三叉の渡を砕き影

■リプレイ

●牙の牙跡
　長野県塩尻市。
　長野県の丁度真ん中辺りに位置する駅の塩尻駅は、東日本と中日本を繋ぐ、交通の要。
　辺りはうっすらと雪が積もり、仄かに雪化粧……勿論、それはこの地の人達にとっては普通の事である。
　そんな交通の要で、クロスする線路を見下ろしたフェリシア・アケノ（憑かせ屋・e42288）が。
「交通の要ねぇ……交通網が途切れるだけでもこれがまた不便になるんだなぁ……そう考えると、ケルベロスとしてはさくっと終わらせたい案件だね」
　とぼやく。
　そう、その降り積もる雪と共に、此処へ空から降り注いだのは、日常ではあり得ないモノ……竜牙兵の牙。
　そんな降り注いだ牙を一瞥した碧人が。
「本日は……晴れ時々骨、所によっては番犬が荒れ狂うでしょう、ってか？」
『ギャウ！！』
　と、夜陣・碧人（影灯篭・e05022）に愛ボクスドラゴンのフレアも空を見上げて啼く。
　それに峰谷・恵（暴力的発育淫魔少女・e04366）も。
「そうだね。本当にいいかげんドラゴンも地球に受け入れられる事を受け入れて定命化しちゃえばいいのに。棄てる為に竜牙兵を出し続けるのって疲れないのかな？」
　と、苦笑するのに対し、燦射院・亞狼（日輪の魔戒機士・e02184）と紫藤・大輔（機甲武術師範代・e03653）も。
「んぁ？　まぁ、確かにな。ま、所詮牙が変化しただけのモノだし、ドラゴンにとっても使い捨て出来るゴミ位にしか思ってねえんじゃね？」
「確かにな。ま、差し歯の如く、牙一つ二つ抜いても、次から次へと生えてくる、とかかもしれんしなぁ」
「んだな」
　ニッと笑う亞狼、それに更にフレアが。
『ぐーぎゃー！！』
　と更に啼く……それに碧人は。
「ん、フレアもこんな骨の様な子分を欲しいんですか？」
『ギャウッ！！』
「まぁ……考えて見ますよ」
　フレア頭をなで回し、親愛を示す碧人。
　……と、そんな二人の仲良い光景に、くすりと微笑むエリザベス・ナイツ（駆け出しケルベロス・e45135）。
「本当、二人共仲が良いわね！　それにしても、無抵抗な人を襲うなんて許せないわ！　一刻も早く駆けつけて皆を助けなくっちゃ！」
　力強い言葉で拳を振り上げるエリザベスに、雪城・バニラ（氷絶華・e33425）と中村・憐（生きてるだけで丸儲け・e42329）も。
「そろそろ正月気分も抜けてきたことだし、本格的にケルベロスの仕事も頑張らなくっちゃね」
「そうっす！　犠牲者を出さないよう、竜牙兵の行動を粉砕するっすよ！！」
　と互いに元気よく、力強い言葉を上げる。そしてフェリシアも。
「そうね、まぁ事前に何も出来ないから、事が始まるまではもどかしいと思うけどさ、ま、そこはフェリシアさん達を信じてよ。必ず成功させてみせるからね」
　サムズアップするフェリシア、そして周りの仲間達も頷くのであった。

●斬れ痕
　そして、ケルベロス達が塩尻駅前に到着すると……ほぼ同時に竜牙兵の牙も空から降下してくる。
　次々と塩尻駅前に落ちてきた牙は、駅前ロータリーに爪痕を遺していく。
　そんな牙の落下に周りの一般人らは次々と悲鳴を上げて、逃げようとする……が、恐怖に其の場に座り込んでしまう人が多数。
　……そんな一般人へ、元気よく。
「俺達が来たからには大丈夫っすよ！　だからおまわりさん達の指示に従って避難して下さいっす！！」
「そうですよ、構内に入っても走らないようにー！　ああ、駆け込み乗車もダメですよー！」
　憐、碧人の声が響く一方、駅員の方に掛けていくは大輔とバニラ。
「すまん、緊急事態が発生した。一般人の方々が避難してくるから、避難誘導を頼みたい！」
「取りあえず、駅構内へ匿う様にして下さい。そして、私達が迎えに来るまで、決して外に出ない様にして下さい」
　と、立ちすくんでいた駅員や、警察官に逃げて来る一般人の避難誘導の指示を飛ばす。
　……そして、ある程度人が駅構内に逃げていく中、残るケルベロス達が、竜牙兵の真っ正面に対峙。
『アァン、ナンダァ！？　オマエタチハ！』
　と睨み付けた竜牙兵に、すぐさま。
「よぅケルベロスが来たぜ……んじゃま、Assemble！ ＆Go！」
　と、即座に亞狼がアルティメットモードを発動し、竜牙兵の注目を惹きつける。
　そして更に恵も。
「そうだよ！　一般人を苛めて楽しむだなんて、性根から腐ってるよ！　一般人を傷付けるって言うんなら、ボク達を倒すんだよ！」
　と強い口調で言い放ち、構えると……それに合せてバニラが殺界形成を発動し、殺気に周囲を包む。
　……その殺気に、当然一般人らも次々と其の場から逃げて行く。
　殆どの一般人達が、其の場から逃げ去っていく……追いかけようとする竜牙兵も居るが、その間に割り込んで。
「させないよー！」
　とフェリシアは足蹴で迎撃。
『グゥ……！？』
　と、一端怯み戻る竜牙兵……そして居並ぶ竜牙兵に。
「オマエらは逃がさんっす！　カルシウムは肥料に使えるそうだから、ここで砕いて田畑にばらまいてやるっすよ！」
「ああ……さて、ぶっとばすか！」
　と大輔が威勢良く、竜牙兵の内の一体の簒奪者の鎌を持つ竜牙兵に接近し、旋刃脚で蹴り飛ばす。
　不意に撃ち抜かれた蹴撃に、他の3体の竜牙兵は驚愕の表情。
『ナニィ……ナンダコイツラワァ！！』
『ワカラネェ……デモ、コロス！！　コロスゾォ！！』
『ワカッタ！　ブッコロス！！』
　カタカタと骨を鳴らしながら叫ぶ竜牙兵。
　ゾディアックソードを掲げた竜牙兵が果敢にケルベロス達に仕掛けてくるが、その攻撃をニヤリと笑みを浮かべながら亞狼が。
「ぁ？　オラ文句あんのか？」
　と、苛つきの言葉を上げて『Burning BlackSun 衝』を睨むと、更に憐も、その頭上から。
「これでも喰らうッス！！」
　とグラビティシェイキングを頭から叩きつける……脳はないから脳しんとうはしない様だが、衝撃に骨も幾つか砕け散る。
　そして、更に碧人が。
「まずはその足の骨一本砕きますよ」
　と、スターゲイザーを嗾けると、連携したフレアがボクスブレス。
　更にバニラが。
「貴方の防具ごと、破壊してあげるわ」
　と破鎧衝で防御を削り、それに加えてエリザベスがサイコフォースで武器封じを追加付与。
　……と、そこまでの連携攻撃を受けては、簒奪者の鎌を持った竜牙兵は最早ボロボロ。
　よろよろしている状態の竜牙兵……だが、決して可哀想などと思えない。
『オマエラ、タルンデンジャネーヨ！』
　と一体の竜牙兵が叫び発破を掛け、それに従い猛攻を仕掛けようとする竜牙兵。
　……しかし攻撃をカバーリングで絶えた憐が、即座に恵がサキュバスミストによる回復。
　又、フェリシアは。
「フェリシアさんはサポートに廻るよ。相手さんがガンガン来るみたいだし、派手な痛みは何とか緩和してみやう」
　と言いつつ仲間達へマインドシールドで盾アップで強化。
　……更に硬くなったケルベロスに、竜牙兵は苦々しく睨む。
　そして、次の刻。
　竜牙兵は、それぞれ己が得意な武器にて次々と攻撃してくるが……憐とフレアが手分けして攻撃から仲間をカバー。
　受けたダメージをすぐ恵がマインドシールドか、『余剰魔術回路部分開放・浄化』による回復を飛ばしてダメージを遺さない。
　そして回復をしない仲間達で、全員が一体の相手に向けて総攻撃。
「おぅコラ、コッチだ！」
　と手をクイクイッとして挑発し、近づいてきた所に渾身のデストロイブレイドを叩き込む亞狼に更に、大輔が隙を見つけて。
「こいつで最後だ。喰らいやがれぇ！カイザァァ…バスタァァァ！！」
　と『終式・カイザー・バスター』を放ち……その骨をバラバラに撃ち砕き、一匹倒す。
「次は、こいつっすよ！」
　と、憐がゾディアックソード使いの竜牙兵に攻撃を加えつつ、ターゲットを仲間達に指示。
　その指示に従い、バニラは。
「この神速の突きを、見切れるかしら？」
　とバニラの稲妻突きを撃ち抜くと、碧人は。
「……幻想に沈めッ！」
　と『湖水精の加護』を放ち、強烈な一閃で連携。
　そしてフレアのボクスブレスに、憐がレガリアスサイクロン、亞狼のデストロイブレイドが立て続けに竜牙兵を傷付けて行く。
　更にエリザベスがサイコフォースを穿ち、削る。
　次の刻、亞狼、フレア、憐がそれぞれ攻撃した所で。
『グウウオオオオ……！！』
　苦悶の咆哮を上げた竜牙兵に、大輔が。
「煩いぜ！」
　とぴしゃりと言い放ち、ブーストナックル。
　それは頭部を完全に撃ち砕き、破壊。
　……残るはバトルオーラの竜牙兵二体。
　しかし、早々に倒れた仲間の無惨な姿に、恐怖。
「オラどうした？　刃向かってこいよ！」
　と亞狼の挑発にも、竜牙兵は恐怖。
「来ねえなら、こっちから行くぜ！！」
　と、こっちから距離を詰めて、さっさと竜牙兵の身体に鉄拳制裁を叩き込む。
　そして……数分の内に、竜牙兵は一体、また一体……コナゴナに崩れ墜ちて行くのであった。

●穏やかなる
　そして、どうにか竜牙兵を倒したケルベロス。
　碧人が周囲に張り詰めさせていた、殺界形成を解除し……平穏な空気が其の場に戻る。
「ふぅ……終わりましたね。フレアもお疲れ様でした」
『ギャウー』
　碧人の言葉に頷きながら、地上に降りるフレア。
　そして、周りの雪を両手で持てる分まで持って、地面に空いてしまった穴を雪で埋め始める。
　フレアのその可愛い動きに、くすりと笑いながら碧人も手伝う。
　勿論、竜牙兵との戦闘結果……周りの建物に地面のアスファルト等がボコボコになってしまっている。
　……それを修復するのも、一つの仕事な訳なのだが。
「んじゃ、後ぁ任せたぜ」
　と亞狼はひらひらと手を振って。
「ここは長野……長野って雪やお蕎麦さんだが……確かこの辺は山賊もあったな。どれどれ、それで一杯やってくとするかねー」
　ふらふらとその場を去って行く。
　……そして、亞狼が帰って行った後に残るケルベロス達は、せっせと周囲のヒールを開始。
「後始末の建物ヒールって、結構神経使うんだよね……別料金で商売になったりしないかしら。ま、見返りを求めない方がかっこいいかね？」
　とフェリシアの言葉に、エリザベスや恵が。
「そうね。ああ、負傷した一般人とかは居ないかしら？　私、医学知識はばっちりなのよ！」
「それじゃ、怪我人さんはエリザベスに任せるねー。心のケアはボクに任せてっ」
　と、エリザベスと恵の二人は周りの怪我をしたりした一般人らの傷痕回復や心のケアへ。
　突然現れた竜牙兵への恐怖を口にする一般人に、恵がラブフェロモンを使って。
「あいつらはやっつけたし、何度来てもボクらケルベロスをやっつけるから安心してねっ！」
　と微笑む。
　そして……一通りの建物の回復と、一般人の手当が終わった後。
「さて、と……無事終わったッスね」
　と憐の言葉に、碧人も。
「たまにはヘリオン以外の、電車で帰りますかねぇ」
『ギャウ？』
「のんびり電車で帰るのも面白いと思いませんか？」
『ギャウウ！』
　そしてフレアをしっかりと抱き上げて、そしてケルベロス達はそれぞれの帰路へと着くのであった。

作者：幾夜緋琉	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2018年1月24日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 7
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