二刀の剣士は血の海に泳ぐ

作者:青葉桂都

●泳げエインヘリアル
 8月も後半にさしかかり、海水浴のシーズンも終わりが見え始めた。
 それでも、残り少ない夏を楽しもうとまだ少なくない人々が海を訪れている。
 だが、この日は招かれざる客までもが海に現れた。
 太平洋に面した、東海地方のとある海水浴場。
 競泳水着のように体にぴっちりとはりつく薄手の装甲を身にまとった男は、それぞれの手に血の色で星座が刻まれた剣を持っていた。蟹座と魚座だ。
「ふっふふ……広いな、海は。閉じ込められていた俺にはまぶしいほどだ」
 鮫のように歯をむき出しにして男は笑う。
「だが、青では物足りん! 男にふさわしい海は、真っ赤な血の海よっ! このソーンダイクがふさわしき色で染め上げてやろう!」
 身長3mを超すエインヘリアルの吠え声を聞いて、近くにいた海水浴客があわてて逃げ出そうとした。
 けれどもしょせんは一般人。デウスエクスの脚力にかなうはずもない。
 砂浜が、海が、たちまち血で赤く染まっていった。

●蒼い海を守れ
「海水浴場にエインヘリアルが現れるんじゃないかと思って調べていたら、案の定現れるのがわかったわ」
 最上・白寿(素直になれない・e01779)は集まったケルベロスたちへと告げた。
 事件を起こすのは、アスガルドで重罪を犯した犯罪エインヘリアル。地球へ捨て駒として何体も送り込まれている者の1体だ。
「放っておいたら、海水浴場にいる人が皆殺しにされちゃう。グラビティ・チェインを奪われちゃうし、エインヘリアルが憎悪と拒絶を集めることになるわ」
 そうなれば地球で活動するエインヘリアルの定命化が伸びることにもなるだろう。
 急いで現場に向かい、デウスエクスを撃破して欲しいと白寿は告げた。
 後方に控えていたドラゴニアンのヘリオライダーが敵について話し始めた。
「エインヘリアルはゾディアックソードを二刀流で構えています。他に、敵を切り裂いて血の海を作り出し、そこに引きずり込んで追撃する技を使うようです」
 戦場は多くの客でにぎわう、とある海水浴場だ。
 事前に人々を避難させることは不可能ではないものの、獲物がいない状態になってしまうとエインヘリアルがそこに現れない可能性がある。
「おそらくは戦闘が始まってから避難させる形になるでしょう。避難活動を皆さんが行う必要はありませんが、できるだけ敵の気を引くことを考えた方がいいかもしれません」
 特に寄り道をしなければ、敵が海水浴場に現れるのと同じくらいのタイミングで、ケルベロスたちも現場に到着できるだろうとヘリオライダーは言った。
 ヘリオライダーが説明を終えるのを待って、白寿も口を開く。
「アスガルドの犯罪者なんかに、人々を傷つけさせるわけにはいかないわ。海水浴を安心して楽しんでもらうためにも、がんばらないとね」
 うまくいけば、ケルベロスたちも海水浴を楽しむことができるだろう。
 最後に、白寿はそう付け加えた。


参加者
御神・白陽(死ヲ語ル無垢ノ月・e00327)
最上・白寿(素直になれない・e01779)
武田・克己(雷凰・e02613)
此野町・要(サキュバスの降魔拳士・e02767)
歯車・巻菜(天穿ツ魔弾・e15522)
アニマリア・スノーフレーク(十二歳所謂二十歳・e16108)
西院・織櫻(櫻鬼・e18663)
真田・結城(白狼・e36342)

■リプレイ

●広い夏空の下で
 砂浜の端に降下したヘリオンから、ケルベロスたちはエインヘリアルが現れるはずの地点へと移動していた。
「海は青だから良いんだよ。赤の方がいいだなんて冗談もほどほどにしろ」
 移動しながら、嫌でも視界に入る青い海をながめ武田・克己(雷凰・e02613)が呟く。
「そうですね。空気の読めない輩は早々に片づけてしまいましょう」
 鋭い眼光で前方を見つめて、真田・結城(白狼・e36342)が言った。
 砂浜にはいまだ何も知らない人々が、楽しい時間を謳歌しているようだった。
 ケルベロスたちの中にも、このまま彼らに加わりたいと考えている者がいただろう。だが、まずすべきことは1つだ。
「やれやれ……何も海水浴場まで出なくてもいいじゃないの。まあ、見つけられたのは幸い。さっさと叩くわよ。準備はいいわね?」
 最上・白寿(素直になれない・e01779)が、胸を張って仲間たちに声をかける。
「もちろん! 水着に着替えにタオル、ちゃんと準備してきてるよ!」
 色よく日焼けした顔に朗らかな笑みを浮かべた此野町・要(サキュバスの降魔拳士・e02767)が言った。
「……要……それはまだだよ。終わったら海で泳ぎたい所だけど、まずはお仕事だね!」
 歯車・巻菜(天穿ツ魔弾・e15522)が閉じていた片目を開いて言った。
「あ……うん、わかってるよ。ちょっと浮かれちゃったけど、大丈夫!」
 サキュバスの少女が首を横に振った。
「今はまずなすべきことをいたしましょう。人命優先です」
 アニマリア・スノーフレーク(十二歳所謂二十歳・e16108)が海に背を向けて白銀のパイルバンカーを一方に向けた。
 杭が指し示す方向に、人間離れした長身の男が立っていた。
 無造作に歩いてきた男は、ケルベロスたちを見つけて口の端を上げる。
「どうやら出迎えがいるようだな。青い海にふさわしからぬ物々しい者ども……このソーンダイクを止めようというのだな」
 鮫のように笑う男の前へ迷わず進み出た男もまた、両の手に刀を構えている。
「刀と剣の違いはあれど、二刀流の剣士。願ってもいないよい敵が現れましたね」
 西院・織櫻(櫻鬼・e18663)の声は静かだ。
 だが、口火を切ったのはすでに対峙している2人ではなく、また別の男だった。
 敵の姿に即座に動きを見せた男もまた、2振りの得物を腰の後ろで交差させている。
 御神・白陽(死ヲ語ル無垢ノ月・e00327)の両手が閃き、構えもまるで見せぬまま最速で彼は切りかかった。

●砂浜の剣劇
 剣閃が二度、走った。
 十字に切り裂かれたのは、要の褐色の肌だった。
 強襲をしかけた白陽よりも、さらに素早くエインヘリアルはゾディアックソードを十字に振り抜いて見せたのだ。
 要はとっさに白陽をかばってかわりに攻撃を受けた。
 エインヘリアルの膂力は彼女の体を深く切り裂いている。
 体を走り抜ける熱さに足がもつれて、意に反して一歩、二歩と後ずさる。けれど彼女は三歩目にフェアリーブーツで強く砂を踏み込む。
 刀を振り切って動きが止まった敵に仲間たちが攻撃をしかける。
 白陽の双刃には雷が宿っていた。装甲を引き裂く刺突を追って克己も敵へと研ぎ澄ました刃を突き立てる。
「こういうのは得意じゃないんだが、四の五の言ってられんからな」
 避難を始めた一般人たちに近づけぬよう、彼は敵の進路をふさいでいる。白陽も至近距離にまとわりついて移動を妨害しようとしているようだ。
「ふっふふ、なかなかやるなケルベロス! ならばまずは貴様らの血で海を赤く染めてやらねばならんようだ」
 ケルベロスたちの狙いに気づいているのかどうか、エインヘリアルは意図通りまず8人の相手をするつもりになったようだ。
 アニマリアが白銀の杭に凍気を宿す。
 勢いよく飛び出したそれで敵を貫く彼女は、残念なものを見る目で敵を見ていた。
「前闘ったエインへリアルも海に来てましたけど……その、観光的な概念があるんですか?」
 敵が何かを言い返そうとした隙をついて、要は跳躍した。
 美しい虹をまとって頭部に叩き込んだ蹴りが開こうとした彼の口を閉ざす。
「海は青いから綺麗なんだよ! 分かれ、この妖怪脳筋海坊主!」
 着地の衝撃で傷口がまた痛み、要はよろめきながら数歩進んだ。
 織櫻が刀を握ったままの拳を敵に触れさせて螺旋の力を注ぎ込む。刃を潰した結城の模造刀が弧を描いて浅く敵を切り裂いた。
 白寿は要に視線を送った。
 負傷の程度を確かめ、すぐに視線を敵に戻す。
 砂浜には不似合いな赤い着物の袖は、すでにじゃまにならないようたすきがけにしている。
「要ちゃんは大丈夫そう?」
 巻菜が声をかけてくる。
「まだ大丈夫でしょ。海で遊びたいんなら、あまりはりきりすぎないことね」
 そっけない口調で告げると、白寿は想定通りドローンを展開した。
「それじゃ私も……。ドローン展開……みんなお願いっ!」
 白寿に続いて巻菜もヒールドローンを作り出し、2人分のドローンが戦場を飛び回る。
「赤がいいのは褌だけで結構よ!」
 仲間たちを守らせながら、吐き捨てるように白寿は告げた。
 罪人として封じられていたという敵は、素行や頭の出来はともかくとして戦闘能力は十分に高いようだった。
 白陽はその敵に、ほとんど間合いを取らせずに接近して攻撃していた。
 空中で連続ジャンプをしかけて頭上を飛び越えてみせる。
 攻撃しながらダブルジャンプはできないので手数が犠牲になるが、それで敵の意識が自分たちに向くならば成果は十分。
 前衛へと星座の幻影を放つ敵の、攻撃動作が終わった瞬間に白陽はさらに攻撃する。
「死を撒くモノは冥府にて閻魔が待つ。潔く逝って裁かれろ」
 手にした二本の刀のうち一方、死を運ぶ鋼が影の色をした弧を描く。
 暗い月が敵の急所を切り裂いて赤い血飛沫を巻き上げた。
 ソーンダイクが白陽のほうを振り向いた時、すでに彼は影も見せずに移動していた。
 砂浜から一般人たちの姿が消えるまで、それほど時間はかからなかっただろう。
 踏み荒らされ、無数の足跡が刻まれている砂浜。とはいえ、その範囲は限定的なものとなっていた。
 織櫻は敵がなるべく移動できないように戦っていた。
 まったく動かないようにすることはもちろんできないまでも、行動範囲を狭めようと試みることはできる。
 ケルベロスたちの意図に気づいているのかいないのか……少なくとも、エインヘリアルはことさらにケルベロスたちを突破しようとする様子はない。
「そろそろ頃合いだな。全力で倒すために戦わせてもらおうか」
「ほう……やれるものならやってみるがいい!」
 克己の言葉に一声吠えると、エインヘリアルは両手を大きく広げた。
 薙ぎ払われる第一の刃を、巻菜が仲間をかばって受け止める。飛び散った血が砂浜に溜まって海となり、足を取られた隙に二撃めが襲う。
 表情を変えず、しかし織櫻はその攻撃をしっかりと見ていた。
(「太刀筋は見事なもの――これまでさぞかし多くの命と血肉を吸ってきたのでしょう。積み重ねられたその技と血肉、我が刃の糧としましょう」)
 自分と同じ二刀流の、高い実力を持つ剣士……『刃を磨く』に相応しい相手だ。
 至近距離に張り付いたままの白陽や、克己が攻撃するのに続いて織櫻も敵に接近。
 桜の象嵌と、瑠璃の象嵌を施した2つの刃は、目にも止まらぬ速度でエインヘリアルの急所を掻き切っていた。

●血にまみれた砂浜
 人々が逃げ切ってからも、戦いは長く続いていた。
 敵の攻撃を主に受けているのは挑発をしかけた要だ。それを巻菜がかばってダメージを分散させ、白寿が回復して支えている。
 近距離では白陽、克己、織櫻の3人が敵の体力を削り続けていた。
 結城は後方から踏み込む機をうかがっていた。
「許せませんね。海水浴シーズンの最後の思い出を狙うなんて。エインヘリアルには、こんなのしかいないのでしょうか」
 黒衣の青年が鋭い眼光で見つめるのは、エインヘリアルの脚部。
 敵が逃げる様子は今のところないが、より不利になればわからない。今のうちに足を削るべく、結城は狙いをつけていた。
 アニマリアが中衛から接近し、赤い花弁の舞う刀身で急所を切り裂く。要の蹴りや巻菜の如意棒がそれに合わせて繰り出された。
「これが、本気の力です。……行きます。……狼牙斬・爪牙!」
 霊力を模造刀に込めて結城も敵に接近した。
 薙ぎ払うその一撃と共に、狼の姿をした霊力も敵へと襲いかかり、その足をしたたかに切り裂いていた。
 敵の動きは徐々に鈍っているようだった。
 デウスエクスは死ぬまで戦闘能力が変わらないが、攻撃による影響は確実に敵を弱体化させる。
 アニマリアはそれを加速するべく中衛から敵を狙う。
 淡い色の、影のごとき刃に空の魔力を帯びさせて白陽の刀が敵を切り裂く。
「白陽さんに続くよ! みんな……お願いっ!」
 小型ドローンを展開した巻菜が、集中放火で敵の足を止める。
 足が止まったところに、アニマリアは踏み込み、足払いをかけようとする。
 軽い跳躍で回避されたが、彼女にとってもそれはグラビティを込めた本命の攻撃ではない。
「七色の光よ、混ざり白光へと還れ」
 オラトリオの翼に輝く七色の光を手のひらに収束させる。
 零距離から放つ光はエインヘリアルを捉えて貫く。
 威力の高い技ではないが、光は敵を弱体化させる効果を増させ、動きをさらに鈍らせる。
 敵は強大だが、ケルベロス側には手数がある。遠慮なく、アニマリアは袋だたきにするつもりだった。
「さあ、自身の罪に裁かれなさい」
 血の海に染まりたいなら、1人で染まればいい。彼女の言葉にはそんな想いがこもっていた。
 蟹座の剣が天に向かい、魚座の剣が海へまっすぐに向けられる。
 十字の斬撃が要を襲おうとしていた。
「ずいぶん俺を挑発してくれたが……せめて貴様だけでも道連れにしてやろう!」
「そうはさせないよ!」
 巻菜は仲間の前に迷わず飛び込む。
 少女の体を、敵は容赦なく切り裂く。
「巻菜!」
「平気だよ、要ちゃん。倒れたら、海で遊べないもんね」
 エインヘリアルの言葉通り、もっとも攻撃を受けていた要が食らえば……死にはしないまでもただてばすまなかっただろう。
 だが、巻菜ならまだ一撃は耐えられる。
 要がタロットを構えて突き出すと、接触点で気が破裂する。
「待ってなさい、巻菜。すぐに回復するから」
 敵の視界がふさがれた隙に、白寿が駆け寄りながら心霊手術を施してくれた。
「ありがとう、白寿。私、負けないから!」
 気合いを込めて叫び、巻菜は自らを奮い立たせる。けれど、もう一撃耐えられるかどうかは、わからなかった。
 防衛役の2人も限界が近かったが、それは敵も同じことだった。
 もっとも逃げようとする様子はない。使い捨ての駒である彼に、逃げ場などないのかもしれない。
 結城の刀が空の魔力を帯びて敵を切り裂く。他の者たちも手はゆるめない。
 ケルベロスたちの攻撃を受けながらソーンダイクはにらみつけるような目を周囲に向けた。
 薙ぎ払う刃が克己を捉える。
 克己は血だまりが足元に出来始めたのを見て、飛び退こうとした。だが、まるで血が意志を持っているかのように、彼の体を引き寄せて飲み込もうとする。
 とっさに、彼は直刀に龍玉と彼自身の闘気を込めた。
 追撃の刃を受け、歯を食いしばる。
「剣は心。剣正からざれば、心正しからず……お前の剣は正しくはない!」
 直後、血だまりに倒れそうになる体を引き起こして克己は跳躍した。
 空中に視線を上げた敵の横合いから、無言のまま神速で白陽の双刀が雷光をまとって襲いかかる。
「男の体がでかいのは弱い女や子供を守る為なんだよ。断じて暴力をふるう為じゃねぇ」
 剣使いとは斬り合ってみたいと思うこともあるが、この敵とはそんな気にならなかった。
 気を込めた刃が敵の頭部を切り裂く。
「後一息だ! 俺の回復はいいから攻撃してくれ!」
 だが、敵ももう限界であることに賭け、克己は仲間に呼びかける。
「わかったわ。風の刃を受けなさい!」
 アニマリアが突き出した氷の杭に合わせて、白寿がこれまで回復に専念して振るっていなかった両手の刀を薙ぎ払う。
 舌打ちした彼の側面から、織櫻が接近した。
「礼を言っておきましょう。あなたの剣に磨かれて、私の刀はまた1つ高みに登れます」
 死角から2つの刃に切り裂かれ、ソーンダイクは断末魔の声を上げて血の海に沈んでいった。

●海はただ青く
 砂浜には無数の血だまりができていたが、戦いが終わるとともに砂へと吸いこまれ、消えていった。
「血の海に染まったのは、そっちのほうだったな」
 白陽が皮肉下な笑みを浮かべて、エインヘリアルの死体を見下ろす。
「死体を片づけるか。遊んでいきたい者もいるんだったかな」
「海のシーズンももう終わりですからね」
 結城が静かに頷いた。
 自分たちや、被害を受けた物をヒールするのにしばし時間を費やす。
「みんなお疲れさまだよー♪」
 巻菜がねぎらいの言葉を発するよりも早く、 真っ先に防具を脱ぎ捨てたのは要だった。
「さー、泳ぐぞー!」
 すでに着込んでいたようで、日焼けした肌を水着が包んでいる。
「遊ぶぞー!」
 少し遅れて水着に着替え、アニマリアが応えた。
「わーい何して遊ぶー?」
 巻菜に問いかけられ、少し考えてアニマリアは水際へと走っていく。
「さっそく泳いじゃう?」
 問いかける要には答えず、海へとダイブ。
「着の身着のまま! 無人島に流れ着いた人ごっこー!」
 そのまま、アニマリアは波にさらわれて流されていく……。
「まったくなにやってるのよ」
 白寿が言った。振り向いた巻菜が目を見開く。
「……いや、白寿こそなにやってるの!?」
 目に鮮やかな赤褌にさらしというスタイルで、白寿は流されていくアニマリアへ呆れ顔を向けていた。
「いや、まあ、うん。古来からの日本の水着と言えばこれでしょ? ……あんまりジロジロ見ないでよ、巻菜」
 さすがに少し恥ずかしそうに白寿はそっぽを向いた。
「泳がないのー? 気持ちいいよ! 巻菜も、他のみんなも早くおいでよ」
 すでに泳ぎ始めている要が声をかけられ、2人は海のほうを向いた。
「そうだね、泳ごうか。アニマさんも、一緒に行こう!」
「ん? まきなん? ええよー、あそぼあそぼ」
 波間から身を起こしたアニマリアも連れて、彼女たちは泳ぎだした。
 浜辺にビーチパラソルを立てて、克己は寝そべっていた。
「……西院は、遊ばないのか?」
 近くで刀の様子を確かめている織櫻に声をかける。
「ええ。潮風や砂にさらされた武具を手入れしなければいけませんから」
 頷いて、彼は刀を納めて去っていった。
「刀が最優先か。ま、それも生き様だよな」
 パラソルに立てかけた愛用の刀へと視線を送る。
 海を楽しむ者にも、そうでない者にも、残り少ない夏の日差しは暖かく降り注いでいた。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年8月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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