
●某教会
「ねぇ、皆さん、オネェって最強だと思わない? やっぱり、困った時には、オネェよ、オネェ! ある意味、一家にひとり、オネェよね。だって、そうでしょ。困った時のオネェ頼み! テレビだって、視聴率が下がったら、オネェを投入するし、何と言うか、オトコの気持ちも、オンナの気持ちも分かる究極な存在だと思わない? だからこそ、アタシは言いたいの。オネェこそ至高だって!」
羽毛の生えた異形の姿のビルシャナが、10名程度の信者を前に、自分の教義を力説した。
ビルシャナ大菩薩の影響なのか、まわりにいた信者達は、ビルシャナの異形をまったく気にしていない。
それどころか、信者達はオネェムードむんむんで、『そうよ、そうよ』と連呼した。
●都内某所
「安海・藤子(道化と嗤う・e36211)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです。悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事が今回の目的です。このビルシャナ化した人間が、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やそうとしている所に乗り込む事になります。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまいます。ここで、ビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「ビルシャナは破壊の光を放ったり、孔雀の形の炎を放ったりして攻撃してくる以外にも、鐘の音を鳴り響かせ、敵のトラウマを具現化させたりするようです。信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。ただし、信者達はイイオトコに弱いので、誘惑すれば……何とかなるかも知れません」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
「また、信者達はビルシャナの影響を受けているため、理屈だけでは説得することは出来ないでしょう。重要なのは、インパクトになるので、そのための演出を考えてみるのが良いかもしれない。また、ビルシャナとなってしまった人間は救うことは出来ませんが、これ以上被害が大きくならないように、撃破してください。それでは、よろしくお願いします」
そして、セリカはケルベロス達に対して、深々と頭を下げるのであった。
参加者 | |
---|---|
![]() サクラ・チェリーフィールド(四季天の春・e04412) |
![]() 立華・架恋(ネバードリーム・e20959) |
![]() ウェンディ・ジェローム(輝盾の策者・e24549) |
![]() ダンサー・ニコラウス(クラップミー・e32678) |
![]() 安海・藤子(道化と嗤う・e36211) |
![]() ユリス・ミルククォーツ(蛍狩りの魄・e37164) |
![]() クロエ・テニア(彩の錬象術師・e44238) |
![]() 燎・月夜(雪花・e45269) |
●教会前
「いやぁ、まさか本当にこんなビルシャナがいるとはねぇ……。意外や意外。ま、どうにかなるでしょ」
安海・藤子(道化と嗤う・e36211)は、仲間達と共にビルシャナが拠点にしている教会の前にやって来た。
ビルシャナはオネェ最強、オネェこそ至高であると訴え、信者達と一緒にオネェな世界を堪能しているようである。
「オネェ……会った事はないけど、男女の気持ちが分かる人は、きっと素敵な人ね。でも…このビルシャナ達は間違っているわ」
立華・架恋(ネバードリーム・e20959)が、ビルシャナの教義に難色を示す。
おそらく、ビルシャナ達は自分達にとって、都合よくオネェを解釈しているのだろう。
そのため、オネェに対して偏った考え方を持ってしまったのかも知れない。
「からだの容に嵌まらない心。隠すことはない、でもいばることでもない。テレビでたくさんみる大きな人は好きかも」
ダンサー・ニコラウス(クラップミー・e32678)が、オネェに対するイメージを口にした。
その間もシャーマンズゴーストのストーカーがカメラを構え、ダンサーの後ろに立っていた。
「オネエ、そういう文化もあるのですか。ぼくもテレビで見たことがあります。オネエは最強でよいものかもしれませんが、オネエが周りにおねえの生き方を説いたりするのはおかしいですし、オネエが本当に最強なら他人と争ったりしない筈です」
ユリス・ミルククォーツ(蛍狩りの魄・e37164)が、自分なりの考えを述べる。
だが、ビルシャナ達は教義を守るためであれば、ありとあらゆる手段を使って、反対派を排除しているようだ。
「オネエの方々、強力な個性と気配りがすごいなとは思いますが……。それはそれぞれの努力の結果ですもんね。それを単なる属性にしか見ないのはひどいです。オネエの人って包容力ありますよね……では、他を排斥する、このビルシャナは本当に真のオネエでしょうか?」
サクラ・チェリーフィールド(四季天の春・e04412)が、不思議そうに首を傾げる。
ビルシャナ達はオネェと言うよりも、その紛い物……もしくはそれ以下の何かに思えた。
「オネェ最強……まあ、わからなくはない。むしろオネェを大切にする心、賛同してもいいケド……ビルシャナは対象外……」
クロエ・テニア(彩の錬象術師・e44238)が、深い溜息を漏らす。
ビルシャナは自分達にとって都合よくオネェ像を作り上げているため、一番タチが悪いと考えるべきだろう。
「男と女両方の気持ちが分かる……ですか。私は別にどっちだっていいですが、放っておくのも酷なのでやりますかね……」
そんな中、燎・月夜(雪花・e45269)が、気持ちをサクと切り替えた。
何やら相手にするのも馬鹿らしいが、このまま放っておいても、事態は悪化するばかり。
それならば、自分達の手で、悪の連鎖を断つべきである。
「とにかく、面倒な事になる前に倒してしまいましょうか」
そう言ってウェンディ・ジェローム(輝盾の策者・e24549)が仲間達を連れて、教会の中に入っていった。
●教会内
「ねぇ、皆さん。オネェって最強だと思わない? だって、そうでしょ。オネェは物知り。オネェは気配り上手。オネェは料理だって上手だし、あんな事や、こんな事だって上手いのよ。だからこそ思うの、オネェが最強だって!」
教会の中にはビルシャナがおり、信者達を前にして、ナヨナヨと身体をクネらせていた。
まわりにいた信者達も、同じようにクネクネ。
みんなオシャレに気を使っており、オトコとは思えないほど美に執着しているようだった。
「……いいこと? 貴方達は、致命的に間違っているわ! 貴方達がいうオネェの人は、きっと素敵な人ね。でも……素敵な人は、きっと自分が最高だなんて思わないし、それを広めようなんて思わない! 男も、女も、あるがままに包み込んでいく……。信者を増やそうとしたり、にわかにオネェになろうとする人達を見て、どう思うかしら? きっと受け入れてくれるわ。でも……きっと、悲しむわ」
架恋が悲しげな表情を浮かべ、ビルシャナ達に語り掛けていく。
「いえ、むしろ喜んでくれるわ! アタシ達のような立派なオネェがいる事で! きっと……いえ、間違いなく、そうよ!」
ビルシャナがナルシストな表情を浮かべ、躊躇う事なく答えを返す。
まわりにいた信者達も、『そうよ、そうよ!』と連呼した。
「まあ、オネェが頼りになるのはわかるよ。オトコもオンナもわかるってスゴイし、一家にひとりオネェ計画も賛同してもイイくらい。でも待って。至高というならソコは譲れない存在がいる。そう、ソレは……お婆ちゃん! お婆ちゃんの優しさ、お婆ちゃんの知恵袋。亀の甲より年の功、オネェですら崇めることがあるかもしれない! そんなお婆ちゃんを差し置いて至高とか言っちゃうワケ? 思い出して、小さい頃お婆ちゃんに遊んでもらった、あの温かみを!!」
クロエが信じられない様子で、ビルシャナ達に訴えた。
「ハァ、お婆ちゃん? ダメね、お婆ちゃん達じゃ、すぐに疲れちゃうもの。だから、あっという間に電池切れ。気配りどころじゃなくなっちゃう。そういった意味でも、おネェ最強ね! ほら、テレビにも、おネェがよく出ているし!」
ビルシャナが『これだから素人は……』と言わんばかりの表情を浮かべ、やれやれと首を振る。
まわりにいた信者達も、『あら、嫌だ』と言わんばかりに、嫌味顔。
「テレビにはオネェの方がよく出ていると言いますが、話が上手いその人自身の力であって、必ずしもオネェだからというだけで持て囃されてる訳じゃないと思いますー。それに、男性の気持ちも女性の気持ちも分かるといっても、男性が好きなオネェの方だったら、女性寄りな考え方になってしまうのではないでしょうかー……?」
ウェンディが何やら察した様子で、ビルシャナ達に視線を送る。
実際にビルシャナ達は、女性寄り。
そのせいで、男性の要素が、少なめである。
「な、何よ! それじゃ、オネェがダメだって、言いたいの!?」
ビルシャナが逆切れ気味に、ぷんすかと怒り出す。
まわりにいた信者達も、同じようにぷんすか。
まるで瞬間湯沸かし器のように、御立腹。
「まあ、オネェってのはいいのよ。カッコいいし、憧れるし。でもね、それをいつでも容認してくれるとは限らないわ。半端者って後ろ指さされるかもしれないって分かる? それすらも笑って受け入れられる? 誰よりも気高く、強く、笑っていられるくらいじゃないと……。それでこそオネェ、じゃないの? 男の気持ちも女の気持ちもわかるって、そういうことじゃないかしら? まあ、半端者だとしたら、私もそうなんだけどね。後ろ指さされようが、侮辱されようが、どんな時でも笑っていられる強さを証明して見せなさい」
藤子がビルシャナ達に、ビシィッと言い放つ。
「アーハッハッハッハッ! 何かと思えばそんな事。だったら、問題ないわ。アタシ達は気高く、強く、美しいモノ。だから笑えるの。あまりにも哀れで小さく経験も乏しい存在であるアナタ達を見てね!」
ビルシャナが妙に上から目線で、小馬鹿にした様子でフンと笑う。
「オネエの方々には人生経験豊富でよきアドバイザーのような方が多いと思いますが……それはその人が酸いも甘いもかみ分けてきた人生経験が豊富だからではないでしょうか? その豊富な知識から話されるからこそ的確なアドバイスができるのであって、オネエであることが条件ではないです」
サクラが残念なナマモノを見るような視線を、ビルシャナ達に送る。
「いえ、違うわ! オネェだからこそ、経験豊富なの! だって、アタシ達がそうだから!」
ビルシャナ達が妙に堂々とした様子で、一斉に胸を張る。
「そもそも、オネエハ自分からなろうと思って鳴れるものではありません。オネエにはそうなるまでに苦労があるです。テレビで見ましたもの。そういった長い人生経験がオネエを最強にするです。輝くオネエはその背景に運命に翻弄された人生があるです。なろうと憧れてなるものではないのです。むしろオネエなら、茨の道を歩こうとする者を止めるべきです」
それでも、ユリスが怯む事なく、ビルシャナ達に言い放つ。
「な、何よ、それ! まるでアタシ達が中途半端なオネェみたいじゃない。……まったく、失礼しちゃうわ!」
ビルシャナが不機嫌な表情を浮かべ、ぷんすかと怒る。
まわりにいた信者達も、『失礼しちゃうわ、本当に……』とばかりにイライラムード。
「まあ、あなた達は確かに男で女。それでも。ね、あなた達は男と女どちらが好き? 偏るなら、それはちょうど半分ではない。男が好きな女の心。女が好きな男の心。どちらも理解できないで究極は語れないかも。みんながオネーを好きなのは、テレビに出ている人達が、魅力的な人達だから。ただそうあるだけで好かれるなんてできないかも。中身を磨くのは男も、女も、あなた達も同じ、ね」
ダンサーもまったく怯む事なく、自分の考えを述べる。
「それじゃ、アタシ達に魅力がないみたいじゃない。あのね、アタシ達は男であり、女でもあるの。どちらの気持ちも分かるから、オネェな訳!」
ビルシャナが鶏冠を激しく震わせながら、自分の胸をドンと叩く。
あまりにも怒り過ぎたせいで、男の部分が出ているのか、殺気すら感じるほどである。
「……仕方ありませんね。ここは私が一肌脱ぎましょうか。……どうです? あなた達に本物の女の子のセクシーさが出せますかね? 男として私が魅力的に見えるのではないですか? それでいいじゃないですか。気持ちに正直になりましょうよ」
そう言って月夜がかなり不本意な様子で和服を脱ぎ捨て、露出度の高いセクシーな勝負着姿で、ビルシャナ達の前に立つのであった。
●ビルシャナ
「フフフフフ……アーッハッハッハッ! ダメね、その程度じゃ! だったら、アタシ達の方が魅力的……って、何ッ! アナタ達、反応しているのよ!」
ビルシャナが驚いた様子で、信者達を二度見した。
「いや、ワタシのオスの部分が、ちょっと……」
ガタイのいいオネェ信者が、内股になって頬を染める。
まわりにいた信者達も、同じような姿で、身体をクネクネ。
おそらく、洗脳によってオネェ化しているため、このような反応が出てしまったのだろう。
「それじゃ、しばらく眠っていてくださいね」
すぐさま、ユリスが間合いを詰め、手加減攻撃で信者を倒す。
信者達は妙な姿勢のまま、前のめりに倒れ込んで気絶した。
「この人達は、ふんじばる。ストーカーもワイルドファイア禁止、ね」
ダンサーが信者達の動きを封じ込め、ストーカーに対して警告をした。
そのため、ストーカーがカメラを構えたまま、力強くコクコクと頷いた。
「……って、ちょっと! もう少しアナタ達も頑張りなさい! 頑張らないと死ぬわよ、と言うか、みんな気絶しているし! そんなんじゃ、立派なオネェになれりないわよ!」
ビルシャナが信じられない様子で、気絶した信者達を叱りつけた。
しかし、信者達の意識は戻らず、夢の中。
「ねえ、鳥はオネェになれないと思うんだけど、どう思う? だってほら、オネェって性別の垣根は超越してても人はやめてないジャン?」
そんな中、クロエがビルシャナに対して、ザクッと真実を突きつけた。
「えっ? あ、いや、そんな事はないわ! だって、アタシがオネェだもの! アタシがその証拠よ! 失礼しちゃうわ!」
ビルシャナが殺気立った様子で、ケルベロス達を睨む。
しかも、色々な意味でヤル気満々。
隙あらば攻撃を仕掛けてきそうな勢いである。
「結局、逆ギレ? 本当に芸がないわね」
それを目の当たりにした藤子が、呆れた様子で溜息をつく。
「だったら、何っ!? どうせアタシを殺す気なんでしょ! だったら、殺られる前に……殺るわ!」
ビルシャナがオスの部分全開で、逆切れ気味に孔雀の形をした炎を飛ばす。
「……それが答えですか」
サクラがボクスドラゴンのエクレールと連携を取りつつ、凛と緊張感を帯びた空気とバチバチと火花を散らす紫電を拡散させる。
紫の稲妻は仲間の武器に留まり、バチバチと音を立てた。
「白羽の矢は立てましたー……あとは、存分に輝いてくださいねー」
それに合わせて、ウェンディが作り上げる物語の主役に月夜を据えた。
「……これが見切れますかね?」
次の瞬間、月夜が呪いを帯びた刀で、ビルシャナを斬りつけた。
「ん……あ……」
ビルシャナは斬りつけられた事すら気づかぬまま、大量の血を撒き散らして息絶えた。
「オネェ……。いつか、本物のオネェの人に会える日は来るのかしら……」
そんな中、架恋が複雑な気持ちになりつつ、何処か遠くを見つめるのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2018年1月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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