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雪降る日がすぎ、桜舞う日までの数日。
木野穣は未来を夢見ていた。高校卒業後、医大に進むことが決まっている。心臓外科医になるつもりであった。
彼には一人の妹がいる。心臓に疾患があり、小さい時から外出もままならなかった。そのことがあり、彼は心臓外科医になる道を選んだのだった。
ふと窓外を眺めた彼は、蒼空に星のまた滝野ごとき煌きを見た。
瞬間、校舎の天井が大きく砕け散り、続く砂の嵐に呑まれて壁が崩壊した。降り注ぐ硝子の破片。コンクリートの瓦礫。
悲鳴と逃げ惑う足音が交錯した。非常口が瓦礫に埋まる。その光景を目撃した穣は階下にむかって駆けた。
「邪魔だ! どけ!」
大柄の高校生が穣を突き飛ばした。よろけた穣は壁に激突。瓦礫が彼の身を押しつぶした。
「ふん」
ひとつの未来と夢を踏みにじったことなど意にも介することなく、高校生は駆けた。が、階段を駆け下ようとした彼は甘い濃厚な香りを嗅いだ。腐りかけた果実のような香りだ。気を奪われたのは一瞬だったが、それが彼の運命を決した。
天井の崩落。大きな瓦礫に頭蓋をうたれ、彼はその場に倒れた。
きゃははは。
薄れゆく意識の片隅、彼は女の声を聞いた。
「お前の性根の醜さ、大好きよ」
笑い声の主はいった。砂漠の民を思わせる浅黒い肌の美少女だ。濁った瞳とタールの翼をもっている。シャイターンであった。
「エインヘリアルにしてあげるわ」
艶然と笑んだ美少女は、その手のナイフで高校生の喉を掻き切った。
「あーあ。はずれか。エインヘリアルになったらやってみたかったのに」
わざとらしく尻をくねらせると、つまらなそうに美少女は鼻を鳴らした。
「じゃあ次ね」
歌うようにいうと、美少女はゴミのように高校生の亡骸を踏みつけた。そしてタールの翼を広げ、飛び立った。
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「ヴァルキュリアに代わって死の導き手となったシャイターンが、エインヘリアルを生み出すため事件を起こそうとしているわ」
色香が蜜のように滴る女がいった。和泉・香蓮(サキュバスの鹵獲術士・en0013)である。
「シャイターンは多くの一般人が中にいる建物を崩壊させ、その事故で死にかけた人間を殺す事でエインヘリアルに導こうとしている」
その建物とは都内の高校だ。昼であるため、校内は人で溢れている。
「事前に中にいる人々を避難させてしまうと、別の建物が襲撃されてしまって被害を止められなくなるの。だから皆には建物の中で潜伏してもらうことになるわ。そして襲撃が発生した後、まずはシャイターンが選定しようとする被害者以外の避難誘導を行ったり、崩壊しそうな建物をヒールして崩壊を止めるといった対処を行ってちょうだい」
香蓮はいった。撃破は、その後、シャイターンが選定対象を襲撃する場所に向かっておこなうことになる。
「シャイターンの名はアイシャ。武器はナイフよ。惨殺ナイフのグラビティに似た業をつかうわ。さらに炎塊を放つから注意が必要よ」
シャイターンが現れるのは校舎の廊下。場所は狭い。校庭に引きずり出すことができれば戦いやすいだろう。
「可能なら、誰も大怪我をしたり死亡したりしないように、事件を解決してね」
香蓮は艶っぽく片目を瞑ってみせた。
参加者 | |
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スウ・ティー(爆弾魔・e01099) |
上月・紫緒(シングマイラブ・e01167) |
コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813) |
黒斑・物九郎(ナインライヴス・e04856) |
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441) |
上里・藤(黎明の光を探せ・e27726) |
プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432) |
ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615) |
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「学校にまでシャイターンが現れるんですね。ここはみんなの青春を彩る場所なんですよ。被害なんて出すわけにはいかないんです」
ひっそりと廊下の隅に佇む女がつぶやいた。
春風に紫の髪をさらりと流した玲瓏な美女。眼鏡が理知的な顔立ちに似合っている。
名は上月・紫緒(シングマイラブ・e01167)。ケルベロスであった。
そのとき――。
蒼空を星の瞬きのごとき光が流れた。
瞬間、校舎の天井が大きく砕け散り、続く砂の嵐に呑まれて壁が崩壊した。降り注ぐ硝子の破片。コンクリートの瓦礫。
「邪魔だ! どけ!」
大柄の高校生が痩せた高校生を突き飛ばした。高校生――木野穣はたまらず廊下の壁に激突――しなかった。一人の女が彼を抱きとめたからだ。
女は妖しく光る紫の瞳の持ち主であった。そのためか、可愛い顔をしているくせに妙に色っぽい。
「大丈夫?」
女――プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)が問うと、穣はどぎまぎとしてうなずいた。プランが可愛すぎるのだ。
その時、天井から瓦礫が落下した。人間一人を押しつぶすに十分な大きさのコンクリート塊が。
「あっ」
穣の口から叫びが発せられた。
刹那だ。コンクリート塊が砕け散った。傍らの少年のように見える男が拳の一撃で砕いてのけたのだ。あまりに馬鹿げた光景に穣には声もない。
「はあ」
男の口から深いため息がこぼれた。穣が知る由もないが、男の名前はコクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)といい、彼もまたケルベロスであった。
「こんなもん潰したって気晴らしにもなりゃしない」
傷ひとつない拳を見下ろし、コクマはつぶやいた。
「いくぞ」
プランにいうと、コクマは廊下を走り出した。穣から手をはなすと、プランも後を追う。
「あの」
穣が呼び止めた。
「ありがとう。君の名は」
プランは名乗った。が、崩落の響きが彼女の声をかき消した。穣の目には、たた眩しいプランの微笑みだけが焼き付いた。
「さて、と……仕事の時間か」
校舎を揺るがす振動に身を震わせ、帽子に手をかけた男は余裕の態度で笑った。目深にかぶった帽子のために顔は良く見えない。が、口はわずかに笑のかたちにゆがめられている。
「みんな、こっちだよ」
用務員の姿をしたその男――スウ・ティー(爆弾魔・e01099)は逃げ惑う生徒たちに声をかけた。そして上をむいた。
スウは気をたわめた。すると天井にはしった亀裂が消滅した。とてつもない気の凝縮によりスウが修復したとは高校生たちにはわかるはずもない。
同じような奇跡は別の階でも起こっていた。
建物の崩落によりコンクリート片と塵が舞う中。廊下の片隅で少年がちっと舌打ちした。帽子をかぶった生意気そうな顔つきの少年だ。
「来たな。けど、悪夢は俺が喰らってやるよ」
少年――上里・藤(黎明の光を探せ・e27726)は鞄に手をかけた。
「召喚! …来い、モノクロ!」
藤が鞄を開いた。すると鞄の中から猫が飛びした。
「にゃあ」
吼えると、猫はくるりと身を回転させ、音もなく地に降り立った。
刹那だ。猫の姿は消え、そこには男が一人立っていた。
少年だ。白髪に金瞳。猫の耳をもっているところからみて猫のウェアライダーであろう。
「オレ、魔獣モノクロ、オマエ、コンゴトモ、ヨロシク――なんちって!」
ふざけた口調で少年――黒斑・物九郎(ナインライヴス・e04856)は名乗った。
「シャイターンの勇者選定ってホント雑ですよな! ぶっちゃけカタギ殺してグラビティチェイン獲る方が本線なんじゃニャーですか?」
「知らん」
冷たくこたえると、藤はコートの裾を翻らせて走った。
「大丈夫だ、ここはケルベロスに任せろ」
生徒たちに呼びかけると、非情口を目指した。光粒子を散らし、周囲を修復する。すると硝子の破片が元通り窓に収まっていった。
その時、一際大きなコンクリート塊が落ちてきた。真下の女子高生が悲鳴をあげる。と――。
女子高生の頭寸前でコンクリート塊がとまった。横からのびた手がひょいと受け止めたのだ。
気づいた女子高生が信じられぬものを見るように手の主を見た。コンクリート塊の重さは数百キロはあるだろう。それを平然と片手で支えることのできる者はとは一体――。
「俺たちはケルベロスっす。もう大丈夫っす」
ニンマリと笑むと、手の主――物九郎は月光の光に似た銀光の塊を放った。すると彼の手の上のコンクリート塊が天井にもどった。
「あとはこいつだな」
藤は非常口を塞いだ巨大な鉄骨へ向けて光粒子を放った。
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ひとつの未来と夢を踏みにじろうとしたなど意にも介することなく、高校生は駆けた。が、階段を駆け下ようとした彼は大きな瓦礫に頭蓋をうたれ、その場に倒れた。
きゃははは。
薄れゆく意識の片隅、彼は女の声を聞いた。
「お前の性根の醜さ、大好きよ」
笑い声の主はいった。そしてシャイターン――アイシャが血溜りに倒れ伏す高校生を抱き起こそうとした。刹那だ。
「待て」
凛とした声が響いた。ちらりと眼をむけたアイシャは一人の女の姿を見出した。声と同じく凛然とした娘だ。綺麗な金髪を無造作に後ろで結っている。
「ヴァルキュリア?」
訝しそうにアイシャが眼を眇めた。すると娘はうなずいた。
「エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)。ケルベロスだ」
「私はガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)よ」
もう一人の女が名乗った。ピンクの髪に、やや垂れ気味の大きな目の可愛らしい少女である。が、その瞳の奥には外見からは想像もつかぬ強い光があった。
「ほんと鬱陶しいわね、ケルベロスって」
忌々しげに吐き捨て、アイシャはナイフを手にした。が、高校生の喉を掻き切るはずだったその刃がはじかれた。はじいたのはガートルードが携えた眩い光の剣である。
エメラルドが血まみれの高校生を後方へ引き寄せた。無論瀕死の重傷を負ってはいるが、エメラルドにとっては何ほどのこともない。ライトニングロッドから電気的衝撃をとばして高校生の肉体を賦活化、傷を癒す。
「な、何が……」
意識をとりもどした高校生が身を起こした。そして、ともかく崩落から逃れるべく再びよろよろと逃げ出した。
「助かりたい気持ちは分かるが、他人を蹴落としてまで、と言うのは感心しないな?」
高校生の姿の消えた階段を見やり、エメラルドはごちた。
「救うに価しないと思う人も居るでしょう。けれど誰しも己の身はかわいいもの。彼を責める訳にもいきません。自分の命を危険に晒してでも、誰かを救うなんて……できる人の方が少ないんですから」
ガートルードは悲しげにため息をこぼした。するとアイシャは可笑しそうに笑った。
「とっくにわかってたはずよ。人間の本性が。そんな人間を守らなきゃならないなんて、正義の味方も大変ね」
「違います」
声がした。きっぱりとした声音だ。紫緒であった。
「違う? 何が?」
「わかりませんか。ガートルードさんがいってたでしょう。自分の命を危険に晒してでも誰かを救うなんてことができる人の方が少ないって。いるのですよ。少なくてもそういう人間が。だから私たちは人間を、世界を守るのです」
告げるなり、紫緒は愛刀である狂愛葬奏を閃かせた。しぶく鮮血は闇の色。胸元に黒線をはしらせ、アイシャは跳び退った。
「やるわね、番犬の分際で」
アイシャは掌を突き出した。吹き出したのは紅蓮の炎の塊である。避けることのかなわなかった紫緒の身が炎に包まれる。
「きゃははは。よく燃える、よく燃える」
アイシャがはしゃいだような声をあげた。すると炎を払った紫緒が笑い返した。
「可哀想な女性ですね、あなたは」
「何っ」
アイシャの顔から笑みが消えた。
「わたしが可哀想ですって?」
「そう。アナタは自分のこと可愛いって思ってるみたいですけど、男性一人、自分の魅力だけで落とすことも出来ないみたいですね?」
いうと、紫緒は左手をあげた。そしてわざとらしく指にはまった婚約指輪を見せつけた。
「いってくれるじゃない。だったら、その大切な指輪ごとお前の腕を断ち切ってあげるわ」
アイシャが床を蹴った。が、それより早く紫緒は窓から飛び出した。
高さにしておよそ十メートル。それを軽々と舞い降りると、着地。そして横に跳んだ。
直後である。紫緒の着地点を白光が薙いですぎた。アイシャが振り下ろしたナイフの一閃である。衝撃に地が裂けた。
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「逃がさない」
アイシャが紫緒を追った。さらに紫緒は跳び退ったが、アイシャの方が速い。ナイフが紫緒の首めがけて疾り――。
銃声が鳴り響き、ナイフの刃が紫緒の首をかすめてすぎた。唸りとんだ魔導石化弾がアイシャの腕に着弾したのである。
「お待ちどうさん。派手にやってるかい?」
校庭に飛び降りた男がいった。スウである。手には失われた魔導機械体系の産物であり、様々な形状への変形機構を備えた恐るべき超兵器――ガジェットが握られている。
アイシャはナイフを持ちかえると、ごちた。
「まだいたの。全部で四匹も」
「いや」
声は中空からした。舞い降りる影は四つ。
「八人だ」
一瞬でアイシャの弱点を見抜いたコクマが叫びざま襲いかかった。鉄塊のごとき巨剣――スルードゲルミルを叩き込む。
ギンッ。
アイシャはしかし、容易くナイフではじいた。おそるべき手練である。が、続くプランの攻撃は避け得なかった。古代語の詠唱と共に彼女が放った魔法光がアイシャを撃つ。
「あっ」
アイシャはよろけた。左足が石化している。
「もうわかるだろ? 逃がす気はないってことだ」
藤は全身を覆う装甲から光粒子を放散させた。それは仲間に降りかかり、彼らの超感覚を研ぎ澄ませた。
物九郎が発したのは月光にも似た光球である。それは紫緒に身に吸い込まれ、彼女の炭化した皮膚を再生した。
「ふん」
アイシャは鼻を鳴らし、笑った。
「逃げる? そんなつもりはないわ」
アイシャは再び炎塊を放った。プランにむかって。
咄嗟に飛び退こうとしたプランであったが、すぐに動きをとめた。背後に校舎があるからだ。プランの身が炎に包まれる。
「きゃははは。そうすると思ったわ。馬鹿な正義の味方なら」
笑いながら、次々とアイシャは炎塊を放った。紅蓮の火線めがけ、コクマ、藤、物九郎、スウが飛び込む。そして人間松明と化した。
「きゃははは。飛んで火にいる何とやらってやつね。もっと燃えろ」
「やめろ。卑怯者め」
地を陥没させて蹴った足に流星の光を燈し、エメラルドはアイシャへ星の重力を叩き込んだ。まさに流星の激突を思わせる激烈な蹴撃である。たまらずアイシャが吹き飛ぶ。
そのアイシャを追ってガートルードが馳せた。疾風の速さで追いつく。瞬間、ガートルードはバスタードソード――サンライズブリンガーをたばしらせた。
疾る光流はアイシャの腕に。黒血がしぶき、アイシャの右腕が切断されて空に舞った。
「やったわね」
憎悪の目を、アイシャはガートルードの左手にむけた。すると、はっとしたようにガートルードは己の腕に視線をおとした。
彼女のそれは人間の左手ではない。ガートルードの街が戦場に変わったとき、生き残るために瓦礫に埋もれた左手を自ら斬り捨てたのだ。そして後に得た異形の腕である。
「そんな化物の手でよくもわたしを」
「醜い化物はあなたです」
紫緒の黒い翼を閃いた。すると黒炎が散った。地獄の炎を纏った羽根である。
その一枚を手に取ると、紫緒は放った。それは硬質化しており、鋭利な刃と化している。空を裂いて飛び、漆黒の羽は死の宣告を告げるようにアイシャを切り裂いた。
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「痛いじゃない。よくも」
軽やかな足取りでアイシャは紫緒の懐へ滑り込んだ。刃が紫緒の身を無残に切り裂く。解体に手馴れたやり口であった。
「おい」
声をかけたのはコクマである。そして振り向いたアイシャを舐めるように眺めると、深いため息をこぼした。
「所詮敵に過ぎん。しかも唯の外道。せめて…ワシの気晴らしの礎となって散れ」
「チビの気晴らしになってたまるものか」
アイシャが嘲笑った。それがコクマの瞳の暗い炎をさらに燃え上がらせた。突き出した掌から漆黒の弾丸を放つ。
それは地獄の炎を凝縮したものであった。貫いた弾丸はイシャの生命そのものを削り取る。
「ああっ」
アイシャは苦悶した。そして悟った。このままではまずいと。
アイシャはタールの翼を翻した。逃げるつもりだ。
「逃がすかよ」
藤が迫った。脚をはねあげる。刃の鋭さをもた蹴撃がアイシャの翼を襲った。
咄嗟にアイシャは左手を振った。鋼とはがるの相博つ音が響き、アイシャのナイフがはねとぶ。
「ちっ」
舌打ちすると、アイシャは一気に空に舞い上がった。追うためにエメラルドのまた光の翼を開く。が、間に合わない。
その時だ。空を無数の流星が裂いた。雷鳴にも似た轟音とともに吐き出されたガトリングガンの弾丸だ。
「おたく、ワルが好みなんスか? なら俺めが相手したげましょっかや」
「ぎゃあ」
弾丸に引き裂かれ、アイシャが空にとまった。刹那である。エメラルドの手がアイシャの足をつかんだ。
「私の手が罰を与えるに足る清い物だとは思わないが、それでも貴様の狼藉を許すつもりは……無い!」
エメラルドが手をひいた。アイシャが地に叩きつけられる。咄嗟に受身をとったのはさすがであった。が、すぐには動けない。
その時、アイシャの耳は囁くような声を聞いた。プランの声だ。
「今夜また逢おうね。いっぱいかわいがってあげる」
「あっ」
アイシャは呻いた。一瞬間、彼女の姿が消失したようだ。何が起こったのか――。
現世封ず夢の檻。サキュバスの夢魔としての伝承を顕現するグラビティであった。夢と現実の境を曖昧にして混ぜ、対象者を夢の中に残したまま現実と切り離す。そうすることにより対象者を夢の住人にしてしまうという驚嘆すべき業である。
一瞬後、現実に帰還したアイシャの目は虚ろであった。それでも本能的に空に舞い上がった。
「待つんだ」
再び追おうとしたエメラルドをスウは制した。
「口説くにも引き際ってかい? ま、逃がさないけど」
帽子を人差し指でついと上げ、スウは起爆させた。周囲にばら撒いた水晶形の見えない機雷を。
爆炎がアイシャの身を灼いた。そして砕け散った水晶の破片が彼女の肉体を切り裂いた。
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空の爆煙が消え去った時、すでにアイシャの身は霧散していた。残る仕事は周辺の修復だけである。
「そうそう」
紫緒が藤に目をむけた。
「フジさんって学生さんでしたっけ。だから、より力が入っていたのですね。良い思い出も悪い思い出も、青春が輝くのが学校ですもん。恋も」
紫緒が微笑んだ。仏頂面で藤が横をむく。すると物九郎がけらけらと笑った。
「藤が恋っすか?」
「てめえ、ぶっ殺す」
藤が拳に殺気を込めた。
作者:紫村雪乃 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年3月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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