こじらせ過ぎたベジタリアン絶対滅ぼす明王

作者:陸野蛍

●枯空大明神の教え
「……ベジタリアン憎い。……奴等は滅ぶべき……滅ばなければならないー!!」
 雑居ビルの一室で、瞳に叫ぶその鳥の異形……黒い羽毛に赤い瞳の『ビルシャナ』を映した人々は、ビルシャナの言葉に強く賛同する言葉をあげる。
「そうだ! 野菜だけ食うなんて馬鹿げてる!」
「むしろ、肉だけ食べてればいいんだ!」
「ベジタリアンを! 野菜を駆逐するんだ!」
 人々の言葉に、ビルシャナは『クケキャー!』と叫ぶと最後に言葉を発する。
「ベジタリアン抹殺ー!!」
『ベジタリアン抹殺ー!! 全ては、枯空大明神様の為に―!』
 信者達は、枯空大明神の叫びに合わせる様に叫び、枯空大明神を崇めた。

●進化なんだか退化なんだか……
「みんなー! お仕事の時間だ、集合!」
 今日も今日とて、元気な大淀・雄大(太陽の花のヘリオライダー・en0056)の声がヘリポートに響く。
「ある教義に目覚めた……って言うか、目覚めきってその教義が唯一だと考えるビルシャナが、教義に賛同した人間12人と共に、廃棄された雑居ビルの一室に籠っている。このままだと、準備が出来次第、その教義に反するものを根絶やしにしようと、市街地に出て大きな被害を生んでしまう。みんなには、その前にそのビルシャナを撃破及び信者化している人々を『ビルシャナの主張を覆すようなインパクトのある主張』で正気に戻し、救出して欲しい」
 ビルシャナの教義に心酔している人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナを教祖と崇め、守り抜こうとするので、人々を傷つけない為には『その教義が全てでは無い』と目覚めさせるしか無い。
「で、今回のビルシャナなんだけど……ちょっとヤバメなんだよなあ。極端に強いとかじゃないんだけど、その教義に魂を捧げ過ぎて、その教義しか見えなくなっちゃって……人の言葉すら、殆ど話せない様な状態なんだよな」
『その状態で、良く信者を増やせたものだ』と感じるケルベロスもいれば『そこまで何も見えなくなる程、信じるに値する教義とは?』と疑問に思うケルベロスもいる。
「ビルシャナの法名でいいのかな……? ビルシャナの名前は『枯空大明神』……この名を冠する前の名前は『ベジタリアン絶対滅ぼす明王』……つまり、教義は『ベジタリアンなんて許さない! 肉を喰え! 肉がなければお菓子を食べればいいじゃない?』ってものらしい!」
 教義は、とにかく『ベジタリアン許さない!』ただ、それだけらしい……。
「まあ、教義はアレなんだけどー、信者にとっては言葉を交わさなくても、信じられる生き神様みたいなものだから、その洗脳の深度はかなり深い。正気に戻すには、かなりのインパクトが必要だと思って欲しい」
 信者化している人々は、洗脳が解けるまでは、枯空大明神を守ろうと、低威力の野菜を燃やし尽くす炎を使ってくるらしい。
「で、信者の説得中も枯空大明神を完全にフリーにするのは危険っぽい。何故なら、魂が悟りの境地に達していると言うか、野生に戻っていると言うか……とにかく、見知らぬ人が現れると敵とみなして攻撃して来る。1人か2人、枯空大明神の嫌いな野菜を身に付けたり、食べたりしながら、枯空大明神を引き付けて戦闘を繰り広げておいてくれ」
 ケルベロス達の様子を雄大が窺う限り『うわー……悟りきるってすごーい』と思わなくもないケルベロスと『獣かよ!』と思うケルベロスが半々の様だ。
「枯空大明神の攻撃方法は、野菜を枯らす事に特化した弱体力を乗せたグラビティの羽ばたき、野菜なんて燃え盛れと言う思いのこもった炎攻撃、赤い瞳で見つめられる事で野菜がなんか大嫌いになってなんやかんやでダメージを受ける攻撃の3つだ」
 数人で抑えることは可能だが、倒すにはケルベロス全員の力が居る位の強さだろうと雄大は言う。
「とりあえず、今回、俺が予知して思った事は『悟るってすげーな』ってことだな。ビルシャナになっても、更にその境地の上を行ったら、言葉を話せなくても信者を増やせちゃうんだからな。ある種のカリスマみたいなものが生まれちゃったんだろうなー。まあ、何れにしても相手はビルシャナだから、きっちり倒して、人々の目を覚ましてくれな。よろしく!」
 爽やかに言うと雄大は、パックの野菜ジュースを飲みながらヘリオンへと歩いて行った。


参加者
クロハ・ラーヴァ(熾火・e00621)
立花・恵(カゼの如く・e01060)
一色・紅染(脆弱なる致死の礫塊・e12835)
ニグラ・イロウシェン(春の陽気にうたた寝する山羊娘・e20773)
朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)
龍造寺・天征(自称天才術士・e32737)
龍造寺・隆也(邪神の器・e34017)
月守・黒花(黒薔薇の君・e35620)

■リプレイ

●邂逅『枯空大明神』
「……遂に言葉まで忘れた個体が現れたんですね」
 雑居ビルの中を歩いていた、クロハ・ラーヴァ(熾火・e00621)が溜息混じりに呟く。
「……解脱しすぎると、こんな弊害があるんですね、……宗教とは恐ろしいものです。……とりあえず話が通じる気がしないので殴れば問題ないでしょう、恐らく」
 クロハの言葉を聞きつつ仲間達は心の中で『昔の白物家電じゃないから!』とツッコミを入れる。
「野菜ですか……僕も苦みやクセが強過ぎるものは、ちょっと苦手……ですね。でも、おいしいものも、いっぱいだから……食べないのは勿体ない、ね」
 おとなしげにそう言うのは、一色・紅染(脆弱なる致死の礫塊・e12835)だ。
(「 そろそろ、春だし……菜の花とか食べたい、な。ほろ苦いくらいなら、僕も大丈夫だし、ね。辛し和えとか、とっても美味しくていいよ、ね」)
 そう、季節は春。
 緑が芽吹き、野草さえ食べられる季節なのだ。
 菜の花もそうだが、ゼンマイにふきのとう、土筆ですら食べられる季節である。
「お肉が美味しいのは分かりますけど、真心込めて作られた野菜もおいしいのに……」
 ビルシャナの目的は野菜を……そして野菜を食べる者を抹殺すること、食べ物はそれぞれ美味しさが違うと思っている、朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)が悲しそうに言う。
(「お婆ちゃんの大根の浅漬けとか美味しいのにな」)
「とにかく! 気合い入れて頑張ります!」
 元気いっぱいに環は思いを口にする。
「偏食家を嫌って、自ら偏食家になるとは。おかしな教義もあったものよ! そんな輩は我が捻じ伏せてくれよう!」
 目的の一室の扉を見つけると、龍造寺・天征(自称天才術士・e32737)は、ドアノブに手をかけ勢いよく扉を開く。
 扉の開く音が聞こえ、信者達と『枯空大明神』が一斉に振り返る。
『何だ?』『何事だ?』と騒ぎだす信者達を枯空大明神は『クケキャー!』と言う雄叫びで静かにさせる。
 だが、その枯空大明神の赤き瞳に彼の大っ嫌いなものが映る。
 瑞々しいキュウリを丸かじりにする、月守・黒花(黒薔薇の君・e35620)と普段とは違う大人の雰囲気に姿を変えた、ニグラ・イロウシェン(春の陽気にうたた寝する山羊娘・e20773)がニンジンを生のまま食べていたのだ。
「嫌いなのは仕方ありません。但し、それを否定し、周りに押し付けるのは話が違います!」
「クケァーキィー!」
 黒花の言葉に耳も貸さず、枯空大明神は苛立ちのあまり奇声をあげると、その場で数度足踏みし、黒花とニグラへ向かって勢いよく駆け出す。
 駆けながら、炎の球をニグラに向かって撃ち出す、枯空大明神。
 その炎とニグラの射線に素早く割り入ると、黒花は炎を受けてなお、笑顔で枯空大明神を挑発する。
「嫌でしょう、見るのも困るでしょう! 美味しくて食欲が止まりません!」
 キュウリを齧りつつ黒花は、空いた片手を枯空大明神に向け精神力の爆発を起こす。
「あなたには……あなたが、まだ『ベジタリアン絶対滅ぼす明王』の名だった時に、何度も大事な菜園を……野菜を燃やされました。あの時……この手で倒していれば、こんな事にはならなかった……理性がなくても関係ありません。死んでもらいます!」
 言うと、怒りに満ちた瞳を枯空大明神に向け、ニグラは石化の魔力を解き放った。
 今ここに、ケルベロスと枯空大明神それぞれの思いに根付いた激闘が始まった……。

●真に美味しい食べ物は?
(「……ビルシャナは極端でいかんな。毎度、悟りというより妄執だ」)
 荒ぶる枯空大明神を横目に見ながら、龍造寺・隆也(邪神の器・e34017)がげんなりとした思いを抱く。
 強すぎる思いが人をビルシャナ化させてしまうのだから、こればかりは仕方がない。
「みんな、信者達を説得していこう。ビルシャナとは言え、相手をしているのは、黒花とニグラ、二人だけだ。なるべく早く、信者を開放して、俺達も参戦しよう」
 立花・恵(カゼの如く・e01060)がそう言うと、6人のケルベロス達はまだ動きの止まっている信者達の元へと走った。
「皆さん、野菜を、食べない……それは……確実に栄養が偏ります、ね……」
 信者達に語りだしたのは、紅染だ。
「肌は荒れ、抵抗力も弱くなり、高血圧に糖尿病、ガンのリスクも……もし壊血病にでもなれば、歯が抜け、古傷は開き、血も止まりにくく……死んでしまっては、あなた達がお好きなお肉も、食べられなくなってしまいます、よ?」
「そうです! そうです! お肉は、とっても美味しいです! でも、それだとリスクを抱えた食事になってしまうんです!」
 紅染の言葉を引き継ぐように、環が言葉を続ける。
「提案なんですけど、お肉と野菜を一緒に食べちゃいません? お肉の濃い味を野菜でサッパリさせると、またおいしくお肉が食べれますよー。 栄養学的にも、両方合わせて食べると相乗効果が得られるとかなんとか……私も詳しく知っている訳ではないですが、結論として美味しい食事になるのは間違いないんですっ! どっちかだけなんてもったいなくないですか?」
「……あと、その」
 環が笑顔で尋ねる様に信者に聞く中、おずおずといった感じで紅染が先程言えなかったことを口にする。
「……体臭も、強くなりますので……あの……」
 紅染は信者から視線を逸らすと、さり気無く口と鼻に手を当てる。
「そうなのである! 臭いなのだよ? 分かるか、愚民共!」
 不遜な態度で前に出ると、天征が信者達を見下すように言う。
「肉か! そんなに肉ばかり食べたいか! 肉は確かに美味いな!! しかしだ! ……肉ばかり食べていると、体臭がひどくなるぞ……」
 その言葉で、信者の女性が自身の体を嗅ぎ始める。
「肌が脂ぎってくるぞ……。自分達で気付かないのか……? 本当に良いのか? 今ここで、肉だけと言わず……野菜も摂るようにすれば、マトモな身体に帰れるのだぞ……?」
「そんなこと知ったことかあ!」
 元々太っていたであろう信者の男の一人が火の玉状の炎を作り出す。
 だが、天征は慌てる事無く、隠し持っていたジャガイモにほんの少しのグラビティを込めると、加減して――傍から見ると全力投球だが――男の顔面に投げつけ、昏倒させる。
 掌の炎を失った信者は、さっさと戦場外へとの思いで、クロハが首根っこを掴まえて、扉の外に放り投げる。
 クロハは外見から想像し辛いが、物臭な一面がある。
 その為、丁寧に運んであげるなどと言うこともしなかったりする。
「ククク! 野菜はこんなにも便利だぞ! 肉ばかりではなく野菜も摂るのだ! ハーハッハッハッハ!!」
 クロハが残った信者達を見やれば、天征の高笑いに圧倒されている。
「まあ、そういう使い方もなくはないですね。実際、戦中は子供が野球ボールの代わりにジャガイモを使ったという話もありますしね」
 呟いたクロハの手には何時の間にかネギが握られている。
「肉を引き立てる為にも野菜があり、その逆も然り……脂っけと調和を取り更に旨みを増し、いくらでも飽きずに食べることが出来るそれが野菜の強みですよ……」
「でも……ウグッ!?」
「話の途中で口を挟まないでもらえませんか?」
 話に割って入ろうとした信者に視線を向けると、クロハはその信者の口に無理矢理ネギを突っ込んだ。
「想像しなさい。玉葱の入っていない生姜焼きを許せますか? 肉だけのカレーを許容できますか? 野菜の旨みを馬鹿にすると野菜に泣きますよ?」
 言いながら、クロハはネギで口が塞がった信者の横っ面を更にネギで引っ叩いている。
「それでも、反論がおありなら、次はこのセイロン瓜が相手です」
 どこから出したのか、瓜とは名ばかりの1.5m以上ある長大なセイロン瓜を手にクロハが信者を見据えれば、信者は首をぶんぶんと振る。
「肉? 野菜? いいや、ごはんだ!」
 強く主張を始めたのは恵。
「ごはんがあればこそ、肉が! 野菜が! 全てが活きてくる! 全ての根源は、ごはんにある! さっき彼女が言ったように、カレーだってご飯が必要だ! それ以外にも、牛丼、親子丼、海鮮丼……それらに敷かれたその白い輝きを放つ粒はなんだ? そう、日本人なら白米だろうが!」
 暑苦しい程の恵のごはん推しが突然始まると、信者達は『ビクリ!』と肩を震わせる。
「……そんな最強且つ俺が愛して止まないごはんは……穀物、植物だ。欧米では野菜のカテゴリだという。肉を食うにあたって、ごはんが食べられないのは良いのか!? 焼肉をごはんに乗せて、タレの染み込んだ米と一緒に食らう至上の喜びを失っていいのか!? 野菜を駆逐して良いのか!?」
 他のケルベロス達が引くほどの演説をしながら、恵は信者達に聞く。
 信者達の表情にも、戸惑いが浮かび、瞳の色も戻りつつある。
「お前達……」
 低い静かな声音でそう口にすると、隆也は左拳を真横の窓ガラスにぶつけ『ガシャーン!』と割る。
 突然のことに、言葉を失う信者達。
「何故、ベジタリアンを許さない? 肉が好きなら、取り分が増えてむしろ喜ぶべきだろ?」
 隆也が鋭い目つきで威圧しながら、信者達に問う。
「肉を食うなとでも言われたか? それは確かに最低だ。自分の主張を押し付けているのだからな。だが、お前達はどうだ? 今、面識のないベジタリアンを襲おうとしている、お前達は同じではないのか?」
 質問するように訊ねているが、隆也の眼は据わっている。
「お前達がベジタリアンを許さない以上に、俺達はビルシャナに同調し、被害を出す者を許さない……。どうしても抹殺だと言うのなら、お前達から抹殺してやろう」
 隆也は言うや否や、力を込め信者達が背にしている壁を蹴りつけ、大穴を空ける。
「人に自分の嗜好を押し付けようとしているんだ……それなりの覚悟はあるんだろうな?」
「あの、これでは説得では、なく……恫喝ではないのですか?」
 紅染は、思わず環に尋ねてしまう。
「えっと、結果オーライじゃないでしょうか? 強力な洗脳と聞いていましたし、説得の手段は特に指定されていませんから」
 確かに指定されたのは『枯空大明神の主張を覆すようなインパクトのある主張』と言うことだけである。
 だが、若干……信者の皆さんをビビらせ過ぎている感は無くもない。
 ケルベロス達が僅かな不安を感じていると、隆也はほんの少しだけ優しい表情を作り。
「……本当に命を懸ける価値がある主張なのか、もう一度考えろ」
 その言葉は信者達には、優しさに満ちた言葉に聞こえる。
 正確には、先程までの怖さと相まって、優しさを感じる気持ちが二乗、三乗されただけなのだが、信者達の意識にかかっていた靄はゆっくりと確実に晴れていった。

●枯らすモノが枯れるトキ
「こっちこっち、ほら、撃ってきなさい」
 ニンジンを餌に挑発しながら、ニグラは完全に見切った、枯空大明神の炎を避けていた。
(「ここまで効果があるなら、私が好きな『ロマネスコ』も持って来れればばよかったです」)
『ロマネスコ』日本では、まだまだ馴染みが薄い野菜だが、カリフラワーの一種でブロッコリーと同じような調理法がされる野菜であり、何よりも甘い芳香と特徴的な形が静かなブームになっており、料理研究家のレシピ開発も現在は盛んである。
 だが、潜入前にニグラが立ち寄ったスーパーには置いておらず、内心悔しがっていた。
「あなたが信者を洗脳したように、あなたも私に洗脳されて野菜好きになるのは、どうでしょう? 一時期私が狂ったように食べ続けたパセリを、あなたが大好きになるというのも面白そうです」
 スマホにグラビティ・チェインを込め、思いと共に黒花は枯空大明神にダメージを与える。
 ニグラと黒花で持たせた時間は、およそ5分。
 どちらも致命傷は負っていないが、流石にデウスエクス1体を相手に2人で相手をするのは苦しくなってきている。
「えっと……その、お待たせしました」
 星の聖域を創り出しながら、紅染が戦線に加わると、他のケルベロス達も、狙いを枯空大明神とし、攻撃を次々と繰り出していく。
「信者の皆さんの避難は完了です! 後は、枯空大明神を倒すだけです!」
 枯空大明神の攻撃を捌くようにヌンチャク型の如意棒を操り、環が元気に言う。
「お前の肉は頭からして固くてマズそうだし、食いたくもないな。という訳だ……星のように……舞えっ!」
 手にした『T&W-M5キャットウォーク』の銃弾に闘気を込め、刃さながらの衝撃波を纏った弾丸を連続射撃する恵。
「肉は肉でも焼き鳥にすらなりそうにありませんよ。……どうぞ、一曲お相手を」
 クロハが高速で繰り出す連続の蹴りは、枯空大明神の防御の隙間を縫い、目にも留らぬ速さで枯空大明神を翻弄し、陽炎を思わせる揺らぐ地獄の炎で枯空大明神の羽毛を焼き焦がす。
「ビルシャナ! そもそも、貴様は草食ではないのか!? まさか肉食だったとはな!」
 天征が『裏切られた!』と言わんばかりに、枯空大明神に詰め寄る。
 余談だが、ビルシャナ=鳥と思っていてもおかしくはないのだが、地球上にいるビルシャナは殆どがビルシャナ大菩薩の光の影響を受け、ビルシャナ化した元人間なので、肉食であっても別に構わないのである!
「反省は、あの世でするがいい。我の力を見せようではないか! ふはははは! 龍造寺家7千年の歴史にて引き継がれし研鑽の結晶! その身に受けてみよ! 顕現せよ! 機神竜ガルファイド!!」
 機械の龍へと姿を変えたアームドフォートを枯空大明神に向けると、既に勝利したかの様に、天征は声を挙げる。
「俺からも餞別だ。野菜の無い世界に送ってやる。……まあ、肉もないがな。いくぞ」
 行雲流水の如き動きで枯空大明神との間合いを詰めると隆也は、オーラを両のガントレットに纏わせ、枯空大明神に大きなダメージを与える。
「これで、あなたとの因縁も終わりです 。私の菜園を何度も駄目にしたことを後悔し、消えてください。黒山羊の力、みせてあげます」
 枯空大明神との決着の言葉を呟くとニグラは、枯空大明神に狂気の烙印を刻み込む。
 刻まれた烙印は少しずつ、枯空大明神の体を蝕み……枯空大明神という存在を枯れ果てさせた。
 枯空大明神がこれまで、枯らし続けた野菜の様に……。

●自由あっての美味しい食事
「じゃあね、もう来ないでね」
 雑居ビルとは言え、因縁の敵が死んだ場所……ニグラは彼が根絶したかった野菜の種を周囲に撒いた。
「うーん、こんな戦いだったせいか、腹減ったなぁ。なんか食べて帰るか?」
 恵の言葉に呼応するように、誰かのお腹が『ギュルルルル~』と鳴る。
 すぐに戻るつもりだったクロハも含め、ケルベロス達はへリオンに戻る前に、バイキングレストランへと向かった。
 どんなものでも美味しく食べれるように……。
 肉も野菜も、そして……デザートも。

作者:陸野蛍 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年4月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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