智龍襲来~死に恥さらし

作者:あき缶

●イグニス新たなる一手
 金沢城にて螺旋帝の血族『緋紗雨』を保護することに成功したケルベロス。もう一人の螺旋帝の血族『亜紗斬』の所在は未だ分からないが、まずまずの成果をあげたといえるだろう。
「せやけどな、一難去ってまた一難……。螺旋帝の血族『イグニス』がドラゴンをそそのかしたようやねん」
 香久山・いかる(天降り付くヘリオライダー・en0042)はため息混じりに、イグニスの新たなる一手について予知する。
「イグニスはドラゴンと同盟を組んだんや。そして、智龍『ゲドムガサラ』の秘術で緋紗雨の位置を特定したようや」
 ゲドムガサラは、緋紗雨を攫おうと大量の『宝玉封魂竜』を引き連れて襲来する。
「あ、宝玉封魂竜っていうのはな、なかなか酷い代物なんやけど……」
 定命化で死に瀕していたドラゴンを、ゲドムガサラの術『宝玉封魂法』で、強制的に生き長らえさせているドラゴンが、宝玉封魂竜である。
 既に肉体は朽ち果てたからか、骸骨のような骨竜の姿だが、実力は『生前』とほぼ同じ。
「しかも数はかなり多いと予想されてるねん。かなりキッツイ戦闘になるやろうし、市街地なんかで戦ったら、めちゃくちゃ被害が拡大するやろうね」
 故に、エインヘリアルによって要塞化されていた、天下の名城『飫肥城』で迎撃する作戦が提唱されている。
「皆には、飫肥城で螺旋帝の血族を守りつつ、ゲドムガサラと宝玉封魂竜を倒してほしいんや」
 だが、いかな難攻不落なる飫肥城であろうとも、ドラゴンが数の暴力で攻めてこようというのだ。守り抜くのは至難の業。
「せやけど、ドラゴン側にも一点、弱点が在るんよ。それはな……」
 いかるが目を光らせ、ケルベロスに告げた弱点とは――宝玉封魂竜はゲドムガサラの指揮がなければ戦えないというものであった。
「つまり、前衛の宝玉封魂竜を一匹ぶっ倒したら、本陣に斬り込んでゲドムガサラを倒す! そうすれば、残ったドラゴンは文字通りの骨抜きや、何匹居ったかてもう怖くないでー」
 いかるはブンブンと腕を振り回し、熱弁を振るう。
「君らは、とりあえず、蒼い宝玉の蛇みたいな宝玉封魂竜を叩いてくれるか」
 いかるは当面の標的として、蒼い宝玉の骨竜を狙うように依頼してくる。
「戦闘能力は、口からビームみたいなブレスを吐いてくる感じやね。フォートレスキャノンに能力としては似てるかな。大丈夫や、いけるいける! 頑張ってや!」
 いかるは楽天的にケルベロスを励ましているが、ドラゴンの大群を相手にする戦闘に油断は禁物だ。場合によっては、緋紗雨をゲドムガサラに引渡して、手打ちにするという選択も必要かもしれない……。


参加者
榊・凛那(神刀一閃・e00303)
四乃森・沙雪(陰陽師・e00645)
蒼樹・凛子(無敵のメイド長・e01227)
カナメ・クリュウ(蒼き悪魔・e02196)
六道・蘭華(双霊秘詩の奉剣士・e02423)
アゼル・グリゴール(アームドトルーパー・e06528)
マサヨシ・ストフム(蒼炎拳闘竜・e08872)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)

■リプレイ

●閃光
 艶めく刀身を二本指ですいとなぞる。
「陰陽道四乃森流、四乃森沙雪。参ります」
 戦闘前の儀式を終え、四乃森・沙雪(陰陽師・e00645)は目を前へと見据える。
 飛来してくる蒼き玉を孕んだ骨だけの竜、『宝玉封魂竜』。被膜もないのに飛んでいる様は異様で、これが智龍の秘術による生死を捻じ曲げた歪な代物であることの証左でもあった。
「これはまた、厄介な輩が厄介な状況を持ち込んで再登場したものです」
 ため息混じりにアゼル・グリゴール(アームドトルーパー・e06528)は肩をすくめた。
 まるで死神の所業だが、この骨の竜が自身の尽きようとする生命を、同胞のゲドムガサラに乞うて無理に永らえさせた結果かもしれぬ。
 そう考えて、ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)は今はこの状況に物申すことはやめ、己の信条のみを口にする。
「いずれにせよ敵の強さは生前身につけた『本物』らしい。……けど、オレ達も守りたいものがある。オレ達のやる事は一つ」
「うん、手強くても足は止められない! 行くよ!」
 榊・凛那(神刀一閃・e00303)の声に、
「疾きこと風の如く、ですね。参りましょう!」
 蒼樹・凛子(無敵のメイド長・e01227)が応じる。一刻も早く術主のゲドムガサラを倒さねば、この飫肥城もどの程度もつか分かりはしない。
 宝玉封魂竜はケルベロスを感知するやいなや、カァッと骨の口を開いた。キィイ……と力が収束していく音が続き、ドラゴンの口中に眩い光が満ちていく。そして。
 ドシュウッッ。
 極太の光線がまっしぐらに六道・蘭華(双霊秘詩の奉剣士・e02423)を目指して放たれた。
「ひっ!」
 蘭華の技量では避けきれぬ。直撃も直撃、急所を撃ち抜かれることが約束された正確無比かつ強力な一撃が迫る。
 だが。
「ッ……テメェのヘボ攻撃がオレより後ろに行かせるわけねぇだろ!」
 マサヨシ・ストフム(蒼炎拳闘竜・e08872)がすかさず彼女の前に立って、庇っていた。
「ありがとうございます」
「俺はディフェンダーだ、当然のことだ」
 涼しい口調で、蘭華の礼をさらりと受け取ったマサヨシだが、腹からはシュウシュウと黒煙が上がっている。決して受けたダメージは軽くない。
(「口ではああ言ったが、骨だけになっても流石ドラゴンだな……」)
 マサヨシは己の気力を溜めて、どうにか痛覚を抑える。
 メディックのいない前のめりな布陣故、回復役を受け持っているカナメ・クリュウ(蒼き悪魔・e02196)もミストでマサヨシを癒やした。仲間の負傷状況に気を配っていたカナメには、マサヨシの強がりもお見通しだったらしい。
 沙雪の刀が電撃のような素早さでドラゴンに食らいつく。
 練りに練って、名刀よりも鋭く研ぎ澄まされた凛那の霊力の刃だが、ドラゴンに届かない。
「くっ……」
 凛那は眉をひそめた。速攻が重要なのに、この竜を落とすのは容易ではなさそうだ。
「貴方に関わっている暇はないのです!」
 凛子はそう言いながら氷の吐息を乗せた斬霊刀で斬りかかるのだが、ドラゴンは上空へと身軽に身を引いて、彼女の攻撃を避ける。
「くっ」
 悔しげに凛子は空の蒼を睨む。
「逃しませんよ」
 アゼルはケルベロスチェインを投げる。猟犬縛鎖がドラゴンを絡め取り、引き寄せる。
 ロディのアームドフォートがドラゴンの逃げ場を潰すように連射された。
「くっ、前哨戦とはいえ気が抜けませんわね……!」
 眼前でドラゴンの脅威を見せつけられた蘭華は冷や汗が頬を伝うのを感じつつも、両手に紫電を纏う。
「紫が命を別つとも……此方の不浄、神雷(アクセル)にて全て振り切れ! 華の剣姫!」
 魔法金属製の剣が亜音速でまっしぐらにドラゴンに飛んでゆく。
 金属と骨がぶつかって、軽い高い音が長く長く響き渡る。
「当たりましたけれど、あんまり効いてはいない様子ですのね……」
 蘭華は眉を寄せた。
 再びドラゴンが動く。広げた羽であったであろう扇の骨のような骨の先端すべてに眩くもおぞましき光が灯ったかと思った矢先。
 キュンッッ。
 一瞬のことだった。
「……え?」
 前衛全員の胸に真っ赤な大輪の花が咲く――。

●血花
「凛那ーーー!」
 蘭華の悲鳴が響いた。
「ら…………蘭華姉、だ、大丈夫……だよ」
 ――そうだ、まだ大丈夫だ。まだ立てる。
 凛那は半ば自分に言い聞かせるように、恋人になんとか微笑み、シャウトする。だが回復はあまり連発したくない、ジリ貧になるのは目に見えている。
「早急に突破しなくては!」
 凛子は大器晩成撃を試みるのだが、どうにもドラゴンに有効打を与えられない。気ばかり焦ってしまう……クラッシャーよりスナイパーに居たほうが確実だったかもしれない。
「ちぃっ」
「なかなか遊んでくれるよね」
 マサヨシとカナメでヒールをしていくが、彼らが持つヒールは一度に一人にしか作用しない。前衛は五人いて、ヒールが間に合わない。ヒール量も十分とはいえない。あくまで目標はゲドムガサラ――だがこれでは連戦に耐えきれるかどうか怪しい。
「や、ってくれるじゃないか」
 血に塗れたまま沙雪の空を纏う刃が反撃する。体は痛むが沙雪の頭は澄みきった泉がごとく冷静だ。
「長期戦は危険ですね」
 アゼルは冷静に呟くと、ガトリングガンを構え、爆炎を雨あられとドラゴンめがけて撃ちまくった。
 続け、ロディが地を蹴って、ドラゴンに肉薄すると達人級の一発を撃ち込む。
「お客人にも、凛那にも、狼藉は許しませんわよ?」
 グラビティをたっぷり乗せて、蘭華の鉄塊剣はドラゴンのあぎとをぶち抜いた。
 あぎとを折られ、ドラゴンはいきり立ったのかもしれない、否もはや動く死体同然のそれに感情など無いのかもしれない、とかくドラゴンは猛った。
 再びの極太の光線は凛子の傷口を抉るように貫く。
「か、は……っ」
 貞淑でも麗しき、ヴィクトリアンスタイルのメイド服が無残に焦げる。
 上司があえなく倒れる様に、凛那と蘭華は青褪めた。
 カナメの頬が少し動いた。常に楽しげに、戦の高揚に踊るかのように飄々としているカナメだが、ディフェンダーとして彼女を守りきれなかったことには思うところがある。
「ちょっと大人しくしててくれる?」
 ドラゴンを見下す位置からの飛び蹴りで、カナメはドラゴンの骨にヒビをいれた。
 そのヒビをアゼルが絶空の刃を入れて広げていく。鬱憤は相手にぶつけるに限る。
 静かな怒りはマサヨシも抱えている。故に蒼炎帯びるドラゴニアンは如意棒を振り回し、ドラゴンの宝玉を強かに打つ。
「……くらえ――ッ」
 ロディは念を集中させる。爆ぜさせたのは宝玉。この竜を司る器官がボロボロと破片を落とす。
 ドラゴンとケルベロスの攻防が続く。後衛や中衛にも向けられる死の光、その全てをディフェンダー二人がすべて庇いきることは出来ない。ヒールも焼け石に水である。それでもなんとかケルベロスは欠けることなく竜を追い詰めていった。
「あと少し……ッ。メイド長にしたこと、赦さないよっ!!」
 凛那の強き想いが刃に変わっていく。
「我が剣、我が心、束ねて一刀と為さん。されど、我が剣は曇りを許さず。其は唯、守る者の為、道を拓く刃なれば! たぁぁぁぁっ!」
 今度は届いた。彼女の全力が、ドラゴンを一刀両断にした。
「やった!」
「いいえ、まだですわ!」
 ぶつ切りにされたドラゴンが、まだ上半身だけで動こうとしているのを、蘭華の右手から放たれた地獄の火矢が射抜く。
 今度こそ、ドラゴンは完全に沈黙した。
 既に、ゲドムガサラ戦は始まっているようだ。早く合流しなければ、とケルベロスは逸る。
「我々も早く首魁に向かいましょう」
 アゼルが言い、ケルベロス達は走ろうとした。
 しかし、彼らの行く手を新たな『宝玉封魂竜』が阻んだ。

●次鋒
 見回せば、ゲドムガサラを護るように雲霞の如く宝玉封魂竜が飛んでいた。そのほぼ全ては飫肥城を襲わんとしながら、防衛班をつとめるケルベロスの迎撃を受けているのだが、もちろん将を倒させまいとケルベロスの接近を阻む者もいるのだ。
「ブードゥーのゾンビよろしく使役しているのですから、自身を守るために使うのも思えば納得ですね」
 アゼルはバイザー越しにドラゴンの群れの奥で暴れるゲドムガサラを望む。
 もっと早く蒼玉の竜を屠れていれば、妨害をくぐり抜けてゲドムガサラに到達出来たのだろうが、ケルベロスの前にはこの通り宝玉封魂竜が立ちふさがってしまった。
 先程の竜は、蛇のような形状だったが、次の相手はずしりと地に四肢を踏みしめ、こちらを睥睨している。
 ヒュオッと空を切り裂きながら、骨になりながらも鋭いドラゴンの爪が落ちてくる。
「来いよ、クソドラゴン。このオレを簡単に殺せると思うなよ?」
 不敵に笑みながら、マサヨシがその爪を受け止めた。押しとどめようとしたマサヨシの腕をドラゴンは圧し斬る。すぱっと鱗ごと外皮が切り開かれた。
 このドラゴンも先程と同等、いや少し上か。マサヨシは気力を溜めて耐える。
「どれだけ来ようが、やることは同じだ! 押し通る! さぁみんな、ガンガンやろうぜ!!」
 ロディが弾丸をばらまく。
「うん、届かせなきゃ! 行くよ!」
 凛那は刀を振るう。
「本来は神道なんだがな……四の五の言っている状況でもないか」
 ここで本命に届かぬまま終わりたくはない。沙雪は印を結び御神の名を奉唱、破邪の力を放つ。
「さて………人ってなんで、叶わないってわかってるのに、手を伸ばすんだろうね? 本当に愛らしくて、愚かだよね」
 カナメは、甘い声で絲を伸ばす。
「迅速に。目的は首魁ですから」
 骨竜に絡みつく蜘蛛糸が、アゼルの放ったケルベロスチェインと共にそれの自由を奪う。
「まだ前哨戦が続いているようなものですもの、油断なく……」
 蘭華が巨大なグローブから紫電をほとばしらせる。レールガンの要領で放たれる鋼の剣弾頭が骨竜に突き刺さる。
 ドラゴンが鋭い爪を今度は横に薙いだ。
 まるで癇癪を起こして机の上のものを払い落とすがごとく、乱暴に前衛が散らされる。
 カナメとマサヨシは庇いに入った。だが、四人いる前衛を完璧には守りきれない。爪の直撃を受けて気を失ったために、地面に受け身を取ることも出来ずに叩き落された凛那が動かなくなる。上司だけでなく恋人まで倒れ、蘭華の顔色はもはや紙のようだ。
 カナメがマサヨシに桃色の濃厚なミストを与えた。サキュバスとして蓄積している快楽エネルギーを注いで、この仕事をしすぎて崩壊しそうな守り手の苦痛をカットしてやる。
「こんなところで手間取るわけにはいかない!」
 沙雪は神霊剣を構え、ドラゴンに刺突を仕掛ける。
「死せる強者にオレ達ができることは、いつだって真っ向勝負だっ」
 ロディが装備するアームドフォートが形態を変えていく。砲撃モードに切り替わった砲は、エネルギー回路を直結、収束するエネルギーにロディのグラビティが螺旋を描いて混じりこむ。
「MAX! ぶちかます!!」
 叫びとともに全力の砲撃がドラゴンに直撃する。
「ユニット固定確認……炸薬装填……セーフティ解除……」
 アゼルは近接戦闘用刀身射突ユニットを腕に装着すると、
「目標捕捉、これより突撃する!」
 そう叫んでドラゴンに特攻をしかけた。
 だが、ドラゴンはその杭打機を紙一重のところで爪で相殺する。
「許せませんわ……」
 優れない顔色のまま、蘭華は鉄塊剣でドラゴンに斬撃を浴びせる。
 ゴッと鈍い音が、鉄塊と骨の間で響く。
 ヒットアンドアウェイ、距離を取ろうとした蘭華の肢体に、ドラゴンは爪をぞぶりと残酷に埋めた。
「あ……」
 呆然と目を見開き、地獄の火を散華のように美しく散らしながら、蘭華が地に横たわる。

●道半
 ドラゴンの爪は強力だった。ディフェンダーは『庇い続ける』ために、全ての手番をヒールに使って戦線を維持していた。
 故にダメージソースは、沙雪とアゼル、ロディの三人に限られてしまっている。いかな歴戦のケルベロスとて三人でドラゴンを倒すのは至難の業だ。
 ロディの念力で宝玉を削り、
「アマテラスオホミカミ、トホカミエミタメ……」
 十言神咒による浄化の力で沙雪がドラゴンを罰する。
「とっとと退場願いたいのですがね」
 ガトリングガンを撃ちまくるアゼルに、黙れとばかりに鋭い爪が襲いかかる。
「行かせるか!」
 アゼルの前に割って入ったマサヨシに爪がまともに突き刺さる。
 串刺しになってゴブと血を吐いたマサヨシは、カッと目を見開くと、竜を睨みつけて吼えた。
「~~~ッやれるもんなら……殺してみやがれぇええあああああ!」
 魂が肉体を凌駕したのだ。
 文字通り気炎を吐いて、マサヨシは血まみれでゼエゼエと肩で息をしながらも、尚も目を血走らせ獰猛に歯をむき出して見せた。どんな状況ですら、心だけは矜持だけは折られない。
「そろそろ終わらせないとね」
 カナメはミストをマサヨシにまとわせる。もう何度このヒールを行ったか、回数も途中から数えることを止めた。
 沙雪の放つ絶空の一閃、しかしドラゴンは既の所で身をかわす。
「ええ、賛同します」
 アゼルは再びパイルバンカーユニットによる大ダメージを狙った。
「目標捕捉、これより突撃する!」
 疾駆。
 狙いすますは、肋骨の間に見える宝玉だ。
 キン、と杭が宝玉に当たる。炸薬が爆ぜる。ビシリと宝玉に大きなヒビが入った。
「! 畳み掛けるぜ! MAXを、ありったけを、叩き込む!」
 ロディのアームドフォートが全力砲撃を行う。
 焔に包まれる宝玉。『宝玉封魂竜』ならぬ『火炎封魂竜』のようになったドラゴンは、そのまま焼き尽くされるかと思われた。
 しかしドラゴンの最後の苦し紛れの一撃がアゼルを跳ね飛ばした。
「しつこい。ここで仕留めさせてもらう!」
 沙雪は尚も暴れようとするドラゴンの炎を掻い潜り、ヒビが広がる宝玉に、四乃森家が誇る霊剣を深々と突き立てた。
 崩壊する宝玉――ドラゴンが骨の塊に戻る。
「…………やったね。でも……」
 カナメは周囲を見回す。首魁には届かせまいと次々と宝玉封魂竜が集まってきている。しかし今のケルベロスにこれ以上の継戦は難しい。
「……撤退条件だな」
 ロディは凛那を背負う。カナメは凛子を、沙雪はアゼルを、マサヨシは蘭華を。
 無念だが、今は退くしか無い。ゲドムガサラは他の者がきっと仕留めてくれるだろう。幸い、まだ飫肥城は健在のようだ。
 四人を背負う四人は、グラビティが飛び交う戦場の間隙を縫って、飫肥城内へとひた走る。
 城に入る前に、ふと振り返ったカナメは、骨竜達の動きがおかしいことに気づく。統制を失っているようだ。
「これは……」
「……ゲドムガサラが倒れた、のでしょうか」
 カナメの背でぐったりと同じ光景を見ていた凛子の呟きに、他の面々も振り返る。
 防衛班達が好機到来とばかりに一気呵成に攻め込んでいくのが見えた。

作者:あき缶 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年7月6日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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