制服女子の三つ折りソックス、それは真理

作者:星垣えん

●とりはおっさんをあつめた!
「諸君、制服女子のふくらはぎをじっくりねっとり見たいと思ったことはあるかね?」
「毎朝思ってますけど」
 今日も平和な街のどこか。集まっている男たちにビルシャナが尋ねると、彼らは口をそろえてそう返した。
 毎朝、制服女子のふくらはぎを見たいと思っている……なるほどさては精鋭だなこいつら?
「そうだな、聞くまでもないことだった! ならばその願いを叶えるために必要なモノはもちろんわかっているよな!?」
「ええ、でなければこの格好はしていませんよ!」
 声高に発せられた鳥の問いに、精鋭集団はバッと両手を横にひろげて自身の服装を見せる。
 制服だった。しかも女子用の制服だった。ブレザーだったりセーラーだったり、ひらひらロングスカートだったり膝上20センチぐらい達してるミニスカだったり、装いは様々だが皆それぞれキッチリと三つ折りソックスを履いていた。もちろん鳥さんも。
 中年男、女子制服、三つ折りソックス。
 3つがかけ合わさった光景は惨たらしいと形容するしか、ない。
「ふふふ、この素晴らしい三つ折りソックスを世にひろめる、そのためにまずは我々が身をもってその魅力を知らしめようではないか!!」
「はーーい!!」

●ダメ! 視覚的テロ!!
「なんだか、ごめんね……」
「いや、仕方あるまい。お前に責任はない。気にするな」
 ケルベロスたちがヘリポートにやってきたのは、ちょうどザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)が気落ちする新条・あかり(点灯夫・e04291)を慰めているときだった。世のためを思っての調査とはいえ、こんな変態を見つけてしまったことをあかりは悔いていたのだろう。その証拠に耳が半端なくしなだれている。これが変態の攻撃力。
 あかりはそのまま夕空を見上げて荒んだ心を癒す作業に突入したので、事の仔細はザイフリート王子から告げられた。
「なんとなくは察しているだろうが、今日の相手はビルシャナだ。『女子の制服には三つ折りソックス』と狂信する奴が現れて勢力を拡大(10人)している。お前達には至急これを討滅してきてほしいのだ」
 変態が敵の依頼だが、さすがにザイフリート王子はきちんと職務をこなしてくれます。
 んでもって今回も、ビルシャナについている信者は戦う前にうまいこと説得をキメることでちゃんと無力化できるだろうとのこと。実際に目にしたら無性に殴りたくなるかもしれないけど説得可能だからな? 手遅れじゃないからな? まだ間に合うんだから!
「集まっている男たちだが、言うまでもなく制服女子の三つ折りソックスというものに至高の価値を感じてしまっているようだな。崇めすぎて自分たちでそういう格好をしてしまっているほどだ」
 なるほど、現場は混乱しているんだね。
「そんな連中をどう説得するか、だが……私の見立てでは体を張って主張をぶつけるのが最も有効だ。制服女子には三つ折りソックス、というのが奴らの主張だから、女なら制服を着て別のソックスを履くのがいいだろうな。男なら逆に三つ折りソックスの制服姿で奴らの目を潰すという道がある」
 これ以上ないほど落ち着いた口ぶりで、ケルベロスたちを地獄の底に叩き落とすようなことを言ってくれるザイフリート王子。さすが王子、下々の苦労とか痛みがわからんのか王子。
「さぁ、とにかくヘリオンに乗れ。時間がない。急がなければ、奴らが見るに堪えん格好で街に繰り出してしまうからな」
 ザイフリート王子は颯爽と踵を返し、『ついてこい』とでも言っているような背中でケルベロスたちを導いていく。
 めっちゃ速足で。コスプレ説得案への抗議は受けつけん、というほどに、速足!


参加者
シルフィリアス・セレナーデ(善悪の狭間で揺れる・e00583)
黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871)
玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)
莓荊・バンリ(立ち上がり立ち上がる・e06236)
シェリー・シュヴァイツァー(花紬の氷晶姫・e20977)
スノー・ヴァーミリオン(深窓の令嬢・e24305)
カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)
鮫洲・紗羅沙(ふわふわ銀狐巫女さん・e40779)

■リプレイ

●惨状の夕刻
「……夕日が眩しいわねぇ」
 ビルの窓からひとり夕日をながめ、ドラゴニアンの黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871)はたそがれていた。変態だろうと近い戦争でケルベロスの支援者になる存在だ、と自分に言い聞かせて臨んだ依頼だが、実際目の前にすると女学生オヤジの破壊力は凄まじかった。とりあえず夕日をながめたくなるぐらいには凄まじかったのだ。
 一方、フロアでは今まさに、2つの女学生集団が戦いを始めようとしていた。
「さて本日、司会進行を務めさせていただきます、玉榮陣内です」
「待て待て待て待て!?」
 低音ボイスで挨拶を述べ、しれっと場を仕切ろうとしたセーラー服のグラサン男――玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)に、ビルシャナが猛然と異議を挟む。すでに字面からしてひどい格好なのでその反応も納得なのだが、実際の陣内の姿はさらに凄まじい。
 しっかりした体躯に合うサイズがなく、浅黒い肌が……腹やふとももがチラ見えどころかモロ見えなのだ。足元こそ三つ折りソックスで鳥の教義的に問題ない格好だが、総合すれば一発レッドである。
「ひどいな! いろいろひどい!」
「ひどい? 清純な女学生をつかまえておいてそれはないっすよ?」
 白襟カバーの紺セーラーを着こなしているシルフィリアス・セレナーデ(善悪の狭間で揺れる・e00583)が、手提げ鞄をずいっと差し出しつつ訂正を求める。名古屋襟と呼ばれる、一際大きな襟の服は彼女が通う学校のリアル制服だ。
 だが三つ折りソックスではない。普通に白ソックスを折らずに履いてる。
「な、なぜ三つ折りじゃないんだ!」
 シルフィリアスの足元を見て、哀しそうに眉をひそめるおっさんたち。
「え? だって三つ折りじゃなくても可愛くないっすか?」
 清純キャラを彷彿とさせる笑顔で応じるシルフィリアス。ウェーブしたロングヘア―も相まって完璧にお嬢様感が醸し出されているが、そこまでするなら三下口調もどうにかしたほうがいいと思うの。
「ダメだ! せっかくのふくらはぎが!」
 可憐なる三下の言葉に、おっさんはかぶりを振った。
 そんな結構救いようのないおっさんたちを襲う追撃。21歳にして堂々とセーラー姿(紺のハイソックス)をさらすスノー・ヴァーミリオン(深窓の令嬢・e24305)が、謎のドヤ顔で最前に進み出た。年齢に不似合いな格好でもその顔に恥じらいはない。むしろ『意外と似合って可愛い♪』とちょっと乗り気ですらあるのです。
「まず……確認のために聞きたいんだけどー。三つ折りソックスってナニー? そんなの知らないっていうか? チョー受けるー。一体どんな世代がシッテルの加齢臭のおじさん達ー? 実際、妾は何の事か知らなかったしねっ☆」
 道中でギャル雑誌を読みこんで身に着けたギャルっぽい(当社比)口調で、信者たちを嘲笑するスノー。辛辣な言い分に信者たちは狼狽し、仲間たちは痛々しいというしかないスノーのふるまいを直視できずに目をそらす。
「世代間格差なのか、確かにゲンエキノギャルには三つ折りソックスなど縁遠いものでしょう。これは痛い」
 凍える空気の中でも、自称司会としての役目を全うせんとする陣内。一部完全に空々しい響きに聞こえたが、気のせいだろう。
(「……私もあんなことになってるのかな……」)
 身を削って信者たちを説得するスノー(当人に自覚なし)の背中を見て、シェリー・シュヴァイツァー(花紬の氷晶姫・e20977)は自身の制服姿がどう見えているかと考えて不安に駆られる。シェリーも21歳なので、目を背けたくなるあのヴァルキュリアの惨状は他人事じゃねえのだ。

●変身!
 ちょーっと考えこんだ後、シェリーは鬱々としつつもおもむろにスマホを取り出した。これもケルベロスの仕事ですもの。
 そして人の良い笑顔を浮かべ、カシャシャシャと連写モードで圧倒的プレッシャーをかけていきます。
「それ、おじさん達が着てても地獄にしかならないんじゃない? 自分たちの姿を見てみたら?」
「ちょっ、連写はやめろ!?」
 無情に響くシャッター音におっさんたちは慌てふためくが、よくよく聞くと音の発生源はシェリーのスマホだけではない。
 その隣で、鮫洲・紗羅沙(ふわふわ銀狐巫女さん・e40779)も同様にスマホを駆使し、おっさんらの事案画像を撮りまくっていた。
「なんとも惨い状況ですね、シェリーさん……。あの良い歳したおじさんたち、恥ずかしくないんでしょうか……? まともに家族や仕事があったら社会的に死んじゃいそう……あっ、ひょっとしてそういう失うものがない人? でもそれってますます虚無感が大きくなりそう……」
「違う! 変態なんかじゃないよっ!」
 おっとりした語り口ながらシャープな切れ味でハートをえぐってくる紗羅沙に、おっさんたちはスカートを翻らせて叫んだ。その絵面がもう変態なんだって言いたくなるが、連中はそんな認識はかけらもないようだ。
 スノーは汚物を見るような冷たい目線を、奴らにプレゼントする。
「いや変態だからー。だってJCとかがそういうの着ると思って期待しちゃってたんでしょ~? うわぁ……マジアリエネー。この画像持って最強の魔法『通報』を放つことになるワー」
「ばっ、通報だけはダメだろ! 通報だけは!」
 マジックワードに背筋が震えるおっさんたち。罪の意識はなかろうとも、肉体が無意識にポリスを恐れている模様。
 しかしおっさんの心境など顧みず、周りではやかましいシャッター音が鳴りつづける。シェリーと紗羅沙の撮影会が止まらぬぜ。
「くっ……! おい、司会! こいつらを止め――」
 MC権限で2人を止めてくれ、と信者たちがふり返るが――。
「いねえっ!!」
 陣内の姿は忽然と消えていた。シャッター音に体が反応し、すでにレンズに入らないどこかへと避難したようです。
「たまちゃん……隙がないわね」
『タマって言うな』
「あら、聞こえちゃってた?」
 どこからか飛来した陣内のウイングキャットをぽふっと受け止めて、舞彩が肩をすくめる。天の声よろしくツッコんできたということは、陣内さんは近くにいるみたいです。猫はデコピンの代わりとしてけしかけてきたっぽい。
 その猫を愛でたい欲をひとまず猫自体とともに床に置き、舞彩はおっさんらに向き直る。
「制服女子の三つ折りソックス、それは真理……とか言ったわね?」
「そう、ちょうど今のきみのようにね」
 ふか~くうなずいて、おっさんたちは舞彩の姿をじっと見つめる。舞彩の格好はセーラー服に三つ折りソックス、まさに奴らの理想とするスタイルである。
「いいえ、違うわね」
 そう言うや、みるみるたくましくなる舞彩のふくらはぎ。あっという間に人のそれから竜の屈強さを誇る脚へと変じ、靴も三つ折りソックスもまとめて千々に弾け飛ぶ!
「えええええっ!?」
「制服女子の……ふくらはぎを見たいなら、素足が一番でしょう!」
 叩きつけられた旋刃脚が床さんを砕き、一瞬の暴風がフロアを駆けまわる。素足っちゃ素足だけど……うん。
「素足? 対比すべきソックスは絶対必要だろう! 何事もバランスだよ!」
 バイオレンスなドラゴニアンに強気に反抗したのは鳥だ。彼女の気迫に怖じることなく、バランスがどうのとほざきはじめた。
 が、その言葉にかぶせるように『HAHAHA!』という陽気で怪しい笑い声が響く。信者たちがふり向くと、そこにはセーラー服に三つ折りソックスを合わせたブロンド女子――カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)がいた。
「変態がバランスを語るとは笑止でござる!」
「なんだこいつ……胡散臭い!」
 懐疑的なおっさんの視線が集まる中、謎の風に巻かれて変身を遂げるカテリーナ。セーラー服から瞬時にNINJA風ミニスカ衣装に早変わり。だが三つ折りソックスはなぜか据え置き。
「バランス悪っ……!!」
「そうでござろう。テレビでご隠居を助けるセクシーくのいちが、空の旅を優しくご案内するCAのおねーさんが、もし三つ折りソックスだったら……コレジャナイ感が迸ってガッカリの嵐でござる! 忍び装束には、やはり……あみあみタイツこそ至高にござるよ」
「確かに……」
 最終的に自分の趣味っぽいところに着地してしまうカテリーナ。そも鳥は職業制服も範疇に含めるのだろうか、とか思うものの信者の反応は割と良好だ。ミスマッチスタイルが奏功したようです。

●たまに食うから
 信者たち三つ折り勢の意気はすっかり萎んでいる。
 そこへさらなる攻勢をかけるのは、莓荊・バンリ(立ち上がり立ち上がる・e06236)だ。
「確かに制服女子の足元や如何に……というのは我々にとって永遠の命題であります! 伸ばし紺白ハイソ? くしゅハイソ? 三つ折り? 前時代的ルーズ? しかしいやいや、どれも違うであります!!」
 キッパリと言い放つや、バンリは自身の紺セーラーのスカートから覗く脚を指で示した。
 その脚線は、いわゆる黒ストで覆われている。
「20デニールのみが戴くストッキングなる称号! その中で己一押しは黒ストであります。官能的な質感に制服女子が脚を通すアンバランス倒錯美! 今の時期は正直なかなか寒いであります!!」
 自信と勢いに満ちあふれた声で、バンリは黒ストの魅力と、ついでに寒空の下でも頑張る十代女子の気概を滔々と説く。
 さらにバンリの両脇に並び立つ、2人の女学生。
 輝ける18歳に姿を変えた、シェリーと紗羅沙である。シェリーは女学生ルックによるメンタルダメージの軽減を図ってのものだが、紗羅沙はぶっちゃけノリノリで制服姿を見せつけている。おっとり系のメンタルの強さは卑怯。
「莓荊さんのように20デニールで過ごすのはわたくしには厳しいですが……黒ストが良いというのはとても同感ですね~。冬の季節の160デニールは一度履いたら虜になるポカポカ感がすごいんですよ~。ね、シェリーさん?」
「うん。紗羅沙の言う通りタイツのほうが暖かいし、足もすらっと綺麗に見えるし……三つ折りソックス以外にも、季節に合わせて楽しんだほうが良いんじゃない?」
 すらりとした黒の脚線美を惜しげもなくおっさんたちに披露して、紗羅沙とシェリーは楽しげにお話しを続けた。
 そして2人の援護を得た形になったバンリが、黒ストの楽しみ方というものをおっさんらに伝授する。
「艶めく薄生地の下から仄かに浮かび上がる生肌の誘惑、指すべる滑らかな感触。軈てたどり着く、黒スト破りへの欲求……それらは全て生脚では味わえぬ最高のインモラリティなのであります! 今なら黒スト転向一名様に後ほどタッチ体験サービス付きでありますよー♪」
「な、なんだってぇー!?」
 告げられた黒スト論、そして謎のサービス待遇に腹の底からワクテカしてしまったおっさんたちはバンリや紗羅沙、シェリーの脚を食い入るようにガン見。勝手にシェリーや紗羅沙までタッチ対象にしていやがる。
 ともあれ肥大した煩悩のおかげでほぼ総崩れとなるオッサンズ。だがまるっと三つ折りを捨て去れたわけでもなく、
「けど三つ折りもなー……」
 未だその心には執着が残っていた。
 しかしそんな信者たちの葛藤に、シルフィリアスが終止符を打った。
「三つ折りの靴下が好きだというのはわかったっす。でも同じものしかないという状況は満足っすか?」
「ど、どういう意味だ……?」
 訝しんで眉根を寄せた信者たちへ、シルフィリアスは簡潔に説明を始める。
「好きな食べ物でも毎日食べていれば飽きるというっす。そう、好きなものとそうでないものがあるから好きなものがきたときの喜びがあるんす! 制服女子全員が三つ折りソックスになったらそれが当たり前になって、今の三つ折りソックスを見た時の感覚はなくなるっすよ!」
「そ、そうか……!」
「なるほど言われてみれば!」
 たまに見るからこそ三つ折りが輝く、そんな簡単なことにシルフィリアスの言葉で気づけた信者たちは一斉に正気に戻った。ビルから去っていった彼らは、黒ストや素足の女学生を求めて奔走していることだろう。通報マッタナシ。
「せっかくの同志を……」
「おおっと、動くなでござるよ!」
 仲間を失った怒りに震え、ケルベロスに牙をむけようとした鳥を制止する声。
 カテリーナだ。何やら誰かのスマホのデータを閲覧している模様。
「それは私のスマホ!」
 途端に慌てはじめる鳥。お前のかよ!
「全身図と、ふくらはぎから下のアップ画像ばかりのフォルダでござるか? って、既に我らもファイリング済みとは!? しかも勝手にランク、コメント付けとか超げきおこでござるよ?」
「いいから返せ! 人の秘密フォルダを覗くなど死罪に等し――」
 カテリーナに迫ってスマホ返還を要求する鳥だったが、ふと言葉を切る。気づけば、ひどく冷たい目のケルベロスに囲まれていたのだ。
「ま、待っ……」
「残念だけどそれは無理ですわね……」
 タイムを請う鳥にひときれの紙を見せるスノー。その顔にはなぜだか怯えているように見えた。
 その紙片には、
『変態に慈悲は――しっかり仕留めてね☆ あかり』
 と記されていた。普通の文だ。何も怯える箇所はない。
 ただひとつ、『慈悲は』の後ろの部分が恐ろしい筆圧によって破かれている点を除けば。
 なんていうかすごく……殺意です☆

●気をつけようね
 無慈悲にも鳥ミンチを作り終えると、ケルベロスたちは早々と帰路に就いていた。
「いやー信者の皆さんが自分から去っていってくれて助かったであります。こぞってサービスを求めに来られたらメロさんが唸りを上げるところだったでありますー!」
 拳を覆うオウガメタルをなでて、「でへっ」と近寄りがたい笑いを浮かべるバンリ。よかった、街へ繰り出して通報される道を選んだおっさんたちは間違っていなかったんだね。
「仕事終わった。今から帰る」
 恋人に依頼の報告をする陣内。まだセーラー紳士のままだが、チラリとか(双方に)精神ダメがキツいシーンはついぞ1度もなかった。様々な助け(鞄と舞彩)によって、日曜朝の放映にも耐えられるレベルに何とか収めることができました。苦情は仕方ない。
「あなたの主人、改めて見るとすごい格好ね……」
 抱えた猫の脚をもふったり、ニーソを履かせてみたりしながら、舞彩は陣内を見て感心していた。よくぞ今日を乗り切ったものだ、と賛辞を送りたくなる。
 が、勝った時というのは、得てして油断が生じるものだ。
「じゃあ後で――あっ」
 通話を終えてスマホを耳から離した陣内、自分が致命的ミステイクを犯していたことに気づく。
 画面を見たら恋人の顔が映っていた。どうやら『通話』ではなく『ビデオ通話』をしていたらしい。つまりこちらの姿もあっちに。
「やめて。撮らないで」
 膝をつき、何事かを乞う陣内。
 いったい画面の向こうで、何が起きてるっていうんだ。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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