疑似魔法少女☆マギナカルタ

作者:黒塚婁

●悪
 初夏の木漏れ日が、世界を斑に染めている。
 機理原・真理(フォートレスガール・e08508)はプライド・ワンからするりと降りると、周囲をゆっくりと見渡した。
 ――廃墟。
 曾ては小さな町工場であった――といった趣のそこは、長らくこうして人が立ち入ることができぬまま放置され、周囲は緑に浸食されている。コンクリートの味気ない壁にもびっしりと蔦が這い、元の姿の半分も解らぬ。
 建物を囲む、のびのびと枝を伸ばした植木によって、まるで森の中のように錯覚させる。
 あらゆる地域で戦いに奔走する中、この場所を知り、何となく脚を運んだのだ。
 強い植物の香りに、小さく息を吐く――世界には相棒と自分だけ、そんな感覚に気を緩めそうになった、その瞬間。
「みつけたわ! あれがハムちゃんのいう悪のレプリカントね!」
 静寂を切り裂いたのは、少女の声。
 フリルが愛らしい衣装、少し厳ついが神秘的なロッド。小柄な躯で背負うのはファンシーなデザインの、しかし明らかに兵器と解る武装。
 表情は溌剌としているのに、瞳は虚ろ――その肩に乗る小動物は、あざとく「もきゅっ!」と鳴いた。
「私は魔法少女・マギナカルタ! 悪はぜったいにゆるさないんだから!」
 一方的な宣告に、ええ……と流石の真理も少し後退る――だがしかし。こんな場所に偶然居合わせるわけがない。つまり、彼女はある程度の場所からつけられていたのだろう。
 向けられている殺意が本物であること、その力もまた本物であることを察し、プライド・ワンを呼び寄せ、身構える。
「貴女が人に害を為すダモクレスなら、ここで止める以外の選択肢はないのです……!」
 悪と悪、互いにそう断じ合うものの間に、静かな火花が散った。

●救出依頼
「疑似魔法少女・マギナカルタなるものが現れた」
 雁金・辰砂(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0077)は真顔で告げる。真顔の他に表情を知らぬ、という顔だった。
 その予知は、マギナカルタに機理原が襲われる――というものであったため、急ぎ彼女への連絡を行ったが、繋がらず。
 既に危険な状態に陥っていると見られるため、彼はケルベロス達を招集したのだ。
 二人が衝突するとされる場所は廃工場――の外。
 かつてデウスエクスに占領された地域であったため、長らく人の手が入らず、周囲は木々で覆われている。
 よって、人気は全く無く、人払いなどの必要もあるまい、と彼は言う。
 件の敵だが、その名の通り魔法少女――的な戦い方を、兵器で行うダモクレスだ。
 元は小動物ダモクレスに改造された正義心に溢れる少女であったのだが、今となっては都合の良いダモクレスの先兵に過ぎぬ。
 そんな辰砂の言葉へ、まあ要するに――女の声が重なる。
「そのガキの、湧いた頭をぶっ飛ばしてやればいいんだろ」
 ノゼアン・イグレート(地球人の土蔵篭り・en0285)は乱暴に言って、にやりと笑う。
 彼女の言い様を辰砂は否定しない。ただ目を細め、改めて繰り返す。
「機理原が危機に晒されているということも忘れず、救援に向かえ。惑わされやすい外見をしているが――強敵には違いない」
 おう、任せておけ――気楽にノゼアンは請け負い――こいつらにな、と付け足したのだった。


参加者
イェロ・カナン(赫・e00116)
遠之城・鞠緒(死線上のアリア・e06166)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)
マルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685)
歌枕・めろ(彷徨う羊・e28166)
曽我・小町(大空魔少女・e35148)
錆・ルーヒェン(青錆・e44396)

■リプレイ

●救援
「悪のレプリカントはこの手で討つ!」
「……!」
 マギナカルタが高らかに言い放つと、ミサイルポッドを解放する――背負っているファンシーな飾りから、ハート型のミサイルが、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)を目掛け、次々に飛来する。
 耐久力には自信がある。武器を盾に身構えた彼女の前に、茨の壁が広がった。
 攻性植物がミサイルに食らいついたのだと認識すると同時、真理は後方に飛び退いた。その横へ、マルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685)が降り立つ。
「真理、大丈夫!?」
「マリー! 来てくれたですか」
 喜びと驚きと、声をかけた彼女に、私だけじゃないよ、とマルレーネは言い。同時、次々とケルベロス達が降り立った。
「真理さん、無事で良かった! 一緒に倒しましょう!」
 虹色の翼を広げ、ヴェクサシオンと共に軽やかに着地した遠之城・鞠緒(死線上のアリア・e06166)がぱっと明るい表情で間に合ったことを喜び、
「真理ちゃんを助けに来たのー! 後ね、ダモクレスで魔法少女なのって珍しいし、見に来たの!」
 盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)が無邪気な声音で言って、屈託無く笑うと、早速まじまじと相手を見やる。
「まほーしょーじょ……」
 イェロ・カナン(赫・e00116)は茫洋と呟く――言葉の響きを巧く処理できないというか何というか。
 彼の近くでツンと澄ます白縹の視線は、不思議な物を眺めているそれであった。
 魔法少女は未知なるもの、というのは主従における共通項だ。
 対し、腕を組み自信に満ちたポーズを取るは、錆・ルーヒェン(青錆・e44396)であった。
「ンふふ、魔法少女の事べんきょーしてきた俺はひと味違うよン」
「……はァ?」
 ノゼアン・イグレート(地球人の土蔵篭り・en0285)は本気か、という視線を彼に送る。
「でんきの街で、あーいうカッコのおにーさんに聞いたもんね!」
「使える知識なのか、それ」
 イェロは疑問を示すが、ルーヒェンの自信が揺らぐことは無い。
 ――ケルベロス達が降り立った時点で、少女は一度距離をとり、彼らの様子を窺っていた。無遠慮なふわりの視線を強気に睨み返す彼女であったが、相手は気の抜けるような柔らかな微笑みを浮かべるだけだ。
 むしろ、うん、わかったとふわりはひとり頷く。
「ふわりね、マギナちゃんも悪い人だとは思わないけどー……ふわり達と遊びたいなら良いの! 一杯遊ぶの!」
 無邪気な言葉を耳に、マギナ・カルタはたじろぎ更に一歩後退る。
「悪の幹部がそろっちゃった……大変だよ、ハムちゃんっ!」
 窮地を訴える彼女に、マスコットはもきゅっと壊れたように繰り返すだけだ。
 大事な時に微妙に頼りないマスコット――定番ではあるものの、そんな姿が哀れに映り、歌枕・めろ(彷徨う羊・e28166)はそっと飴色の瞳を悲しげに伏せた。
「この子は、ダモクレスの被害者なんだよね」
 案じるような、叱咤するような――パンドラの真っ直ぐな視線に気付き、わかっているのだけど、と小さく頭を振る。
「だからって加減してられる相手でもなくて……色んな意味で救いようがないって事で、OK?」
 確認するように、或いは念を押すように。曽我・小町(大空魔少女・e35148)が問いかけると、ええ、と真理は頷く。
「小動物ダモクレスの事件は全て防げたと思っていたですが。予知から漏れたのか密かに活動していたのか、何にせよ……もう、助けられないのですよね」
 声音に響く無念の色に、小町は強気な笑みを浮かべる。
「いいじゃない、無駄だとしても相手を救うために手を尽くす……それが魔法少女ってものでしょ」
 主の目配せに応じるように、金翼持つ黒猫――グリがを羽ばたき、軽やかに宙へと駆け上がった。

●愛と勇気と
「貴方の正義は、間違ったものなのです!」
 真理はマギナカルタに言葉を投げかけながら、距離を詰める。演算によって見出した急所へと、チェーンソー剣を滑らせる。
 聞く耳を持たぬ彼女は、ブレードに変形した腕でそれを食い止める。その動きは洗練されており、ただのふんわりとした存在ではないのだとアピールしているかのようだ。
 双方の膠着を破るように、炎を纏ったプライド・ワンが突撃していく。
 距離を開けた二人の間に、魔法陣が輝く。サークリットチェインを繰りつつ、めろがパンドラへと指示を送れば、封印箱ごと弾丸の如くぶつかっていく。
 同時に――甘く匂い立つ桃色の靄が、ぼんやりと漂い始める。
「ふわりは皆愛してるの。だから皆も、ふわりの事を愛して良いの。いっぱい、いっぱい、壊れちゃうくらい激しく愛して欲しいの……」
 甘く囁く言葉は呪文。
 脳を支配する淫蕩な気配を、敵への戦意に変じようとマルレーネは頭を振る。
「救えなかった小動物型ダモクレスの犠牲者か……もう助けられないけれど、せめて眠らせてあげるよ」
 感情を表に出さぬマルレーネは、淡淡とそう零し、
「霧に焼かれて踊れ」
 桃色の霧が、少女を包む――ダモクレスの躯であろうとも、容赦なく溶かす強酸性の霧。
 自身を包む霧をサーベル状の腕で振り払う。ついでに放たれた、横薙ぎの一閃は万物を切り裂く――マギ☆スラッシャーと本人は高らかに叫んだが、魔力より物理的な威力がありそうな一撃だった。
 真理とグリがそれの前へと臆さず飛び込み押さえ込んだのを、軽やかな跳躍で飛び越え、
「大空魔少女プリズム・コマチ! 故あって助太刀させて貰うわ!」
 流星の煌めきを纏いながら名乗りを上げた小町は、そのまま挨拶代わりのプリズム☆キック――スターゲイザーで襲撃する。
 交差するようにイェロが逆から仕掛けると、白縹が細かな硝子が輝くブレスを向け、二人が与えた重力の圧を更に深める。
「ンじゃノンちゃん、宜しくねェ!」
 一声、ルーヒェンがノゼアンに言い残すと、自身はゆっくりと前に出た。こつん、と錆びた金属の足が奏でる音を自ら楽しみ、胸へと指を突き立てる。
 腐食の呪いをもつ美しき血で指先を妖しく濡らすと、細い踵をカンと鳴らし、距離を詰める。
「魔法少女といえば、美しきライバルの登場! 試練! って聞いたからさァ」
 鉤爪振るい、至近距離からホントかな、と問いかける。
 彼の一閃を受け止めつつ、驚いた彼女の目の前に、きらきらと四色の輝きが零れ出す。
「魔法少女には魔法少女ですっ私達もやりますよ!」
 ロゼ・アウランジェが皆へとそう号令をかけると、手を掲げ、
「みんな、いくよ! ……ばらのプリンセス、ロゼリール」
 彼女の周囲で、キラキラきらめく薔薇の花弁がはなひらき、蜜色の翅を羽ばたかせ光を弾くと、薔薇のロッドを構えて決める。
「ちからをあわせて! ……リコリスのフェアリープリンセス、ララリール!」
 頷き、神崎・ララが声をあげると、赤いリコリスがはなひらき、純白の翅が広がる。ふんわりと長い水色の髪が踊り、変身完了とポーズをとる。
「はなとほしのちからで! ……ぼたんのフェアリープリンセス、マリオリール!」
 続き鞠緒が高らかに叫ぶと、青い牡丹の花がはなひらき、にじいろの翅がふるえる。長いストレートヘアを風に躍らせ、姿を変えた彼女の視線にヴィヴィアン・ローゼットが微笑みを浮かべ、
「かなえ、ゆめ! ……つばきのフェアリープリンセス、ヴィヴィリール!」
 最後に謳えば、薄紅色の椿の花がはなひらき、薄紫の翅がゆらめく。波打つ赤い髪をふわっと弾ませ、最後のポーズを決めてみせる。
 わたしたちは魔法少女カトル・エトリール――彼女達が声をあわせて名乗り、
「輝く四季に、希望の歌を。風化雪月、奏でましょう!」
 鞠緒の合図で、キュートでポップなアッパーチューンを奏で始める。
 キラキラと煌めくようなイメージが、この場を支配する――それほどの楽しい旋律と、美しい歌声。戦場を盛り上げる四人のパフォーマンスは、魔法少女のショーのようでもあった。
 華やかな彼女達の姿に驚いたのは、敵だけでもない。
「へー」
 イェロは彼女たちのエネルギーに圧倒され、そんな声をあげることしかできない。
(「みんな可愛らしいこと――けど、攻撃が結構危ない!」)
 それを声に乗せぬのは、彼の人生経験がなせる判断か。しかし折り合いの悪い相棒は、そんな主の心を知らず。
「……こら、白縹。不思議そうな顔しねぇの」
 咎めるが、硝子のボクスドラゴンはそれを無視し、視線を暫く送り続けていた。
「うんうん、やっぱり魔法少女にはライバルが必要だよねエ!」
 ルーヒェンは嬉しそうに腕組み、頷いている。
「王子さまっぽいのもいるしね、ね、イェロちゃん」
「それは謹んでそっちに譲る」

●正義
「希望の輝きよ、未来への道を切り拓け! ――シャイニング・デストーーームッ!」
 祈るように組んだ両手に光り輝く竜巻を纏わせ、小町は拳を振るう。
「ね。あなたが護りたいものは、何?」
 光の暴風に抗うように踏みとどまる相手に、髪を彩る白と黒の薔薇を風に揺らし、小町は問う。
「もし、そこのちびっこいのに言われるまま戦ってるとしたら――あなたの正義はとっくに、死んでる。それでいいの?」
「……わ、わたしには悪の言葉なんて、とどかない!」
 彼女は頑ななだ。だが一瞬、何かを考えたような間があった。追撃するグリの爪から飛び退くように距離をとる、その表情は苦しそうだ。
「魔法少女は、涙は見せない――ンだっけ?」
 煌めきを纏ってルーヒェンは飛来し、低く囁く。重力で加速した金属の足と、彼女の装備が鈍い音を立ててぶつかる。
「――ンでも、孤独な子は悲しい終わりを迎えるってサ。ケルベロスに改心、してみない?」
「ふざけないで!」
 少女はきっ、と彼を睨みつけた。負けぬために、傷付いた躯をヒーリングで癒やす。
 だが、それをイェロは見逃さず、星座の重力を叩き込んで即時破壊する。
 裸のふわりの幻影が、真理を背から包む――鋭い気がするマルレーネの視線を気にしないように、彼女は地を蹴る。
 プライド・ワンの突撃を躱した相手へ、音を立てて唸る剣を振り下ろす。装備の一部が、音を立てて毀れていく。
「逃がさないのよ」
 更に距離を詰めたのは、めろ。稲妻纏う槍を振るい、疵口からその回路を麻痺させる。さらりと揺れるシャンパンゴールドの紗幕の向こう――パンドラが彼女を守るように、海のブレスで畳みかけ、横からマルレーネの放った攻性植物がマギナカルタの腕に食らいつく。
「お行儀の悪いネズミはひっかいちゃいましょ」
 禁歌を高らかに謳う鞠緒の歌声に乗り、ヴェクサシオンが翼を広げて敵へと飛び込む。マギナカルタは小動物を庇うように覆い被さった。
 劣勢でありながら、それを守り――身を起こした彼女は満身創痍だった。ふらつく躯で、それでも負けぬとケルベロスに強い視線を向けてくる。
 そんな少女の姿を見、めろはそっと目を伏せる。
(「せめてこれ以上、苦しむことがないように、終らせてあげよう」)
 彼女の視線に気付いた鞠緒はは強く頷くと、扇を翻した。
「皆さん、今です――き……綺羅綺羅浮亜璃魔法少女陣(キラキラフェアリーマホウショウジョポジション)!!」
 即興で名付けた陣形の力を載せ、彼女の後ろでカトエリの三人が、明るい音色を奏で始める。
「花咲く未来に、希望の華を。百華繚乱、咲かせましょう!」
 光と七彩の花弁が舞い上がる中を駆けるマルレーネへ、ノゼアンは巨大な喰霊刀から力を向ける。
 振るった御業に掴まれ、マギナカルタは身をよじりつつ、ミサイルポッドを解放しようとする。
「出番を間違えたな、お嬢ちゃん。日曜の朝はもう過ぎたぞ」
 そこへ、瀬部・燐太郎がグラビティによって空間を歪曲させる――彼が演算によってベクトルを指定しているため、マギナカルタのミサイルは彼女の制御を受けず、彼女の眼前で暴発した。
 小さな悲鳴を耳に、めろはすっと息を吐く。
「とっておきを聴かせてあげる――……これは愚かな鳥が見た夢、いつか忘れられる物語」
 彼女の甘い歌声が見せる幻想は、如何なるものだっただろうか。
 夢心地の一時を切り裂いたのは、万物を凍結させる光線。
「プリズム☆ビーム!」
 白と黒の翼を広げて浮遊した小町とそれが一筋の光線で繋がる。
 凍り付いた四肢を無理矢理動かして、何とか反撃を試みようとする少女だが、眼前に混沌の砲弾が迫っている。
「悲しいけど……お別れの時間なの」
 ワイルドウェポンで腕を大型砲台に、ふわりが悲しげに告げると、同意するように、残念だねェと嘯き、ルーヒェンがその美貌でマギナカルタの動きを阻む。すかさずイェロが繰るオーラの弾丸が、少女の右腕を破壊した。
「せめて最期は、苦しまないように――行くですッ!」
 叫び、真理が両腕の手首を変形させ、ビーム状のブレードを展開。更に背中を高出力のスラスターへと変じ、彼女は爆発的に加速する。
 炎纏うプライド・ワンの一撃を転がるように躱したが、既に彼女の間合いだ。
 躍るように、連続で繰り出される二対の剣戟によって造られた、何も見えぬ光量を前に。
「ああ、わたし……『悪』だったのね……」
 ルーヒェンの言葉通りだったと。改心できない孤独な魔法少女は、悪の側に描かれるものにぴったり符合する。
 最後に腕を伸ばし、小動物ダモクレスを解き放つ。微笑みを浮かべ、今度こそ正しい正義の魔法少女を――と呟きながら、崩れ落ちた。

 ひょいと爆風に乗って逃れた、小動物ダモクレスはやれやれと首を振る。
「今回はイイ線いってたと思うんだけどなー、ま、次があるかな」
「それが、貴方の本心ですか」
 真理が迫っていた。既に演算は終わっており、攻撃も開始している。それに逃れる術はない。
「き、キミも魔法少女に……」
 苦し紛れの勧誘に、彼女は人差し指を突きつける。破壊の一撃は小さな爆音と共に、あっけなく終わった。

●唄
 ファミリアロッドの白ねずみを撫でて鞠緒は呟く。
「紅音さん、あなたとは全然違いましたね」
 労う指先に気持ちよさそうに紅音は身をくねらせた。
「ホンモノの魔法使いなら俺もなってみたかったなァ。弟子入りし損ねちゃった」
「大丈夫、ふわりはいつか会えると思うの!」
 ルーヒェンの言葉に、ふわりが請け負う。二人がどこまで本気なのか、掴みかねてノゼアンは首を傾げた。
「あの子が正義感の強いだけの女の子なら良かったのにな」
 熟れた果実色の眸を細め、イェロが零す。白縹は彼から少し離れたところで、祈る者達を眺めていた。
 グリを撫でながら小町が見守る前で、真理が残った小さなデバイスを土へと埋める。
 マルレーネがそっと寄り添い手を握ると、大丈夫ですよ、と彼女は頷いた。
「助けてあげられなくて、ごめんね。せめて、ゆっくりおやすみなさい」
 緑に覆われた廃工場の片隅に眠るひとりの少女へ、めろは小さな子守歌を送るのだった。

作者:黒塚婁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年5月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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