奥様方に忍び寄る触手

作者:ハル


「ここの温泉に浸かると、子宝に恵まれるって本当かしら?」
「そういえば、前にテレビでもやってたわね。日光市って、子授けスポットとしてある程度知名度あるんじゃなかった?」
「泉質の説明の下に、子宝祈願の実績あり! ……なんてあったわね」
 そこは、栃木県日光市にある温泉の女湯。湯に肩まで使った妙齢の女性達は、お腹をゆったりと擦りながら、そんな会話を繰り広げていた。
「お願いします、神様! あの人との間に、宝物を!」
 この場にいるのは、先の女性達のように、御利益をフレーバー程度に考えている女性もいれば、真剣に悩んで湯に浸かる女性と、実に様々。
「旦那も、今頃温泉に浸かってるのかしら?」
「明日の早朝になれば、男湯が女湯になるんですって。明日早起きして、行ってみない?」
 共通しているのは、この時間に湯に浸かっている女性達は、皆結婚しているという事だろう。左手の薬指には、キラリと結婚指輪が輝いていた。
 そんな、何気ない、他愛もない偶然。
 だが――。
「ヒヒヒッ! 旦那なんか放っておいて、俺達と子作りするブヒィ!」
 女湯に大量のオークが出現すると同時に、他愛のない偶然は悲劇に変わった。
「……なっ、なに、なに……なんなのよっ!」
 問答無用とばかりに、女湯にいる全ての女性達を触手が絡め取る。身を隠せるものは、申し訳程度の大きさのタオルしかなく、女性達は一瞬でパニックに陥った。
「いい身体してるブヒ、ヒヒヒッ! こんな素敵な母体を満足させられないなんて、旦那は男の風上にもおけないブヒねぇ!」
「ひぃっ!」
 蠢く触手が、最も真剣に子宝を願っていた女性の足を割開く。無論、そうされても女性達には恐怖と嫌悪しかない。だが、浴室に霧状の液体が散布されると、嫌でも溢れ出んばかりの熱が女性達を襲った。
「やっ、ら、らめ……なんで、あらま、溶けっ……たしゅけてぇ、あにゃたぁっ……」
「心配しなくても、すぐに子供を産めるようになるブヒ! ヒヒヒヒヒッ!」
 抵抗する力が失せ、そしてやがてはオーク達に……。


「……まだ気温もそれなりに高いですからね。薄着の女性達に釣られて、案の定オークも活発に活動しているようですね」
 うんざりしたように、山栄・桔梗(シャドウエルフのヘリオライダー・en0233)が肩を落とす。
「場所は、オーク達が大好きな温泉で、神籬・聖厳(オークスレイヤー・e10402)さんの懸念で発覚しました」
 オークの出現にテンション急下降中の桔梗とは対照的に、表面上は残念そうながらも、瞳の奥に期待のようなものをチラつかせて、聖厳が集まった視線に軽く手を振って応じる。
「この温泉は、安産祈願ならぬ子宝祈願で有名なようでして、オークに襲撃される女性達も、妙齢の奥様ばかりのようです」
 美しさと色気を兼ね備えた絶妙な年頃の女性ばかりなだけに、オークに狙われたのは必然と言えるのかもしれない。
「早急に助けたい所ですが、事前避難をしてしまうと、オークの標的が別に移ってしまう懸念があるんです。予知が変わってしまうと、事件を防げなくなってしまいますので、避難はオーク達が現れた後……という事になってしまいます」
 避難が完了できないと、戦闘中にも女性達がオークに弄ばれてしまう懸念がある。できるだけ避難させてあげて欲しい。
「確認した所、オークの数は12体で間違いありません」
 特殊な個体はおらず、戦闘力に関してもオークを逸脱した存在はいない。
「といっても、何だかんだでいいようにされてしまうのが、女性として辛い所ではありますね。男性は、紳士的に対応してあげてくださいね?」
 温泉だけに、現場には大手のタオルが充分な数用意されている。
「女性達は小さめのタオルしか持ち込んでいません。注意してあげてください」
 また、すぐ隣は男湯となっている。騒ぎが起こると、心配した旦那さんや男性達の注目を集めてしまうかもしれない。
「さすがに女湯に踏み込んでくることはないと思いますが、円滑な避難のためにも、なんらかの対策をとるのもアリかもしれませんね」
 桔梗が姿勢を正す。
「奥様方まで狙うなんて、本当にオークが最低ですね。彼女達のため、そして彼女達を愛する旦那様方のためにも、オークの蛮行を阻止してください!」


参加者
ノーヴェ・プレナイト(レアエネミー・e07864)
神籬・聖厳(オークスレイヤー・e10402)
葦原・めい(世紀末バニー・e11430)
暮葉・守人(狼影・e12145)
綺羅星・ぽてと(耳が弱い・e13821)
盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)
植田・碧(ブラッティバレット・e27093)
愛篠・桃恵(愛しの投影・e27956)

■リプレイ


「俺はケルベロスだ! 女湯に、オークが出現するとの予知があった。嫁さん方を助けるために、協力して欲しい」
 栃木県日光市。子宝祈願で有名な温泉の男湯に、暮葉・守人(狼影・e12145)の姿はあった。強者の雰囲気を醸しつつ、真剣な表情で告げる守人に、最初こそ戸惑っていた男性入浴者達だが、
「よ、嫁は大丈夫なのか!?」
 オークという女性にとって最悪の敵に、男性達は大事な伴侶の危機を悟る。
 それに対し、守人は力強く頷いてみせた。同時に、避難のため、男湯と女湯を隔てる壁を破壊する必要がある事を告げると、男性達は素直に従いってくれた。
「後はタイミングを測るだけか」
 守人はテープで脱衣所を封鎖すると、耳に装着したインカムに全神経を集中させた。

 その頃――。
「最近、オークがおとぎ話によくある、「呪われた王子様」みたいに思えてきて、困っちゃうわ。定命化したら、案外イケメンになるかもよ? ダイエットは必要だけどさ」
 葦原・めい(世紀末バニー・e11430)達囮組は、奥様方と共に、温泉の湯船でホッコリしていた。
「……他人事じゃないわね。私も、最近はオークとかとばかりと触れ合ってる気がするわ」
 年齢的に、もしかしてやばい? 神籬・聖厳(オークスレイヤー・e10402)は別枠として、周りを取り囲む若い肌に、綺羅星・ぽてと(耳が弱い・e13821)は危機感を抱く。
「でも、オークさんの触手って、気持ちいいの。だから、ちょーと、楽しみなのー!」
「ふわりさん、その気持ち分かりますっ! それに、伴侶との子宝を願う奥様を狙うシチュエーションなんて……燃えるじゃないですか!」
 盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)は純粋に、聖厳は欲望に澱んだ瞳と差違はあるが、その目がキラキラと好奇心で輝いている事に違いは無い。
「二度と悪さができない様に、精も根も枯れ果てるまで搾り尽くしてあげますよ♪」
 そう言いながら、腰をクイクイと前後させる見た目10歳の聖厳に、周りの奥様方から唖然とした、ともすれば通報した方がいいのかしら? なんて視線を集めている。
「まぁ僕もオークは嫌いじゃないけどね。でも、無理矢理っていうのは絶対ダメだよね!」
 仲間の濃いやり取りに、左手の薬指に指輪を煌めかせた愛篠・桃恵(愛しの投影・e27956)が苦笑を浮かつつも、気合いを入れた。

「どうしてあんなに楽しそうなのかしら? ……オークの触手なのよ?」
 ワイワイと湯船の中で盛り上がる囮組に、脱衣所でタオルを準備する植田・碧(ブラッティバレット・e27093)は、目を丸くしていた。
「安心して碧さん。私だってさすがに、オークの子宝は御免よ」
 不安がる碧に、ノーヴェ・プレナイト(レアエネミー・e07864)が苦笑を浮かべてフォローする。聖厳やめいが、特殊な訓練を受けているだけなのだ。
 ――と、碧が一先ず安堵していると。
「……なっ、なに……なんなのよっ!」
 浴室から女性の悲鳴混じりの声が聞こえ、碧は慌てて脱衣所のドアを開け放つ。
『守人さん、お願い』
 同時に、ノーヴェがインカムで守人に連絡を。
『了解だ! 我一陣の風となる!! 貫き穿ち切り払う暴風の斬撃!!』
 すると、インカム越しに、裂帛の気合い。ノーヴェと碧が男湯と女湯を隔てる壁に視線を向ければ、轟音と共に音速の暴風が放たれ、壁がガラガラと崩れた!
「奥様方、こっちよ! 動ける人はすぐに避難を!」
「脱衣所の方でも、穴を開けた方でも、近い方でいいのー! すぐに逃げて欲しいのー!」
 ぽてと、ふわりら、囮組もすでに行動を開始している。
「おー、おー、いるブヒねぇ! 食べ頃、奪い頃のいい母体ばかりブヒィ!」
「すぐに蕩けさせて、旦那の顔も思い出せないようにしてあげるブヒヨォ?」
 現れたオーク達が、一斉に霧状の媚薬を散布する。まずは、思考能力を奪おうという戦法だろう。事実、女性達の何人かは、霧の影響で涎を垂らし、全身を痙攣させている者もいた。
「ねえ! そこのオーク?」
「ブヒ?」
 動けない彼女らに触手を向けさせる訳にはいかない。媚びるような甘いめいの声に惹かれ、何体かのオークの視線がそちらに集まる。
「あたし、あんた達の赤ちゃん産みたいの。子宝の湯で、一緒に子作りしよ? ……もちろん、本気よ?」
「さぁさぁ、おいでなさいませ♪ 私も葦原さんも、準備は万端ですよ?」
 めいの背後から聖厳が抱きつくと、挑発するようにその胸を揉みしだいた。「んっ……はぁ……」めいが、吐息を零す。欲情を示す甘い芳香が二人の全身から立ち上ると……。
「なら、襲わないのはむしろ失礼ブヒねぇ! 美味しく頂くブヒィッ!」
 大量のオークの触手が、聖厳とめいの全身に絡みつく。あっという間にめいが粘液に犯され、聖厳が口内に押し込まれる舌に、懸命に応える。
『しっ! 静かになの! 僕達ケルベロスなの。今から避難させるから、静かにこの場を離れるの』
 多くのオークが囮に引きつけられている中、桃恵は動ける奥様方を中心に、接触テレパスで誘導していた。
「その人も、少しだけ霧の影響があるみたいね!」
 近くに居たぽてとが、奥様方を優先的に熱唱とダンスで勇気づけてくれるおかげで、霧に犯された人の中にも、自力で避難できるまで回復した者もいるようだ。
(しまった……失敗した……)
 だが、熱唱はぽてとに深刻な影響も与えていた。激しい動きと共に、多量の霧も吸い込んでしまっていたのだ。
「離れ……なさいっ! ばっ! 舐めないでっ!」
 火照るぽてとの身体。そこに、弱り目を狙ったオークの舌先が伸ばされ、触手でホールドされて動けないぽてとの首筋を一舐めする。
「悪いな、なるべく見ないようにするから、タオル羽織って男子更衣室に向かってくれ。男性客はいないから、安心しろ」
 一方、男湯に逃げてきた奥様方に対しては、守人が対応していた。
「こっちも羽織るモノ用意してあるわよ! 動けない人には手を貸すから、安心してね!」
「碧さん、私は一先ず、囮さん達の援護に向かうわね?」
「分かったわ!」
 碧は女湯の脱衣所付近に逃げてくる奥様方にバスローブを被せ、動けない者に手を貸している。人影が少なくなった所で、ノーヴェが囮で唯一のクラッシャーである聖厳に、桃色の霧を纏わせた。
 だが、オークの数は総勢12体。次第に囮だけでは御しきれない個体も出てきていた。
「おっと! こっちに来るなら僕が相手になるの!」
 奥様を担いだ桃恵が、光の幻影でオークに幻を見せる。
「人妻……人妻いいブヒィ! ゲヒヒ!」
 幻の中、オークが下卑た声を上げた。その隙に、桃恵の拳がオークに突き刺さる。
「ちょっ、だめなのーっ! あっ……!」
「ヒヒヒッ! 旦那とどっちがいいブヒかぁ?!」
 その際、オークは桃恵の薬指に指輪を見つけ、怒りと興奮から彼女に執着し始める。
「もー! 桃恵ちゃん達ばっかりずるいのー! ふわりもねー、オークさんにいーっぱい……気持ちいい事、して欲しいのー」
「よっしゃあ! まとめて来いブヒィ!」
「……ぁっ……そ、そこなのぉ……!」
 桃恵に加勢するように、ふわりもオークを誘惑する。触手が這い回る感覚に、背をゾクリと仰け反らせた。
「も、もう何がなんだか! って、こっちまで触手来てるじゃない! わ、私は遠慮する――ああっ!?」
 そして、最後の奥様を脱衣所に避難させた碧は、そのカオスな女湯の様子に呆然とし、当然の如く巻き込まれるのだった。


「お待たせ!! いい夢は見れたかよ?」
 戦闘開始から数分。無事に避難誘導を終えた守人は仲間に合流し、
「……相変わらずみたいだな」
 目にした光景に、そう肩を竦め、一先ず守護星座を描いて前衛を援護する。
「おーい皆ー! 無事避難させたよー、楽しんでるとこ悪いけどやっつけるよー!」
 そのすぐ傍では、2本のギターで「ヘリオライト」のメロディーを奏でる桃恵が、仲間に反撃開始の合図を出していた。だが、その口調が若干棒読み気味なのは――。
「しょっ……しょんな一斉に……っんぐっ!? あ゛ああ! 出して! いっぱい出していってぇ……っ!」
「い、いいのよっ! ……今だけはっ……あらしたちはぁ……あんた達のっ、うぅ゛い゛!? ひっ、やぁ! もの……なんりゃからぁっ!」
 お楽しみ中の聖厳とめいを邪魔しないようにという配慮だろう。守人達は、その行為がただ快楽を貪っている訳ではない事を知っていた。……最も、快楽が理由の大半を占めるのは間違いないだろうが。
「ぅ、んんっ! やっぱり、きもちぃの……もっとふわりを、めちゃくちゃにして欲しいのぉ……!」
 そういう意味では、二人ほど突き抜けていないものの、ふわりもそっち寄りの才能を発揮していた。合計して三本の触手がふわりを外から中から責めるたび、ふわりの幼さを残す表情が、女のそれに浸食される。
「ん゛ん゛ん!!」
 ふわりの身体が、雷に打たれたように一際震えると、ふわりは満足げな笑みを浮かべた。そして、満足させてくれた事の返礼にように、ケルベロスチェインが宙を舞い、オークの首を締め上げて絶命させる。
 だが、全員が全員オークと触れ合いたい訳ではない。
「嫌っ、オークなんかにぃっ!!」
 バスタオルを剥ぎ取られたぽてとは、這い回る触手に懸命に抗おうとしていた。
「本当に嫌ブヒィ? さっきから言葉では強気ブヒが、身体はこんなに……ヒヒヒッ!」
「んぶぅっ!!?」
 ぽてとの口内を、オークの舌が蹂躙する。程よく熟れた乳房に、秘部に触手が吸い付くと、霧を吸い込みすぎたぽてとは、されるがままだ。
「き、綺羅星さん!? も、もういい加減にしなさい! 絶対に外さないからね、覚悟しなさいよっ!」
 服含め全身が粘液まみれとなり、息も絶え絶えな碧が、涙目でグラビティ弾を放つと、オークがその強烈な威力に四散する。
「っ……こんなぁっ! ――ッッ!??」
 だが、碧も無事ではなく、銃弾を放った反動にすら、身体は敏感に反応してしまう。
 碧は、救いを求めるようにノーヴェを見た。自分と共に更衣室で待機し、オークの子は御免だと語っていた彼女の様子はどうかと。
 だが!
「ぁんっ……やだ、今は……だめぇっ」
「シャツの上からでも、ビンビンになってるのが分かるブヒねぇ? どれ、脱いで確かめてみるブヒ!」
「そ、それは、……やぁ!」
 オークが、ノーヴェの上着を破り捨てた。露わになったのは、興奮により隆起した彼女の女の部分。テンションの上がったオーク達が、激エロモードに移行する。より鋭敏に女を刺激するオークに、ノーヴェが嬌声を上げる。
 絶句する碧。
「ノ、ノーヴェ……っ」
 彼女とは知人である守人は、ノーヴェのこちらまで誘うような痴態に頰を赤く染めながらも、Gun Blade03に雷を纏わせ、オークを易々と貫くのであった。

「……どう? わたしの触手も、立派、でしょ……?」
「……こんな触手……望んでない……ブヒィ……」
 ノーヴェが召還したおぞましい触手に、オークは断末魔と共に異界へと引きずり込まれる。だが、霧の影響によって意識が朦朧としていたノーヴェもまた、オークに新たな触手をけしかけられ、意識を失ってしまう。
「アイドルであるぽてとちゃんに、よくもあんなファンには言えない事をやってくれたわねっ!」
 ノーヴェへの追撃を防ぐため、ぽてとがその間に割って入った。
「ギエエエエエ!」
 カウンターで芋蔓刈りの鎌を振り下ろすと、オークの突起物をミンチにし、種としても雄としても息の根を止めてしまう。
 残るオークは3体。
 まだ勝負を決めるのは先かと、ケルベロス達が舌打ちをしかけた時!
「孕んであげるから、子種いっぱい出していってね♪ ほらほら、もっともっと♪ 勢いがなくなってきましたよー?」
「そろそろ限界かしら? なら、このまま痛みを感じず、快楽の中で天国に召されるといいわ」
 聖厳とめいを襲っていたオーク。その形勢が逆転し、枯れかけている事に気付く。
「お、おおお!? オオオオオーー!?」
 聖厳の小さく染み一つない肌と、めいの若さと経験を両立した肢体が、オークからすべての生命力を吸い上げようとしていたのだ。激しさを増す聖厳の、∞の字を描く巧みな臀部の動きによって、一際大きく震えたオークの肉体が、反してピクリとも動かなくなる。
 続いて、めいの下腹辺りが淡い光を放つと、「ヒギィ!」オークはそう瞠目した途端、陸に打ち上げられた魚のように痙攣した。めいは、頰についた粘液をペロリと舐め上げた。それで、その2体共が絶命した事が、他の仲間にも分かった。
「旦那は相手にしてくれてないみたいブヒねぇ? どうブヒ? 俺達の所へ来れば、旦那よりもずっと……ヒヒッ!」
「んっ、ふ、ぅっ……ひんっ!」
 指輪をつけている影響か、人妻だと思われた桃恵は、相変わらずオークからの熱烈な求愛を受けていた。ゲス不倫万歳なオークは、仲間が何体死のうとも、雌が目の前にいる限り、お構いなしである。
「オークさん、ふわりはね、もう十分満足したのー!」
「ええ、私も、あなた達は十分……十分ッ! よ!」
 そんなオークを、ふわりと碧が取り囲み、ブラックスライムと音速の拳でたこ殴りにする。
「僕も酷い目に合ったの!」
 触手から抜け出した桃恵は、言葉とは裏腹にまったく堪えた素振りも見せず、笑顔。むしろ、肌は艶々しているように見えた。そのまま、緊急手術で守人を後押しすると、
「終わりだ! 我一陣の風となる! 貫き穿ち切り払う暴風の斬撃!!」
 守人の緑色のオーラによって実現した縮地。そこから生み出される暴風と斬撃が、オークを粉微塵に帰すのであった。


 守人にバスタオルを手渡された女性陣は、それを手に再び温泉を満喫していた。
「気持ちいいのー!」
「……ふぅ」
 ふわりは遊び疲れて眠そうにしている。
 碧の表情は、ようやく安堵に染まっていた。
 だが、現状男湯には、守人含め誰もいない。桃恵が、「あーれー垣根が直らないなーこれはしばらく混浴でいいかなー♪」などと棒読みで言いながら、修復しなかったためだ。桃恵としては『皆一緒に』仲良くという名目だが、旦那達の協議の末、その目的は果たせられなかった。
(酷い目にあったわね。ぽてとさんじゃないけれど、最近オークの相手ばかり……大丈夫かしら?)
 ノーヴェの視線の先には、湯に浸かるぽてと。彼女程焦る必要はないが、このままでは……そういった不安が過ぎるのも事実であった。
「オークのお父さんたち……丈夫な赤ちゃん、産むからね♪」
 めいは、お腹を愛おしそうに撫でる。
「彼女達のためにも、……私が社会に訴えて、頑張らないと。だからオーク、あんたらも踏ん張りなさいよ。ローカストにだってできたんだから」
 奔放なめいにも、立派な信念がある。次代を担う命が宿るかは、神のみぞ知る。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年9月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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