死神は聖女の亡骸を抱いて踊る

作者:ハル


 それは、植田・碧(ブラッティバレット・e27093)の好む、ゴシックファッションを取り扱う新店で、買い物を堪能した帰り道での出来事。
「うん、満足ね」
 碧は、紙袋いっぱいに詰め込まれた戦利品に、緩む頰を抑えきれずにいた。
 だが――。
「……おかしいわね」
 ふと、碧が足を止める。先程から、誰かに後をつけられているような気がしたのだ。いや、それよりも、いくら現在地は路地裏とはいえ、繁華街とはそれほど距離もないこの場所で、夕暮れの内から誰一人としてすれ違う気配もないのは、果たして偶然なのだろうか?
「…………」
 碧は立ち止まり、辺りを見渡す。
 すると、『彼女』の姿は、特に意識をせずとも、碧の視界に映り込んできた。
「こんばんわ、マドモアゼル」
 その女は、金の髪に妖艶な姿。だというのに、全身からは外見とは相反するような神聖さを漂わせていた。女は、怖気が走る形状をした鎌を手に、碧に笑いかけてくる。
「貴女――!?」
 瞬間、碧は女にデジャブのようなモノを感じたのか、目を見開く。
「そちらの挨拶は結構よ。私は貴女の紅い髪に自信に満ちた表情……それが気に入って、欲しいだけだから」
 女は、碧の驚きなど知った事かとばかりに、言葉を重ねる。ただ一つ。碧にもっきり認識できる事。それは、女が碧に殺意を向けているという事。
「今の身体にも飽きてきていた所だし……貴女の身体、頂いても良いかしら?」
「……イエスなんて、言うと思う?」
 不躾な要求をしてくる女に、覚悟を決めた碧が、吐き捨てるように告げ、鎌を構える。
 そんな碧の眼前で、女も鎌を振るうと、空から大天使が降臨しようとしていた……。


「……大変です!」
 急遽集められたケルベロス達の元へ、息を切らせた山栄・桔梗(シャドウエルフのヘリオライダー・en0233)が飛び込んでくる。
 何事かと驚くケルベロス達に、桔梗は早口で状況を伝える。
「植田さんが、『ダスク・ラーカー』という名の死神に、襲撃を受ける予知を見たのです! 慌てて連絡を取ったものの、繋がる様子はなくて……」
 予知の内容を鑑みれば、一刻の猶予もない事は明白だ。
「今すぐに、植田さんの救援に向かって下さい!」
 とはいえ、救援をスムーズに運ぶためには情報も必要だ。桔梗が、敵戦力について説明する。
「今回、植田さんと共に皆さんに相手取って貰う敵は、ダスク・ラーカーと呼ばれる、過去の英雄のサルベージを主として活動しているらしい死神になります。攻撃方法については、資料を参照してください。そして、肝心のいつ介入できるかについてですが、遅くとも、植田さんが敵と接触してから数分……いえ、直後に割り込めるように、なんとか算段をつけてみせます!」
 充分な準備期間を取ることができないのは申し訳なく思う。
 だが、朗報もある。今回は、敵の死神が人払いを行ってくれているため、戦場となる路地裏に一般の方が紛れ込んでくる心配はなさそうだ。
「道幅は2メートル前後でしょうか、乱戦になりそうですね。路地裏にあるお店を巻き込んでしまう形になるのは必至でしょうが、一般の方が不在なぶんだけ、ありがたいと思うしかありませんね」
 ダスク・ラーカーは、正邪どちらもを内に有する強敵という事だ。戦闘時には、慎重にあたって欲しい。
「ダスク・ラーカーを撃破し、植田さんと一緒に皆さんが帰還する事を、心より祈っております。植田さんの身体は、デウスエクスなんかには勿体ないですからね!」


参加者
ミツキ・キサラギ(剣客殺し・e02213)
ライゼル・ノアール(仮面ライダーチェイン・e04196)
羽丘・結衣菜(マジシャンズセレクト・e04954)
佐藤・非正規雇用(マインスイーパー・e07700)
祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)
植田・碧(ブラッティバレット・e27093)
水森・灯里(ブルーウィッチ・e45217)
シャルル・シーク(穴掘りシャルル・e45235)

■リプレイ


 夕暮れの、薄暗くなってきた路地裏。
 そこで閃くは、翠玉と血色。守護と殺戮。そんな、両極端な意思が込められた鎌同士。
 やがて、熾天使が召還され、業火を放つと、
「……くっ!」
 植田・碧(ブラッティバレット・e27093)の身体は路地の壁に打ちつけられた。
「もう一度聞くわ、貴女の身体、頂いても良いかしら?」
 ダスク・ラーカーは、悍ましい形状の鎌を碧の首筋に突きつける。それは、最早確定事項を告げるかのよう。
「だれが貴女なんかに!」
 否定を述べながら、碧の脳にノイズが走る。ダスクの纏う雰囲気に、感じる既視感。
「できれば、綺麗なままで仕留めたかったのだけれど」
 睨み付ける碧に、ダスクは諦めたように溜息を。そして、鎌を振り上げた時。
「何者かしら!?」
「……!」
 ふいに気配を感じ、二人は『空』を見上げた。

「仮面ライダーチェイン・プリズム。……勝利に繋がせてもらう」
 降下しながら、ライゼル・ノアール(仮面ライダーチェイン・e04196)が、プリズムファクターに鎖鍵を差し込む。その瞬間、Raizel・preuveが光を放ち、彼の地獄化した左腕から、複数の炎弾がダスクへ向け降り注ぐ。
「邪魔を!」
 炎弾は、ダスクの身体を掠めるに留まる。だが、ライゼルが身代わりに入るには十分な時間。
「ちょっと待ったァーーーッ!!」
 そして、ライゼルが碧を背後に庇ってすぐ、佐藤・非正規雇用(マインスイーパー・e07700)の絶叫。何故か花束を手に着地した佐藤は、碧に駆け寄ると。
「ハァハァ……碧さんの身体は、俺が貰うぜ!!」
 息を切らせながら、碧の手に花束を抱かせた。
「アホかぁっ!? なんでそうなるっすか!!」
 一連の行動をドヤ顔で行った佐藤に、シャルル・シーク(穴掘りシャルル・e45235)がハンマーで突っ込みを入れる。
「アルバ、張り合わなくていいんだぞ? 相手も困ってるじゃねぇか」
 そんな佐藤に、ミツキ・キサラギ(剣客殺し・e02213)も呆れ。
 だが、いつもの雰囲気に碧がホッとした表情を浮かべている事に気づいたミツキは、肩を竦め、碧に言う。
「碧が狙われるとはな……でも、間に合って良かったぜ。本格的な仕事は一月以来になるが、碧にはいつも世話になってるからな、加勢する」
「ええ、キサラギくん、シークさんにノアールさんも、ありがとう」
「戦友、碧さんの危機とあれば、このオイラ、シャルル・シークは火の中水の中っす! 微力ながらお力添え致します、っす!」
 碧は、花束を路地にそっと置くと、「俺は?」そう自分を指さす佐藤を尻目に、ライゼルとミツキに感謝を告げ、ニカッと笑うシャルルとハイタッチ。
 また、無論助けは彼等だけではなく――。
「へ、変態だー!」
「結衣菜ちゃん!」
 少し遅れて届いた、聞き馴染みのある羽丘・結衣菜(マジシャンズセレクト・e04954)の声に、碧の頰と口調が緩む。気づけば、碧の身には木の葉が。
「碧お姉ちゃんの身体を狙うなんて、紛う事なき変態だー! そんな変態死神にお姉ちゃんを渡してなる物か!」
「そうだ! 碧さんの身体は俺のもんだ!!」
 キッとダスクを睨み付け、殺気を放つ結衣菜。そんな彼女に便乗するように、佐藤も舞うようにダスクへと襲い掛かる。
 続き、佐藤の頭上をダブルジャンプで越えたミツキが、呪詛が刀身に浮かぶ大太刀――今月今夜で斬り掛かった。
「……次から次へと!」
 茶番を演じるケルベロス達に、ダスクは形の良い眉を顰める。彼女の鎌は、正邪を纏い、振り下ろされるが。
「……ふむ」
「まだいるの?!」
 その一閃は、祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)の縛霊手によって絡め取られ、威力を軽減される。
 その上、死神であるダラス以上とも言える深淵を湛えた、無機質なイミナの瞳に観察され、
「絡繰りは知らないが、その外見は偽りか」
 己が存在を見抜かれたダスクは、背筋を冷たくした。
「死神の例に漏れず、サルベージという死者の冒涜。……死の神だろうと現世で行うならば祟られるべきものだ」
 ゆえ、覚悟せよ。
 近距離から放たれた流星と煌めきを帯びた蹴りに、ダスクは踏鞴を踏んだ。
「大体、他人の身体なんて奪ってどうするっすか! そんなん、自分が空っぽって言ってるようなもんじゃないっすか!!」
 シャルルが、オウガ粒子を散布する。
「英雄のサルベージを目的としている死神が、どうして植田さんを……?」
 水森・灯里(ブルーウィッチ・e45217)は疑問を呈すが、ダラスは答えず、そして碧も僅かな予感めたいものはあるものの、明確な回答を持たない。
「ともかく、植田さんの身体をダスク・ラーカーに渡すわけには行きません」
 灯里は、色とりどりの爆風を用いて、前衛にエンチャントを施した。
「祟さん、水森さんも……!」
 力強い助力に、碧の胸が熱くなる。
 イミナが静かに瞳を伏せ、灯里が「当然です」と、微笑。
「いざ……狐月三刀流、ミツキ・キサラギ――参る。なんてな!」
 ミツキが三刀を構え、改めて名乗りを上げると、狭い路地裏での激しい乱戦が幕を上げた。


 イミナは燃えていた。
「……これでは、まるで――」
 四肢をロープで結ばれた状態で炎に包まれる様は、まるで供養に出された藁人形のようで、イミナは不思議な心地に陥った。
 ――死ね! 死ね! 死ね!
 そんなイミナの様を見て、盛大にシュプレヒコールを上げる見渡す限りの民衆達。激しく上がる火の手よりも、民衆達が投げる酒瓶が直撃した頭部の方が、余程痛い。
(……ああ、祟りたい)
 理性をなくした民衆に、イミナが宿す感情は、ただ一色だけ。
 だから。
「――さん! 祟さん!!」
 遠くから、我を取り戻した事による意識の浮上と共に近づいてくる碧の声と、身体に充足するオーラの力を感じた瞬間、
「……己の貌が呪いならば、只管に見続けよう。……永遠に動かなくなるまで縛り付ける呪いを……」
 カッと目を見開いたイミナの美貌は祟りと化して、イミナがイミナたる正銘をもって、ダスクの足捌きを鈍らせた。
「ボルトさん、形状固定頼んだよ! ライダー……パンチ!」
 ライゼルの合図に従い、メタル・チェインボルトが半身を強固に覆う。攻防一体を成したその拳は、背中に鬼を浮かび上がらせ、ダスクの鳩尾を穿った!
「がっはっ!?」
 くの字に身体を折り曲げ、路地の壁際に追い詰められたダスクは両手を組み、祈りを捧げる。降り注いだ灰色の光は、祝福のように、呪いのように。
「……蝕影鬼、もっとだ。……あの死の神はいくら祟っても不足ということはない」
 だが、ダスクがヒールに一手を消費した今こそ、ケルベロスにとっては攻めのタイミング。蝕影鬼が再度のヒールを誘発させるため、ダスクを金縛りに掛けようとする。
「店長!」
 佐藤の思惑としても、当然同じ。店長とコンビネーションを発揮して、神器の剣で斬り掛かった後を狙い、
「避けられるものなら避けてみやがれ!!」
 必殺の踏み込みと共に、剣を叩き込んだ。
「っ、痛いわね!」
(まんごうちゃん、ありがとう!)
 ダスクが、度重なるケルベロス達の攻撃に、目の色を変える。手を翳し、召喚された熾天使……その標的となったのは、中衛に陣取るまんごうちゃんとシャルルである。結衣菜は、ダスクのヒール後も、まんごうちゃんが爪で霊魂を攻撃した影響が残っている事を確信し、密かに含み笑う。
「私……この戦いが終わったら碧おねえちゃんに思いっきり甘えるんだ」
 調子に乗って、結衣菜はそんなフラグ染みた事を言ってみたりして。しかし、本当にフラグにするつもりなど、毛頭無い。
 だが――。
「うぉっ! またこっちっすか!?」
(でも、シャルルちゃんはごめんなさいっ!)
 その巻き添えを少なからず喰っているシャルルに、結衣菜は癒やしの風で援護を送った。
「そこだぁぁぁ!」
 狭い空間は、下手すればケルベロス達にとっても不利な空間になりえるが、連携のとれた今回のメンバーに限れば、過不足なく動けている。逆に、ダスクを逃げ場のない空間に追い込んだミツキは、右手の打刀2刀でダスクの弱点を。その際、ミツキに纏わされたシャルルのオウガ粒子が輝き、狙いを正確なものとした。
「巻き添え食ってるだけの価値はあるってことっすかね……?」
 シャルルの口元に、苦笑が浮かぶ。敵の列攻撃を中衛が担っているからこそ、エンチャントが少なからず意味を見出している。
「でも、それもそろそろ限界っすかね……」
 鎌の一閃を受け、まんごうちゃんが一時的に消失する。
 また、即座に再行動に移ったダスクの狙いは、灯里。
「ボクが守る!」
 火刑を追体験させる一撃の前に、ライゼルが庇いに入ると、シャルルのオウガメタルから噴出した蒸気が、鎖と共に盾となる。
「ノアールさん、助かりますっ!」
 『トラウマ』に対しては、速やかな対応が求められる。それだけでなく、度重なる攻撃を受けているライゼルだ。灯里はオーラを溜め、癒やしを与える。
「クソッ…! 見た目に反して頑丈だな…!!」
 こんな美人なのに……そうボヤきながら、佐藤が一旦後退する。
 ふと、佐藤はダスクが顔見知りであるのか、碧に改めて問うてみる。
 すると、碧はやはり首を横に振りながらも――。
「でも、身体は覚えている……そんな気もするのよね」
「……身体が覚えてる(意味深)ねぇ」
 碧の返答に、ニタニタする佐藤。
「アルバ……お前のそういう所、嫌いではないが……」
「店長、お願い」
 戦闘前なら構わんが、今はもう少し緊張感を持てと、ミツキが深く溜息をつき、結衣菜の指令を受けた店長が佐藤に反逆し、齧りついた。
「……?? どういう意味っすか?」
 シャルルには言葉の意味は分からないが、佐藤=低俗な発言という方程式を描く事は実に簡単。
「敵の思惑や植田さんとの関係は不明ですが、それを考えるのは倒してしまってからでも構わないでしょう」
「そうだね」
 灯里の言に、ライゼルが汗ばんだ黒髪を掻き上げながら答える。
 BS付与での大幅な弱体化が見込めないダラスの性質上、ある程度の長期戦は覚悟の上。
「正しき鎖を胸に。巡れ!」
 ライゼルは、灯里のヒールでも打ち消しきれなかったBSへ対処するため、虹色の鎖を全身に駆け巡らせるのであった。


 互いに蓄積したダメージは大きくとも、動きを阻害するまでには至っていない。ゆえ、ダスクはケルベロスの数を減らすことに切り替えた。その標的となったのが耐久に劣るシャルルであり……。
「――っっ!!」
 体力の補給も兼ねて振るわれた鎌が、シャルルの意識を刈り取った。
「シャルル!」
 こうも狙われては、名を呼び唇を噛むライゼルや、静かに眉を顰めるイミナでも庇いきれない。
「よくもやってくれたわねっ!」
 碧が、「虚」を纏わせた大鎌でダスクと斬り結ぶ。
 ライゼルは防御のために展開していた鎖に混沌を纏わせると、今度は一転してダスクへと殺到させた。
「こんのぉっ!」
 ダスクが目を剥いて憤怒する。形勢が悪化し、灯里が付与したアンチヒールを宿すこの状況を考えれば、ヒールのために一手を消費するのは自死に等しい。ダスクは熾天使を召還させ、前衛を一気に後退させようと目論んだ。
 しかし――。
「……その程度か?」
 ミツキを背に庇った状態で、イミナは健在を示す。さすがに、蝕影鬼は消失してしまったが。
 ケルベロスがダスクの行動をあまり制限できないように、ダスクはダスクで、決定打を有していないのだ。
 佐藤が、九歩の間合いを一瞬で詰めると、ダスクに深い切り傷を刻む。
(イミナさんやライゼルさんは、小まめに自分でもヒールしてるから、まだ大丈夫ね。今危ないのはミツキくんか!)
 全員の消耗を把握した結衣菜が、ミツキに木の葉を纏わせる。
「……ワタシもお前の今の身体から頂くとしようか。……寄越せ……」
「この私がっ、こんな奴らに!」
 イミナはダスクの首根っこを素手で掴むと、狭い路地の壁を、地面を抉るように引きずり回してやった。綺麗だった金髪が、細い肢体が無残に血に染まり、よろける。
「その隙は見逃せねぇな!」
 そしてこの終盤における数分。ダスクがヒールを半ば諦めた恩恵を最も受けていたのがミツキ。強力な一撃を有しつつも、安定しなかった命中が、イミナの徹底した命中援護によって花開く。
「これも巫術のちょっとした応用だ……七式、紫電掌ぉぉぉぉ!」
 右手に纏わせた雷撃は、触れた手の甲を通じて、ダスクの内部から破壊する。
「……うぅっ!!」
 死の予感に抗うようにダスクが行った火刑への誘いに、耐性の薄さを突かれたライゼルが膝をつくも、戦闘不能までには至らない。
「灯里さん、最後をお任せします!」
「ええ! この鎌で、貴女の命を刈り取らせてもらうわっ!」
 ダスクに迫る碧の背を、灯里の生み出した爆風が押す。
 翠玉の大鎌が宿すは「死」の力。碧の鎌は、ダスクが防御のために構えた彼女の鎌諸共、その首を断ちきるのであった。


「ご無事ですか?」
「碧さん、大丈夫っすか!?」
 灯里とシャルルが碧に駆け寄る。
「ええ、大丈夫よ、シークさん。皆も、今日は本当に助かったわ」
 それに、碧は最大限の笑顔で応えてみせた。
「とんだ災難だったな……荷物運ぶの手伝うよ」
「俺も手伝うぞ、アルバ」
 その後、もう一仕事を終え、佐藤とミツキが、碧の購入したというショップの紙袋を手に取る。
 その際、ミツキは何気なく視線を紙袋に落とすと、偶然その中身が目に入り……。
「ふーん、ミツキくん、興味あるんだ?」
 碧に甘えるようにハグしていたはずの結衣菜に見つかってしまう。
「な、いやこれは不可抗力で!べ、別に気になった訳じゃ――!!」
 ミツキは、その視線に動揺してしまう。とはいえ、佐藤のように白い目で見られる訳ではなく、「興味あるなら着てみる?」碧と結衣菜にからかわられる程度だ。
 しかし、そんな賑やかさは、佐藤の漏らした一言で沈黙に変わる。
「……ところで碧さんのお家は何処かな? 荷物を届けるには必要だよな……あと、なんで死神は碧さんの胸に興味を示さなかったんだろう、こんなに素敵なのに」
 ミツキと異なり、堂々と碧の服――胸のサイズを注視する佐藤。
 そんな佐藤が音もなく縛られるのは必然であり。
「…………」
 一瞥をくれたイミナが無言で去って行く。
「奴にはいつ会えるのか……」
 ライゼルは一瞥すらくれず、憎き相手を思い浮かべ、鎖を鳴らし。
「女性らしい身体ってそんなに良いもんっすか?」
 唯一残ってくれたシャルルにも――。
「もちろんだ! でも、シャルルさんもいいと思うぞ! 可愛い女の子というだけで、男には最高さ!」
「そういうもんっすか!」
 下手に紳士的な態度を取ってしまったがゆえ、多少納得したらしいシャルルは軽い足取りでその場を離れてしまう。
 佐藤はその後、数時間放置されたという……。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。