メイビー・アイム・アメイズド

作者:鹿崎シーカー

 閃光が爆ぜ、光線が雨のように降り注ぐ。ガラスケースと中の口紅、香水等の化粧品が次々と砕かれ、店員や客は悲鳴を上げて身を伏せる。ややあって音が止み、恐る恐る顔を上げる彼女たちを眩しい光が照らし出す。見上げれば、デパートの天井付近に鳥めいた影。
 後光を背負って宙に浮くのは、尼じみた服装をした鳥人間。はためく長い袖から翼を伸ばしたビルシャナは、自身を見上げる客と店員を見下ろした。
「女性達よ……恥ずかしくはないのですか」
 それを聞き、女性の一人が口を開いた。
「……え?」
「自身の素顔から逃れんとする己を! 化粧などという自己欺瞞に満足する己を! 恥ずかしいとは思わないのですかッ!」
 ポカンとする女性達にビルシャナが怒鳴る。見開いた鳥の目が太陽めいた光を放った。
「いいですか。化粧など、美の追求を捨てた負け犬の遠吠えに過ぎませんッ! 運動、睡眠、食生活! これらを守れば化粧要らずの素の美ができます! そしてそれこそが、紛うことなき貴女方の自然の美! それを自ら捨て化粧に走るなどと……恥を知りなさいッ!」
 輝く目から光線を発射。辛うじて残っていた化粧品を爆砕すると、再び震え上がった女性達ににらみを利かせる。光を徐々に強くしながら、強い口調で言いつけた。
「我々は真なる自分自身から逃れえません。化粧など捨て、自らの美を語りなさい。それが出来ぬというものは今すぐその場に直りなさいッ! 私が手ずからその身に刻み込んであげます。……女性は、化粧などせずとも輝けるのだと!」


「なるほどーぉ……輝く鳥さんなのですねーぇ」
「ほんとに光るのはちょっとどうかと思うけどね……」
 得心顔でうなずく人首・ツグミ(絶対正義・e37943)に、跳鹿・譲は困ったような顔をした。
 とあるデパートの化粧品売り場で、ビルシャナの活動が確認された。
 かのビルシャナの名はクランベリー。尼のような服装をした『女性は自然体が一番! 化粧は絶対許さない!』と主張している個体であり、自身の教義にのっとって化粧品を求める女性や化粧品を売る者に自らの教義をたたきつけようとしているらしい。
 放置すればクランベリーは暴走し、多くの被害者を生み出してしまうかもしれない。皆には急ぎ現場の化粧品売り場に急行し、居合わせた人々の救出及びクランベリーの撃破をお願いしたい。
 戦場となる化粧品売り場は大きなデパートの一階を丸ごと貸し切った広いところで、その天井付近にクランベリーが浮遊している。床には居合わせた一般人の女性達がおり、商品棚などでなんとか攻撃から逃れているような状態にある。このまま戦闘に入ると彼女達は巻き添えになるだろう。
 クランベリーは基本ずっと浮遊しており、目や体から光線を放って攻撃してくる。長い射程距離と連射が売りだが、浮遊したクランベリー本人の移動速度は非常に遅く、自身の教義に真っ向から反論する相手を優先して攻撃してくる。
 戦う際は、これらのことに注意してほしい。
「化粧も人次第ですからねーぇ。とりあえず、これ占めましょう」
「向こうもなかなかアグレッシブみたいだからね。気を付けて行ってきてね」


参加者
朝倉・ほのか(フォーリングレイン・e01107)
ズミネ・ヴィヴィ(ケルベロスブレイド・e02294)
シュテルン・プラティーン(天衣無縫フルメタルクルセイダ・e09171)
青木・杏奈(やかましかしましお喋り大好き・e30474)
シデル・ユーイング(セクハラ撲滅・e31157)
カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)
人首・ツグミ(絶対正義・e37943)
ルナ・エペノワール(月光を受け煌めく刃・e39056)

■リプレイ

 化粧売り場天井付近。光を背負ったクランベリーは眼下をにらむ。半壊した商品棚の影から自分の様子を伺う女性達に、苛立たしげに言いつける。
「どうしたというのです! 教義もチャンスも既に与えてあげました。後は是か否と答えるのみでしょう! 隠れていないで出てきなさい!」
 女性の一人と視線が合うや、彼女は首を引っ込める。数人に視線を向けるも同様。充血するクランベリーの鳥の目が、まばゆい光を放ち始める。
「……なるほど。貴女方の答えはよくわかりました」
 後光の明滅を止め、徐々に強まっていく。
「これだけ訴えてもなお私の教義を受け入れないと! なんと恥知らずなことでしょう!」
 太陽の如き光がフロアを白く染め上げた。クランベリーは尼袈裟の袖を持ち上げ、女性の一人が隠れた商品棚を指し示す。翼の先に光が凝集!
「しかし安心なさい。我が光が綺麗に浄化してくれるでしょう。まずは……そこの貴方ですッ!」
 光が光線となり商品棚へ飛翔する。同時、売り場の扉を突き破り翡翠色のバイクが乱入! それが光の射線に飛び込んだ直後光線が破裂。舞い散る光の粒の中、バイクのシート上で回し蹴りを振り切るシュテルン・プラティーン(天衣無縫フルメタルクルセイダ・e09171)はシートの上に足を着く。
「間一髪、間に合いました」
 光を反射しパールじみた装甲が輝く。仁王立ちしたシュテルンはシートの上で名乗りを上げた。
「この装甲こそ戦化粧。天衣無縫フルメタルクルセイダ、参上です」
「なんていうこと……私の光が!」
 目を見開き頭を抱えるクランベリー。フロア端でそれを見た青木・杏奈(やかましかしましお喋り大好き・e30474)は相棒バイクのハンドルを持ちジャイアントスイング! そして光の粒子をまとうバイクを、飛び乗った人首・ツグミ(絶対正義・e37943)ごとぶん投げた!
「ィィィィイイイイイイイイイイヤアアアアアアアアアアッ!」
 光の尾を引きバイクがすっ飛ぶ! 振り返ったクランベリーの目に、光の粒子を率いて飛び蹴りを放つツグミの姿が映り込む!
「はぁー……いっ!」
「へごぉッ!」
 蹴られたクランベリーが天井衝突。彼女はわずかに自由落下したのち滞空し、頭を押さえて天を仰いだ。右手を天井に突き刺しぶら下がったツグミをにらんだ瞬間、地上の杏奈が声を発する。
「わかっていません! わかっていませんねビルシャナさん!」
「誰ですか!」
 血眼でにらむクランベリーに、杏奈は両手を合わせてオジギした。
「ドーモ、トーカティブです! お化粧を欺瞞だなんて言う主張! それこそお化粧から逃れるための欺瞞! お化粧は努力にして嗜みです! お化粧の努力がなければ歌舞伎お化けみたいになっちゃいますし、何より場面とシチュエーションに合わせられません!」
 矢次早な弁論に、クランベリーはオジギを返して言い返す。
「ドーモ、クランベリーです。語るに落ちましたね、うら若き乙女よ! そもそも努力せねばTPOをわきまえられない社会こそ悪! 偽らず、素の己を以って他者と向き合う! それこそ礼儀であるというもの!」
 飛び交う大音声の討論を、カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)は遠くの物影から覗き込む。
「グッド。フェーズ1は成功でござるな! ルナ殿、出動でござる! ここからは拙者達の出番でござるよ!」
「う、うん。でも……」
 カテリーナに続きルナ・エペノワール(月光を受け煌めく刃・e39056)が顔を出す。商品棚の影に隠れた女性達を見て、彼は小さくつぶやいた。
「お、おれなんかの言うこと、聞いてくれるかなぁ……」
「自信持つでござる!」
 カテリーナがルナの背中をバシンとたたく。
「ルナ殿がキュートにお願いすれば母性的なアレでコロッと行くこと間違いなし!」
「えー……そうなの?」
「いざ行かん! 無辜の人々が拙者達の助けを待ってるでござる!」
 疑わしげなルナの手を、カテリーナは得意げにつかんで引っ張る。物影から物影へ、屈み姿勢で素早く移動する二人を見送り、化粧品店オーナーは傍らのズミネ・ヴィヴィ(ケルベロスブレイド・e02294)に視線を向けた。
「あの、本当に避難訓練なんですよね……?」
「ええもちろん。貴店のご協力、心より感謝します。先に言った通り何もしませんよう。私達に任せてください」
 自分の笑顔を見て黙るオーナーを残し、ズミネも行動を開始する。一方で、化粧議論はヒートアップの一途をたどっていた。
「そして何より眉毛の手入れ! 薄くなった眉毛は帰って来ないって先輩たちが言っていました!」
「毛が抜けるのも生活のせいですッ!」
 杏奈に負けじとクランベリーは舌鋒を放つ。
「頭髪や眉、まつ毛は古来より女性らしさの象徴ですが、ストレスや荒い生活により散ってしまうます。故に、生活改善をしてケアを……」
「待ってください」
 早口の弁論に、冷静な一言が割り込んだ。眼鏡を押し上げ、シデル・ユーイング(セクハラ撲滅・e31157)は持論を撃ち出す。
「生活改善とはいいますが、脱毛や老化速度は生来の体質にも左右されます。これは運動・食・睡眠だけではどうにもなりません。その辺りをカバーしている化粧品、即ち基礎化粧だってあるのです」
「素の自分とは別に、清潔感は大切ですし。……輝くかどうかより、得られるものもあると思います」
 おずおずと反抗弁論に加わった朝倉・ほのか(フォーリングレイン・e01107)は、視線を泳がせ、クランベリーを上目で見やる。
「それとあの、自然体が一番という話ですが……服装については気にしないんですか?」
「……服、とな?」
 クランベリーの目がタカめいて光る。ほのかは呑みかけた息を吐き、二の句を続ける。
「化粧もそうですが、服装も過度の装飾は難しいと思います。貴女は尼のような格好をしていますけど、それは余り一般的な服装ではありませんし、この場では不自然じゃないかなって……」
「そういえばそうですね」
 再び眼鏡を押し上げるシデル。
「自然体が良いと言うのであれば、その尼の恰好は何なのですか? 衣装とはつまり身体の化粧。即ち自然の美から遠ざかるに等しい所業。という訳で」
 レンズ奥、紫の瞳が鋭い眼光で尼服を射抜いた。
「脱ぎなさい」
 フロアが一瞬にして沈黙。仲間すら一瞬で口をつぐむ中、クランベリーが噴き出した。
「クッ、クク……」
「……おやぁ?」
 目を細めるツグミの目下、くの字に折って笑い始めた!
「クク……フフフフフフ……あっははははははははは! なるほどなるほど! そうですか! それほどまでに素の私を目にしたいと! フフフフ……」
「あれぇ? 予想外の反応……」
 滝めいて冷や汗を流す杏奈の前で、クランベリーは尼僧服に手をかける。もったいぶるように引っ張られる服の裾から神々しい光がこぼれ、強まっていく。
「美しさに目を潰してはならぬと自戒し封印していましたが……そう言われては断る理由はありません! さあ、御覧なさいッ!」
 服を一気にはぎとった瞬間、フロアが金色に染め上げられた。誰もが目を逸らす中、世界を塗りつぶす光の奥で響くクランベリーの哄笑!
「どうですか! これが着飾らない私! 素の美しさぁぁぁッ!」
「……何か、申し訳ありませんでした。その、色々と」
 目を逸らしつつシデルはスライド。その横を突っ切る光線と破砕音を耳にしたほのかは片手で目を覆い、暗い翡翠色の大鎌を取り出す。
「これ以上の話合いは不可能なようですね。……戦いを始めます」
「始めますって敵見えないんですけどお!?」
 杏奈の悲鳴じみた声をよそに、ツグミは天井から指を引き抜きアッパー。勢いで眩い光の中へダイブし燃えるかかと落としを見舞う! 足に伝わる確かな手応え。
「ぐむッ!」
「ここですよーぅ。ここ狙ってくださいねーぇ」
 声を投げるツグミを光線の乱射が吹き飛ばす。全身に浴びる彼女の対面、シュテルンは天高く跳躍し片足を伸ばした。利かない視界でクランベリーの真上に到達!
「そこですね、わかります。篁流格闘術!」
 空中で一回転し垂直落下。伸ばした足が鳥の頭に突き刺さる!
「『氷柱針』ッ!」
「うぐううううッ! ……小癪な!」
 目を見開いたクランベリーは真上に光線を連射! 空中後転するシュテルンは白金の装甲を削られながらも逆方向に回転し再びクランベリーに襲いかかった。チェーンソーめいた空気を裂く音!
「からの、『垂雪・顎』ッ!」
「光有れ!」
 掲げたクランベリーの手から光線の嵐が噴き出す。猛回転するシュテルンに激突したそれらは突撃する彼女と拮抗。光芒をまき散らしながらしのぎを削る!
「化粧は女の戦闘服です。貴女は世の女性達に戦う前から負けろと言うのですか! 認められませんね! 私の魂が断じて許しません! だから、あなたを倒します! この私の自慢の拳でッ!」
「笑止千万ッ! その言葉、素にして輝く私を打ち倒してから言ってほしいものですねッ!」
 光線連射速度が上昇し徐々にシュテルンが押し戻される。クランベリーがさらに力を込めたその瞬間、彼女の背後に暗緑色に光る影! 振り向くクランベリーに、白光に浮かぶ龍は緑に燃えるあぎとを開いた!
「竜の吐息を」
 大鎌を振り抜いたほのかに応じ龍が翡翠色のブレスを放つ。暗く光る緑の炎が光諸共クランベリーを飲みこんだ。フロア全体の景色が戻り光源を閉ざしたブレスが内から輝く!
「お、おおおおおおおお!? これはッ! 私の光が、輝きがッ!」
 クランベリーが光線を全方位放射! 風船じみて膨らむ炎を前に龍を駆け上がったシデルは龍の頭を蹴って飛ぶ。眼鏡を押し上げ、頬を張る杏奈とアイコンタクト。
「今です、たたみかけますよ!」
「ヨロコンデー! キャリバーくん!」
「フーンク!」
 相棒にまたがり駆けだす杏奈。商品棚をジャンプ台に飛翔すると同時にシデルは火のついたパンプスで飛び蹴りを撃つ! 大気圏突破めいた速度の急降下が緑色の炎と光を貫き鳥の腹に突き刺さった!
「天・誅ッ!」
「ぐッほぉ!」
 鳥の目とクチバシから光が飛ばすクランベリーを、シデルは膝を曲げて渾身の力で蹴り出した。炎抜けて落下する彼女に近づいた杏奈は、相方のシート上でブレイクダンスじみた回し蹴りを繰り出した。
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
 蹴られたクランベリーが激しく明滅。強いフラッシュに目を細めた杏奈はシートに着地、手に現した黒い球体を投げつける!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
 球体が爆発しクランベリーは地面に落ちた。仰向け姿勢でバウンドし、彼女は目からビームを発射! 杏奈をバイク諸共跳ね飛ばした。
「グワーッ!」
「くゥーッ……」
 バックフリップで体勢復帰したクランベリーが数度フラッシュを繰り返す。壊れかけの電球じみて再度輝いた彼女は地よりわずかに浮きあがる。自身を見下ろし、明度の落ちた光に血走った目を向けた。わなわなと震え出す肩。
「私の光、よくも私の光を……もはや許しておけませんッ!」
 クランベリーの全身に光が凝集! 羽毛の一本一本が金色に染まり、トゲのように逆立ち始める。
「死して詫びなさいッ!」
「おおっと動くなでござる!」
 光を放射しかける彼女の目前、懐に手を突っ込んだカテリーナが踊り出た。引き抜いた手には薄目の雑誌。
「動いたら、お主のベッドの下の秘密のアレをバラすでござるよ? いいのでござ……」
 そこでカテリーナは言葉を切った。突きつけた雑誌を裏返し、表紙を眺める。
「イケメン坊主写真集。引き締まった尻えくぼがはじく清水、来光が照らす聖域特集。……人の業、深すぎるでござる」
「……キエエエエエアアアアアアアアアアアアッ!」
 怒り叫ぶクランベリーに落雷が命中! 空から降り来たるズミネが電極めいた杖を床に刺した瞬間クランベリーはドーム状の電光に閉ざされた。直後、内部で全方位掃射された光線がドームの形を歪ませる。ズミネは負けじと握る杖に電気を流す!
「今のうちになんとか攻撃を……長くは持ちません……!」
「引きつけよとな? 任せるでござる!」
 請け負いカテリーナが咳払い。雑誌を投げ捨て人差し指を突きつけた。
「聞かれよ! 化粧は道化師を演じる必要不可欠! ショーが盛り上がるのはあのコミカルな化粧があってこそ! 素顔にジャージで失敗するピエロなぞ、痛いおっさ……もといおにーさんでござる! ちょっと拙者はなしでござるな!」
 直後、光線がカテリーナの方へ向く。横殴りの雨じみた光線は電光の壁を突き破って飛び出した! 集中砲火を手裏剣連続投擲で相殺するカテリーナを横目にルナは二刀を手に回転。炎をまといクランベリー背後に斬りかかる! 燃える回転斬撃が鳥の背中を焼き抉った。
「ああああああああああッ!」
「おれ、おとこだからあんまりよくわからないけど……お化粧って昔は魔除けとか、虫除けとかそういうためにやってたって本で読んだことあるよ! あと、『大人の女の人』になった証でもあるって!」
 背中から飛び出す光線をルナはすんでで飛び下がり回避。商品棚に着地しながら哀れみの目を向けた。
「……あれ? ってことはクランベリー……さん、は大人じゃないのかな? おれと同じ? アイス食べる?」
「聞いていれば知った口を……お子様めがぁぁぁぁぁぁッ!」
 振り向きざまに振るわれた腕から飛び出す光線をルナは回転跳躍してかわし、刀をX字に振り抜く。剣から飛ぶ斬撃が鳥の胸を斬り裂いた。のけ反るクランベリーの目に、薄暗くなるフロアと輝く星空が映り込む! 刀を床に突き刺し、手を組んだほのかは囁くように呪文を唱えた。
「滅びという名の救済を。……皆さん、コンビネーションです」
 瞬間、星空から無数の光が降り注ぐ! 流星群に射抜かれるクランベリーの周囲をライドキャリバー二機が旋回し、その輪の内にシデルとシュテルンが着地。背後に来た機体を蹴って飛び蹴りを放ち、直撃と同時に蹴り上げた。打ち上げられたクランベリーになおも刺さる流星群。クランベリーの光が弱く、失われていく。
「がッ……わ、私が、この私が……美しさを捨てた、者達になど……!」
「……それは違うんじゃないでしょうかーぁ?」
 クランベリーのそばまで跳んだツグミが静かに告げる。黒く禍々しいオーラを帯びた右手を掲げ、暗い瞳で見下ろした。
「素の自分という下地があって。あくまでその延長線上で形を整えるものですよーぅ? なりたい自分の再認識。自分の新たな一面の発見。綺麗である為の補助機能。それを蔑ろにする方が、よっぽど美の追求を捨てているんじゃないでしょうかーぁ」
「そんな……ぎあああああああッ!」
 星にうがたれた鳥胸へ、ツグミは腕を振るった。胸を削られ胴を二分されたクランベリーは白目をむいた眼球と口から閃光を放つ。そして別れた体を激しく閃かせ、彼女は爆発四散した。

作者:鹿崎シーカー 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年8月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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