聖夜略奪~機械天使の目論見は

作者:なちゅい

●折角の聖夜前夜に……
 神奈川県横浜市。
 今日は12月24日。今年のクリスマスイヴは日曜日ということもあって、楽しい一時を過ごす者も多い。中には、異性との素敵な時間を待ちわびる若者の姿も……。
「どうしようかな……」
 その女性、清水・瑠璃も恋人との待ち合わせなのだろうか。彼女はうきうきしながら、自宅マンションの自室にて、鏡の前で衣装を選んでいる。
「ナオくん、こっちのほうが好きそうだけど」
 彼はガーリー風の方が好みだったかなと瑠璃は考える。ただ、折角のイヴなのだから、大人っぽくアピールして、いつもとは違う自分を見せてみたい。
 どちらを着ていけばいいのか、悩ましいところ。とはいえ、外を見れば日が暮れてきている。そろそろ出ないと待ち合わせの時間に間に合わないが、彼女の身支度はなかなか進まない。
 その時、突如として室内に魔空回廊が開く。
 現われたのは、4体のデウスエクス。そのダモクレス達は、機械天使とも呼べる姿をしていた。
 機兵の1人が瑠璃を強襲し、瑠璃の身体を自身の体内へと閉じ込める。
「ワレラのシメイは、クリスマスがオワルまで、このバを守護スル事ナリ」
「さすれば、ゴッドサンタのハイボクの証、ケルベロスのグラディウスを封印できるだろう」
「この女から、クリスマスの力を絞りダシ、絶望にカエルのだ」
 口々に呟く機兵達。女性を捕らえた輝きの卵は、小さく微笑んで見せたのだった。

 聖夜前夜のダモクレス襲撃と聞いたケルベロス達は、ヘリポートへと急行する。
「皆、来てくれてありがとう」
 この場の説明を担当するリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)がケルベロス達へと挨拶を交わす。
「早速だけれど、昨年のゴッドサンタの1件は覚えているかな」
 知らない者、覚えていない者はもちろんこと、知っている者も備忘の為にも説明を聞いて欲しいと、リーゼリットが語り始める。
 クリスマスに発生したゴッドサンタ事件を解決した事で、ケルベロスはグラディウスを得た。
「この小剣を使ってミッション破壊作戦をいくつも決行して、この1年の間だけでも多くのミッション地域を解放する事が出来た」
 この状況は、ケルベロスにとっては喜ばしいことだが、デウスエクスにとっては許しがたい事なのだろう。
「地球に潜伏していたダモクレス、潜伏略奪部隊『輝ける誓約』の軍勢が、クリスマスの力を利用して、ケルベロスが持つグラディウスを封じようと作戦を仕掛けてきたんだ」
 ダモクレスは、クリスマスデートを楽しみにする女性の前に魔空回廊を使って出現すると、儀式用の特別なダモクレス『輝きの卵』に女性を閉じ込め、グラディウスを封じ込める儀式を開始するのだ。
「『輝きの卵』自体には、戦闘力が無いようだね」
 しかし、その周囲には、3体の護衛ダモクレスが護衛につき、ケルベロスの襲撃に備えているようだ。
 護衛ダモクレスさえ倒す事ができれば、女性を救出して『輝きの卵』を撃破する事が可能なので、まずは、護衛を撃破する事が重要になるだろう。
 現れる輝ける誓約の護衛は、輝きの腕、輝きの鞭、それに輝きの盾の3体だ。
「どうやら、ポジションはそれぞれの種類ごとに決まっているようだね」
 輝きの腕はキャスターとして、両腕にバトルガントレットを装着している。フットワークが軽く、強い一撃を叩き込んでくるので注意したい。
 他は、輝きの鞭がジャマーとして立ち振る舞い、ケルベロスチェインと同様の攻撃を行う。輝きの盾は前線で仲間達を庇うよう立ちはだかり、ゾディアックソードを使った攻撃も仕掛けてくるようだ。
「現場は、神奈川県横浜市の市街地のとあるマンションだね」
 女性を捕らえた輝ける誓約達はマンション屋上に移動して、グラディウスを封じ込める儀式を開始するようだ。それが完了する前に、なんとしてもダモクレス達を撃破したい。
 リーゼリットは、もう1つ大切なことを話す。
「儀式が修了してしまうと、輝きの卵は自爆してしまうようだね」
 その際に生じるエネルギーは、グラディウスの封印に使われてしまう。もちろん、輝きの卵の中に捕らわれた女性も命を落とすこととなるので、注意したい。
「あと……、できれば、女性のデートのお膳立てをして上げて欲しいな」
 それほど、待ち合わせの時間まで猶予はないはずなので、彼女のお洒落の準備を手伝ってあげるといいかもしれない。
「皆は恋人達の味方だとボクは信じているよ」
 ――なぜなら、皆はケルベロスなのだから。
 リーゼリットは最後にそう微笑んで見せたのだった。


参加者
テンペスタ・シェイクスピア(究極レプリカントキック・e00991)
一式・要(狂咬突破・e01362)
ジューン・プラチナム(エーデルワイス・e01458)
クララ・リンドヴァル(鉄錆魔女・e18856)
エストレイア・ティアクライス(サンタメイドホーリーナイト・e24843)
鉄砲小路・万里矢(てっぽうはつかえません・e32099)
御忌・禊(憂月・e33872)
津雲・しらべ(さっぱりしました・e35874)

■リプレイ

●現われし機械天使達
 神奈川県横浜市に降り立ったケルベロス達は、現地のマンションへと急行する。
「聖夜に天使……ですか」
「クリスマス……予想はしていたけど、やっぱり出てきたか」
 何気ないクララ・リンドヴァル(鉄錆魔女・e18856)の一言に、テンペスタ・シェイクスピア(究極レプリカントキック・e00991)は片目を瞑ってアイズフォンを起動させながら考える。クリスマスは、ダモクレスホイホイなのだろうか、と。
(「……レジーナの潜伏部隊。一年経ってやっとグラディウス対策ってのもいかにも遅いけど……」)
 クリスマスと聞いて、一式・要(狂咬突破・e01362)は物思いに耽る。
 ドレッドノート戦後、彼はジュモーやレプリカント装置の足取りを追っていたのだが……。
 寒さを感じ、要は思考を止める。
「こんな寒い日に長く、外に居たくないんでね。風邪ひく前にさっさと終わらせましょうか」
(「……クリスマスの力……うぅん……? ……ハロウィンにはハロウィンの魔力がある……との事でしたし……」)
 しかし、その要にとって旅団の友人に当たる、御忌・禊(憂月・e33872)は今なお考えごとの最中で。
「……季節のイベントを楽しむ人々の心がグラビティ・チェインに影響する……のでしょうか……?」
「クリスマスの力……ですか。それが存在するというだけで、戦う理由も十分立つというものです」
 クララが主観を語ると、禊もこれからせねばならぬことを思い返したようで。
「……いえ、考察は後にしましょう……まずは被害者を助けることが先……ですね……」
「クリスマスとか、ボクにはあんま関係ないけどさ。そうじゃない連中狙ってなんかやらかすなら止めないとだよなー」
 今回の1件についてあれこれ考える仲間達に対し、鉄砲小路・万里矢(てっぽうはつかえません・e32099)は端的に仲間達へと促す。
「人類の未来を切り拓く武器であるグラディウスの封印は、阻止しなくてはいけません。何よりも、瑠璃さんが聖夜を迎えられるようにしませんと」
 それに、クララは頷く。被害者女性が素敵な聖夜を過ごすことができるなら。
「滑り込みでも良いのです。ええ、本当に」
 彼女はそう呟き、仲間と共に目的のマンションへと入っていく。

 マンションの階段を駆け上がった一行は、屋上への扉を勢いよく開いた。
「サンタメイドホーリーナイトなティアクライスのエストレイア、参上です!」
 サンタカラーのメイド服姿をしたエストレイア・ティアクライス(サンタメイドホーリーナイト・e24843)が、屋上に飛び出しつつ叫ぶ。
 長い彼女の名前についてはさておき。屋上では儀式を行うべく、4体の機械天使……潜伏略奪部隊『輝ける誓約』が動いていた。
「……ケルベロス、か」
 その内の1人、卵になったような下腹部に女性を捕らえたのが『輝きの卵』。そして、それを腕、鞭、盾の3種が護衛している。
「……機械天使……あなた方に如何なる理由があれど、無辜の方に被害が出るならば話は別です……」
 禊はすぐさま、「神舞・御霊会」を手に身構える。
「……申し訳ありませんが……どうぞお引き取りを……其の方を返していただきます……」
「クリスマスってみんなが楽しみにしてる大事な日だし、誰にも邪魔はさせないよ」
 ――大切な誰かを想うのは……とっても大事なこと。
 ショートカットの津雲・しらべ(さっぱりしました・e35874)もまた、この状況を放置できずにいた。
「それに、グラディウスは皆の平和を取り戻すためにも大事な武器だもの。封じるなんてさせないんだから!」
「人々に幸せを贈る。それがメイド騎士の、サンタの、ケルベロスの役目です!」
 しらべに続き、エストレイアがテンション高く相手に呼びかける。
 ダモクレス達も邪魔されじと身構える。後方では、卵が儀式を進めていた。
「儀式終了までどれぐらい猶予があるか分からんけど、早いこと撃破せんとなー」
 マイペースな万里矢だが、この場は皆と共に敵の殲滅に集中する。
 ドローンを飛ばして様子見を考えたテンペスタだが、用途が小型治療無人機ということで監視、偵察には向かず、自身も戦闘に集中することにしていたようだ。
「シメイを。このバの守護を」
 敵が応戦の構えを見せたところで、ジューン・プラチナム(エーデルワイス・e01458)はドラゴニックハンマーを握りながら駆け出す。
「鎧装天使エーデルワイス、いっきまーす!」
「不変のリンドヴァル、参ります……」
 クララも名乗りを上げ、『輝ける誓約』の撃破に乗り出すのだった。

●vs輝ける誓約の軍勢
 銀色の体躯を輝かせた機械天使達。
 最後方では輝きの卵が詠唱を行い、儀式を淡々と進めている。
 その前方の護衛を行う3体のダモクレスは、儀式の完了までケルベロスの足止めに専念する心積もりらしい。
「時間に猶予がないかもしれんから、なるだけ急ぐぞー」
 跳躍した万里矢は輝きの盾を見定め、流星の蹴りを繰り出していく。
 輝きの盾は前線で身構え、時間稼ぎをしている素振りをしている。
 だが、ケルベロスはそんな敵を叩かねばならない。卵に捕らわれた女性の救出が絶対だからだ。
 前方へと跳躍したテンペスタは無駄に洗練されたアクションで、この場に飛来してきた専用支援機にライドする。
 そして、周囲に溢れたエネルギーの波を、彼女はサーフィンのように乗りこなして。
「すべてを飲み込めっ、アヴァランチスライダー!!」
 そのまま、テンペスタは突撃し、命中した盾に浴びせかかる。飛び散る白い結晶はまるで雪崩のようになって、盾に襲い掛かった。
 だが、盾は多少氷が張ったところで砕けはしない。その後ろより、輝きの腕と輝きの鞭が飛び出し、ケルベロスの排除を図る。
 振るわれた拳と鞭を、水の闘気を纏う要が抑えながら、仲間の狙う盾に向かって降魔の拳で殴りかかる。
 迅速に各個撃破。比較的シンプルな作戦ではあるが、これが最良とメンバーは判断していた。
 敵の猛攻を防ぐ仲間を目にしたエストレイアは、光るマインドリングから浮遊する盾を展開して要の体力回復と支援に当たっていく。
「回復は任せてください。皆様は攻撃を!」
 エストレイアの言葉に応じ、ジューンもダモクレス小隊の盾を狙う。
 命中率が微妙だと判断した彼女はまず、敵の足止めをと砲撃形態としたドラゴニックハンマーより竜砲弾を発する。
 やや動きを止めた盾へ、禊が全方位に「神舞・御霊会」を伸ばす。その傷口から神殺しの毒で汚染された盾は、表情を陰らせていたようだ。
 そこで、輝きの鞭が地面に鞭を使って魔法陣を描く。守りを固め、盾が長く持つようにとの判断だろう。
 だが、ケルベロスにも、守るべきものがある。
 卵に捕らわれた女性の命。その為には、儀式を止めねばならない。
「絶対に、守ります」
 クララは腕が叩き込んでくるバトルガントレットから仲間を守り、後方の狙撃役となるメンバーの支援の為、足元の魔法陣より多数の冥界ガラスを呼び出す。
「遊民生活も結構ですけど、契約分のお仕事はして下さいね」
 高所に飛び立つカラス達は、狙撃役として立ち回るメンバーの目として機能する。
「早く片付けなきゃいけないしね」
 儀式の完了を阻止する為。そして、捕らわれの女性が素敵な聖夜を過ごす為。跳躍したしらべは強く、盾の身体を蹴りつけていく。
 どっしりと構えた輝きの盾は崩れず、星辰の刻まれた剣を煌かせて足元に描いた守護星座を光り輝かせる。
 それによって輝きの盾は自身を覆い、ケルベロスの攻撃に身構えるのだった。

 時間稼ぎをしようとする「輝ける誓約」達。
 その間、卵による詠唱が続く。怪しげなオーラが漂うところを見ると、さほど猶予は残されていないらしい。
 だが、ケルベロス達は未だに1体も倒すことができない。守りに徹する盾があまりにも鉄壁すぎるのだ。
 その上で、遊撃に動く腕と鞭がフットワークを軽くしてケルベロスに襲い来る。
 前線のクララは鞭で縛りつけられ、拳での連撃を食らう。
「……」
 落としかけた帽子を手に取った彼女は無言で構え直し、自らを中心に薬液の雨を降らせていた。
 前線の疲弊を察し、エストレイアは第二星厄剣アスティリオで足元に守護星座を描く。幾分か体力を取り戻したメンバー達はなおも、敵に応戦を繰り返した。
 仲間達が攻撃を集中させる盾役も、すでに全身をボロボロ。
 テンペスタはさらに、痛打を与えようと両手に装備したパイルトンファーにエネルギーを収束させて。
 両腕を翠に発光させたテンペスタは再び支援機に乗り、突撃する。
 敵のすれ違いざま強い光が発せされ、次の瞬間、盾の体が凍りつく。
 グラビティ・チェインを失った輝きの盾は砕け散り、冬の夜空に消えてなくなってしまった。
 対して、こちらの盾役。要は遊撃を行う2体を抑えつつ、攻撃もしっかりと行う。
「おっと失礼。苦情は後程こちらまでってね」
 仲間の疲弊もあってか、彼は渦巻く水のオーラを拳に纏わせ、落雷の如き轟音と共に、相手に叩き込む。
 狙うは狙撃役となる輝きの腕だ。そいつの怒りを買った要は、自身に気力を撃ち込みつつ相手の発する振動破を受け止めていた。
 敵は、戦場を動き回る高起動型が残されている状況。メンバー達は輝きの腕を重点敵に叩く為にグラビティを集中させていく。
 ジューンはしっかりと足止めをする為に流星の蹴りを食らわせると、禊が風の刃を巻き起こす。
「……希求する風、忌避する風……四順四違を『私』は手繰って見せましょう」
 苦難を呼び起こすその刃を禊は操り、2体を纏めて切り裂いて動きを止めていく。盾を失ったことで、遊撃の2体は消耗が激しくなってきていたようだ。
「ジューンさん、御忌さん、続きます!」
 そこで、狙いを定めたしらべが飛び出す。
 赤い飾り紐に、蜻蛉の飾りがついた九十九式を腕に装着したしらべ。大切な人に貰ったお守りと共に戦う彼女は、敵の足元から亡霊の群れを呼び出して。
「ほんの少しだけ、前に戻って……。さぁ、うちらと共に眠ろか? なぁ」
 それらに捕らわれた輝きの腕に、大きな亡霊が刃を振り下ろした。
 斜めに裂かれた機械天使の体がずれていき、爆炎を上げて消えてしまう。
「さすがですね、津雲さん」
 禊は彼女を軽く労い、残る輝きの鞭の対処に向かう。
 輝きの卵から発せられるオーラが大きくなって来ている。もはや、一刻の猶予もない。
「なるだけ急ぐぞー」
 万里矢が仲間を急かしつつ、相手に轟竜砲を叩き込む。
 鞭で縛りつけられていたクララ。だが、卵を戦力とカウントできぬ状態ならば、相手は単機も同然。ここまで耐えた彼女は自信を持って告げる。
「――脆そうに見えて、意外と、しぶといでしょう?」
 最近は盾役となることも増えた彼女。技術でカバーし、ここまで堪えることができた。
 もちろん、クララはバトルオーラを纏った一撃で、しっかりと敵の胸部に反撃も叩きこむことも忘れない。
「逃しません!」
 ここまで回復に当たっていたエストレイアも、光の翼を無数の剣へと変化させて射出していく。
 屋上の壁に磔となった相手へ、万里矢とジューンがほぼ同時に仕掛けた。
「永い夜は終わり、やがて朝は来る――ボクの『奥義』だ、受け取っておけ」
 彼女の手からは、太陽の如き光が放たれる。
「この一撃を受けてみろ!」
 大仰な構えを行うジューン。敵が万里矢の発した光を浴びて焼かれてしまうところへ、渾身の拳を叩きこむ。
 動きを完全に止めた敵はそのまま消えてなくなってしまうが、それで終わりではない。
 しらべが輝きの卵目掛けて殴り付け、そいつを昏倒させてしまう。
「コンナ、ハズ、ハ――」
 爆発する卵から、要が女性を抱えて救出する。
 ジューンは発していたオーラを消し、テンペスタも武装解除してようやく一息つく。
「今度は待ち合わせに、間に合わせませんとね!」
 エストレイアはクリーニングを使い、戦闘で少し汚れてしまった女性の体を綺麗にする。
 あとは、彼女にデートの約束を守ってもらえたら完璧だ。
「良い夜です……ね」
 クララはこの場に長手袋を脱ぎ捨て、移動する仲間を追うのだった。

●背伸びコーデでエスコート
 事後。
 戦闘場所の屋上、そして、襲撃された被害者宅を合わせ、禊はエネルギー光球を発してできるだけ修繕に当たる。
「あの……、大丈夫ですか」
 その後、被害者女性、清水・瑠璃の部屋で、目覚めた彼女をクララが気遣う。
「はい、でも……」
 すっかり日が暮れ、身支度すら整わぬ状況に瑠璃は戸惑いを隠せない。
「後はわたし達にお任せ下さい」
 クララが呼びかけるのは、瑠璃が悩む服選びのこと。ガーリー風味か大人コーデか、である。
「背伸びした大人っぽい服装で、新しい魅力を見せてみたらどうかな?」
 瑠璃とほぼ同年代のしらべの意見に、ジューンもまた同意する。
「あー、ボクはそういうのは詳しくないけどさ、相手の好みに合わせるより、自分がこれって思ったのの方がいいと思うぞ」
 見た目とは違って瑠璃より年上の万里矢も背伸びコーデに同意は見せつつ、彼女の本心に任せるようだ。
「せっかくのクリスマスなんだし、いつもと違う格好で良いと思う」
 こちらも同い年のテンペスタ。背伸びに一票だ。
「え……? ああ、良いじゃない。心配しなくても、特別な日にいつもと違う魅力を見せるのって強いわよ」
 感想を求められた要もまた、大人コーデに票を投じる。満場一致もあり、早速女性メンバーが着替えさせたことで、要は一旦部屋を出た。
(「レプリカント化装置を使ってたなら、ジュモーも動いてるのかしらね?」)
 ぼんやりとそんなことを考える要。あのダモクレス達にもイヴの予定はあったのだろうか、と。
 そして、レプリカントの友人のことを思い浮かべて。
「……悪い冗談だ」
 彼はその思考を一蹴した。
 さて、部屋の中では、デートに向かう瑠璃の着替えが済んでいた。
「あと、何か一つ自分のお気に入りの色や小物を身に着けてみたら?」
 さらに、ジューンはアクセサリーを勧めると、瑠璃は自身の名と同じ、瑠璃のイヤリングをつけてみる。
「いざというときに勇気が出せる様にしっかり武装して、彼氏をあなたの魅力でノックアウトしちゃおうよ!」
 準備万端の彼女へ、ジューンはウインクしてみせる。
 ジューンがそこでマンションの下にタクシーを呼ぼうとしていたが、ここはエストレイアが一肌脱ぐようで。
「さあ、彼氏様の所へとびきりのプレゼントをお送りしましょうか!」
 エストレイア自身がトナカイとして、光の翼を羽ばたかせて部屋の窓から直接現地へと向かう。万里矢も交替要員としてついていく様子だ。
「大切な人との素敵なひと時を楽しんできてね!」
 しらべはその後ろ姿に大声で呼びかけ、デートに向かう彼女に呼びかけたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 1
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