
●某教会
「いいか、お前ら! ぽっちゃりマシュマロ女子こそ至高! あのプニプニ感がイイだろ! もう想像しただけでもハアハアモノだ! だからこそ、マシュマロ女子こそ至高だと俺は言いたい! 故に、マシュマロ女子をデブだと言う奴は、万死に値する! そんなヤツはクズ中のクズだ! 俺は常にそんなマシュマロ女子に囲まれたい! それこそヘヴン! 俺にとってのパラダイス! だからこそ、俺はお前達が必要なんだ!」
羽毛の生えた異形の姿のビルシャナが、10名程度の信者を前に、自分の教義を力説した。
ビルシャナ大菩薩の影響なのか、まわりにいた女性信者達は、ビルシャナの異形をまったく気にしていない。
それどころか、女性信者達はビルシャナを包み込むようにして、まわりを囲んでいた。
●都内某所
「ハチミツ・ディケンズ(彷徨える琥珀・e24284)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです。悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事が今回の目的です。このビルシャナ化した人間が、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やそうとしている所に乗り込む事になります。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまいます。ここで、ビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「ビルシャナは破壊の光を放ったり、孔雀の形の炎を放ったりして攻撃してくる以外にも、鐘の音を鳴り響かせ、敵のトラウマを具現化させたりするようです。信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。ただし、女性信者達は自慢のマシュマロボディで攻撃を仕掛けてくるため、色々な意味で注意しておきましょう。なお、信者達の生死は成否判定には影響しません」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
「また、女性信者達はビルシャナの影響を受けているため、理屈だけでは説得することは出来ないでしょう。重要なのは、インパクトになるので、そのための演出を考えてみるのが良いかもしれない。また、ビルシャナとなってしまった人間は救うことは出来ませんが、これ以上被害が大きくならないように、撃破してください。それでは、よろしくお願いします」
そして、セリカはケルベロス達に対して、深々と頭を下げるのであった。
参加者 | |
---|---|
![]() アニエス・エクセレス(エルフの女騎士・e01874) |
![]() 七種・徹也(玉鋼・e09487) |
![]() 井出・楓花(暴飲暴食・e15748) |
![]() 御船・瑠架(紫雨・e16186) |
![]() コルト・ツィクルス(星穹図書館の案内人・e23763) |
![]() ハチミツ・ディケンズ(彷徨える琥珀・e24284) |
![]() 薊・狂(狂い華・e25274) |
![]() 月守・黒花(黒薔薇の君・e35620) |
●教会内
「ぽっちゃりマシュマロ女子こそ至高……ですか」
アニエス・エクセレス(エルフの女騎士・e01874)は仲間達と共に、ビルシャナが拠点にしている教会の前にやって来た。
ビルシャナは、ぽっちゃりマシュマロ女子こそ至高であると訴えており、教会内にぽっちゃりマシュマロ女子を集めて、自分の教義が正しい事を証明しようとしているようだ。
「……なるほど、ぽっちゃりマシュマロ女子なるものが、この世の中に存在していると」
コルト・ツィクルス(星穹図書館の案内人・e23763)が、ほおっと感嘆の息を吐く。
その傍らでシャーマンズゴーストが、こてりと首を傾げた。
何やら言いたい事があるのかも知れないが、とりあえずコルトは聞く気がないようだ。
「まあ、好みは其々、否定はしねェが――俺より良イ女扱いは、ほっとけねェな」
薊・狂(狂い華・e25274)がこきりと首を鳴らして、ニイッと笑う。
別にぽっちゃりマシュマロ女子を否定するつもりはないのだが、それこそ至高であると言われるのは納得がいかないようである。
「多少肉付きが良いくらいなら、嫌いではないんだが……いやでも開き直るのは良くないだろう」
七種・徹也(玉鋼・e09487)が、自分の考えを述べた。
実際に女性信者達の大半が、『太ってもイイんだ! このままでイイんだ!』と思い込んでおり、朝から晩まで食っちゃ寝の日々を送っているらしい。
「……ですがビルシャナの言うことは間違っていません! ぽっちゃりだって、マシュマロだって恋愛したいのです!」
井出・楓花(暴飲暴食・e15748)が、ビルシャナの教義に共感を示す。
そのため、仲間達とは異なる考えを、持っているようだ。
「マシュマロって呼び方で美化していますけれど、ぶっちゃけただの肥満ですからね。肥満の人って我慢が出来ない、自己管理が出来ない、怠慢な自分を常に自己紹介しながら歩いてるようなものでしょう。ただのだらしない人ですよ」
そんな楓花に対して、御船・瑠架(紫雨・e16186)が現実を突きつけた。
しかし、楓花の考えは変わらず、むしろ迷いが振り払われたような雰囲気である。
「とにかく、ここまで来たからには責任を持って退治致しませんとね」
ハチミツ・ディケンズ(彷徨える琥珀・e24284)が、覚悟を決めた様子で教会を睨む。
教会の中からは甘いケーキの匂いが漂っており、それに合わせて女性達の楽しげな笑い声も聞こえていた。
「まあ、思うとことはありますが、今回の教義ぼっこぼこにして差し上げましょう」
そう言って月守・黒花(黒薔薇の君・e35620)が、仲間達を連れて教会の中に入っていった。
●教会内
「やはり俺の考えは間違っていなかった! ぽっちゃりマシュマロ女子こそ至高! この考えに間違いはない! 何故なら、お前達がその証拠……その証明であるからだ! 俺はこの時を……この瞬間をどんなに待ち望んだ事か。さあ、喰え! 遠慮なく喰え! そして、俺の心を……世界を幸せで満たしてくれ!」
教会の内にはビルシャナがおり、ぽっちゃりマシュマロ体型の女性信者達を見つめて、幸せそうな表情を浮かべていた。
「俺はぽっちゃりじゃねェが……ちゃンと、柔らかくて暖かいだろ? ウェストは細い分、抱き易さは俺の方が上。なァ、こういう女も、悪くねェと思わないかい? 信者の御前さん達も、俺みたいな女になってみてェと思わねェか?」
そんな中、狂がビルシャナにするりと腕を絡め、思い切り胸元を寄せ、太股を絡めて妖艶に微笑んで自信満々に囁いた。
「い、いや、その……確かに悪くな……いやいやいや、全然ダメだ! ダメダメだ! 良い訳がないだろ! 俺はぽっちゃりマシュマロ女子が好きなんだァ!」
ビルシャナがわずかに芽生えた迷いを振り払うようにして、魂の叫びを響かせた。
本音を言えば『うっひょお~!』と奇声を上げて、むしゃぶりつきたいところだが、女性信者達の目があるため、本音が言えないようである。
「ぽっちゃりとかマシュマロとか駄肉いいとかやめてください! 私は痩せなきゃいけないんです!」
アニエスがたゆんぷるんと胸を揺らしながら、ビルシャナ達に対して叫ぶ。
何となく腹もたゆんと揺れたような感じだが、その事をビルシャナが指摘しないように、ほんのり殺気を放っていた。
「いや、痩せる必要なんてない! い、今のままで……いいじゃないか!」
ビルシャナがアニエスの腹をガン見しながら、頭の中に思い浮かんだ言葉をゴクリと飲み込んだ。
いつもであれば迷う事無く口にしている言葉だが、そんな事をすれば確実に殺される事が、本能的に分かってしまったようである。
「……ですが、お姉様方……現実をご覧になって? ぽっちゃりマシュマロ女子といっても、言い方を変えているだけであって逃げ口上、はっきり言って『肥満!』ですわ! 一度、ご自分のBMI値を測って運動なさってはいかがかしら? 第一、太ってしまっては健康に悪いですし、お店で売ってる可愛いお洋服も買えません!」
そんな中、ハチミツがラブフェロモンを使い、信者達の説得を試みた。
「そ、そんな事はありませんわ。服だって、自分で作ってますから、何の問題もありませんし……!」
トラフグのような顔をした女性信者が、顔を真っ赤にして反論をする。
まわりにいた女性信者達も『生活に支障がないんだから放っておいて!』と逆ギレをした。
「皆さん、自分の醜い体をみてどう思われますか? マシュマロと可愛く言ってみても、現実あなたたちを待っているのは、『垂れた肉』なのです! 私や他の者たちも見てください。大小あるとはいえ、みな普通体型以内には収まって……お、収まっているでしょう? 私がスレンダーなのは天然ですが、皆さんのその醜い体も天然ですか? そうじゃありませんよね? 痩せる努力をしなかった結果が、その姿です! よって、マシュマロ女子という言葉は甘えです」
黒花も臆する事なく、女性信者達に言い放つ。
「で、でも、あなたには関係ないでしょ! 私達はビルシャナ様に気に入ってもらえればいいだけなんだから……! ビルシャナ様の言葉こそ正義よッ!」
オーク似の女性信者が、ぷんすかと怒り出す。
まわりにいた女性信者達も、『そうよ、そうよ』とイラついた様子で連呼する。
「ビルシャナの言うことは正しいです!」
楓花も信者達に紛れて、ビルシャナの正当性を訴えた。
おそらく、ビルシャナの教義に心を打たれ、半ば信者と化しているのだろう。
そのせいか、まったくまわりが見えなくなっていた。
「ちなみに、ぽっちゃりマシュマロ女子と言いますが、肌は白くないとだめなのでしょうか? 褐色肌だって、ぷにぷにふよふよですよね。褐色だと、マシュマロと表すのは少し違います。すなわち、貴方が好きなのは、ただのぽっちゃり女子ですッ!」
コルトが名探偵風に眼鏡をくいっと持ち上げた後、ビルシャナをビシィッと指差した。
「そ、それは……」
これにはビルシャナも動揺し、激しく目を泳がせた。
「私はスレンダー体型を推します。徹底した自己管理の果てにある。均整の取れたしなやかな身のこなしはまさに芸術! 身は体を表すとはこのことでしょう。そして日本の伝統文化でもある和服がよく似合う体型でもあるのですっ。同じ日本人であるならばスレンダー体型を賞賛するべきではありませんか? あなた達もダイエットをして和服を着ましょうっ」
すぐさま、瑠架が和風の着物姿で、くるりと回って微笑んだ。
「小柄で華奢な女の子こそ可愛らしい! 引き締まったウェストはボディラインを美しく見せる。細い肩幅は抱きしめた時に腕が余るほど! これこそが可愛らしさじゃないか」
徹也も、ここぞとばかりに、小柄で華奢な女性を推す。
「うるさい! うるさい! うるさァい! アタシ達だって、頑張っているの! 一生懸命努力しているの! それでも、太っちゃうんだから、仕方がないじゃない! やっぱり、あなた達は何も分かっちゃいない。いえ、何も分かろうとしていないわ! だから、あなた達なんていらない! アタシ達の前から消えて!」
その途端、土偶体型の女性信者が、他の女性信者達を巻き込んで、一斉に襲い掛かって来た。
●ビルシャナ
「出来れば傷つけたくはありませんでしたが……」
ハチミツが深い溜息を漏らした後、ブレイブマインを使う。
女性信者達は頭に血が上っているらしく、ケルベロス達を排除するしか頭にないようだった。
「そ、そうだ、殺れ、殺れ!」
最初は戸惑っていたビルシャナも、『この流れに乗って、女性信者達のハートをゲットだ!』と言わんばかりの勢いで、女性信者達を煽っていた。
「……仕方がないですね!」
瑠架も覚悟を決めた様子で、女性信者達に手加減攻撃!
女性信者達は豪快に空振りした後、前のめりに倒れ込み、そのままばたんきゅーと気絶した。
「や、やるじゃないかっ! やはり運動不足が祟ったか。だが、逆にそれがイイ!」
ビルシャナが満足した様子で鼻息をさせる。
「……ん? ビルシャナさん、マシュマロ系女子が好きって言う割にはスレンダーさんですね! あなたもぽよぽよにしてあげます――――!!!!!!!」
楓花が瞳をキランと輝かせ、ビルシャナに襲い掛かっていく。
「私は痩せます!」
すぐさまアニエスがシャーマンズゴーストに指示を出し、ビルシャナを羽交い絞めにさせた。
それと同時にアニエスが素早くビルシャナを殴って蹴り飛ばし、サンドバック状態にする事で健康的に汗を流す。
「ゴースト、神速パンチをお見舞いしてやりなさい」
続いてコルトもシャーマンズゴーストに指示を出し、ビルシャナをボコボコにする。
そのせいでビルシャナは悲鳴すら上げる事が出来ず、息をするよりも先に血の塊を吐き出した。
「ほら、俺の美脚、味わいなァ。ご褒美だろ?」
それに合わせて、狂が旋刃脚を仕掛け、さらにビルシャナを追い詰めていく。
「喰らいやがれェ!」
次の瞬間、徹也がグラビティブレイクを仕掛け、ビルシャナにトドメをさした。
そのため、ビルシャナは何ひとつ攻撃を繰り出す事が出来ぬまま、血溜まりの中に沈んでいった。
「ある意味、恐ろしい相手でしたね。信者の方々も、色々な理由があって太ったのかも知れませんが……。ここにいたら間違いなく、後戻りは出来ません。おそらく、ビルシャナはそれを見据えた上で、甘い物ばかり食べさせていたのかも知れませんね」
黒花がビルシャナの死体を眺めて、深い溜息をもらす。
ここでの生活は女性信者達にとっては、天国だったのかも知れないが、それは間違いなく偽りの楽園。
後に待っているのは、間違いなく地獄である。
それが分かっていても、女性信者達がケーキの誘惑から逃れる事は出来なかったかも知れない。
そう言った意味でも、ビルシャナの企みが恐ろしいものだった事は間違いない。
「それにしても、何だかお腹が空きましたね。せっかくですから、みんなで何か食べに行きませんか? ……べ、べつにみなさんもマシュマロになって欲しいとかじゃ、ないですよぅ?」
そう言って楓花が、恥ずかしそうに頬を染めた。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2017年2月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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