おにぎりは梅干しに限る!

作者:なちゅい

●おにぎりには保存に最適な梅干しやろ!!
 おにぎりというものは、古い歴史を持つ。
 古くは弥生時代にそれらしき痕跡が確認されており、平安時代の頓食(とんじき)と呼ばれる蒸したもち米を握り固めたものが、現在のおにぎりの起源と考えられている。
 武士の世になれば、すでにおにぎりは兵糧として使用され、梅干し入りのものがすでに食べられていたと言う。梅干しを入れるのには、防腐の意味合いもあったとのこと。保存食として最適なおにぎりだが、今ではレジャーに、軽食にと人々に愛されている。
「だから、おにぎりには梅干し以外考えられん」
 そこは、とある農家の住宅内。延々と語るのは、ビルシャナと成り果てた男、中野・洋裕。見た目は40前後の中年だろうか。梅農家である彼としては、譲れぬ部分があるのだろう。
「冷えたご飯しか使えぬツナマヨなんぞ邪道!」
「油っぽい肉や揚げ物なんぞありえん!」
「味噌や納豆なぞ、入れる者の気がしれんわ」
 口々に他の具材を否定していく信者達。中野はこくりと頷き、声を荒げる。
「古来より愛されている梅干しこそ、おにぎりには至高!」
「「「おおおおおおおお!!」」」
 その場に集まる者達の怒号が、住居内に響き渡っていた。

 ヘリポートに向かうべく、ビルのロビーを歩くケルベロス達。
 彼らはラウンジで、美味しそうにおにぎりを食べているリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)の姿を発見し、声をかける。
「ようこそ。おにぎりって、美味しいよね……」
 テーブルの上にはおにぎりが並ぶ。数人のケルベロスがリーゼリットに断わりを入れてから、1つ手にして食べてみる。
 具は個々人で違うようだったが、ほんのりと甘さのあるご飯と具材が絶妙に絡み、一気にかぶりつきたくなってしまう。気づけば、手に取ったメンバーはおにぎりを食べきっていた。
「そういえば、おにぎりは梅干ししか認めないビルシャナがいるって!」
 仔ウサギの少年、バレンタイン・バレット(ひかり・e00669)がそう主張すると、いつの間にか全てのおにぎりを平らげ、お茶をすすっていたリーゼリットがこくりと頷く。
 鎌倉奪還戦の際にビルシャナ大菩薩から飛び去った光。その影響は今なお続いている。
「主張内容は今、バレンタインが言ってくれたとおりだね。ビルシャナは現地到着地にはすでに、10人前後の人々を自身の主張に同調させているよ」
 ビルシャナは主に、4、50代の男女をメインに取り込んでいるらしい。放置すると、この人々はビルシャナの信者と成り果ててしまう。
 戦いとなれば、この人々はビルシャナの意に従う形で戦いに参加する。ビルシャナを倒せばこの人々を救出することはできるが、配下が多い場合はそれだけ戦闘において不利になってしまう。
「できれば、ビルシャナと戦う前に説得しておきたいね」
 この人々の目を覚ますのは簡単ではない。ただ、ビルシャナの主張を覆すようなインパクトのある主張が効果的だということなので、良い説得方法を考えておきたい。
 ビルシャナとなったのは、梅農家の中野・洋裕(なかの・ようすけ)だ。
 彼は比較的近場で大きな街、和歌山県紀伊田辺駅付近に現れ、信者の取り込みを行っている。
「ビルシャナの教義に共感できない人達は、この場から逃げているようだね」
 ビルシャナは自身の主張に意を唱える相手……ケルベロスに対しては、経文を唱えて惑わせてくる他、閃光を放って攻撃を行う。まれにレオタードの力を借りて自身や信者の回復に当たることもあるようだ。
「あと、戦いが始まるまでに説得できなかった信者も、ビルシャナと戦う皆の妨害へと動いてくるよ」
 この地点で残っていた信者は倒してしまう他ないので、予め認識しておきたい。
 リーゼリットはお茶を飲み干し、ゆっくりと立ち上がる。
「それでは行こうか。……あ、折角だから、皆もおにぎりを用意してくるといいかもしれないね」
 自作でも、コンビニやスーパーでの購入品でも。おにぎりおにぎり連呼するビルシャナ討伐の後だと、きっとお腹もすいているだろうから。
 彼女はそう告げ、にっこりとケルベロスへと微笑んだのだった。


参加者
暁星・輝凛(獅子座の斬翔騎士・e00443)
バレンタイン・バレット(ひかり・e00669)
霖道・悠(黒猫狂詩曲・e03089)
アバン・バナーブ(過去から繋ぐ絆・e04036)
舞原・沙葉(ふたつの記憶の狭間で・e04841)
セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)
アリシア・クローウェル(首狩りヴォーパルバニー・e33909)
沖田・ありあ(白のラメンタビーレ・e36935)

■リプレイ

●おにぎりを持って
 現地に向かうヘリオン内。
 そこでは、おにぎりについて語り合うケルベロス達の姿があった。
「おにぎりは多種多様の具を楽しめるのも魅力ですのに、それが分からないなんてもったいない!」
 鳥には分からないかもしれないけれどとやや皮肉を込めながら、自信に満ち溢れた表情のアリシア・クローウェル(首狩りヴォーパルバニー・e33909)が語気を強める。
 メンバーは皆、『おにぎりは梅干ししか認めない』と主張するビルシャナに同調させられた人々の説得の為、そして、事後のランチタイムの為、様々なおにぎりを用意してきていた。
「いろんな味のおにぎりの準備はばんたん! さあ、やつらにおにぎりの魅力をつたえにゆこう!」
「あァ、行こうぜ」
 意気揚々と仔ウサギ少年、バレンタイン・バレット(ひかり・e00669)が叫ぶと、旅団の友人である霖道・悠(黒猫狂詩曲・e03089)は、愛用のピアスを煌かせながら頷いた。

●おにぎりって、こんなに美味しい!
 ケルベロスが降り立ったのは、和歌山県田辺市。
 紀伊田辺駅に現れたのは、ビルシャナとなり果てた梅農家の男性、中野・洋裕だった。
「古来より愛されている梅干しこそ、おにぎりには至高!」
「「「おおっ!!」」」
 すでにこの場には、そのビルシャナの主張に同調した9人の中年の男女の姿がある。他の人々は巻き込まれぬようにと、距離をとっていた。
「おにぎりは梅干ししか認めない? 寂しいことだな」
 早速、舞原・沙葉(ふたつの記憶の狭間で・e04841)がその人々へと近づく。
 様々な具材を入れることが出来、無限の可能性を持っているのがおにぎりの最大の魅力。そう語る沙葉はこの場で持ってきた重箱を開けてみせる。
 そこには、明太子、塩むすび、焼きたらこ、ネギ味噌、納豆、味付け卵、鶏五目など、様々な味が楽しめるようにと沙葉が作った小さめのおにぎりの数々があった。
 沙葉はそれを差し出すが、具は梅干しと主張する人々は断固として受け取らない。
「梅干しも、好いケド。ウインナーとか、焼肉とか。さ、」
 悠もまた、持ってきたおにぎりを人々へと差し出す。
「米に合うのが具になった、おにぎり。美味いのは必至じゃん、?」
 これにもやはり、人々の態度は変わらない。
 それならと沙葉は仲間へとおにぎりを振る舞い、自らも仲間のおにぎりをいくつか口にする。
「うん……どれも美味しい」
 旨みの凝縮された明太子はご飯とマッチするし、具のない塩むすびだって素朴な味わいがあるものだ。
「梅干しとおにぎりの相性は勿論抜群ですが、それだけではおにぎりの魅力を十分には引き出せないのです」
 アリシアもまた、おにぎりを食べながら主張する。
 例えば、脂の乗った塩鰹。甘辛い味付けの昆布。そして、子供に人気のいくら。これだけ中身が違えば、同じおにぎりでもより美味しくいただけるはずだ。
「モノは証拠、是非アリシアの持って来た握りを食べてみませんか?」
 鮭握りが好物のアリシアは、食べ過ぎると飽きるから梅干しなどさっぱりしたものも食べたくなると、人々におにぎりを差し出す。しかしながら、なかなか人々は梅以外のおにぎりを受け入れようとはしない。
「梅も美味しいことは否定しません。でも、おにぎりは日本の文化。その分、多様性が楽しいと思うんです」
 塩むすび、ツナマヨ、おかか、鮭、昆布。焼きおにぎり、肉巻き、野沢菜巻、天むす。ケチャップライスにオムレツを巻いたオムすび。
 歌が得意な沖田・ありあ(白のラメンタビーレ・e36935)だが、料理も得意とあってたくさんのおにぎりを用意していた。渾身の一品は、海苔やウインナーで目やお腹のハートを自身のナノナノ風にデザインした「ありえったむすび」だ。
「ありえった、頑張ったら食べてもいいからね?」
 これには、ありえったも嬉しそうに喜ぶ。
 さすがに、おにぎりの数が増えてくれば、人々もごくりと唾を飲み込む。
「何を言う。梅干しは防腐にも効果的なのだぞ」
 そこで聞こえるビルシャナの一声。人々の思考が再びビルシャナの教義に染められる中、ありあは更に続ける。
「今は、防腐剤もよいものが出てきていますしね。色々なものを食べ比べるのもいいと思いますよ?」
「梅干しにこだわる必要はないですよ~! ラッピングや容器自体に防腐の工夫がされていますし」
「保冷剤とか。そういう機能付いた、バッグとか。防腐に対する、工夫は今じゃァ、結構出来るモンだよ」
 にっこりとありあが微笑むと、セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)、悠もフォローする。
「それに、塩でも十分防腐効果があったりするそうですよ~?」
 さらに、セレネテアルがマイペースに持論を語り始める。
「一番重要なのが味ですっ。確かに梅干しは美味しいですが、色々な具があった方がより美味しく頂けると思いますよ~!」
 具はご飯に包まれている為、中身が見えない。ニュアンスがなかなか伝わらないと考える彼女は、そうだと思いつく。
「例えば、お弁当に置き換えて想像してみてくださいっ」
 梅干しだけがのっている日の丸弁当と、鮭など様々なトッピングのされた華やかなお弁当。どちらが食欲をそそられるかなど、想像するだけでも明らかだ。
「『おにぎりと別で用意すれば良い!』というのは、梅干しも同じなので無しですよ~?」
 反論しようとするビルシャナを、セレネテアルは先んじて防ぐと、相手はぐぬぬと言いよどんでしまう。
「たしかに、梅のおにぎりもおいしい!」
「わかる……梅干しのおにぎりって安心するよね。あの酸っぱさが白米を引き立ててくれる感じ!」
 そこで、バレンタインが一度、梅干し入りのおにぎりを肯定してみせる。美少年といった容姿の暁星・輝凛(獅子座の斬翔騎士・e00443)などはそんな梅干しの説明と共におにぎりを差し出してみせた。ちなみに、輝凛のおにぎりは彼のおばーちゃんお手製らしい。
「うん、梅干しのクエン酸は疲労回復に良いんだってね!」
 そうして、輝凛のおにぎりに、人々は手を伸ばし、ぱくりと一口。
(「かかった!!!!」)
 その時、輝凛は片目を閉じ、狙い通りとドヤ顔をする。
 その中身は、おかか、鮭、焼きたらこなどなど。彼らの食べたおにぎりの全てに、梅干しは入っていなかったのだ。
「いや、うまいなあ」
「うん、美味しい!」
 梅干しと思いきや。様々な具に感嘆する人々。彼らの目を覚まさせ、輝凛はガッツポーズをしながらも、再びおにぎりを手にする。
「もう、おにぎりはいっぱいあるんだけどさ。僕も用意してきちゃって……食べてくれる……?」
 おにぎりを食べる人々へ、バレンタインは自身の好きなシャケおにぎりを語る。
「たまには、やさしい味がこいしくならない? おれは、しゃけおにぎりがいちばんすき!」
 しょっぱいながらも、ふわっとした優しい甘みもあるシャケ、おにぎり。様々な味のあるおにぎりから、好きなものを選ぶ楽しさも魅力の一つだとバレンタインは続けた。
「それを梅だけにかぎってしまうなんて、もったいないぜ?」
「ああそうさ。俺から言わせれば、おにぎりの具がどうのこうの拘る方が馬鹿らしいぜ」
 そこで、満を持して現れたアバン・バナーブ(過去から繋ぐ絆・e04036)がスカーフを靡かせつつ、叫びかける。
 そして、彼はコンビニで買ったとあるおにぎりを人々へと手渡す。それには、「炒飯おにぎり」と書かれてあった。
「この炒飯にぎりには、お米その物にすら味が付いている。これが何を意味するか解らないか?」
 アバンは人々が答える暇すら与えず、叫ぶ。
「ならば、教えてやろう。具以前の問題として、それを載せる土台、お米をまず重視するべきだってことだ!」
 塩にぎり、鶏五目を用意したメンバーはいたが、ご飯に味をつけるという点で着目したのはアバンだけだろう。
「どんなに美味い具を手に入れても、お米の炊き具合で全体の食感が良くも悪くもなるんだ!」
 お米がベチャベチャだったり、硬すぎであったりしても、おにぎりは美味しくはならない。
「だからこそ言おう! お米こそ俺達の魂! お米を守る事こそが俺達の使命! 違うか!?」
 すでに、我を取り戻していたおじさん、おばさん達はうんうん頷く。もう一吠えする気満々だったアバンは、「お、おう……」と握った拳を下げてしまう。
 やはり、お米があってのおにぎり。いくら具材だけが良くてもダメなのだと人々は実感し、ケルベロスのおにぎりを手に取り始める。
「く……」
 表情を歪めるビルシャナに、アリシアは今更ながらに気づいたような素振りをして。
「そういえば、目の前におにぎりの具材に丁度いい獲物がいますよね……手羽先」
 ペロリと舌なめずりすらする彼女に、ビルシャナは苛立ちげに経文を唱えて攻撃を仕掛けてくるのだった。

●手羽先にしておにぎりに突っ込んでやろうか!?
 向かってくるビルシャナ中野だが、アリシアが素早く応戦を始める。
「鳥にあげる握り飯はありません」
 彼女は敵のたるんだ腹へと電光石火の蹴りを叩き込む。
 人々を上手く説得したこともあり、信者はいない。孤軍奮闘し始める敵へ、バレンタインは見た目どおりというべきか、兎のように軽やかに跳ね、ヌンチャク型如意棒を敵の顔面に叩きこむ。
「ぐっ……!」
 それでも、ビルシャナは経文を唱え続ける。
 しかしながら、アバンが前線で仲間の盾となってそれを受け止め、「叶わぬ夢を見つめる望遠鏡砲」の砲口から凍結光線を発射し、ビルシャナの腕を凍りつかせていく。
「にゃあ、お」
 そして、悠がちりんと鈴を鳴らすと、戦場に幾多の影が現れる。
「「「にゃあみゃあ」」」
 響く鳴き声。その様はさながら百鬼、いや、百猫夜行。
 気まぐれなはずの猫達はあそんで、構ってと、一挙にビルシャナへと押し寄せる。
「くそ、うっとうしい!」
 ただ、ビルシャナは多数を相手にする力はない。足止めを受けながらも手足を大きく動かし、猫を散らすと、口から梅干しの種を飛ばす。
「ノア、頼むよ」
 悠の呼びかけに応じて、種を受け止めてくれたボクスドラゴンのノアール。ただ、その一撃は想像以上の威力だったらしい。
「おおおおおおおお!!! おおっ!? おおおおおおおお!! うおおおらあああああああああ!!!」
 アバンがそこで発したのは、溢れ出る食べ物への執着。『食べるために生きる!』……そんな活力をノアールへと与えていく。
「汚い攻撃をするな……!」
 己の騎士道に反する攻撃をする相手に眉を顰めた沙葉。彼女は日本刀に魔力を込め、一度納刀する。
「……退いてもらう!」
 そして、沙葉は居合いでビルシャナへと斬りかかり、素早く刃を連続して浴びせかけると、魔力に込められた冷気が徐々に相手の行動力をも奪っていく。
 それでも、ビルシャナはなかなか抵抗を止めず、経文に種飛ばしを繰り返す。
 翼を羽ばたかせるウイングキャットのみるにゃと共に、セレネテアルは回復で戦う仲間を支援する。
「がんばってくださいね~」
 まるで綿毛が宙を舞うように、捉えどころ無く戦場を駆け巡るセレネテアルは、仲間に直接触れることで氣を纏わせて残像を発生させていた。
 一方で、敵は少しずつ体力をすり減らす。梅干し入りのおにぎりを食べ、体力を回復させるが……。
「梅干しおにぎりは確かに一つの極致だけど……残念だったね。おにぎりの懐は、きみが考えるより広いのさ!」
 輝凛は呼びかけた直後、体内に宿す膨大なグラビティ・チェインを一つにつなぎ合わせていく。
「意思は瞳、力は拳! 皆の焔はこの胸に! 力を借りるよ! レディアント・ブレイズッ!」
 全身を金色の焔に包んだ彼は、ビルシャナに向けて強烈な蹴りを喰らわせる。
 胸部を引火させたビルシャナ。ありあはナノナノのありえったに守りを任せ、一言呟く。
「……鶏そぼろのおにぎりも美味しいですよね」
 そして、ありあは音速を超える拳でビルシャナを殴りつける。
 たたらを踏む敵へ、アリシアが肉薄した。
「アリシアの前でその五体、無残に散ってくださいな」
 彼女は簒奪者の鎌を手にし、二連の斬撃を同じ場所に、そして、ほぼ同時に重ねる。
「バカ、な……」
 ありえぬ現象もグラビティでこそ。アリシアが大鎌を降ろすと、ビルシャナは白目を向いて事切れていく。
「う~ん、あまり出番がなかったですね~」
 ほぼ回復で終わってしまったことに、拳士のセレネテアルは少しだけ不満げな表情を浮かべていたのだった。

●おにぎり食べよっ!
 ビルシャナを倒した一行。
「おつかれさまー! まずは、こわれてしまったトコロをキュアして……」
 戦いの跡をこのままにするわけには行かない。バレンタインは早速、溜めた気力を撃ち出して駅前の舗装を始める。
 それに続き、沙葉、ありあも気力を発して戦場跡の修復を行う。
 程なく作業を終え、沙葉は一息つく。
「せっかくだから余ったおにぎり、向こうで食べるか」
 駅から道なりに歩けば、海が見える。夏であれば海水浴を楽しむ人もいるのだろうが、少し時期も早い為、海岸に人はほとんどいない。
「ねえ、みんなでたべよう! みんなでいろんなおにぎりをたべれば、一層おいしいぞう!」
 バレンタインも用意したおにぎりを皆へ差し出す。シャケ、明太子、昆布、からあげと、実に幅広い。
「皆さんの持ち寄ったおにぎり……どれも美味しそうっ」
 セレネテアルは皆が用意したおにぎりを、見回す。道中で購入した物、手作りの物、そして、その形も大きいものから小ぶりなものまで様々。
 何より、これだけのメンバーが集まれば、中の具材も幅広い。
 悠が持ってきていたのは、ツナマヨ、ウインナーに焼肉入り。仲間と交換して食べようと、アバンは全員分の炒飯握りを用意していた。こちらも香ばしい味が皆を楽しませてくれる。
 輝凛も先ほどのおばーちゃんお手製のおにぎりを差し出す形だが、そこで残っていた鮭おにぎりを、アリシアが目ざとく手にとって食べていた。
 そして、バレンタインの用意したおにぎりの中には、梅干し入りもちゃんと用意されていて。
「私は梅干しも結構好きだ」
 こうして美味しい梅干しを食べられるのは農家がいてくれるからこそ。沙葉はビルシャナとして散った男性の冥福を祈りつつ、自身も用意してきた梅おにぎりを食す。
「和歌山は梅の美味しいところでしたよね」
 ありあもまた、美味しそうに梅おにぎりを口に入れる。
「……そういえば、梅かつおとか梅しらすとかは許せたのかしら……」
 ありあの素朴な疑問を気にして唸るメンバー達ではあったが、それでも、梅干しのすっぱさとご飯のマッチした美味しさを噛み締め、しばし穏やかな海を眺めるケルベロス達なのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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