憎悪の焔は桜吹雪の中で燃ゆ

作者:ハル


「気にいらねぇ、気に入らねぇぞ、くそったれが!」
 エインヘリアル『バトス』の声が、青空の下に鈍く響いていた。
 バトスの視界の先には、舞い散る桜吹雪。そしてここ、愛媛県にある松山城山公園では、家族連れの花見客達がそれぞれ楽しそうに宴を繰り広げている。
「……なぁ、一体何がそんなに楽しってんだ、人間共。このバトス様が、苦難の果てに永久コギトエルゴスム化までされてたのがそんなに楽しいのかよ? ええ?!」
 それは、1から10まですべてバトスの責任であり、責任転嫁も甚だしい。この場に、バトスの素性を知る者など、一人もいないだろうに……。
 花見客を伺っていたバトスは、やがて憎悪を胸に動き出す。そして、その拍子に美しい桜の木が木っ端微塵に砕け散り――。
「うわあああああっ!」
 楽しい宴は一転し、絶望に支配された。
「死ね、死ね、死ね死ね死ね死ね!! あーはっはっは! てめぇらは俺に殺されるために今まで生きてきたんだよ、調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」
「い゛っ、ぎゃ!」
 バスターライフルから放たれた凍結光線が、子供を守ろうと覆い被る花見客の両親を、子供諸共肉片に変える。
「逃がすかよ! どうやら獣人はいねぇようだが、今日はてめぇらで勘弁してやる。どうだ? 俺様は優しいだろ、なぁ?!」
 逃げ惑う花見客の背中には、機械化された左手から放たれる弾薬の嵐が、容赦なく襲い掛かった。
「ああ、疼く。てめぇらを見ていると疼くぜぇ?」
 ゆえ、もっと殺させろ。このバトス様の憎悪を身を以て知れ!
 そう言うように、バトスはガスマスクの上から顔を掻きむしるのであった……。


「皆さん、このままでは、大変な事件が発生してしまいます!」
 息を荒げて会議室に入ってきたのは、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)であった。
「敵の名前は、バトス。どうやら、過去にアスガルドで重罪を犯した凶悪犯罪者のようでして、一切の理性も情けもなく人々を殺しまわるという予知がもたらされました!」
 特徴的なのは、顔に装着されたガスマスクに、機械化された左腕のガトリング銃だろう。表情は見えないが、その口調には残忍さと傲慢さが滲み出ている。
「多くの人々が犠牲になるのに加えて、バトスを放っておくと、地球で活動するエインヘリアルさん達の定命化にも影響が及ぶ可能性があります。至急現場に向かい、バトスの撃破をお願いしたいのです!」
 そこまで説明したセリカは、一旦一息吐くと、次いでケルベロス達に資料を配る。
「バトスに配下はおらず、また彼に隠れるといった動作は一切見られません」
 桜吹雪の中でも、バトスを発見するのは容易だ。だが、同時に問題もある。
「現場となる愛媛県、松山城山公園には、今現在も多くのお花見客で賑わっています。そこで、彼らに対して避難誘導を発令したいのは山々なのですが……」
 そうしてしまうと予知が外れ、襲撃場所が変更となってしまう危険性が高い。避難は、バトスが現れてから行うしかないだろう。
「ですが、バトスは憎悪に身を焼かれ、短絡的な思考しかできない状態です。油断すれば、あっという間にお花見客に被害が及ぶでしょう。ですが、彼の意識を引きつける方法はあります。まず一つは、彼が獣人に強い殺意を示すという事。そして、ガスマスクで顔を隠している事から、自身の顔に何らかのコンプレックスを抱いている可能性が高いという事です」
 その点を利用すれば、避難及び戦闘を有利に進めることができるかもしれない。
「バトスの自分勝手な憎悪で、お花見客に被害を与える訳にはいきません! 彼の憎悪なんかよりも、桜の美しさ……そして皆さんが人々を救いたいという気持ちの方が、遥かに美しく、強いのですから!」


参加者
浦葉・響花(未完の歌姫・e03196)
罪咎・憂女(捧げる者・e03355)
タクティ・ハーロット(重力を喰らう晶龍・e06699)
アーニャ・シュネールイーツ(時の理を壊す者・e16895)
神野・雅(玲瓏たる雪華・e24167)
植田・碧(エンジェルハイロゥ・e27093)
レスター・ストレイン(デッドエンドスナイパー・e28723)
レーヴ・ミラー(ウラエウス・e32349)

■リプレイ


 松山城山公園、美しい桜が風に靡くそこは、この季節、薄ピンク一色に染まっている。
「……綺麗だ」
 神野・雅(玲瓏たる雪華・e24167)は、晴天に映える景色に、うっとりと吐息を溢す。
「ですね。でも……」
 それに、アーニャ・シュネールイーツ(時の理を壊す者・e16895)も一瞬頬笑むが、その笑みはすぐに緊張によって塗りつぶされた。
「こんな場所で暴れようとする輩がいるとか……信じられないんだぜ」
「永久封印の刑でしたか……人間では理解出来ない苦しみなのでしょうけど、封印されたことに同情はできませんね」
 そう、タクティ・ハーロット(重力を喰らう晶龍・e06699)と罪咎・憂女(捧げる者・e03355)の言葉通り、この場所は遠くない未来、戦場に変わる。
「おまけに獣人の殺戮が好みとか、もう最悪ね。ウェアライダーの友達もいるし、許せないわ」
 植田・碧(エンジェルハイロゥ・e27093)は、友人と同じ獣人である浦葉・響花(未完の歌姫・e03196)を気遣いながら、自身の頭の獣耳と、肉球のついた手袋に視線を這わせる。
「……存外、自分で身に着けるのは恥ずかしいものですね」
 レーヴ・ミラー(ウラエウス・e32349)の頭部と臀部にもまた、狐を模した耳と尻尾を装着されてある。これこそが、花見客を助けるための、ケルベロス達の策の一つ。レーヴは恥ずかしげに頰を朱色に染めながら、同じ狐耳つきのミミックに対して、「お揃いですね」そう童女のように笑いかける。
「でも、ある意味良かったわ。最低の犯罪者なら、何の躊躇もなく仕留める事ができるもの」
 ケルベロス達が獣耳や尻尾を装着している中で、響花の黒豹のそれは、当然ながら一線を画す生命力に満ちている。普段意図して見せないものだからこそ、響花の怒りが透けて見えるようで……。
「花見客は絶対に助ける。そのための、俺達ケルベロスなんだ」
 レスター・ストレイン(デッドエンドスナイパー・e28723)の声色に混じるのは、明確な覚悟と敵意。レスターの視線の先に、長躯のガスマスクはついに姿を現していた。


 エインヘリアル『バトス』の出現に、楽しい席だったその場は悲鳴によって騒然となっていた。
「俺達はケルベロスだ、今すぐにこの場から避難してくれだぜ!」
「私達が必ずこの場を守る抜く! だから、落ち着いて行動してくれ!」
 そんな戦場へと変貌した松山城山公園に、タクティと雅の、避難を呼びかける割り込みヴォイスが響き渡る。
「あーはっはっは! いるじゃねぇの、獣人共が! それもワンサカとなぁ!?」
「……少し黙りなさいな!」
 対するバトスは、ケルベロス達の策が功を奏したのか、意識の大部分をこちらに向けてくれている。バトスの気が変わり、銃口が花見客へと向けられる前に、響花はその視界に自身を滑り込ませると、ナイフの刀身をバトスに向けた。
「っ!? て、てめぇ、どこがで……?」
 すると、刀身に映った光景を見たバトスが、何故か響花の顔をまじまじと見つめ出す。
「ガスマスクとは今日が初対面のはずだけど?」
 だが、こんな趣味の悪いガスマスクなど、響花に見覚えがあろうはずもない。
「ところで、そんなもので隠して……人様に見せられないほど醜い顔なのかい?」
「奇遇ですね、私も気になっていた所です。まぁ、そんな風にしているぐらいですからね、ふふっ」
「あ゛あ゛!?」
 脳裏に過ぎったトラウマにより、一瞬ながら呆然としてしまったバトスに浴びせかけられるのは、レスターのアーニャによる嘲弄の言葉。それはバトスにとって禁句であったのだろう。怒りでガチガチと歯を噛み鳴らしている。
「今、言いやがったのは誰だ? よっぽど死にてぇようだな、ええ!?」
 轟音と共にバスターライフルから放たれたのは、すべてを凍らせる凍結光線。
「っ!?」
 恐らくは猫耳と尻尾を見て、レスターよりも優先して狙われたのだろうアーニャは、右半身に被弾を受けながらも、花見客に被害が及ばぬよう立ち位置を調整しつつ、エネルギー光弾を射出して応戦。レスターが後衛から目にも止まらぬ弾丸でアーニャのフォローをする。
「あら、獣耳ならこっちにもいるわよ! それとも、肉球が好みかしら?!」
「ああ、どっちも好きだぜぇ? ミンチにして殺したい程になぁ!!」
 狙いを絞らせ、誰か一人が集中砲火を受けぬよう、碧もまたバトスの気を引くよう努める。黒い焔の銃弾を紙一重で躱しながら、カウンター気味に電光石火の蹴りを叩きこんでやる。
「ほら、俺もミミックも、てめぇの憎くてやまない獣人だぞ。狙えよだぜ?」
「言われるまでもねぇ!」
 タクティの挑発に乗り、次いでバトスは前衛に向けて弾丸を嵐のように射出する。
 タクティは狙い通りに来た攻撃に、ミミックと共に仲間の壁になりつつ、ゼノを全身に纏わせ「鋼の鬼」と化した拳で反撃する。
「エインヘリアルの戦士と聞いたが……聞いて呆れるな」
 短絡的な思考しかできないのは知っていたが、バトスのあまりの醜態に、雅も呆れ顔だ。息を吐きながら雅が軽く振り返ると、そこには避難を進める憂女とレーヴの姿が見えた。彼女らにバトスの意識を向けさせないために。
「ガスマスク……そんな物で顔を隠すとは戦士の名折れ。それとも、晒す自信も無いと?」
 雅は駄目押しとばかりにバトスを挑発し、カラフルな爆風で仲間を支援するのであった。

「仲間が気を引いているうちに逃げてください! 若い方は、子供やご老人に手を貸すようにしてあげてください! なるべくあのガスマスク男の視線から逃れるように、桜の木に隠れるような意識を!」
 仲間がバトスの挑発を行ってくれている間、憂女は避難誘導に努めていた。そのおかげか、すでに花見客の大部分が避難を完了している。
「憂女様、キープアウトテープの設置が終わりました」
 そこに、念のために立入禁止テープを張り巡らせていたレーヴも合流する。
「ご苦労様です。避難の方もあと少しですね」
 それに憂女は応じると、粉塵巻き上がる戦場に視線を向ける。
 そして――。
「被害が出ないようケルベロスとしての責務を果たそうか」
 柔和な表情を一変させ、憂女は戦士としての顔を見せた。

「うぉ!? やるなだぜ!」
 黒い焔を纏った弾丸が、タクティの肩口を抉る。
「タクティ殿、安心してくれ! ヒールはこっちに任せてくれ!」
「おう、ありがとだぜ!」
 傷ついたタクティに回復を施すのは、雅の仕事だ。雅を信じて電光石火の蹴りでバトスを貫かんとするタクティを中心に、守護星座が輝いた。
「糞が、何様だてめぇ、俺様の遊びを邪魔しやがって!」
「……何様もなにも、これでも医者でな。私の戦いは死を“殺す”事」
 それこそがバトスを倒し、悲劇を止めることに繋がるのだと、雅は――いや彼は信じていただろう。
(……避難誘導の方はどうなっているかしら?)
 撲殺聖棒・エクスカリバールの先端をバトスにねじ込みながら、碧の脳裏を過ぎるのは花見客の状況だ。人影は少なく、悲鳴もほぼ聞こえなくなっているものの、一歩間違えれば大惨事の恐れもあるゆえに、迂闊な行動はとれない。
「バトス、キミの心の奥底に眠る憎悪の根源を暴かせてもらうぞ?」
 その考えはレスターも同様なのか、いかにバトスの憎悪をこちらに向けるかという点に集中している。
「この血はインク、この皮膚は契約書。傀儡よ、俺に従え」
 レスターの身に刻まれた生きた刺青が、バトスの皮膚に転写されてその内心を白日の下に晒そうとする。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あああ゛あ゛あああ!!」
「っ、ぁっ!」
 刺青が光り輝き、レスターとバトスが苦痛に呻く。
「この、俺様の顔を、よくも、よくもおおおおぉぉぉ!」
 続くバトスの憎悪の叫びに、レスターもまた本懐を果たした際の一発の銃弾を思い出し、唇を噛んだ。
「もしかして、あの時の!」
 その叫びに、響花もまた記憶に刺激を受けて、目を見開いた。だが、確かにそうだ。あの金髪、そしてエインヘリアルである事……。
「でも何でマスクつけてるの? 貴方、性格が最悪だけど顔は美形だったわよ? 勿体ないわね」
 それは、別に挑発ではなかった。ふいに、響花の口から漏れた言葉。だからこそ、その一言はバトスのプライドをズタズタに切り裂いた。
「殺してやる、獣人! 貴様ら番犬共は、俺に狩られる為だけに存在していると思い知らせてやるッ!!」
 バトスの凍結光線と、響花の超低温度の肉体から放たれる打撃技が激突し、春の陽気を一気に真冬並の冷気が覆う。
 そして、その時!
「――ォォオ!!」
 可聴域を超えた龍の咆哮が、戦場に地響きと共に響き渡った。力の増幅を感じ取った雅の口元に、笑みが浮かぶ。
「皆様、お待たせ致しました」
 次いで、優雅な一礼の後、戦場を電光石火の如く駆けるのは、レーヴの姿。隣を併走するプラレチの鋭い爪と共に、バトスに蹴りが突き刺さる。
「さぁ、バトスと言ったか? これからが本番だ。お互いのすべてを賭けようじゃないか」
 憂女が、憂の切っ先をバトスに向ける。
「番犬風情が何匹集まろうと、俺様に勝てるはずがねぇだろうが!」
 バトスは相変わらず傲慢な姿勢を崩さない。その一貫した態度は、ある意味では尊敬……できなくもないのかもしれないが。
「貴方の様な方と武装が似ているのが大いに不満ですね……」
 何にせよ、アーニャは不機嫌に口を窄め、
(花見客の皆さんから、バトスの仲間だと思われていないか心配です……)
 そんな事を考えていた。アームドフォートの主砲から、一斉掃射が放たれる。こうした考えができるのも、無事に花見客が避難できたという報告を受け、心に余裕ができた証だろう。
「ふふ、アーニャさんはバトスとは違うわ。だって、ガスマスクつけてないもの」
「そんなの当たり前ですよ、もうっ!」
 響花もまた軽口を叩いて無自覚にバトスの心を抉り、だが改めて表情を引き締めると……。
「それじゃ狩りに入るわ」
 漆黒の狩人の瞳をバトスに向けた。


「ハァーーッッ!!」
「調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
 憂女の振るう憂の刀身が、歪に姿を変えてバトスの肉を切り刻む。対するバトスの黒い焔の弾丸をミミックが弾き返しては、逆に喰らいつく。
「この!」
 憂女とミミックの攻撃を受けたバトスは、僅かに後退。だが、後退してしまった自身に腹が立つのか、無理に前に出ようと機械化された左手をケルベロス達に向けて――。
「なぁ!?」
 その動きが、まるで痺れたように静止した。時間をかけながら、真綿でゆっくりと首を絞めるようにBSを重ねてきた、ケルベロス達の思惑通り。
「躊躇わず……討つ」
 明確な隙を見せたバトスに、再び超低温度となった手足による打撃が、今度は真面に叩き込まれる。複数付与された氷の効果がバトスの身を苛み、新たなる氷が付与される。
「雑種……共がああああ!」
「嗚呼、なんて醜悪なのでしょう」
 すべてを侮蔑するように、見下すようなバトスの視線に、レーヴは冷淡な視線と言葉でもって返す。
「その仮面こそが、貴方自身の在り方を主張しているかのようです。その仮面を被る前の貴方と今の貴方、きっと何も変化などありませんよ。せめて、私達が救って差し上げましょう」
 無論、行き先は天国ではなく、地獄になるでしょうが……レーヴは言いながら、輝く左手で無防備なバトスを引き寄せ、漆黒の右手で脇腹に風穴を開けた。
「この俺が……このバトス様が! 番犬風情に遅れをとるなど!」
 認められない、考えられない、ありえない! だが、現実にそれは起こってしまっている。自棄になったように、バトスは弾丸を後衛に向かって乱射する。それにより、今度はケルベロス側がジグザグの影響を受けるが、
「私が立つ限り、犠牲者は出さん!」
 後衛には、すでに雅によってBS耐性が万全の状態で敷かれている。あとは、後衛で最もダメージの蓄積していたレーヴに緊急手術を施せば、まさに盤石。
「ふ、ふざけるな! 俺様の、バトス様の憎悪がこの程度で!」
「いや、お前の憎悪とか知ったこっちゃないんだがだぜ」
 凍結光線がバスターライフルから放たれるより早く、タクティのリギュラがドラゴニック・パワーを噴出し、超加速してバトスの骨を粉砕する。
「ぎあ゛ッ!」
 鈍い嫌な音が鳴り、バトスはついにガタリと膝をついてしまう。
「貴方の『時』は……ここで終わりです。時よ、凍れっ!」
「そういう訳で、そろそろさようならよ。良かったじゃない、桜の下で眠れるなんてね!」
 容赦も、情けも無用。バトスが改心することなどありえず、そんな性質であるからこそ、彼はここに存在している。
 アーニャが『時』に干渉し、体感時間を遅らせる。そして瞬く間にバトスとの距離を詰めると、至近距離からの全部走一斉放射を浴びせかけ、怯んだ所に一拍遅れて碧のグラビティ弾が着弾する。
「馬鹿なああああ!」
 絶叫と共に、バトスの仮面には罅。
「バトス……キミを殺すのはキミの憎悪だ」
 自分自身を制御できなくなった時点で、バトスは詰んでいる。要するに、バトスはまず初めに、自分自身に負けていたのだ。レスターの手には、本懐を果たした時の感触が残っていた。それは、決していい事ばかりな訳じゃない。だが――。
「最後はキミに任せるよ、響花」
 そう言って、レスターはゲシュタルトグレイブに炎を纏わせてバトスを叩き潰す。
「こちらからも援護致します。正しさは力で証明しましょう――我々、ケルベロスが!」
「お手並み拝見といこうか」
 こちらに最後の足掻きとばかりにバスターライフルを構えるバトスの手から、レーヴは電光石火の蹴りで武器を弾き飛ばす。憂女の龍の咆哮が、DFとして仲間を支えた響花の動きを向上させる。
(正直、こんなにお膳立てされる程の因縁がある訳でもないんだけどね)
 響花はそう苦笑を浮かべるが、ここまでされるとやるしかない。バトスの晒された顔を見て、響花はそっと目を細めた。
「少し疲れたでしょう…眠りなさいバトス。……安らかに」
「……獣……人は……殺……」
 バトスは、最後まで相変わらずだ。だが、桜に抱かれることでで何かが変わることを願って……。
 獣化した響花の拳によって、バトスの素顔は響花以外誰の目にも触れることなく、粉砕されるのであった。

「ねぇ、皆でお花見しない?」
「いいですね。実は私、お弁当やお団子を用意しているんですよ!」
 美しさを取り戻した松山城山公園には、少しづつ人々の姿が。そこで、碧の提案に、アーニャが少し恥ずかしそうに色とりどりの食べ物を取り出してみせる。
「いいな、桜は」
「アーニャさんの作ってくれたお弁当も、美味しいですしね」
 レスターは花弁を眺め、憂女が薄らと笑う。桜の下だと、さらに二割増しの美味しさだ。
「来年も綺麗な桜が見られるといいな」
 雅の言葉に、ケルベロス達全員が頷いた。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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