春の星図

作者:崎田航輝

 夜に輝くのは、星の煌めきだった。
 天頂に近い北斗七星。うしかい座を通って見える、アークトゥルスとスピカ。それらによって描かれる春の大曲線は、満天の星の中で一層眩しい流線を描いている。
 共通した星で構成される春の大三角や、春のダイヤモンドも、望遠鏡では一層鮮明。ここ、山上の天文台では、そんな星空観察を楽しむ人々で賑わいを見せていた。
 そこは、都会の中心から離れた場所。
 人工の灯りの無い自然の中では、肉眼でも星を間近に感じられる。屋外展望デッキでは、家族とともに星座探しをする子どもたちの声も響いていた。
 季節が移り、夜の冷え込みも緩やかだ。春の星見に丁度いい環境の中、天文台は盛況の様相だった。
 だが、その楽しげな声の中に、つんざく悲鳴があがる。
 空ではなく、地上を歩む巨影を人々が発見したからだった。
「こんな山にこれほど餌がいるとはな。せっかくだ、全部いただくぜ」
 それは言葉とともに人々の前に現れた大男。身長3メートルを超える巨躯のデウスエクス、エインヘリアルだった。
 人々は一瞬でパニックと恐怖に巻き込まれる。そんな中、エインヘリアルは喜色を浮かべて殺戮を始めていった。
 星空に鮮血が散っていく。惑う者も泣き叫ぶ者も、容赦なく斬られ、狩られていった。
 少しの後には、一帯に静寂が降りる。
 エインヘリアルはただの一度も空を見上げることもなく。死体を見回すと、飽きたように歩き去っていった。

「春の星座も、見やすい季節になってきたみたいですね」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は星座の早見表を眺めつつ、そんな事を言っていた。
「それでも、デウスエクスがいたら楽しむことも出来ませんので……今回も、皆さんに事件の解決をしてもらうことになりそうです」
 それから改めて、ケルベロス達に説明を始める。
「本日は、エインヘリアルが出現する事件になります」
 アスガルドで重罪を犯した犯罪者が、コギトエルゴスム化の刑罰から解き放たれ、地球に送り込まれている。以前から続くこの事件の新たな一件だとイマジネイターは語った。
 自由を得たエインヘリアルは、天文台に現れて、虐殺を開始する。
 放置しておけば、多数の死者が出てしまうことだろう。
「皆さんには、このエインヘリアルの撃破をお願いします」

 作戦詳細を、とイマジネイターは続ける。
「敵は、エインヘリアル1体。出現場所は、天文台です」
 山上にある所で、当日は星を見ようと多くの人達が訪れているという。
 万全を期すために、これらの人々を事前に避難させておくといいと言った。
「今回は、敵の出現まである程度時間的猶予がある状態です。焦らず避難活動をしていただければ、その場の人を逃がすことは出来るでしょう」
 避難が済んだら、後は敵を待って迎え撃ってくださいと言った。
「では敵の戦闘力について説明を」
 エインヘリアルは、剣を一振り装備している。
「おおよそゾディアックソードに似た武器で、能力的にもそれに準じた技を使ってくると思っていいでしょう」
 各能力に気をつけてください、と言った。
「折角の綺麗な夜ですから。是非、撃破を成功させてきてくださいね」
 イマジネイターはそう言って頭を下げた。


参加者
月枷・澄佳(天舞月華・e01311)
ビスマス・テルマール(なめろう鎧装騎兵・e01893)
夜刀神・罪剱(星視の葬送者・e02878)
ミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471)
八上・真介(夜光・e09128)
時雨・乱舞(純情でサイボーグな忍者・e21095)
ノチユ・エテルニタ(夜に啼けども・e22615)
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)

■リプレイ

●対峙
 満天の星の下。
 天文台に降り立ったケルベロス達は避難活動を始めていた。
「今からここで、デウスエクスとの戦いになりそうなの……。終わったらすぐに観望会できるようにするから、少しの間避難しててくれる?」
 周囲の人々に呼びかけているのは、マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)。ごめんなさい、と頭を下げるその姿と丁寧な言葉に、人々は移動を開始している。
 展望デッキから人が殺到しそうになれば、ミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471)がその都度声をかけていた。
「まだ時間的な猶予はありますので、落ち着いて、焦らず逃げて下さいね」
「僕達番犬が、貴方達の命を守る。だからスタッフや警備員に従って、慌てずに移動してほしい」
 ノチユ・エテルニタ(夜に啼けども・e22615)も、そう声を継ぐ。声音はぞんざいな部分もあったが、助けたい気持ちは強く。人々を的確に誘導していた。
 外に出た人々は、時雨・乱舞(純情でサイボーグな忍者・e21095)が先導。ライドキャリバーのシラヌイに乗って地を駆け、流れてくる人々を案内していく。
「さ、こっちなら安全ですよ!」
「あとは、警察の方々の指示に従って退避してくださいね」
 月枷・澄佳(天舞月華・e01311)が言う通り、協力を仰いであった警察も駆けつけている。避難した人々を彼らに任せることで、一帯はスムーズに無人と化していった。
 それも済むと、澄佳は天文台のもとで皆と合流する。
「避難は完了ですね」
「機材もできるだけ運んでもらえて、よかった」
 マヒナも建物を見上げ、頷いていた。
 ビスマス・テルマール(なめろう鎧装騎兵・e01893)はそこで、周囲にキープアウトテープを巡らせていく。
「これで、人払いも万全ですね」
「あとは待つだけ、か」
 と、静かに頷く八上・真介(夜光・e09128)も、テープを伸ばして一帯をぐるりと囲っている。それが終われば星空の下、皆で敵を待ち伏せる態勢を取った。
 するとそこで、警戒にあたっていた夜刀神・罪剱(星視の葬送者・e02878)が、歩んでくる。
「丁度、来たようだ」
 その視線の先。木々の闇から1体の巨躯が現れるのが見えていた。
 剣を手に人影を探す、エインヘリアルだ。
 その巨躯は、こちらに気づくとすぐに近づき、嬉しげに見下ろしてきた。
「やっと獲物を見つけたぜ」
「──獲物、か。よく飽きも懲りもせず、やってくるもんだな」
 と、真介はそれに怯むでもなく。鋭い目で見上げていた。
「あんなに星が綺麗なのに、お前たちは目障りだ」
「……目障りたぁ、ご挨拶だな」
 エインヘリアルは俄に怒りを浮かべ、剣を握りしめる。
 真介は無論、退かない。逆に白銀の槍“銀影”を構えると、巨躯へと肉迫していた。
「事実を言ったまでだ。お前はここで──死ぬ」
 刹那、冷気を湛えた穂先で一撃。巨体の腹を穿ち、その表皮を凍らせていく。
 同時に、皆も一斉に攻勢へ。罪剱が翻弄するように頭上から蹴りを加えれば、ミントとノチユは地上から回し蹴りを打っていた。
 敵の動きが止まれば、マヒナは星明りを集めたオーラを蹴り出し、的確に傷を与えていく。
 エインヘリアルは、剣を振るって反撃してきた。が、それはマヒナ自身がうまく防御。直後には澄佳が御業を解放し、治癒の霊力を注ぐことで、マヒナを癒していた。
「これで一先ずは、問題ないでしょう」
「では、反撃と行きましょう。久々の純粋な戦闘ですから──気分が高まりますねぇ!」
 声を継ぐ乱舞は、先刻から一変して、狂気を含んだ笑みを浮かべる。
 それは戦いを好む心から生まれたものか。瞬間、乱舞は『幻影乱舞』を行使。印を結び、自らの影分身を無数に生み出していた。
「さあ、我が幻影達よ……踊りなさい!!」
 分身体は八方から連続斬撃。刃の嵐を舞わせて鮮血を散らせていく。
 エインヘリアルは剣を振り回してやり返そうとする。が、その刃先を衝撃波が弾き返した。
 それはビスマスが脚装・なめろうフラックから生み出した、なめろうの気の刃だ。
「貴方の思う通りにはいきませんよ」
 ビスマスは至近で跳躍すると、再度なめろうの気を漂わせる。
「絶好の星空日和に……情緒も無く欲望のままに殺戮なんて真似は。それこそ文化の護り手として。許す訳にはいかないのです!」
 刹那、鋭利な刃となった気が直撃。上半身を袈裟懸けに抉り、巨体に膝をつかせていた。

●剣戟
「星空……くだらねぇな」
 エインヘリアルは暫し、痛みに顔をしかめていた。だがすぐに立ち上がると、剣を突きつけてくる。
「殺しの方が大事さ。そうだろ?」
「……そんな事を言う前に、お前は一度でも、星を見上げた事があるか?」
 罪剱は出し抜けに口を開く。
 するとノチユも星空を仰いでいた。
「綺麗な夜だぞ。それすらわからない野蛮な奴に穢れされるのが、腹立たしいほどに」
「俺を、侮辱してんのか?」
 エインヘリアルが顔を歪めると、罪剱はゆっくりと視線をやる。
「……少なくとも俺は、別にお前を殺したい訳じゃない。だが、無駄だとしても一応言っておくというだけだ」
 そう言うと、静かに見据えて続けた。
「――退け、ここはお前の居て良い場所じゃない」
「……はっ、断る。俺も目的がある」
 巨躯があくまで言うと、ノチユは首を振り、拳に焔を湛えた。
「結局、殺戮しか頭にないような奴に星見の楽しみなんてねぇってことだ。ならいい──来いよデカブツ。力づくで、空を見せてやるよ」
 エインヘリアルは、応ずるように走り込んでくる。だが、ノチユは先んじて踏み込み、拳を腹に叩き込んでいた。
 連続して罪剱が爆破攻撃を加えると、乱舞も隙を作らず抜刀。孤月を描く斬撃で脚部を深々と切り裂いた。
「ヒャハハ! 足元ががら空きですよぉ!」
「く……っ!」
「遅いです。クロガさん、ルイさん、頼みますよ」
 エインヘリアルが体勢を直そうとする、その直前に、ビスマスはファミリアを解放。黒のハリネズミのクロガと、白のハリネズミのルイを融合し、幻影合成獣化。青と赤の巨大光線を放たせて、巨躯を吹っ飛ばした。
 エインヘリアルは、それでも起き上がりざまに剣から波動を放ってくる。
 が、その中で澄佳は、月光の魔力を封じた呪符を手に取り、輝かせていた。
「星座の力で攻撃をしてくるならば……その星光よりも強い光で打ち消しましょう」
 瞬間、その呪符を天に放ち、美しい光で周囲を照らし出す。
「さあ、月から零れし癒しの灯を──」
 その力は、『天照月華』。仲間へ注いだ癒しの光は、淡く優しく、穢れを浄化しながら体力を癒していく。
「ありがとう。アロアロ、ワタシ達は攻撃するよ」
 そう言ったマヒナは、シャーマンズゴーストのアロアロとともに攻勢へ。アロアロがフルフルと震えつつも炎を放射すると、マヒナは畳み掛けるように『ココナッツフォール』。幻影のココナッツを落下させ、脳天へ重い衝撃を加えていく。
 エインヘリアルがふらつくと、ミントも接近して跳躍。靴装・Thornの茨に魔力の炎を纏わせていた。
「隙ありです。炎の一撃、受けてみてください」
 瞬間、勢いを乗せた蹴撃。巨体を炎上させながら後退させた。
「今です、連撃を」
「ああ」
 短く応えたのは、真介。銀影にグラビティを注ぎ、強烈な力を込めると一閃。視認すら出来ぬほどの斬撃で、巨躯の胸部を切り裂いた。

●星
 仰向けに倒れ込んだエインヘリアルは、奇しくも星を見上げる格好となっていた。
 だが、すぐに起き上がると、首を振る。
「……はん、あんなものに現を抜かすのなら、死んで当然さ」
「……星を見詰める事が罪だとでも言いたげだな」
 罪剱は表情を変えるでもなく。視線を上げて、無数の星々を仰いでいた。
「どうせ届かないのだから――手を伸ばす事くらいは許容すべきだろう?」
「悪いが、届かないものより、近くの獲物を狩りたい主義でね」
 エインヘリアルが刃を構え直すと、ビスマスは息をつくように声を零す。
「重犯罪者に言っても仕方無いのかも知れませんけど……星霊甲冑を持っている割りには、夜空の星への情緒も無いんでしょうか」
「そうだよ。この宙のどこかにはアナタの故郷もあるんでしょ? 皆宇宙では等しい命のはずなのに……」
 マヒナが言うと、エインヘリアルは鼻を鳴らすばかりだ。
「故郷なんてないようなもんさ。……そもそもてめぇらだって空を見に来たわけじゃなく、仕事で戦いに来てんだろ?」
「その通りだ」
 それに、低めた声で応えたのは真介。眼光はひときわ鋭く、殺意が滲み出ていた。
「だが──仕事である以上にも、俺はお前達がとにかく嫌いだ。エインヘリアル。だから、ただ闘いに来たんじゃない──殺しに来たんだ」
 瞬間、真介は豪速で斬撃を見舞う。刃は氷の余波を生み、苛烈な攻撃となって巨躯の足元を凍てつかせた。
 次いで、罪剱の連続斬撃が全身に傷を広げると、ノチユが飛び蹴りで体勢を崩す。よろめいた巨体へマヒナが眩い光を狙い打てば、エインヘリアルは再び転倒していた。
 それでも、剣を振り回しながら起き上がってくる。が、その一撃一撃を、乱舞は機械の右腕で弾き、剣戟を演じた。
「アハハッ、最高じゃないですか! これでこそ、戦いがいがありますよぉ!」
「ちっ……てめぇこそ殺しが似合うぜ」
 エインヘリアルは毒づくが、乱舞はそれにも笑みを返した。
「一緒にしないで欲しいですねぇ。私は無抵抗の人間を殺すような下卑た真似は──しませんよ!」
 瞬間、駆動させた腕を突き出し、巨躯の腹を貫く。
 エインヘリアルは血を吐きながらも剣撃を放つが、それはノチユが庇って受け止めていた。そして、すぐ後には澄佳が巫術を行使。御業を纏わせて、傷を包み込むようにして回復をもたらしていた。
「攻撃は、お願いしますね」
「ええ。折角の天文台ですから、コレで行きましょうか」
 応えたビスマスは『牡羊座・沖膾乾酪雨』。牡羊座の星の鎧を装着すると、クリームチーズの気となめろうの気を収束していた。
「なめろうリコッタキューブ生成……分解……拡散……牡羊座・沖膾乾酪雨っ!」
 瞬間、その塊をラム肉型ご当地武装『ラムニクーバ』で細かくスライス。弾幕のごとく降らせることで、美味さと衝撃の雨で巨体を穿っていく。
「何だこの不思議な風味は──ガッ!」
「まだまだ、攻撃は終わっていませんよ」
 チーズを噛むエインヘリアルの、その顔面を衝撃が襲っていた。ミントが鎖付き棘鉄球”もるげんすてるん☆”を振り回し、その棘を砲弾のように飛ばしていたのだ。
「連続で、受けてみてください」
 ミントは言葉とともに、さらに、棘を連射。エインヘリアルの足元を貫き、深いダメージで転倒させていた。

●決着
 血溜まりの中で、エインヘリアルは立ち上がる。
 その表情は最早狂的な色だけを残していた。
「……皆殺しだ。人間もその建物も、全て破壊し尽くしてやる……!」
「ここは人が星を見るための場所なんだよ。だから、そこにいる人を殺すのも、壊すのも……ダメだよ!」
 マヒナが毅然と声を返すと、澄佳も凛と頷いてみせる。
「ええ。人を傷付け、己の快楽を得る──その様な卑劣な行いはさせません」
 エインヘリアルは、それに反抗するように駆け込んできた。が、ビスマスはクロガを突撃させていくと、同時にボクスドラゴンのナメビスも飛び立たせていた。
「ナメビスくん、思い切りやってあげてください」
 するとナメビスは鎧を展開し、なめろうと味噌の気を含んだ炎のブレスを浴びせていく。
 よろめいた敵へ、乱舞もシラヌイを体当りさせていた。自身は氷結の螺旋を手元に渦巻かせ、それを放って巨躯の全身を斬り刻んでいく。
「さあ、このまま最後まで行ってしまいましょうか!」
「ええ。では、私も。──攻撃をしない訳ではないですから」
 声を継ぐ澄佳は、御業から炎弾を放ち、エインヘリアルを焔で包んでいた。
 悲鳴を上げて倒れ込む巨躯を、ノチユは見下ろす。
「自分が獲物になる気分はどうだ? パニックにでもなってるか?」
「ぐ……ぁ……!」
「……まあ、いい。そのまま大人しく、冥府に、墜ちろ」
 瞬間、『冥府に消ゆ』。漆黒の髪がなびいて、星屑のように揺らめくと、一撃。狙いすました拳を打ってエインヘリアルを宙へ煽る。
 罪剱はそこへ手を伸ばし、『零刻弔』。一瞬時を静止させて巨体を空中に止めると、斬撃を繰り出した。
「――貴方の葬送に花は無く、貴方の墓石に名は不要」
 言葉と同時、放たれた一閃は鋭く。エインヘリアルを四散させていった。

「終りましたね」
 戦闘後。穏やかな調子に戻った乱舞の言葉に、皆は頷いていた。
 罪剱は敵が散った跡を見下ろす。
「……星の元、安らかに眠ってくれ」
「……」
 同じく、静かに佇むのはマヒナ。そっと敵へ祈りをあげていた。
 それも済む頃には敵の残骸も消え、跡形もなくなっていく。
 澄佳は周囲を見回した。
「あとは、ヒールをしておきましょうか」
「ああ。天文台に被害がなくてよかったな」
 ノチユも言って手伝い、地面を修復して景観を保っていた。
 その後、人も呼び戻すことで、天文台は再び星見の時間となる。静かに、賑やかに、皆がそれぞれの時間を過ごし始めていた。
 澄佳は展望デッキに上がっていく。
「折角ですから、眺めていくことにしましょう」
「そうですね。ナメビスくん、行きましょう」
 と、ビスマスも言って上り、春の大三角に始まる星々を観察していた。
 ミントとマヒナは、2人で望遠鏡に赴いている。
 マヒナが望遠鏡を向けたのは、遠い方角、オリオン座の隣だ。
「あのいっかくじゅう座には、『ばら星雲』っていう赤く写る星雲があるんだって」
「ばら星雲ですか。私も薔薇が好きですので興味深いですね」
 ミントが覗き込むと、薔薇が開くような赤い星雲があった。肉眼では見えずとも、ここの天体望遠鏡ならばよく見えた。
「他にも、北斗七星のミザールやりょうけん座のコルカロリとかお勧めだよ。望遠鏡で見ると2つの星が並んでるの。2重星っていうんだよ」
「教えて下さって有難うございますね。あちらがミザール……こちらがコルカロリでしょうか?」
 マヒナの教えに、ミントはそれらも発見。それぞれ親子のように隣接する星を観察する。
「マヒナさんも覗いてみて下さいね、色々な星が見えて綺麗ですよ」
「ありがとう。じゃあ、少し楽しもうかな」
 そう言って2人は暫し、鑑賞しながら過ごしていった。
 真介は建物の壁によりかかり、外で星を仰いでいた。
(「手は届かない。が、今は、見上げていたい」)
 ふと手を伸ばす。真介にとって星は手の届かないもの。それは即ち敵であり、仲間のことでもある。
 見上げ、情景し、あるいは撃ち落とすのかも知れない。そんな遠い存在だ。
 星が落ちたらどうなるだろうと、ふと思う。けれどそれは文字通り、今は手の届かない話。真介はそれきり視線を降ろして、歩き出した。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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