ふわふわパンケーキバトル

作者:質種剰


「皆さんは、京都でもじわじわとパンケーキブームが来ていることをご存じでありましょうか?」
 小檻・かけら(藍宝石ヘリオライダー・en0031)が説明を始める。
「京都市にて、パンケーキ積み競争なるイベントが開催される予定でありましたのに、会場がデウスエクスに破壊されてしまったのであります」
 デウスエクスの襲撃は早朝だった為に人的被害が無い分まだ救いはあるが、イベントを中止にせざるを得なくなって、地元住民はいたく落胆しているそうな。
「そこで、皆さんには京都市のイベントホールへお出まし頂いてら、ヒールグラビティによる修復をお願いしたいのでありますよ」
 かけらが言うには、会場が無事に直ったらすぐにでもイベントを行う予定らしい。
「ヒールして下さるお礼がわりに、パンケーキ積み競争ケルベロス部門を臨時開催するそうであります。是非是非、お気軽にご参加くださいませね♪」
 パンケーキ積み競争とは、決められた時間内にパンケーキを焼いてタワーを作り、その高さを競って勝負をつけるというもの。
 勝敗を決めた後は、自分で焼いたパンケーキを食べる時間もあるようだ。
「参加者用のフライパンを配って、パンケーキの幅については公平さを保つそうですが、パンケーキの高さと材料は自由、パンケーキだけを積み上げるか、間にクリームやフルーツを挟むかどうかは、参加者の判断に委ねられているであります。高く積み上げる為の作戦を練るのも一興かと」
 つまり、昔ながらの厚みのパンケーキを焼くか、今流行りのスフレパンケーキで高さを稼ぐか、それともクレープ並みの薄焼きパンケーキを重ねる奇策に出るかも自由なのだ。
「また、パンケーキの材料の中には、ココアパウダーやお抹茶の葉、各種フルーツジュースやお野菜なども用意されてるであります。工夫次第で色んなフレーバーのカラフルなパンケーキが焼けるでありますよ♪」
 野菜は、茹でたものをすり鉢やフードプロセッサーですり潰し、パンケーキの生地に混ぜて発色に利用するそうな。
「それでは、皆さんのご参加、楽しみにお待ち致しておりますね♪」
 禁止事項は、未成年者の飲酒喫煙のみである。


■リプレイ


「折角高く積むなら! 美味しいパンケーキを!」
 トッピング係のユタカは、確かに抹茶ホイップ、チョコ、果物と準備万端だが、その中の桃を食ってる辺り、堪え性の無さが伺える。
「よっしゃ! じゃぁあたしもトッピング係と行こうかな!」
 メノウもクリームチーズやキウイ、アーモンドを広げて気合充分。こっちは苺をもさもさ食べていた。
「あ、上から地獄の炎で挟み撃ちにして焼けば早く焼けそうじゃないですか?」
 蓋したフライパンで蒸し焼きを試みるのは夕雨。
「ほら、あっという間に焼けました」
「なぁ夕雨殿、それ焦げてない? 所謂『大丈夫だよ焦げてないよ詐欺』では?」
「あー焦げてるように見えて全然焦げてないやつですね……自分が完璧すぎて怖い」
 パンケーキがあっという間。どれだけ強火だったのか。
「ははっぬかしおる」
「多少焦げてしまっていても頂きますよ、ぽんずが」
「がんばれ、ぽんず」
 現実逃避する夕雨をフォローするアイカと傍観するメノウ。
「仕方ない……唸れ! 拙者のおいしくなあれ!」
 緊張感のないやりとりの後、ユタカはおまじないを強行。
「柔らかそうな見た目に、ほんのりと香るバター……たまりませんね!」
「アイカ殿、つまみ食いは重罪でござりまする。後で寂燕殿に怒られますぞー」
 自分はチョコを食べつつも、摘み食いするアイカへ注意した。
「はっ! ごめんなさい……勝敗が決するまでの我慢……我慢ですよぽんず。頑張りましょうね……」
「……アイカさん、この歪に焼けたのも味見にいかがでしょうか?」
 厚いスフレパンケーキを量産するレカは悪魔の囁き。
「これも全部積みましょう、ユージンさん腕の見せ所ですよ!」
 反省したのかアイカはぐっと堪えてパンケーキを積み係へ送り出す。但し蜜柑を食べながら。
「皆つまみ食いをしている気がするけれど見間違えだよねぇ」
「……嫌ですね寂燕さん、見間違えですよー……」
「怒りゃしないから意識は持って食べなさいな、アイカ」
 優しく諭す寂燕は、間にメイプルシロップを塗って積んでいる。
「後で完成品を食べれる余裕が無くなっちゃうよ?」
 期待されたユージンは、パンケーキの表面へナイフでクリームを塗りつけ平らにするので、如何に焦げようと気にしない。
「ほら、クリーム層に挟まれた苺たっぷりの層なんて輝かしいと思わないかい?」
 紙の輪仕切りで囲って積み重ねる手際も流石で、
「何と丁寧な積み方、綺羅星積みと名付けよう」
 寂燕も大絶賛だ。
「天辺に飾切りした星型林檎を置いてフィニッシュさ」
 ヤードさんのチョコソース足形も可愛らしい。
 だが、トッピングまで終わった所でレカが気づいた。
「ど、どうしましょう。お砂糖と間違えて塩を入れてしまったようです……」
「ま、まぁ、なんとかするでしょ! ユージンさんとあとぽんずが」
 その後。
「お残しはいけません、塩分過多で死ぬとしても」
 塩パンケーキタワーを黙々と食うメノウ。
「うわ、クソしょっぱい」
 率直に顔を顰める夕雨の隣、
「げほぁっ!?」
 ユージンはクリームと一緒にレカ作パンケーキへ齧りつくも、凄い塩味に噎せて倒れた。
「お、おいしくなあれ、早く……」
「なるほど、死因は美味しいパンケーキ?」
 夕雨作ケーキで難を逃れたユタカが首を傾げた。

 ジャムやココアパウダー、抹茶等練り込んだ生地は昔ながらの厚さで正方形に、薄いプレーン生地は円形にと焼き分けるのはジェス。
 積む時は正方形と円形を交互に重ね、間にフルーツ缶詰を混ぜた生クリームを挟んだ。
 高さを増す毎に正方形の色味が変わって実に鮮やかだ。
 また、パンケーキの焼き時間もしっかり計測。
 焼くのと積み上げを並行して素早く行う辺り、料理好きの本領発揮だろうか。

「パンケーキタワーなんて作ろうものなら、一人で寂しい思いするだけでしたから! 今日は今までの分、がっつり積み上げるのです……!」
 寂しい告白をしつつ、ポンちゃんに焼き上がりを見張らせてパンケーキを焼くのはミライ。
 紅蓮覚醒の歌詞に合わせて厚いの3枚毎に薄い1枚を挟み、キウイとパイナップルでバランスを取り、タワーの高さを増していく。
「……高さは、己との勝負なのです!」

「生地を混ぜて焼くだけだっけ? それなら、わたしでも大丈夫っ」
 根拠ない自信に溢れるシルだが。
(「料理に限っては一瞬も目を離しちゃいけない」)
 彼女の壊滅的な腕を知るクリムは密かに緊張する。
「あ、緑はこれでいいんだよね」
 しかし、シルが抹茶と間違えて青汁の粉をドバドバ投入。
「いや、そんなの私はってシルー!?」
「ん? どしたの?」
 ぐにぐにとかき混ぜるのを見て、クリムは頭を抱えた。
「うまくいくかなぁ~」
 一方シルは、彼の焼く昔ながらのパンケーキを積むのへ夢中。
 人参のオレンジやブルーベリーの薄青が綺麗だ。
「シル、あーん♪」
「んー、おいしいっ♪」
 実食タイム。クリムが照れつつ差し出したパンケーキへ齧りつくシルは嬉しそうだが、
「あれ、シロップの甘さのお陰で意外と美味しい? ……ゴフッ」
 当のクリムは責任感から青汁パンケーキを食べ、時間差で苦しんでいた。

「んん……パンケーキの間にクリーム塗って、くっ付けながら重ねると安定感出る、かも……?」
 リーナとセイヤは、互いに作業を分担してパンケーキ作りに勤しんでいたが。
「……リーナには、絶対にパンケーキは作らせない様にしないとな……下手すると死人が出る……」
 兄の方は懸念があったようで。
「……かけらやガイバーンも、できれば手伝って貰えると非常に助かる……主に調理とリーナの監視をだな」
 2人へ密かに頼んでいた。
「存分に美味いパンケーキを食わせる事は保証しよう……」
 必死の説得につられた2人は、
「んん……何故かにいさんはわたしに作るのは任せてくれないんだよね……」
 眉を下げるリーナをあれこれ慰めて、セイヤ作の絶品パンケーキに無事ありつけた。
「フルーツ乗せたり……パンケーキいっぱい食べれて幸せ……♪」
 リーナも見事なパンケーキタワーを前に、すっかり上機嫌だ。

 紫姫は、パンケーキをグラビティで凍らせ、縦向きに積むイカサマを決行。
「縦向きも冷凍も構いませんが、グラビティは食材じゃないから」
 見咎められて横積みにするも、やはりパンケーキは凍らす紫姫。
「ちょっとした考えがありますの」
 それは、砕いた冷凍パンケーキを生クリーム等と共にパフェにする事。
「正攻法ではこの量はとても食べきれませんわ」
 パフェにした方が嵩が増すという事実に気づかない紫姫だった。


「パンケーキ好きとしては負けられないよね……!」
 スフレパンケーキを焼けるだけ焼きまくるマヒナの目はマジだ。
「……俺、甘いもの苦手なんだけど……」
 一方の理弥は明らかに当惑している。
「こいつ、負けたらけっこう凹みそうだしな……」
 それでもマヒナの気持ちを慮り、踏み台に乗りっぱなしで普通の厚みのパンケーキを焼く理弥。
 何枚か焦がして小檻に摘み食いされかけるも、マヒナの言いつけ通り慎重に積んでいく。
「わし、パンケーキ道を極めんと欲す……のじゃよ!」
 全面的に2人へ協力してくれる万造も頼もしい。
「マヒナ、何でスフレパンケーキは別皿に分けてあるのじゃ?」
「うん、制限時間が近づいてから普通のパンケーキタワーの上に重ねて一気に高さを足す作戦だから」
 一歩引いた位置から支える筈が積極的に質問攻めしている辺り、多少鬱陶しいかもしれない。
「って、わし、全然一歩引いておらんじゃないか!」
 踏み台仲間のガイバーンや影の薄い衣もバランスを崩さぬよう真剣に協力。
 マヒナ自身も高くなってくると翼飛行を駆使して積み上げる。
 各種トッピングも忘れず、最後にデンファレの花を飾れば完成だ。
 その後。
「……2位……僅差で2位……」
「……この大量のパンケーキ、俺も食うのか……」
 本気で悔しそうなマヒナの傍ら、理弥は別の意味で絶望していた。

「子どもの頃結構あこがれたんですよー、こういうパンケーキタワー」
 そんな宴が焼くのは、しょっぱいおかずパンケーキ。
「抹茶もせっかく京都なら作っておきたいですよねえ……?」
 生地を流し込む際は一旦フライパンを濡れ布巾で冷やし、焦げつかぬようにするテクも披露。
「……あっ! にんじん要らないっていったのに!!」
 だが、小檻が人参ピューレ入りの生地を焼くのへは、面白いぐらい狼狽えていた。

「……ガイバーンさんは2枚、小檻さんは5枚でしょうか?」
 と小皿で振る舞うミリアは、どうやら競技だと頭からすっぽ抜けてる様子。
「……小檻さんは、どんな異性がタイプです?」
「へっ」
 残りのパンケーキを大小に分けてウェディングケーキぽく積み重ね、ウェディングドレスな小檻をマジパンで作るミリア。
「隣にどんな男性を立たせようかなって思ってるだけですよ?」
「じゃあ……あそこの人参嫌いを」

「……デウスエクスの方々も、某ヴァルキュリアの少女みたいにパンケーキでも食べてその美味しさを知れば、少しは平和的になってくれたりしないもんかね……」
 独り呟く蒼眞は、作り方や材料の分量を何度も確認、竹串を刺して焼き加減を確かめたりと、やたら丁寧に調理。
「それじゃ、いただきます」
 目標通り、食いでがある分厚さの数枚重ねへメープルシロップやバターをたっぷりかけ、手を合わせた。

「美味しいは正義、パンケーキも正義なのですっ」
 ニルスが焼くのは、昔ながらの厚みのプレーン生地。
 卵黄+小麦粉の生地とメレンゲを別々に作ってから混ぜ合わせるような仕込みの丁寧さに、彼女の性格が伺える。
 焼き上げ積み上げを只管繰り返した彼女は4位。
 食べる時も、ベリー各種やアイスクリーム等、トッピングの充実ぶりには、衣も眼を見張った。
「みんなで美味しくいたーだきますっ」

「フハハハ……我が名は、世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスが大首領!!」
(「大首領様は、おそらくパンケーキ積みの事で頭がいっぱいでしょうからヒールに関しては私がしっかりしておかねば……」)
 今日もテキパキ修復をこなしたカシオペアは、パンケーキの生地を準備するも焼くのを領へと任せて、しっかり主を立てていた。
「ぎぜんはあくのとっけんだ! っておとうさんがいってたからヒールするよー」
 幼いテミスは意味も解らずにヒール、それでいてちゃんと善行している。
「ほう……パンケーキタワーか。我がオリュンポスが世界の塔とやらに挑むのも一興か」
 領は糞どうでもいい拘りを発揮、パンケーキの裏表の焼き加減に苦心した。
 出来る限り冒険しないという一般人的思考故、もう駄目だと思った段階でタワーは打ち止め。
 上から半溶けクリームをベースに、キャラメル、蜂蜜ソースを掛けて、最後にアーモンドダイスをデコるセンスはなかなかだ。
「ぜんぶたべられるかなー? でも、ぜんりょくでたちむかうおろかものはぜんりょくでたたきつぶすのがおうどうだっておとーさんもいってたよね!」
 完成したパンケーキタワーを前に、瞳を輝かせるテミス。
 領は、カシオペアが密かに案じる傍らで思いついた。
(「そういえば大首領様、今年の企画は考えられたのでしょうか……?」)
(「今年の超会議は『秘密喫茶オリュンポス』で決まりだな……」)


「下段は厚く重くフラワーバッター法でしっとり感大事」
「ふわら……ふらわーばった?」
「上に行くにつれて軽く薄く、シュガーバッター法でふんわり」
「うん? しゅがーばった?」
 万里は生地の材料を混ぜ分けてパンケーキ焼きに没頭。初めて聞く用語に戸惑うのは一華だ。
「ああ、ごめんごめん一緒にやろうな」
「わたしだってパンケーキくらい焼けますよ! ひょいひょいと!」
「じゃあ一華はこれ混ぜてくれる? それと食べるならこっち」
「わぁ! 噂のスフレパンケーキっ、いただきますー!」
 生クリームと苺、チョコソースが彩るパンケーキを差し出され、一華は嬉しそうにパクついた。
 審査後も、一華は万里との合作パンケーキタワーの3位の高さと安定感へ釘づけだ。
「もしやこれ、パンケーキのフリしたブロックでは? あ、そんなことない美味しいです。ふふ」
「……だって、高く積んだら一華が喜んでくれるかなって……」

「えっへん! どうですかドミニクさん、灯ちゃん可愛いでしょう!」
 エルトベーレは灯と揃いのボルドー色メイド服を着て問うも、
「おォ、眼福眼福……二人とも、よォ似合っとるわ。ほンに、めんこいのォ」
「ベーレは可愛いです当然です」
「へっ、二人とも!? いやその……わ、私は……」
 2人から一気に褒められ赤面してしまう。
 ちなみにドミニクは灯の掲げた割烹着とギャルソン服から、迷わずギャルソンを選んだ。
 灯曰く最強の作戦に従い、パンケーキを焼く3人。
「えへへ、また1枚、上手に焼けました!」
 真面目に手を動かすエルトベーレと、もごもご口を動かす灯。
「って、あれ? 何だかタワーが低くなったような?」
「気のせいです」
「はっ、これはきっとパンケーキの妖精さんの仕業!」
「そうです、妖精です!」
「妖精さんの加護を得た私達に負けはなしです! たぶん!」
 親友同士の漫才に和むドミニクは、
「妖精かァ、そンならしゃーねェわな」
 しれっとした顔で自分も焼き立てパンケーキに手をつけた。
「ギャルソン服の妖精もいる気がします!」
 最後、灯は小さく焼いた3枚の内1枚へ、チョコソースでぺっかぺかの笑顔を描く。
「みんなの顔をてっぺんに乗せる! 最強の作戦だと思いませんか!」
「ははッ、最強の出来じゃのォ!」
「これは食べる前に写真を撮らなくっちゃ、ですね!」

「焼くのが得意なのは肉だけではないことをお見せしましょう」
 そう豪語するだけあって固めの生地を焼くトリスタンは、積む前に少し冷ます辺りソツがない。
 合間に挟むのはスライスアーモンドや薄切り果物、外側はキャラメルを流し冷え固める作戦。
 甘さ控えめの生クリームを乗せて完成だ。
「お肉ではなく私の得意分野。これは負けられませんわよ?」
 そんな彼と張り合うのはトウコ。
 昔ながらのどっしりパンケーキを重ねるのだが、一番下はフライパン一杯の直径、そこから型を使い2ミリ毎直径を小さくする策を決行。
 また、合間に塗るヨーグルトクリームは硬めに仕上げた。
 見栄えにも拘ってか白さ眩しいタワーへ、クリームや苺、ジャムで飾りつけるトウコは楽しそうだ。
「今回は私の作戦勝ちですわね♪」
「無念……」
 勝敗が決した後は、2人して互いのタワーを食べ比べ、仲良く健啖家ぶりを発揮した。

「家庭科の授業で練習した腕を見せるよ!」
 やる気満々のあかりは、ヨーグルトを混ぜた生地は薄めに、バナナを混ぜたもっちり生地は分厚めにと焼き分けていく。
「後でみんなで頂く為にも、丁寧に積まんとな」
 まず薄い方を重ねて土台を作り、高さが出てきたら厚めへシフトして積み重ねるのは、アジサイの仕事だ。
 ちなみに2人ともお揃いのフリフリ白エプロン姿で調理している。
「先生敵襲だよ!」
 すると、突然あかりがフォーク片手に迎撃態勢。
「あかりのパンケーキください」
 陣内がリコッタチーズ入りのパンケーキを目ざとく見つけて摘み食いに来たのだ。
 どれが彼女作か見極めようと鋭い目つきになるも、全て正解なだけにある意味気の毒な話。
「食べて妨害とは、パンケーキタワー職人の風上にもおけんやつらだ」
「あっちのパンケーキ、食べつくしちゃうんだから!」
「……新条もか」
 アジサイは2人へツッコミを入れつつ作業に戻る。
 一方。
「たまぇさんはあかりさんに甘いから、つまみ食いに来たあかりさんを拒めないはず……」
 そう危惧した明子は、陣内作パンケーキにバナナを挟んで積む傍ら、パンケーキの前に陣取って摘み食いを妨害せんと張り切っている。
「だからたまぇさんは焼く係!」
 均等に切ったバナナを並べ、重心を確かめてから生クリームを塗る様は鬼気迫るものすらあった。
 実食タイム。陣内は牛乳で延ばした残り生地をディスペンサーから放出、器用に3人の似顔絵のパンケーキアートを焼き上げてみせた。
 余談だが、陣内が恋人のパンケーキを味わって食べる反面、タワーを崩すのに必死なあかりの食欲が内輪の勝敗を決した。
「タマちゃんに勝てたしパンケーキ美味しかったし僕は満足!」
「くっ……負けても、あかりさんの可愛いところ見られたから悔しくなんて……な、ない……!」

「スタンとなら絶対に勝てるよね、信頼してるよ、僕の相棒!」
 懸命にパンケーキを積み重ねるのはブラッドリー。
「スタンが主体になって……くれる、はず!」
 何よりスタンへの信頼感が半端ない。
「俺はこう見えて、ああいう焼き物は得意でな。ケーキなんざ、パイの親戚みたいなもんだ——え、違う?」
 実際、スタンも自信満々で頼もしく、
「クリームを塗った上から半分に切ったイチゴや切ったリンゴ、桃にミカンを挟んで、高さを出すぜ」
 ブラッドリーの希望通りに彼を引っ張ってくれた。
「デコレーションは頼む!」
 ブラッドリー自身も相棒の期待に応えんと、少し厚めの林檎スライスに終盤は苺も交えてデコっていく。
「ここまで高くなると、食うには手間だなあ……いや、一気に崩して食うか!」
 そして、見事1位になったタワーですら躊躇いなく切り崩せる、最後まで漢らしいスタンであった。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月4日
難度:易しい
参加:37人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 8
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