようだが、しょせん屍隷兵は屍隷兵。ケルベロスとサーヴァント、合わせて十一人を相手にできる力はない」)
 冷厳極まりない目で戦局を見据えながら、藤子は言葉には出さずに呟く。
(「あとは、死神の罠とやらが仕掛けられてるかどうかだが……それは現状では解析できそうにないな。一方で、万一罠が手元で作動してしまったら、相手が死神だけにリスクが大きすぎる……今回は、無理に鹵獲は狙わず潰すか」)
 では、手加減なくいくぞ、と、藤子はオリジナルグラビティ『蒼銀の冴・馮龍(ソウギンノコオリ・ドラゴン)』を発動させる。
「我が言の葉に従い、この場に顕現せよ。そは静かなる冴の化身。全てを誘い、静謐の檻へ閉ざせ。その憂い晴れるその時まで……」
 藤子の周囲に呼び出された氷が、龍の姿へと組みあがり、夢月へと襲い掛かる。氷のブレスを吐き、爪と牙、体躯を用いて蹂躙する姿は、怒り狂った本物のドラゴンさながらに見える。
「潰しに行くか……」
 ベルフェゴールは呟いて、ちらと笙月を見やる。オリジナルグラビティ『イーヴル・メーザー』は列攻撃グラビティで破壊力が小さいので、ドラゴニックハンマーを砲撃形態にして撃ち放つ。
「クッ!」
 夢月は異形の腕で頭を庇い、砲撃は腕を直撃する。何度も攻撃を受けた異形の腕は、既に皮膚が剥がれ筋肉が裂け、あちこち骨が露出しているが、血は一滴も流れず、動作にも支障はないようだ。
「よーし、強烈なの行っちゃうぞーっ!」
 難しい言葉はわかんないかもしれないけど、とりあえず死んどけーっ、と、希季がオリジナルグラビティ『創世七重奏 - 天衣無縫【神威】(ソウセイナナジュウソウテンイムホウカムイ)』を放つ。
「青龍、白虎、朱雀、玄武、帝釈天、冥王……皆、あたしに力を貸して! 行くよ、あたしの出せる、全力……受けてみろ!」
 銃魔剣「カルテットシナジー」に四神と帝釈天、冥王の力を籠め、希季は強大なグラビティを撃ち放つ。砲撃は、またも腕を直撃し、物理的な実体を半ば以上吹き飛ばすが、螺旋の力が残った半ばの残骸から爆発的に溢れ、非実体の腕を形成する。
「ほう……」
 感心したように呟いて、双樹がサイコフォースを放つ。非実体の腕が念力で爆発するが、螺旋の力が渦巻いて強引に元へと戻す。もっとも、ダメージはしっかり受けているようで、異形の足がぼろぼろと崩れていく。ウイングキャット『花風鈴』が飛ばしたリングが、露出した足の骨を直撃、ばきっとへし折る。
「ウウッ……」
 夢月は呻いて前のめりになるが、翼を使って体勢を立て直す。そこへ笙月が、オリジナルグラビティ『陰翳断罪(バニシングブレイド)』を発動させる。
「妖刀『滅』よ、全てを滅する汝が破壊の波動よ……解き放て!!」
 かつて妖刀と呼ばれし『滅羽』が見えない衝撃波を起こし、相手の精神の『負』だけを破壊する。とはいえ、屍隷兵は存在そのものが『負』なので、精神や悪意のあるなしに関わらず、痛烈なダメージを受ける。
「ウッ……ク……」
 嗚咽のような呻きを洩らしながら、夢月は螺旋分身の術を使い、崩れそうになる身体を必死に強化する。
 そしてパトリシアが、笙月に訊ねる。
「私がファイナルになっても、構わない?」
「もちろんざんし……長引かせたくはないのでね」
 正直、『陰翳断罪(バニシングブレイド)』でトドメならなかったは誤算ざんした、と、笙月は言葉には出さず続ける。
 そしてパトリシアは軽くうなずき、オリジナルグラビティ『紅蓮地獄(グレンジゴク)』を放つ。
「燃え上がれ、悲しみを焼き尽くせ」
 このグラビティのための取って置きのリボルバー銃から、焔の魔力をこめた弾丸が発射される。夢月の全身が炎に包まれるが、螺旋の力が発動して炎を消す。
「あら、しぶとい……」
「死にたくない気持ちはわかるけどね。でも、キミはもう、死んでるのよ」
 とうの昔にね、と呟いて、ソフィアがオリジナルグラビティ『双掌圧壊撃(ソウショウアッカイゲキ)』を発動させる。
「こういう執念しぶといのは、単純パワーで……うーん、足りないか」
 ソフィアは巨大化させた縛霊手で夢月を挟み押し潰そうとしたが、螺旋の力が想定以上に強く、潰しきれない。
「しゃあない、ソーマ、任せた」
「はあ」
 ここはやるしかないな、と、蒼眞はオリジナルグラビティ『終焉破壊者招来(サモン・エンドブレイカー!)』を発動させる。
「ランディの意志と力を今ここに! ……全てを斬れ……雷光烈斬牙……!」
「アーッ!」
 強烈な雷撃を伴う刃の一閃を受け、夢月は身体を守る螺旋の力もろとも両断される。
「やったか……」
 蒼眞が呟き、笙月が歩み出る。両断された夢月の遺骸は、屍隷兵の宿命か螺旋の余波か、粉々に崩れて散っていったが、笙月は手早く夢月の翼の羽と髪の金盞花を取り、崩れる前に玉へと封じ込める。
「夢月よ……オマエは確かに、この世にいた。私は、忘れない」
 小さなオーブを軽く握り、笙月は呟いた。

作者:秋津透 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。